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💰 他人の貯金はいくらか — 年収500万/資産300万の私と、年収2000万/資産3億の私を、日本中と比べた

貯金300万円の35歳・男性・独身は、30代の独身100人のうち約66人より多く持っていた。真ん中の人は100万円なので、その3倍にあたる。ただし同じ300万円でも、20代なら75人に勝てるのが、40代で60人、60代では46人まで減る。金額を増やさなければ順位は落ちていく。東京を含む関東の独身の中では54人にしか勝てない。東北なら65人。同じ金額でも、比べる相手が変われば結果はここまで動く。他人がいくら持っているかが気になって仕方がないので、35歳・男性・東京・独身・父と二人暮らしという条件を固定したまま、年収と資産だけを変えた2人を立てて日本の一次統計に当てていった。私A(年収500万・貯金300万)と、私B(年収2,000万・資産3億)。中央値と平均値を棒グラフで並べると印象が逆になる。中央値なら300万円は30代の独身の3倍だが、平均501万円には負ける。★Codexの全文レビューで私の判定には重大な誤りが6つ見つかり、再レビューでもう1つ見つかった。崩れた判定は消さずに残している。J-FLEC 2025年6月調査・国税庁令和6年分・総務省家計調査・住宅土地統計調査から。

⚖️ 貯金300万円は100人のうち何人に勝つか — 先に答え

このセクションの3点

① 貯金300万円の35歳・独身男性は、30代の独身100人のうち約66人より多く持っている。真ん中(100万円)の3倍

② ただし同じ300万円でも、20代なら75人に勝てるが、40代で60人、60代では46人まで減る。金額を増やさなければ順位は落ちていく

③ 東京を含む関東の独身の中では54人にしか勝てない。東北なら65人。同じ金額でも住む場所で変わる

貯金300万円は、100人のうち何人に勝っているか

この記事を読む人が一番知りたいことに先に答える。35歳・独身・男性で貯金が300万円あるとき、同じような人を100人並べたら、自分より少ない人は何人いるのか。金額を変えた場合も並べたので、自分の額を当てはめて読める。

貯金額30代・独身100人のうち<br>自分より少ない人30代・家族と同居100世帯のうち<br>自分より少ない世帯
0円(貯金なし)100人中32人がここ100世帯中18世帯がここ
100万円47人30世帯
200万円61人39世帯
300万円 ← ここ66人45世帯
500万円73人56世帯
700万円78人64世帯
1,000万円81人72世帯
1,500万円87人81世帯
2,000万円91人85世帯
3,000万円94人90世帯
貯金額ごとに、30代の独身100人のうち何人に勝てるか
100万円
47人
200万円
61人
300万円
66人

あなたはここ

500万円
73人
700万円
78人
1,000万円
81人
1,500万円
87人
2,000万円
91人
3,000万円
94人

J-FLEC 2025年6月調査・30代単身325人。自分より少ないと答えた人の数。残りは自分以上の人と無回答3人。

左が一人分の貯金どうしで比べた数(独身で一人暮らしの人が相手)。右は家族全員分を合計した額と比べた数なので、当然勝ちにくくなる。あなたの300万円は一人分の額なので、まず見るべきは左。300万円で66人に勝てる。出典はJ-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」2025年6月調査(30代・単身325人/30代・二人以上648世帯)。残りは自分以上の人と、答えなかった人(3人)。

66人

貯金300万円で勝てる人数(30代・独身100人中)

100万円

30代・独身のちょうど真ん中の人の貯金額

32人

30代・独身100人のうち貯金ゼロの人数

10〜17か月

収入が止まったとき300万円がもつ期間

同じ300万円でも、年をとるほど勝てなくなる

貯金300万円で、その年代の独身100人のうち何人に勝てるか
20代
75人
30代
66人

35歳はここ

40代
60人
50代
57人
60代
46人

半分を割る

J-FLEC 2025年6月調査の単身世帯。20代548人・30代325人・40代324人・50代366人・60代418人。数字が大きいほど有利。

貯金額を300万円のまま固定して年代だけを変えると、勝てる人数は75人→66人→60人→57人→46人と減り続ける。周りが増やしていくからだ。今は真ん中より上でも、この額のままなら60代で半分を割る。

住む場所を変えると、どうなるか

貯金300万円で、その地域の独身100人のうち何人に勝てるか(全年代)
東北
65人
北海道
63人
九州
62人
関東(東京を含む)
54人

ここが一番きびしい

J-FLEC 2025年6月調査の単身世帯・全年代。関東940人・東北149人・九州288人・北海道128人。東北と北海道は人数が少なく振れやすい。関東は東京都以外の県も含み、東京都だけの数字は公表されていない。

関東は貯めている人が多いので、同じ300万円でも勝てる人数が11人減る。東北なら65人に勝てるところが、関東では54人になる。

先に答え — AとBは、結局どうなのか

私A:年収は日本の男性のちょうど真ん中あたり。貯金300万円は、一人暮らしの30代と比べれば上のほう。ただし家賃を払っていないのにこの額で、収入が止まると1年ちょっとで尽きる。安心し切れる額ではない。

私B:かなりお金がある。年収は男性100人のうち上から1人に入る。資産3億円も明確に多い。ただし父と2人のもので、しかも現金の一部は会社に貸しているお金。全部を自由に使えるとは限らない。

ただし正確に言うと、ここから先は条件がつく。以下で詳しく見ていく。

2人のペルソナ(比べるために作った設定上の人物)

私A私B
年齢・性別・地域・世帯(世帯=同じ家で同じ家計で暮らす人のまとまり)35歳・男性・東京・独身・父と二人暮らし(二人以上世帯)同左
住居父名義の持ち家に同居(家賃・ローン無し)同左
年収500万円(役員報酬=会社の役員が受け取る報酬。税金の分類では給料と同じ扱い)2,000万円(役員報酬)
金融資産(預貯金・保険・株や投資信託などの合計。家や土地は入らない)300万円現金2億円(役員貸付金=役員が自分の会社に貸しているお金を含む)
不動産なし都内5,000万円+神奈川5,000万円=1億円
資産合計300万円3億円(父との共有・2人)

2人は年齢・性別・地域・独身であること・父と二人暮らしであることまで全て同じ条件に揃えてある。違うのは年収と資産だけ。この差だけを見る。

注意 — 世帯主(世帯の代表として届け出ている人)が誰かで話が変わる

・父と同居のため、二人以上世帯の統計は世帯主が本人の場合しか使えない。単身世帯の数値はこの制約を受けないため、主判定はそちらに置く。

・くわしい条件はSection2にまとめてある。

上位51.0%

私Aの年収500万円(男性給与所得者=会社などから給料をもらっている人・2,925万人中)

0.60年分

私Aの資産÷年収(個人の数字。世帯ベースの日本人平均1.3年分とは単位が違う)

約1.0%

私Bの年収2,000万円超(男性給与所得者2,925万人中29.2万人)

15.0年分

私Bの資産÷年収(3億円=世帯合計のケース)

私A と 私B — 高さと中身

私A

年収500万円・資産300万円

  • ・年収は男性の中でほぼ真ん中(上位51.0%)
  • ・資産は単位が揃う30代単身世帯基準で31.4%の中(二人以上世帯基準は世帯合計なので参考値)
  • ・住居費ゼロ(父の持ち家に同居)でこの数字

私B

年収2,000万円・資産3億円

  • ・年収は男性の中で2,000万円超が約1.0%(29.2万人)
  • ・金融資産2億円はNRI(野村総合研究所。民間の調査会社)区分への当てはめが確定できない(負債・貸付金の扱いが不明)
  • ・3億円は父との共有名義。単独では動かせない
⚖️ Claudeの判定 年収は真ん中。資産は単位が揃う比較でしか判定できない

