さとまたwiki

Linux OSのリブランディング

自分だけのオリジナルLinuxディストロを作ろう

リブランディングとは

🐧 🎨 💿

既存のLinuxディストリビューションをベースに、ソフトウェアの追加・削除設定のカスタマイズデザインの変更などを行い、独自のISOイメージを作成することです。

リブランディングの用途

  • 個人用バックアップ:現在の環境を丸ごとISO化して保存
  • チーム・企業配布:必要なソフトを入れた標準環境を配布
  • 教育用:学習に必要なツールだけを入れた環境
  • オリジナルディストロ公開:独自ブランドのOSを公開

リブランディング成功例

実際に世界中で使われている人気ディストロの多くは、UbuntuやDebianをベースにリブランディングして生まれました。 彼らが何を変えて成功したかを学びましょう。

🌿

Linux Mint

最も成功したUbuntu派生

2006年にClement Lefebvre氏がフランスで開発開始。「Windowsユーザーが違和感なく使える」をコンセプトに、2011年からDistroWatchで常にトップクラスの人気を維持。

GNOME 3への移行を拒否し、MATE(GNOME 2のフォーク)と独自のCinnamonデスクトップを開発。これが差別化の決め手に。

カスタマイズ内容

  • ✅ 独自デスクトップ環境(Cinnamon)
  • ✅ マルチメディアコーデック同梱
  • ✅ 独自のソフトウェアマネージャー
  • ✅ Windowsライクなメニュー配置
  • ✅ 独自のシステム設定ツール
  • ✅ アップデートマネージャーの改良

成功の秘訣

「新しいものを追求」せず「使いやすさ」を最優先。Windowsユーザーが慣れ親しんだUIを維持し、 箱から出してすぐ使える(コーデック・ドライバ同梱)ことで初心者の支持を獲得。

💎

Zorin OS

Windows/macOS移行特化

アイルランドで開発。他のディストロにない「Zorin Appearance」ツールで、 Windows 11風、macOS風、Ubuntu Unity風など8種類のレイアウトを1クリックで切替可能。

無料のCore版と有料のPro版を提供。Pro版には追加レイアウトやプレミアムアプリが含まれる。

カスタマイズ内容

  • ✅ Zorin Appearance(UIレイアウト切替)
  • ✅ Windows/macOS風テーマ
  • ✅ Zorin Connect(スマホ連携)
  • ✅ Wine/PlayOnLinux統合
  • ✅ 美しいアイコン・壁紙セット

成功の秘訣

「見た目で選ぶ」ユーザー心理を理解。OSを切り替えてもUIの学習コストがほぼゼロになる設計。 Pro版の収益モデルで持続可能な開発を実現。

🚀

Pop!_OS

開発者・ゲーマー向け

System76(Linuxハードウェアメーカー)が開発。自社PCに最適化したOSを提供するため、 Ubuntuをベースに独自の改良を重ねる。

NVIDIA ISO(ドライバ同梱版)を提供し、Linuxでのゲーミング・GPU作業の敷居を大幅に下げた。

カスタマイズ内容

  • ✅ Pop Shell(タイル型ウィンドウ管理)
  • ✅ NVIDIA/AMD ISO版
  • ✅ 独自のリカバリーパーティション
  • ✅ Pop!_Shop(アプリストア)
  • ✅ フラットパック統合
  • ✅ 自動グラフィック切替

成功の秘訣

「開発者・クリエイターの生産性」に特化。Pop Shellのタイル配置はi3/Swayユーザーを取り込み、 NVIDIA対応でゲーマー・機械学習エンジニアを獲得。

🍎

Elementary OS

macOS風デザイン

macOSに似たミニマルで美しいUIが特徴。独自のデスクトップ環境PantheonAppCenterを開発。

「Pay What You Want」モデルを採用し、ダウンロード時に任意の金額を支払う仕組みを導入。

カスタマイズ内容

  • ✅ Pantheonデスクトップ(独自開発)
  • ✅ macOS風ドック(Plank)
  • ✅ 最小化ボタンを廃止した独自UI思想
  • ✅ AppCenter(厳選アプリストア)
  • ✅ GTK4ベースのモダンアプリ群

成功の秘訣

「Less is More」を徹底したUX設計。機能を削ぎ落とすことで初心者でも迷わない。 デザイナー・クリエイター層に強くアピール。

🔷

MX Linux

コミュニティ協力の成功例

2013年、開発終了したMEPISの後継として、MEPISコミュニティとantiXチームが協力して開発。 antiXのISOビルドシステムとLive USB技術を継承。