私Aは、稼ぐ力は日本の男性のほぼ真ん中。資産は単位が揃う単身世帯基準では31.4%の中に入るが、世帯合計の統計とは直接比べられない。

  • 年収500万円は男性給与所得者2,925万人の上位51.0%(500万円以下が49.0%)。35〜39歳男性の平均573.8万円を73.8万円下回る
  • 金融資産300万円は、単位が揃う30代・単身世帯(n=325)で比べると、300万円以上と回答したのは31.4%——Aはこの中に入る。二人以上世帯の52.0%(n=648・中央値311万円。中央値=全員を金額順に並べたときの真ん中の人の額)は世帯合計の数字で、父の資産が加わるべき参考値
  • 資産÷年収は0.60年分(個人資産÷個人年収)。J-FLEC(金融経済教育推進機構。国の関係機関で、家計の調査をしている)の1.28〜1.38年分は世帯資産÷世帯収入であり、単位が違うため直接は比較できない
くわしい根拠を読む ▾
当初は私Aの年収帯(500〜750万円・二人以上世帯)の金融資産中央値800万円と比べ、「同じ年収の人より貯まっていない」と判定した。しかしJ-FLECの年収・金融資産はいずれも世帯の数字であり、父の収入・資産が不明である以上、本人個人の年収500万円・資産300万円をそのまま世帯統計の帯に当てるのは単位が違う比較だった。★この判定は撤回し、単位が揃う単身世帯基準(30代・単身世帯n=325で300万円以上が31.4%)を主判定に置き直す。二人以上世帯の52.0%(n=648)や中央値311万円は、世帯合計に対して個人の300万円を当てた参考値であり、父の資産が加わるべき数字である。なお「日本人はどの年収帯でも資産が年収の1.28〜1.38年分で揃っている」という発見自体は世帯ベースの事実として有効だが、Aの0.60年分(個人資産÷個人年収)とは単位が違うため直接は比較できない。また、Aの金融資産300万円も内訳(預貯金・保険・投資信託等)が不明で、Bと同様に流動性(すぐ現金にして使えるかどうか)は判定不能である。それでも、収入が止まれば金融資産300万円は単身世帯の月間支出(17.3万円)で割って約17.3か月分、40歳未満・二人以上世帯の月間支出(29.9万円)で割ると約10.0か月分しかもたないという生活防衛力の低さは変わらない。
⚖️ Claudeの判定 年収は明確に上位。資産は当てはめが確定できない

私Bは、稼ぐ力は明確に上位。資産はNRIの区分への当てはめが確定できず、自由に使える額とも言い切れない。

  • 年収2,000万円は男性給与所得者の中で、2,000万円超が約1.0%(29.2万人/男性給与所得者2,925万人)。2,000万円は「1,500万円超〜2,000万円以下」の階級(金額をいくつかの幅に区切ったもの)に入り、階級内の順位は分からない
  • 不動産1億円を除いた金融資産2億円は、負債額・役員貸付金の扱いが不明なためNRIの区分への当てはめが確定できない。仮定つきなら富裕層(1億円以上5億円未満)に入る
  • 1億円以上の区分は、NRIの推計で全世帯5,570.4万世帯の2.97%(165.3万世帯)。Bがその区分に入るかは前提次第で、区分の中での順位は分からない
くわしい根拠を読む ▾
現金2億円には役員貸付金(会社への貸付)が含まれるが、NRIが純金融資産(金融資産から借金を引いた額)保有額として列挙する項目(預貯金・株式・債券・投資信託・一時払い生命保険や年金保険)に貸付金は無い。当初はここから「純金融資産2億円=富裕層」と断定したが、原文の「など」は例示であり除外されると決まったわけではなく、現在の情報だけではNRIの区分への当てはめが確定できない。★この断定は撤回し、仮定つきの例示に置き換える:負債がゼロで、役員貸付金をNRIの金融資産に含められる場合は、金融資産2億円は1億円以上5億円未満の区分に入る。不明なのは①負債額②役員貸付金の額③貸付金をNRIが金融資産に含めるかの3点。1億円以上の区分は、NRIの推計で全世帯5,570.4万世帯の2.97%(165.3万世帯)を占めるが、これは世帯数の割合であって、Bがその中の何番目にいるかを示すものではない。3億円は父との共有(2人)で単独では動かせない。持分1/2なら金融資産1億円で、仮定つきの当てはめでは区分の下限にちょうど当たる。Aの300万円と同じく、Bの2億円も内訳が不明なため流動性は判定不能である。

表A:私Aの位置は、比べる相手で変わる

比べる母集団(比べる相手の集まり)n300万円以上の世帯の割合
30代・単身世帯(単位が揃う主判定)32531.4%
全国・単身世帯(全年代)2,50040.5%
その他・類型不能(決められた分類のどれにも当てはまらない、という意味。依頼者の世帯類型に近い・参考)1,04351.9%
30代・二人以上世帯(世帯合計・参考)64852.0%
全国・二人以上世帯(全年代・世帯合計・参考)5,00064.1%
関東・二人以上世帯(世帯合計・参考)1,73567.2%
年収500〜750万円帯・二人以上世帯(世帯合計・参考)1,44068.1%

同じ300万円でも、300万円以上と答えた世帯の割合は31.4%から68.1%まで動く。幅は36.7ポイント。ただし31.4%は単位が揃う単身世帯基準、68.1%は世帯合計の二人以上世帯基準であり、この幅の一部は「個人か世帯か」という単位の違いによる。詳しくは第12章で扱う。

表B:私Bは、数え方で階層が変わる

数え方金額NRIの区分への当てはめ備考
① 資産合計3億円定義外(不動産を含むため直接は当てられない)
② 純金融資産(現金2億円)2億円確定できない(仮定つきなら富裕層:1億円以上5億円未満)負債額・役員貸付金の額・貸付金を金融資産に含めるかが不明
③ 持分1/21.5億円(うち金融資産1億円)仮定つきなら富裕層のちょうど下限1円下回れば準富裕層

J-FLEC調査は3,000万円以上が最上位階級のため、3億円の正確な順位はこの調査では出せない。NRIの区分で補おうとしても、負債額・役員貸付金の額・貸付金を金融資産に含めるかの3点が不明なため、当てはめは仮定つきの例示にとどまる。

みんなの数字 — 中央値と平均値(全員の合計を人数で割った額。一部の大金持ちに引っ張られる)の両方

世帯類型平均中央値平均は中央値の何倍か
二人以上世帯(全国計)1,940万円720万円2.69倍
単身世帯(全国計)919万円130万円7.07倍

平均は、上位のごく一部(3,000万円以上を持つ世帯)に引っ張られた数字。中央値は、ちょうど真ん中の世帯の数字。どちらで見るかで印象が変わる。詳しくは第3章で扱う。

この記事で分かったこと

1. 同じ300万円でも、300万円以上と答えた世帯の割合は比べる相手で31.4%から68.1%まで動く。

2. 日本人はどの年収帯でも、金融資産が年収の約1.3年分で揃っている(世帯ベースの数字)。

3. 日本の統計に「独身のまま親と暮らす大人」の枠が無い(「その他・類型不能」・n=1,043・中央値312万円)。私Aはこの枠に最も近い。

この章で分かったのは、Aは年収も資産もほぼ真ん中でギリギリの生活防衛力、Bは年収は明確に上位で資産も多いが正確な順位は数え方次第で変わる、ということだ。

→ 次のSection2では、この比較でできること・できないこと(個人と世帯、東京と関東、独身と単身世帯の違い)を先に確認する。

🧱 この比較でできること・できないこと — 8つの断層

このセクションの3点

① 用語の意味はこの章の一覧表にまとめた。以降の章で分からない言葉が出てきたら、ここに戻れば思い出せる

② 8つの断層のうち最重要な2つ(⑦本人は個人だが統計は世帯/⑧年齢区分は世帯主のもの)だけを本文の表に残し、残り6つは折りたたみにまとめた

③ 依頼者の世帯類型「その他・類型不能」(n=1,043・中央値312万円)は、二人以上世帯全体の中央値720万円の半分以下しかない

この記事は、私Aと私Bの数字を日本の統計に当てて比べる。ただし統計は依頼者の状況に合わせて作られていない。当てはめる前に、どこがズレているかをこの章で先に決めておく。この章だけ読めば、以降の章で出てくる注意はすべて分かるようにしてある。他の章では同じ説明を繰り返さないので、迷ったらこの章に戻ってくる。