2020年代にDistroWatch 1位を獲得。軽量でありながら機能豊富な「中道路線」が支持される。

カスタマイズ内容

  • ✅ MX Tools(独自管理ツール群)
  • ✅ MX Snapshot(ISO作成ツール)
  • ✅ MX Package Installer
  • ✅ systemd非依存オプション
  • ✅ Xfce/KDE/Fluxbox版提供
  • ✅ 独自リポジトリ

成功の秘訣

2つのコミュニティ(MEPIS + antiX)の技術を統合。「MX Tools」という強力な独自ツール群で 他と差別化。古いPCでも快適に動作する軽量性を維持。

DistroWatch 2025年ランキング(参考)

順位ディストロベース特徴
1MX LinuxDebian軽量+独自ツール
2EndeavourOSArchArch簡単導入
3Linux MintUbuntu初心者向けNo.1
5Pop!_OSUbuntu開発者・ゲーマー
7UbuntuDebian最も有名

※DistroWatchのPage Hit Rankingは関心度の指標であり、実際のシェアとは異なります

リブランディング成功のポイント

明確なターゲット

Windows移行者、開発者、軽量PCなど具体的

独自の価値を提供

独自ツール、独自デスクトップ、独自テーマ

箱から出してすぐ使える

コーデック、ドライバ、日本語環境の同梱

継続的な開発体制

コミュニティ or 企業による持続可能な運営

リブランディングツール比較

ツール対応OS難易度方式特徴
CubicUbuntu/Debian系★☆☆ 簡単GUIベースISOからカスタム
MX SnapshotMX Linux★☆☆ 簡単GUI現在の環境をISO化
Penguins Eggs多数対応★★☆ 普通CLI現在の環境をISO化
Linux Live Kit汎用★★☆ 普通スクリプトシステム全体をISO化
ArchisoArch系★★★ 難しいCLI高度なカスタマイズ

初心者へのおすすめ

Cubic(Ubuntu系)またはMX Snapshot(MX Linux)がGUI操作で最も簡単です。

1 Cubic(Ubuntu/Debian系)

Cubicとは

Custom Ubuntu ISO Creatorの略。GUIウィザードでUbuntu/DebianベースのカスタムISOを簡単に作成できます。chroot環境でパッケージのインストールや設定変更が可能。

Cubicのインストール

Ubuntu/Debian系でPPAから導入

bash
# PPAを追加
sudo apt-add-repository universe
sudo apt-add-repository ppa:cubic-wizard/release

# パッケージリストを更新
sudo apt update

# Cubicをインストール
sudo apt install --no-install-recommends cubic

# 起動
cubic
プレビュー
✓ cubic installed
GUIが起動します

Cubicの使い方

Step 1: プロジェクト作成

  1. Cubicを起動
  2. プロジェクトフォルダを指定(例:~/cubic-projects/my-distro
  3. 「Next」をクリック

Step 2: ベースISOを選択

  1. 「Select」ボタンでベースとなるISOファイルを選択
    (事前にUbuntu/Linux Mint等のISOをダウンロードしておく)
  2. 「Custom ISO」セクションでディストロ名等を変更可能
  3. 「Next」をクリック

Step 3: chroot環境でカスタマイズ

ターミナルが表示されます。ここで自由にカスタマイズできます:

chroot内での操作例

パッケージの追加・削除

bash
# パッケージリストを更新
apt update

# ソフトウェアを追加
apt install -y vim git curl nodejs npm

# 不要なソフトを削除
apt remove --purge thunderbird libreoffice-*
apt autoremove -y

# 壁紙を変更(/usr/share/backgrounds/に配置)
cp /path/to/my-wallpaper.jpg /usr/share/backgrounds/

# デフォルト設定を変更
# /etc/skel/ 以下のファイルが新規ユーザーにコピーされる

# 終わったらexitでchroot終了
exit
プレビュー
(chroot) root@cubic:/#
apt install vim git
Setting up vim...

Step 4: ISO生成

  1. カスタマイズ完了後「Next」をクリック
  2. カーネルやブートオプションを確認
  3. 「Generate」でISOを生成
  4. 完成したISOはプロジェクトフォルダ内に保存される

注意点

  • CubicはベースISOからカスタムISOを作成(現在の環境ではない)
  • 十分なディスク容量が必要(最低20GB推奨)
  • 対応:Ubuntu 18.04〜24.04、Debian Bookworm以降

2 MX Snapshot(MX Linux)

MX Snapshotとは

MX Linuxに標準搭載されたGUIツール。現在使用中のシステムをそのままISOイメージに変換できます。バックアップ用途にも、配布用途にも使えます。

MX Snapshotの強み

  • GUIで数クリックで完了
  • 現在の環境をそのままISO化
  • プリインストールソフト(MX Linux)
  • ユーザーデータ含む/除外を選択可能

MX Snapshotの使い方

Step 1: 起動

  1. MX Linuxのメニューから「MX Snapshot」を起動
  2. または mx-snapshot をターミナルで実行
  3. root権限が必要(パスワード入力)

Step 2: モードを選択

Preserving accounts(アカウント保持)

ユーザーアカウント、/home のデータ、設定を全て含む。
→ 個人バックアップ、同じ環境の複製に最適

Reset accounts(アカウントリセット)

ユーザーデータを含まない。インストール時に新規ユーザーを作成。
→ 他人への配布、公開用ディストロに最適

Step 3: 設定

  • Snapshot name:ISOファイル名
  • Work directory:作業フォルダ(十分な空き容量が必要)
  • Compression:圧縮形式(zstdが高速、xzが高圧縮)
  • Exclusions:除外するフォルダ(キャッシュ等)

Step 4: 生成

  1. 「Next」または「OK」をクリック
  2. ISO生成が開始(システムサイズにより10〜30分程度)
  3. 完成したISOは指定したWork directoryに保存

CLIでの実行

コマンドラインオプション

bash
# 基本的な使い方(GUI起動)
sudo mx-snapshot

# CLIモードで実行
sudo mx-snapshot --cli

# オプション例
sudo mx-snapshot -c \
  --reset \                    # アカウントリセット
  -z zstd \                    # zstd圧縮
  -x \                         # 標準フォルダを除外
  -w /home/user/snapshot        # 作業ディレクトリ

# 特定のカーネルを使用
sudo mx-snapshot -k /boot/vmlinuz-6.1.0-mx
プレビュー
Creating snapshot...
Compressing filesystem...
ISO created: my-mx-snapshot.iso

容量の目安

作業フォルダには、ルートパーティション使用量と同程度の空き容量が必要です。
例:システムが15GB使用中 → 最低15GBの空きが必要

3 Penguins Eggs(多ディストロ対応)

Penguins Eggsとは

多くのディストロに対応したリマスタリングツール。現在の環境をライブISOに変換。Debian、Ubuntu、Arch、Fedora、openSUSEなど幅広く対応。

対応ディストロ

  • Debian (Buster〜Trixie)
  • Ubuntu / Linux Mint
  • Arch Linux / Manjaro
  • Fedora / AlmaLinux / Rocky
  • openSUSE

特徴

  • Calamaresインストーラー対応
  • PXEブート対応
  • amd64 / i386 / arm64 対応
  • 活発な開発(2024年も更新中)

Penguins Eggsのインストール

複数の方法がある

bash
# 方法1: AppImage(全ディストロ共通)
wget https://github.com/pieroproietti/penguins-eggs/releases/download/v10.0.50/penguins-eggs-10.0.50.AppImage
chmod +x penguins-eggs-*.AppImage
sudo ./penguins-eggs-*.AppImage

# 方法2: fresh-eggsスクリプト(推奨)
git clone https://github.com/pieroproietti/get-eggs
cd get-eggs
sudo ./get-eggs.sh

# 方法3: Debian/Ubuntu系はdebパッケージ
# GitHubリリースページから.debをダウンロード
sudo dpkg -i penguins-eggs_*.deb
sudo apt install -f  # 依存関係を解決
プレビュー
✓ penguins-eggs installed
eggs version: 10.0.50

ISO作成の手順

基本的なコマンド

bash
# 1. 初期設定(初回のみ)
sudo eggs dad -d  # 自動設定

# 2. Calamaresインストーラーを導入(オプション)
sudo eggs calamares -i

# 3. ISO生成
sudo eggs produce

# オプション付きの例
sudo eggs produce \
  --prefix "MyDistro" \     # ファイル名のプレフィックス
  --basename "mylinux" \    # ISOのベース名
  --theme "eggs" \          # テーマ
  --release                   # リリース版(高圧縮)