用語の一言翻訳 — ここで一気に片づける

この記事で使う専門用語を、先にまとめて翻訳しておく。以降の章で見慣れない言葉に出会ったら、この表に戻ってくればいい。

語一言翻訳
ペルソナ比べるために作った設定上の人物(私A・私Bのこと)
世帯同じ家で同じ家計で暮らす人のまとまり
世帯主その世帯の代表として届け出ている人
給与所得者会社などから給料をもらっている人
役員報酬会社の役員が受け取る報酬。税金の分類では給料と同じ扱い
金融資産預貯金・保険・株や投資信託などの合計。家や土地は入らない
純金融資産金融資産から借金を引いた額
役員貸付金役員が自分の会社に貸しているお金
母集団比べる相手の集まり
中央値全員を金額順に並べたときの真ん中の人の額
平均値全員の合計を人数で割った額。一部の大金持ちに引っ張られる
非保有率金融資産がゼロだと答えた人の割合
類型不能決められた分類のどれにも当てはまらない、という意味
階級金額をいくつかの幅に区切ったもの
可処分所得税金や社会保険料を引いたあとの、実際に使えるお金

最重要の2つの断層

断層内容だからこの記事ではこう扱う
⑦本人の数字は個人、統計は世帯(最大の断層)私A・私Bの年収(500万/2,000万)と資産(300万/3億)は本人個人の数字。だがJ-FLECの「年間収入」は世帯の年間収入、「金融資産保有額」は世帯として保有する額。NRIの「純金融資産保有額」も世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた額。家計調査も世帯単位。単位が揃うのは単身世帯調査だけ(世帯が1人=個人と一致する)。父の収入・金融資産・負債は一切不明。個人資産の主たる比較相手は単身世帯統計にする。二人以上世帯の数値は削除せず残すが、「単位が違う参考比較」であることを必ず添える(父の資産が加わるべき数字)。
⑧年齢区分は世帯主の年齢J-FLECの年令別も家計調査の年齢階級も世帯主のもの。父名義の持ち家に同居する35歳の依頼者が世帯主とは限らず、世帯主が父である可能性が残る。世帯主が父なら、「30代」という年齢別の統計は依頼者の世帯には当てられない。年齢別の比較は本人が世帯主である場合に限った参考として読む。年齢を使わない比較(単身世帯・世帯類型別)を主判定に置く。
📎 残りの6つの断層(詳細) ①〜⑥・展開して確認 開く ▾
断層内容だからこの記事ではこう扱う
①年収は個人・金融資産は世帯国税庁の年収データは給与所得者個人の数字。J-FLECの金融資産データは世帯単位の合計(二人以上世帯なら世帯全員分の合計)。年収の比較には個人の統計(国税庁)を、金融資産の比較には世帯の統計(J-FLEC)を使う。両者を掛け合わせた単一の百分位は作らない。
②男性だけの金融資産統計は存在しないJ-FLECの金融資産調査は世帯主の性別を分けて公表していない。男女別に出ているのは国税庁の給与統計だけ。年収の比較(第4章)は男性のみの統計を使うが、金融資産の比較(第5章以降)は性別を問わない世帯全体の数字を使う。「男性の中で」とは書かない。
③東京≠関東J-FLECの地域区分は9ブロックで、最も細かくても「関東」(広域ブロック)まで。東京都だけの金融資産データは無い。第8章以降、「関東」の数字を「東京」と言い換えない。東京都のデータが要るところ(家賃等)は別の統計(住宅・土地統計調査)に頼る。
④35歳≠30代J-FLECも国税庁も年齢は5〜10歳刻みの区分のみ。「35歳」という1歳単位の数字はどちらにも存在しない。私A・私Bの年齢での比較は、J-FLECでは「30歳代」、国税庁の給与では「35〜39歳」という区分の中に置くところまでしかできない。
⑤貯金≠金融資産≠純資産貯金は預貯金のみ。金融資産は預貯金・保険・有価証券等の合計で不動産を含まない。純資産はそこから負債を引いたもの。私Bの3億円には都内・神奈川の不動産1億円が含まれており、そのままではJ-FLECの金融資産と比べられない。第5章では私Bの3億円を、不動産を除いた数え方(B1/B2/B3)に分けてから統計に当てる。
⑥独身≠単身世帯依頼者は法律上「独身」(未婚)だが、父と二人で暮らしているため、統計上は「単身世帯」ではなく「二人以上世帯」に分類される。この記事の主な比較対象は二人以上世帯の統計にする。単身世帯の数字は参考として併記するにとどめる。

「その他・類型不能」— 依頼者の世帯類型はどこに入るか

世帯類型n非保有%平均(万円)中央値(万円)
全国計(参考)5,00015.71,940720
世帯主夫婦のみ1,87313.42,1451,000
世帯主夫婦と子のみ2,00215.01,737700
世帯主夫婦と親のみ827.32,6881,400
その他・類型不能1,04321.71,905312

📎 統計に無い枠に、依頼者は立っている(可能性が高い)

日本の世帯類型統計に「結婚していない大人が親と暮らす世帯」という名前は無い。依頼者の世帯は「その他・類型不能」(n=1,043)に該当する可能性が高い。この区分の中央値は312万円で、二人以上世帯全体の中央値720万円の半分以下、非保有率も21.7%と「世帯主夫婦のみ」の13.4%より高い。ただしこの区分には三世代同居やきょうだい同居なども混ざるため、これだけで断定はしない。

1,043

「その他・類型不能」の回答数(n)

312万円

この区分の金融資産・中央値

21.7%

この区分の金融資産非保有率

720万円

参考: 二人以上世帯 全国の中央値

この章で分かったのは、統計を個人にそのまま当てられない場所が8つあり、特に「本人は個人・統計は世帯」という断層がこの先の全ての章に効く、ということだ。

→ 次の第3章では、中央値と平均値をどう使い分けるかを扱う。

📏 物差しの話 — 中央値と平均値をどう使い分けるか

このセクションの3点

① 二人以上世帯は平均1,940万円・中央値720万円で、平均は中央値の2.69倍

② 単身世帯は平均919万円・中央値130万円で、平均は中央値の7.07倍

③ 私Aは中央値で裁く。私Bは中央値の外にいるので、第5章以降は階層で裁く

中央値(全員を金額順に並べたときの真ん中の人の額)と平均値(全員の合計を人数で割った額。一部の大金持ちに引っ張られる)は、同じ調査でもまったく違う顔を見せる。二人以上世帯・全国の場合、平均1,940万円に対して中央値はわずか720万円。この差の大きさが、この章の主役になる。

1,940万円

二人以上世帯 全国・平均

720万円

二人以上世帯 全国・中央値

2.69倍

平均は中央値の何倍か

世帯タイプ平均(万円)中央値(万円)平均は中央値の何倍か
二人以上世帯 全国1,9407202.69倍
単身世帯 全国9191307.07倍

📎 なぜズレるか

ズレの理由は上限の無い階級(金額をいくつかの幅に区切ったもの)が一定数いるため。J-FLECの階級別分布で最上位は「3,000万円以上」で、二人以上世帯ではこの階級に18.8%、単身世帯でも9.6%が入る。この階級には5,000万円の世帯も5億円の世帯も同じ「3,000万円以上」として数えられ、実際の金額は分からない。少数のきわめて大きい値が平均を押し上げ、中央値とのズレを生む。

中央値と平均、それぞれ何を見ているか

中央値

真ん中の人の値

  • ・全世帯を金額順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る世帯の値
  • ・二人以上世帯 全国の中央値は720万円。単身世帯は130万円
  • ・一部の高額保有世帯に引っ張られない
  • ・私Aのように中央値の近くにいる場合、この記事ではこちらで裁く

平均

上位に引っ張られた数字

  • ・全世帯の合計を世帯数で割った値
  • ・二人以上世帯 全国の平均は1,940万円。単身世帯は919万円
  • ・3,000万円以上の世帯が二人以上で18.8%・単身で9.6%おり、上限がないため平均を押し上げる
  • ・私Bのように中央値の範囲外にいる場合、平均や中央値だけでは位置を裁けない
この記事での使い分けを、ここで決める。私A(金融資産300万円)は中央値の近くにいるため、中央値で裁く。私B(3億円)は最上位階級(3,000万円以上)の外側、しかも上限の無い範囲にいるため、中央値では位置を示せない。第5章以降はNRIの階層区分で裁く。
二人以上世帯 全国 — 平均は中央値の2.69倍
平均1,940万円中央値720万円3,000万円以上18.8%単身世帯は平均919万円・中央値130万円で開きは7.07倍

平均1,940万円は一部の高額保有世帯に引っ張られている。真ん中の世帯(中央値)は720万円。3,000万円以上の世帯が18.8%もおり、しかも上限がないため平均を押し上げる。単身世帯では平均919万円・中央値130万円で差はさらに大きく7.07倍。出典: J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」2025年。

この章で分かったのは、中央値と平均値のどちらを使うかで、同じ300万円・3億円という数字の見え方がまったく変わるということだ。だからこの記事は、私Aを中央値で、私Bを階層で裁く。

→ 次の第4章では、年収500万と2,000万が日本のどこに位置するかを見る。

💴 年収の位置 — 500万と2,000万は日本のどこか

このセクションの3点

① 私A(年収500万円)は「400万円超〜500万円以下」の階級の上限にちょうど位置する。500万円超は51.0%・500万円以下は49.0%で、ほぼ折り返し地点にいる

② 私B(年収2,000万円)は「1,500万円超〜2,000万円以下」の階級の上限にちょうど位置する。これを超える2,000万円超は男性給与所得者の中で約1.0%(29.2万人/2,925万人)

③ 母集団を「男性のみ」から「男女計」に変えるだけで、500万円超の割合は14ポイント近く動く

男女別・年齢階級別の平均給与(令和6年分・国税庁「民間給与実態統計調査」)

年齢階級男性女性男女計
20〜24歳294.7万円257.9万円277.1万円
25〜29歳437.6万円370.1万円406.9万円
30〜34歳511.6万円361.5万円448.7万円
35〜39歳573.8万円351.3万円482.1万円
40〜44歳629.5万円359.3万円516.1万円
45〜49歳663.0万円368.6万円540.0万円
50〜54歳708.5万円363.4万円559.4万円
55〜59歳734.6万円(男性の最高)356.2万円571.6万円
60〜64歳604.4万円293.9万円473.0万円
65〜69歳472.2万円239.9万円369.9万円
70歳以上379.7万円209.3万円304.7万円
合計586.7万円333.2万円477.5万円

私A・私Bの年収はいずれも役員報酬(会社の役員が受け取る報酬。税金の分類では給料と同じ扱い)としての設定である。二人とも35歳という設定なので、比較の基準は35〜39歳の平均給与になる。この階級の男性平均は573.8万円。私A(年収500万円)はここを73.8万円下回り、私B(年収2,000万円)はここの3.49倍にあたる。ただし年齢階級別の平均は「その年齢の給与所得者(会社などから給料をもらっている人)全体」の平均であり、母集団には役員報酬を得ている会社役員も含まれる一方、自営業者の所得は含まれない。

この章は個人同士の比較なので単位のミスマッチが無い。世帯単位の統計との違いは第2章にまとめてある。

給与階級別の分布(男性のみ・令和6年分)

給与階級(年収をいくつかの幅に区切った区分)ごとの人数と割合をグラフで見る。同じ数字の14行の表は、下の折りたたみにまとめてある。

男性の給与階級別構成比(令和6年分・男性給与所得者2,925万人)
100万円以下
3.5%
100〜200万円
5.6%
200〜300万円
8.7%
300〜400万円
14.3%
400〜500万円
16.9%

男性で最多の階級。私A(年収500万円)はこの階級の上限にあたる

500〜600万円
14.7%
600〜700万円
10.3%
700〜800万円
7.6%
800〜900万円
5%
900〜1,000万円
3.6%
1,000〜1,500万円
7%
1,500〜2,000万円
1.7%

私B(年収2,000万円)がいる階級

2,000〜2,500万円
0.4%
2,500万円超
0.6%

国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」第16表(男性のみ)より。構成比は四捨五入のため合計は100.0%にならない。※1,500〜2,000万円の「上位%」は人数ベースの1.0%に統一(本文参照)

📎 給与階級別の分布 — 全14行の表 男性のみ・令和6年分 開く ▾
給与階級人数(千人)構成比累積%上位%
100万円以下1,0343.5%3.5%96.5%
100〜200万円1,6355.6%9.1%90.9%
200〜300万円2,5568.7%17.8%82.2%
300〜400万円4,17514.3%32.1%67.9%
400〜500万円4,93116.9%(男性で最多)49.0%51.0%
500〜600万円4,29014.7%63.7%36.3%
600〜700万円3,01910.3%74.0%26.0%
700〜800万円2,2327.6%81.6%18.4%
800〜900万円1,4675.0%86.6%13.4%
900〜1,000万円1,0513.6%90.2%9.8%
1,000〜1,500万円2,0597.0%97.2%2.8%
1,500〜2,000万円5091.7%98.9%1.0%※
2,000〜2,500万円1310.4%99.3%0.7%
2,500万円超1610.6%99.9%0.1%
合計29,25099.9%——
💴 Claudeの判定 男性の中でほぼ真ん中

私A(年収500万円)は「400万円超〜500万円以下」の階級の上限にちょうど位置する。500万円超は51.0%、500万円以下は49.0%で、ほぼ折り返し地点にいる。

  • 35〜39歳男性の平均給与573.8万円を73.8万円下回る
  • 400〜500万円は男性で最多の階級(16.9%)。私Aはその上限に立つ
  • 母集団を男女計に広げると年収500万円超は36.7%になる。母集団の取り方だけで比率が動く(第12章で詳述)
くわしい根拠を読む ▾
国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」第16表(男性のみ)から、給与階級以上の構成比を単純に積み上げると、500〜600万円以上の男性は36.3%。裏返すと500万円以下は63.7%……ではなく、階級の境界の取り方に注意が必要になる。400〜500万円の階級の上限(500万円)ちょうどで区切ると、この階級までの累積は49.0%、残り(500万円超)は51.0%。私Aの年収500万円はこの境界にちょうど一致するため、「500万円超は51.0%、私Aはその境界にいる」という言い方が正確になる。「私Aは上位51.0%」という表現は、Aが500万円超のグループに属するかのように読めてしまうため使わない。500万円ちょうどが境界の下側(500万円以下)に入るのか上側に入るのかは原表の区切り方に依存し、本記事では500万円以下の側として数えている。ほぼ折り返し地点であり、極端に高くも低くもない。ただしこれは男性給与所得者(1年を通じて勤務した者)という母集団の中での話であり、女性を含めた給与所得者全体(5,137万人)で見ると、年収500万円超の割合は36.7%まで下がる。同じ境界が、母集団の性別構成だけで大きく違う顔を見せる。
💴 Claudeの判定 境界にいる。超えるのは約1.0%

私B(年収2,000万円)は「1,500万円超〜2,000万円以下」の階級の上限にちょうど位置する。これを超える2,000万円超の人は男性給与所得者の中で約1.0%(29.2万人/2,925万人)。

  • 35〜39歳男性平均573.8万円の3.49倍
  • 2,000万円ちょうどは「1,500万円超〜2,000万円以下」の階級に入り、この階級の中でのBの順位は分からない
  • 母集団は「1年を通じて勤務した給与所得者」。役員報酬は含まれるが、事業所得者は含まれない
くわしい根拠を読む ▾
★注記: 当初この記事では「私Bは男性給与所得者の上位1.1%」と書いていた。1,500〜2,000万円の階級までの累積98.9%を100から引いた残差(100−98.9=1.1%)を使った数値である。だが実人数で計算すると、2,000万円超の人数は2,000〜2,500万円131千人+2,500万円超161千人=292千人。これを男性給与所得者2,925万人で割ると1.0%になり、0.1ポイント食い違う。丸め残りの1.1%と、実人数ベースの1.0%が一致していなかった。本記事は実人数で計算できる1.0%に統一する。そのうえで、私Bの年収2,000万円は「1,500万円超〜2,000万円以下」という階級の上限ちょうどに位置しており、この階級を超える人(2,000万円超)が約1.0%(29.2万人)いる、という言い方に改める。私B自身がこの1.0%の中に入るわけではなく、境界のすぐ下(2,000万円以下側)にいる。この階級の中で私Bがどの位置にいるかは、階級内の分布が分からないため出せない。私Bは役員報酬2,000万円という設定だが、この統計は「1年を通じて勤務した給与所得者」を母集団にしており、会社役員の役員報酬は給与所得としてここに含まれる。一方で、事業所得者・自営業者はこの統計そのものの対象外であり、給与収入がない資産家・自営の高額所得者はここでは可視化されない。
母集団を変えると比率が動く。年収500万円超の割合は、給与所得者全体(男女計・5,137万人)でみると36.7%。男性給与所得者(2,925万人)だけでみると51.0%(500万円以下が49.0%なので、その裏返し)。私Aの年収500万円はこの境界にちょうど位置しており、母集団の性別構成だけで境界の上下比率が約14ポイント動く。この動きは第12章「比較相手を変えると判定はどう動くか」でさらに詳しく扱う。