# ユーザーデータを含める場合
sudo eggs produce --clone

# 生成されたISOの場所
ls /home/eggs/
プレビュー
$ sudo eggs produce
Creating live system...
Compressing squashfs...
ISO created: /home/eggs/MyDistro-mylinux.iso

主なコマンド

eggs produce:ISO生成

eggs calamares -i:インストーラー導入

eggs kill:作業ファイル削除

eggs info:システム情報表示

4 Linux Live Kit(汎用)

Linux Live Kitとは

シェルスクリプト集でシステムをライブLinuxに変換。特定のディストロに依存せず、squashfsとaufs/overlayfsをサポートするカーネルなら使用可能。

Linux Live Kitの使い方

基本的な手順

bash
# 1. ダウンロード
cd /opt
git clone https://github.com/Tomas-M/linux-live.git
cd linux-live

# 2. 必要なパッケージをインストール
sudo apt install squashfs-tools genisoimage

# 3. 設定ファイルを編集
nano ./config

# config の主な設定項目:
# LIVEKITNAME="MyLinux"        # ディストロ名
# VMLINUZ="/boot/vmlinuz-$(uname -r)"  # カーネルパス
# AUESSION="changes"           # 変更保存フォルダ名

# 4. vmlinuzのシンボリックリンクを作成
sudo ln -sf /boot/vmlinuz-$(uname -r) /vmlinuz

# 5. ビルド実行(root権限で)
sudo ./build

# 6. 出力確認
ls /tmp/
# → MyLinux.iso(ISOファイル)
# → MyLinux.tar(USBブート用)
プレビュー
$ sudo ./build
Creating squashfs modules...
Building ISO image...
Done: /tmp/MyLinux.iso

USBブータブルにする

USBへの書き込み

tarファイルを展開してbootinst.shを実行

bash
# USBドライブをマウント(例:/dev/sdb1)
sudo mount /dev/sdb1 /mnt/usb

# tarファイルを展開
sudo tar -xvf /tmp/MyLinux.tar -C /mnt/usb

# ブータブルにする
cd /mnt/usb/boot
sudo ./bootinst.sh

# アンマウント
sudo umount /mnt/usb
プレビュー
USB is now bootable!

注意点

  • 現時点ではBIOSブートのみ対応(UEFI非対応)
  • カーネルがsquashfsとaufs/overlayfsをサポートしている必要がある
  • Debianベースで最も安定動作

ブランディング要素のカスタマイズ

オリジナルディストロとして配布する場合、以下の要素をカスタマイズします:

🎨 ビジュアル

  • 壁紙:/usr/share/backgrounds/
  • ロゴ・アイコン:/usr/share/pixmaps/
  • GRUBテーマ:/boot/grub/themes/
  • Plymouth(起動画面)

📝 システム情報

  • OS名:/etc/os-release
  • LSB情報:/etc/lsb-release
  • Issue:/etc/issue
  • MOTD:/etc/motd

⚙️ デフォルト設定

  • skelフォルダ:/etc/skel/
  • デスクトップ設定
  • ブラウザのホームページ
  • ターミナルのテーマ

📦 ソフトウェア

  • プリインストールアプリ
  • APTリポジトリ設定
  • 自動起動アプリ
  • カスタムスクリプト

/etc/os-release の編集例

OS名をカスタマイズ

bash
# /etc/os-release を編集
PRETTY_NAME="MyLinux 1.0"
NAME="MyLinux"
VERSION_ID="1.0"
VERSION="1.0 (Codename)"
VERSION_CODENAME=codename
ID=mylinux
ID_LIKE=debian ubuntu
HOME_URL="https://mylinux.example.com/"
SUPPORT_URL="https://mylinux.example.com/support"
BUG_REPORT_URL="https://mylinux.example.com/bugs"
プレビュー
$ cat /etc/os-release
PRETTY_NAME="MyLinux 1.0"

まとめ

ツール選びのポイント

  • Ubuntu/Debian系でGUI派 → Cubic
  • MX Linuxユーザー → MX Snapshot(最も簡単)
  • 現在の環境をそのままISO化 → Penguins Eggs または MX Snapshot
  • 多様なディストロに対応したい → Penguins Eggs
  • 低レベルな制御が必要 → Linux Live Kit

初心者向けおすすめ手順

  1. MX Linuxをインストール
  2. 好みのソフトをインストール・設定
  3. MX Snapshotで「Reset accounts」モードでISO化
  4. 完成!配布可能なオリジナルディストロの出来上がり