この統計の限界

・中央値は公表されていない。平均給与478万円(男性586.7万円)は上位の高額層に引っ張られた数字であり、ちょうど真ん中の人の値ではない

・対象は「1年を通じて勤務した給与所得者」(5,137万人)。年の途中で就職・退職した人は含まれない

・会社役員の役員報酬は給与所得なのでこの母集団に含まれるが、事業所得者・自営業者は含まれない

・★1,500〜2,000万円の階級の「上位%」は、当初は構成比の累積の丸め残り(100−98.9=1.1%)から出していたが、実人数(131千人+161千人=292千人÷2,925万人)で計算すると1.0%になり食い違っていた。本記事は実人数ベースの1.0%に統一している

・令和7年分(2025年分)は2026年8月18日時点で未公表。本章の数値はすべて令和6年分(2024年分・公表2025年9月)

この章で分かったのは、私Aは男性給与所得者のほぼ真ん中、私Bは上位1.0%との境界にいる、ということだ。ただし母集団を男女計に変えるだけで、この位置は14ポイント近く動く。

→ 次のSection5では、金融資産(預貯金・保険・有価証券等)の位置を見る。

🏦 金融資産の位置 — 300万円と3億円をグラフで比べる

このセクションの3点

① 30代の独身の真ん中の人は貯金100万円。あなたの300万円はその3倍で、同じ30代の独身100人のうち66人に勝っている

② 同じ300万円でも、家族と同居している世帯の合計と比べると45世帯にしか勝てない。1人分の額と家族全員分の合計を比べているから

③ 平均値で比べると印象が逆になる。30代の独身の平均は501万円で、あなたの300万円は下に見える。平均は一部の大きい人に引っ張られるので、真ん中を知りたいなら中央値で見る

① 真ん中の人の貯金(中央値)と比べる

真ん中の人の貯金(中央値)と、あなたの300万円
30代・独身
100万円

n=325

全国・独身(全年代)
130万円

n=2,500

関東・独身(全年代)
192万円

n=940

あなた
300万円

35歳・独身・東京

30代・家族と同居
311万円

n=648・世帯合計

全国・家族と同居
720万円

n=5,000・世帯合計

関東・家族と同居
990万円

n=1,735・世帯合計

J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」2025年6月調査。中央値=全員を金額順に並べたときの真ん中の人の額。「家族と同居」は世帯全員分の合計なので、一人分の額とは単位が違う。

上の3本が一人分の貯金。あなたの300万円はこの3つすべてを上回っている。下の3本は家族全員分の合計なので、同じ物差しではない。単位を揃えて見るなら上の3本と比べる。

② 平均値で見ると印象が逆になる

平均値と、あなたの300万円
30代・独身
501万円

中央値は100万円

あなた
300万円

平均と比べると下に見える

全国・独身
919万円

中央値は130万円

関東・独身
983万円

中央値は192万円

30代・家族と同居
1096万円

中央値は311万円

全国・家族と同居
1940万円

中央値は720万円

関東・家族と同居
2271万円

中央値は990万円

同じ調査の平均値。平均は一部の大きい人に引っ張られる。全国・独身では平均919万円に対して中央値130万円で、7.07倍の開きがある。

中央値で見れば300万円は30代・独身の3倍だが、平均で見ると501万円に負ける。同じ集団で、同じ300万円なのに、勝ち負けがひっくり返る。平均は上のほうの人に引っ張られるので、自分が真ん中より上か下かを知りたいときは中央値を見る。

③ 300万円以上ある人は何割いるか

300万円以上と答えた人の割合
30代・独身
31.4%

n=325・単位が揃う主判定

全国・独身
40.5%

n=2,500

関東・独身
43.2%

n=940

30代・家族と同居
52%

n=648・世帯合計・参考

全国・家族と同居
64.1%

n=5,000・参考

関東・家族と同居
67.2%

n=1,735・参考

階級別分布で300万円以上に該当する階級の構成比を合算した。無回答は分母に残し、加算していない。300万円は「300〜400万円未満」階級の下限に一致する。割合が小さいほど、あなたより多い人が少ない。

上の3本(一人分)なら300万円以上は3〜4割。下の3本(家族全員分の合計)なら半分以上が300万円以上ある。この差は人の優劣ではなく、数えているものが違うから起きる。

④ 私B(3億円)は、どの層にいるか

純金融資産による5階層と、日本の全世帯5,570.4万世帯に占める割合
マス層(3,000万円未満)
79.43%

4,424.7万世帯

アッパーマス層(3,000万〜5,000万円)
10.35%

576.5万世帯

準富裕層(5,000万〜1億円)
7.25%

403.9万世帯

富裕層(1億〜5億円)
2.76%

153.5万世帯・Bが入る可能性のある層

超富裕層(5億円以上)
0.21%

11.8万世帯

野村総合研究所「日本の富裕層」推計(2025年2月13日発表・2023年基準)。純金融資産=金融資産から借金を引いた額で、不動産は含まない。これは境界額による区分であって順位ではない。

私Bの資産3億円のうち、不動産1億円はこの区分に入らない(NRIの純金融資産に不動産は含まれない)。残る現金2億円で見ると富裕層(1億〜5億円)の帯にあたるが、この2億円には会社への役員貸付金が含まれており、当てはめを確定できない。父との共有を1/2で折半した1億円で見ると、富裕層のちょうど下限になる。

確定できない理由は3つ

・私B自身の負債額が分からない(NRIの純金融資産は借金を引いた額)

・現金2億円のうち、会社への役員貸付金がいくらかが分からない

・その貸付金をNRIが金融資産に数えるかどうかが分からない

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🏦 Claudeの判定 真ん中の3倍。ただし平均には負ける

私Aの300万円は、30代の独身の真ん中(100万円)の3倍。100人のうち66人に勝っている。ただし平均501万円には届かない。

  • 中央値で見ると、30代・独身100万円/全国・独身130万円/関東・独身192万円のすべてを上回る
  • 平均で見ると30代・独身501万円に負ける。平均は上のほうの人に引っ張られるので、真ん中を知るなら中央値を見る
  • 家族と同居している世帯の合計(30代311万円・全国720万円)は世帯全員分なので、一人分の300万円とは単位が違う
🏦 Claudeの判定 帯は絞れるが確定できない

私Bの3億円は、不動産1億円を除くと金融資産2億円。富裕層(1億〜5億円)の帯にあたるが、確定はできない。

  • 富裕層の帯は153.5万世帯・全世帯の2.76%。超富裕層と合わせて2.97%だが、これは帯に属する世帯数の割合であって順位ではない
  • 確定できないのは、負債額・役員貸付金の額・貸付金を金融資産に数えるかの3点が不明なため
  • 父との共有を1/2で折半した1億円なら、富裕層のちょうど下限になる

この章の結論

私Aの300万円は、中央値で比べれば3つの集団すべてを上回り、平均で比べれば負ける。どちらが正しいかではなく、平均は一部の大きい人に引っ張られるという性質の違いである。私Bの3億円は帯までは絞れるが、中身が分からないため確定できない。

→ 次の第6章では、この金額を年収で割って「資産は年収の何年分か」という別の物差しで見る。

🔢 資産は年収の何年分か — 日本人は約1.3年分で揃っている

このセクションの3点

① 年収帯を300万円台から1,200万円未満まで4つに分けても、金融資産の中央値は年収の1.28〜1.38年分でほぼ一定。これは世帯の年収・世帯の資産で計算した、世帯ベースの事実として有効

② 私Aの0.60年分は「個人資産÷個人の役員報酬」。世帯ベースの1.28〜1.38年分とは単位が違い、直接は比べられない

③ 私Bの15.0年分・7.5年分も同じく個人年収と(全部または折半の)資産の組み合わせで、世帯ベースの数字とは比べられない

年収帯年収の中間値金融資産の中央値年収の何年分か
300〜500万円400万円550万円1.38年分
500〜750万円625万円800万円1.28年分
750〜1,000万円875万円1,200万円1.37年分
1,000〜1,200万円1,100万円1,520万円1.38年分

この章でいちばん効く発見。年収帯を4つに分けて「その帯の金融資産の中央値 ÷ その帯の年収の中間値」を計算すると、300万円台から1,000万円台まで、1.28年分〜1.38年分の狭い範囲に収まる。稼ぐ額が2倍以上違っても、貯まり方の比率はほとんど動かない。日本人はおおむね年収の約1.3年分の金融資産を持っている、と言い換えられる。

この上下の年収帯・資産中央値はいずれもJ-FLECの二人以上世帯統計=世帯の年収と世帯の資産である。個人ではなく世帯を単位にした事実として成立している点に注意する。

年収帯別「金融資産の中央値は年収の何年分か」(世帯ベース)
300〜500万円
1.38年分
500〜750万円
1.28年分

私Aと同じ年収の個人役員報酬が属する帯(世帯ベースの数字)

750〜1,000万円
1.37年分
1,000〜1,200万円
1.38年分

J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」2025年(二人以上世帯・年間収入別)の中央値を、各年収帯の中間値で割って算出。世帯の年収・世帯の資産の組み合わせであり、個人の数字ではない。1,200万円以上の帯は上限が無く中間値を作れないため除外

私A・私Bを年収の何年分に当てはめる — ただし単位が違う

ペルソナ資産 ÷ 年収年収の何年分か世帯ベースの1.28〜1.38年分と比べられるか
私A300 ÷ 500(個人資産÷個人年収)0.60年分比べられない。分子・分母とも個人の数字で、世帯ベースの統計とは単位が違う
私B(3億円)30,000 ÷ 2,000(世帯共有資産÷個人年収)15.0年分比べられない。資産は父との共有分を含む世帯の数字、年収は個人の役員報酬
私B(1.5億円=父との持分1/2)15,000 ÷ 2,000(持分資産÷個人年収)7.5年分比べられない。持分は個人化しているが年収との単位対応は不明確

0.60年分

私A(個人資産300万÷個人年収500万)の値

1.28〜1.38年分

世帯ベース(J-FLEC・年収帯別)の実際の分布

比較不可

個人ベースの数字と世帯ベースの数字は単位が違うため

★この比較は成立しない — 個人の数字を世帯の統計に当てていた

・当初、私Aの0.60年分を「同じ年収帯の中央値800万円に届かない」と主判定に置いたが、これは個人の数字を世帯の統計に当てる誤りだった

・J-FLECの「年間収入」「金融資産保有額」はいずれも世帯の値。本人の役員報酬・個人資産とは単位が違い、父の収入・資産次第で世帯がこの年収帯に入るかも分からない

・一方「日本人はどの年収帯でも資産が年収の1.28〜1.38年分」という発見自体は、世帯ベースの事実としてそのまま有効

・当初の比較表と、この誤りの詳しい訂正の経緯は下の折りたたみ、または第14章「数字の限界と、私の誤りの記録」にまとめてある

📎 当初の比較と、成立しない理由の詳しい記録 結論には使わない・誤りの記録 開く ▾

[当初の比較]私A と、同じ年収帯の中央値世帯を並べる

私A

年収500万円(個人)・金融資産300万円(個人)

  • ・資産 ÷ 年収 = 0.60年分
  • ・金融資産300万円は年収500万円の6割にとどまる
  • ・同じ年収帯の中央値800万円には届いていない(★下記の注記を参照)

同じ年収帯の中央値世帯

年収500〜750万円未満・二人以上世帯(n=1,440・世帯ベース)

  • ・金融資産の中央値は800万円(世帯合計)
  • ・年収の中間値625万円(世帯収入)に対して1.28年分
  • ・私Aの個人資産より500万円多い(単位が異なる差)

したがって「同じ年収帯の中央値に届かない」という判定は成立しない。上の比較表はこの誤りの記録として残す。私B(15.0年分・7.5年分)も同様に、個人の役員報酬に世帯または持分の資産を組み合わせた数字であり、世帯ベースの1.28〜1.38年分とは直接比べられない。詳しくは第14章「数字の限界と、私の誤りの記録」を参照。

📎 この章の結論

この章で分かったのは、A・Bの数字を日本人の平均的な貯まり方と比べる方法が無い、ということだ。「日本人はどの年収帯でも資産は年収の約1.3年分」という発見自体は世帯ベースの事実として有効だが、個人ベースの私A・私Bの数字(0.60年分・15.0年分・7.5年分)とは単位が違うため比べられない。

この計算の限界

・各年収帯の代表値には「年収の中間値」を使っている。実際の年収分布の中心(中央値)ではない

・1,200万円以上の帯は上限が無いため中間値を作れず、この計算から除外している

・年収と金融資産は同じ世帯・同時点の値だが、資産は過去からの蓄積であり、「今の年収で割る」ことの意味は限定的(過去に年収が今より高かった・低かった期間があれば、比率はその履歴を反映する)

→ 次のSection7では、20代から60代まで、年代ごとに私A・私Bの立ち位置がどう動くかを見る。

📊 20代から60代までの現在地

このセクションの3点

① この章の年代区分はすべて世帯主の年令。依頼者本人が世帯主かどうかは不明なため、二人以上世帯の年代別数値は条件付きの参考にとどめる

② 単位が揃う比較は単身世帯。30代・単身世帯の中央値は100万円で、私Aの個人資産300万円はこれを200万円上回る

③ 「私Aは30代二人以上世帯の中央値311万円とほぼ同水準」は個人資産と世帯合計を比べており単位が違う。撤回し★注記に記録する

この章の年代は「世帯主(=世帯の代表として届け出ている人)の年令」— 依頼者本人の年齢ではない

・J-FLEC・家計調査とも世帯主の年令が基準。35歳の依頼者が世帯主かは不明で(父名義の持ち家に同居)、二人以上世帯の年代別数値は参考にとどめる(詳しくは第2章)。また35歳だけの区分も無く、比べられるのは「30代」という10歳刻みの幅まで

年代二人以上 非保有%二人以上 平均(万円)二人以上 中央値(万円)単身 非保有%単身 平均(万円)単身 中央値(万円)
20代21.652512533.225537
30代17.6109631132.3501100
40代18.8148650032.1859100
50代18.2190870035.2999120
60代12.82683140030.41364300
70代10.92416117820.41489500

★注記 — 「私Aは30代二人以上世帯の中央値とほぼ同水準」は撤回する

当初、私Aの金融資産300万円を30代・二人以上世帯の中央値311万円と並べ、「差は11万円でほぼ中央値ちょうど」と書いた。

この比較は成立しない。私Aの300万円は本人個人の資産だが、二人以上世帯の中央値311万円は世帯合計の金融資産であり、単位が違う(第2章の断層⑦)。父の資産が加わった額と、本人だけの額を並べていた。

単位が揃う比較は30代・単身世帯の中央値100万円である。私Aの300万円はこれを200万円(300−100)上回る。以下ではこちらを主な比較として扱い、二人以上世帯の311万円は単位が違う参考比較として残す。

二人以上世帯は年齢を重ねるほど中央値の伸びが速い。20代125万円から60代1,400万円まで11.2倍に増える。一方、単身世帯は20代37万円から60代300万円までの8.1倍にとどまる。同じ年数を重ねても、資産が積み上がるペースそのものが世帯類型で違う。

二人以上世帯 — 年代別の金融資産中央値(世帯合計・参考値)
20代
125万円

非保有21.6%

30代
311万円

非保有17.6%(世帯合計・参考値)

40代
500万円

非保有18.8%

50代
700万円

非保有18.2%

60代
1400万円

非保有12.8%

70代
1178万円

非保有10.9%

J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」令和7年(2025年)。二人以上世帯(世帯主年令別、n=5,000)。金額は世帯合計であり、私Aの個人資産300万円とは単位が違う参考比較

単身世帯 — 年代別の金融資産中央値(個人と単位が揃う比較)
20代
37万円

非保有33.2%

30代
100万円

非保有32.3%・私Aの単位が揃う比較の基準

40代
100万円

非保有32.1%・30代と同水準

50代
120万円

非保有35.2%

60代
300万円

非保有30.4%

70代
500万円

非保有20.4%

J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」令和7年(2025年)。単身世帯(年令別、n=2,500)。世帯が1人のため本人個人の資産と単位が揃う

中央値だけを見ると、独身は20代37万円から60代300万円までしか動かない。ところが平均値で見ると別の絵になる。

独身(単身世帯)— 年代別の平均値。中央値と並べると開きが分かる
20代
255万円

中央値37万円(6.9倍)

30代
501万円

中央値100万円(5.0倍)

40代
859万円

中央値100万円(8.6倍)

50代
999万円

中央値120万円(8.3倍)

60代
1364万円

中央値300万円(4.5倍)

70代
1489万円

中央値500万円(3.0倍)

J-FLEC 2025年6月調査の単身世帯。かっこ内は同じ年代の中央値。平均は上のほうの人に引っ張られるので、真ん中の人の実感とはズレる。

40代の独身は平均859万円に対して中央値100万円で8.6倍。これは「40代の独身はだいたい859万円持っている」という読み方が成り立たないということだ。真ん中の人は100万円しか持っていない。次に、そもそも貯金ゼロの人が何割いるのかを年代別に見る。

貯金がゼロと答えた割合 — 年代別(独身と、家族と同居の比較)
20代
33.2%

家族と同居なら21.6%

30代
32.3%

家族と同居なら17.6%

40代
32.1%

家族と同居なら18.8%

50代
35.2%

家族と同居なら18.2%

60代
30.4%

家族と同居なら12.8%

70代
20.4%

家族と同居なら10.9%

J-FLEC 2025年6月調査。棒は独身(単身世帯)の割合。かっこ内は同じ年代で家族と同居している世帯の割合。低いほど良い。

独身は50代でも35.2%が貯金ゼロで、20代の33.2%より高い。年齢が上がっても改善していない。家族と同居している世帯は同じ50代で18.2%なので、およそ2倍の開きがある。ただしこれは独身だから貯まらないという意味ではなく、家族と同居している世帯は世帯全員の資産を合算しているため、誰か1人でも持っていればゼロにならないという数え方の違いも効いている。

単身世帯は、年齢が上がっても中央値が動かない

・単身30代の中央値は100万円、単身40代も同じ100万円で変化がない

・この間に平均は501万円から859万円へ358万円増えているのに、中央値はまったく動いていない。一部の資産を多く持つ人が平均だけを押し上げている可能性がある

・金融資産ゼロの割合(非保有%)も40代32.1%・50代35.2%で、年齢が上がってもむしろ悪化している

300万円

私Aの金融資産(個人)

100万円

30代・単身世帯の中央値(単位が揃う比較)

311万円

30代・二人以上世帯の中央値(世帯合計・参考値)

759万円

40代単身の平均と中央値の差

単身世帯 — 中央値は止まり、平均だけが伸びる
単身30代中央値100万円平均501万円単身40代中央値100万円平均859万円単身50代中央値120万円平均999万円単身60代中央値300万円平均1364万円

単身世帯の年代別・金融資産の平均と中央値(緑=中央値、灰=平均)。30代と40代は中央値がどちらも100万円で並び、平均だけが501万円から859万円へ伸びている。50代で中央値がようやく120万円へ動き、60代で300万円まで上がる。出典: J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」令和7年(2025年)。

📎 この章の結論

この章で分かったのは、単身世帯は30代も40代も金融資産の中央値が100万円のまま止まっている、という事実だ。平均は501万円から859万円まで伸びているので、一部の資産を多く持つ人が平均だけを押し上げていると考えられる。

→ 次の第8章では、関東と地方、9ブロックの序列を見る。

🗾 関東 vs 地方 — 9ブロックの序列

このセクションの3点

① 二人以上世帯・単身世帯とも、金融資産の中央値がいちばん高いのは関東ブロック(990万円/192万円)

② ただし2位との差は小さい。二人以上世帯の中央値は四国857万円で133万円差、平均で見ると関東2,271万円と北陸2,245万円はほぼ同着

③ 「関東」はJ-FLECが使う9ブロックの1つで、都道府県の内訳は原資料から確認できていない。関東の中央値990万円から東京について言えることは無い

ここでの地域区分は、J-FLEC調査が使う9ブロック(北海道・東北・関東・北陸・中部・近畿・中国・四国・九州)である。関東ブロックにどの都道府県が含まれるかは、J-FLECの公表資料からは確認できていない。したがって以下では「関東」とだけ書き、都道府県の内訳を推測しない。関東ブロックの数値を「東京都の数値」と言い換えることもしない。

なお、この章の数値もJ-FLECの世帯調査によるもので、二人以上世帯は世帯全体の合計額、単身世帯は世帯が1人のため個人の額と一致する。二人以上世帯の数値を私A・私Bの個人資産と直接比べる場合は、単位が違う参考比較であることに注意する(第2章の断層⑦)。

地域二人n二人非保有%二人平均(万円)二人中央値(万円)単身n単身非保有%単身平均(万円)単身中央値(万円)
関東173514.9227199094028.3983192
四国14818.221208577030.0953100
北陸20012.022458108334.980145
中部71213.1193680031629.1895115
北海道21117.1139560012832.0860100
中国28816.0162660013826.81054180
近畿81716.5196358138830.2990120
九州55517.5151455028834.0833100
東北33420.1122350014934.952980
二人以上世帯 — 地域別の金融資産中央値(降順)
関東
990万円

n=1735

四国
857万円

n=148(標本小)

北陸
810万円

n=200(標本小)

中部
800万円

n=712

北海道
600万円

n=211

中国
600万円

n=288

近畿
581万円

n=817

九州
550万円

n=555

東北
500万円

n=334

J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」令和7年(2025年)。四国n=148、北陸n=200は他地域より標本が小さい

四国・北陸は標本が小さく、断定を避ける

・四国は二人以上世帯n=148・単身n=70しかない。全国平均n=5000/2500と比べると1桁少ない

・北陸も二人以上世帯n=200・単身n=83で同様に小さい

・四国の中央値857万円・北陸の中央値810万円は、関東990万円に次ぐ高い順位だが、標本が小さいぶん年ごとの振れも大きいと考えられる。この2地域の順位は参考値として扱う

中央値で並べると1位は関東だが、順位はいつも同じにはならない。二人以上世帯を平均で並べ替えると、1位は関東2,271万円、2位は北陸2,245万円で、その差はわずか26万円。中央値では6位だった北陸が、平均では2位まで上がってくる。金融資産がゼロの世帯の割合(非保有率)で並べ替えても、いちばん低いのは北陸12.0%で関東14.9%はそれより高い。「貯めている世帯の割合」で見れば、関東は1位ではない。単身世帯を中央値で並べ替えた順位・平均順位・非保有率順位の3つの表は、下の折りたたみにまとめてある。

📎 単身の中央値順位/平均順位/非保有率順位 参考: 指標を変えると順位はどう変わるか 開く ▾

単身世帯 — 中央値で並べ替え

地域単身n単身非保有%単身平均(万円)単身中央値(万円)
関東94028.3983192
中国13826.81054180
近畿38830.2990120
中部31629.1895115
北海道12832.0860100
四国7030.0953100
九州28834.0833100
東北14934.952980
北陸8334.980145

二人以上世帯 — 平均で並べ替え

順位地域平均(万円)
1関東2271
2北陸2245
3四国2120
4近畿1963
5中部1936
6中国1626
7九州1514
8北海道1395
9東北1223

二人以上世帯 — 非保有率(ゼロ世帯の割合)で並べ替え

順位地域非保有%(低いほど良い)
1北陸12.0
2中部13.1
3関東14.9
4中国16.0
5近畿16.5
6北海道17.1
7九州17.5
8四国18.2
9東北20.1
同じ関東でも、指標を変えると1位ではなくなる
中央値(二人以上世帯)関東990万円四国857万円平均(二人以上世帯)関東2,271万円北陸2,245万円差はわずか26万円非保有率(低いほど良い)北陸12.0%関東14.9%

二人以上世帯の地域別データを3つの指標で見た比較。中央値では関東が1位だが、平均では北陸がほぼ並び、非保有率(ゼロ世帯の割合)では北陸の方が低い。緑=各指標の1位、灰=比較対象。出典: J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」令和7年(2025年)。

📎 この章の結論

中央値で見れば、二人以上世帯・単身世帯とも関東ブロックが1位というのは事実である。ただし2位との差は思ったより小さく、平均で見ると北陸とほぼ並ぶ。非保有率(ゼロ世帯の割合)では北陸の方が低い。「関東が総合的に一番貯まる」とは言えない。

そして関東ブロックにどの都道府県が含まれるかは原資料から確認できていない。関東の数字から東京については何も言えない。東京だけが突出していることは、第10章の家賃で確かめる。

990万円

関東・二人以上世帯の中央値(9地域で1位)

26万円

平均で見た関東と北陸の差(ほぼ同着)

12.0%

北陸の非保有率(9地域で最も低い)

n=148/70

四国の二人以上/単身の標本数(最小クラス)

→ 次の第9章では、都道府県庁所在市の二人以上世帯データを見る。ここは単身の私A・私Bの判定には使わない。

💳 借金を引くと絵が変わる — 40歳未満の純貯蓄はマイナス888万円

このセクションの3点

① 40歳未満の二人以上世帯は、貯蓄994万円に対し負債1,882万円で、純貯蓄は▲888万円。40〜49歳でも▲102万円で、50代でようやくプラスに転じる

② 私A・私Bはともに父の持ち家に同居し、本人個人としては住宅ローンを負っていない。ただし家計調査の64.3%は世帯主が40歳未満の世帯の数字であり、私A・私Bの世帯の世帯主が本人か父かは不明なため、そのまま比較対象にはできない

③ 都道府県庁所在市別の貯蓄データは存在しなかった。家計調査に該当区分が無く、令和6年全国家計構造調査の資産・負債編は2026年8月18日時点で未公表

取得できなかったもの

・都道府県庁所在市別・東京都区部の貯蓄現在高データは存在しなかった(詳しい理由は第14章)

・この章は代わりに、全国の年齢階級別データと相続税データで代替する

年齢階級別の貯蓄・負債(総務省「家計調査」2025年平均・二人以上世帯)

この年齢階級は世帯主の年齢による分類(詳しくは第2章)。父が世帯主なら以下の数字はそのまま私A・私Bに当てはまらない。

年齢階級貯蓄現在高負債現在高純貯蓄額負債保有世帯の割合
平均2,059万円675万円1,384万円37.5%
40歳未満994万円1,882万円▲888万円64.3%
40〜49歳1,381万円1,483万円▲102万円67.0%
50〜59歳1,756万円743万円1,013万円53.7%
60〜69歳2,843万円234万円2,609万円26.5%
70歳以上2,471万円81万円2,390万円10.4%
年齢階級別 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)
40歳未満
-888万円

貯蓄994万円-負債1,882万円。負債保有世帯64.3%

40〜49歳
-102万円

貯蓄1,381万円-負債1,483万円。負債保有世帯67.0%

50〜59歳
+1013万円

貯蓄1,756万円-負債743万円

60〜69歳
+2609万円

貯蓄2,843万円-負債234万円(全階級中最大)

70歳以上
+2390万円

貯蓄2,471万円-負債81万円

総務省「家計調査(貯蓄・負債編)」2025年平均・二人以上の世帯。単身世帯は対象外

私A・私Bはともに35歳で40歳未満の区分にあたる。この年齢階級の二人以上世帯は、貯蓄994万円に対して負債が1,882万円あり、差し引きの純貯蓄は▲888万円になる。負債を持つ世帯の割合は64.3%と、6割を超える世帯が何らかの借金(多くは住宅ローン)を抱えている。40〜49歳でも純貯蓄は▲102万円で、50代に入ってようやく貯蓄が負債を上回る。60〜69歳の純貯蓄額2,609万円が全階級中の最大で、その後70歳以上でわずかに減る。

J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」が使う「金融資産」は負債を引いていない。一方で家計調査は貯蓄と負債を別々の数字として出す。だから、同じ家計であっても、どちらの統計に当てはめるかで見え方がまったく逆になりうる。J-FLECの金融資産だけを見れば「持っている」ように見える世帯が、負債を差し引いた家計調査の純貯蓄で見ると赤字ということが起こる。

私A・私Bは、いずれも父の持ち家に同居しており、少なくとも本人個人としては住宅ローンを負っていない。家賃を払っていないという点でも、住居費の面では有利な条件にあると言える。ただし、この40歳未満の二人以上世帯の64.3%という数字は世帯主が40歳未満の世帯についてのものであり、私A・私Bの世帯の世帯主が本人か父かはこの記事では確定できない。父が世帯主であれば、そのままこの64.3%と比較することはできず、世帯全体としての住宅ローン・住居維持費の有無も、父の分を含めて不明である。私Bが保有する不動産(都内5,000万円+神奈川5,000万円=1億円)にローンが付いているかどうかも、この記事の設定からは分からない。不明である。★当初『40歳未満の64.3%より明確に有利』と書いたが、比較対象が世帯単位の統計であるのに対し、私A・私Bについては本人個人の状況しか分かっていないため、この断定は成立しない。

📎 調査の違いを混同しない

家計調査(貯蓄・負債編)は総務省が無作為抽出で行う政府統計であり、J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」はインターネットモニター調査である。調査方法も母集団も異なる。二人以上世帯の全国平均を比べると、家計調査の貯蓄現在高2,059万円とJ-FLECの金融資産平均1,940万円は近い値になっているが、この近さはほぼ偶然に近い。統計の性質が違う以上、この2つの数字を混ぜて足したり引いたりしてはならない。

相続税から見る桁感 — 死亡者の10.4%だけが対象

相続税(亡くなった人の財産を受け取るときにかかる税)と被相続人(亡くなって財産を残した人)という言葉をここで使う。

項目令和5年分令和6年分対前年比
被相続人数(死亡者数)1,576,016人1,605,378人101.9%
相続税額のある申告に係る被相続人数155,740人166,730人107.1%
課税割合9.9%10.4%+0.5pt
課税価格21兆6,335億円23兆3,846億円108.1%
税額3兆53億円3兆2,446億円108.0%
被相続人1人当たり課税価格13,891万円14,025万円101.0%
被相続人1人当たり税額1,930万円1,946万円100.8%

国税庁「相続税の申告事績の概要」令和6年分によれば、死亡者の10.4%が相続税額のある申告に係る被相続人である。残りの内訳はこの表だけでは分からない。★当初『残る約9割は基礎控除の範囲内に収まり、相続税を払っていない』と書いたが誤りだった。相続税額のない申告(各種特例の適用等)に落ち着くケースもあり、残りの約9割全てが単純に基礎控除内に収まっているとは言えない。課税対象になった人だけで見た1人当たり課税価格は1億4,025万円だが、これは課税対象になった人だけの平均であって、全死亡者の平均ではない。ここを混同すると「日本人は死ぬときに平均1億4千万円を残す」という誤った読み方になる。

財産の種類金額(令和6年分)構成比
現金・預貯金等85,602億円34.88%
土地74,074億円30.18%
有価証券43,676億円17.80%
家屋11,901億円4.85%
その他30,162億円12.29%
合計245,415億円100.00%

相続財産の内訳を見ると、現金・預貯金等が34.88%で最も大きく、土地30.18%、有価証券17.80%と続く。私Bの資産を現金と不動産の2分類に単純化すると、不動産(1億円)は資産全体3億円の約33%を占め、相続財産全体の土地30.18%と比率だけはおおむね近い。しかし現金・預貯金等は私Bで約67%を占めるのに対し、相続財産全体では34.88%にとどまり、大きく上回っている。有価証券は相続財産全体で17.80%を占めるのに対し、私Bの資産にはゼロである。★当初『相続財産全体の構成比とおおむね近い並びになる』と書いたが誤りだった。土地の比率だけが近く、現金と有価証券の比率は大きく異なる。加えて、この統計は相続税の課税対象になった約16.7万人だけの内訳であり、私A・私Bの父の資産構成がこの分布に従うとは限らない。

この章で分かったのは、金融資産だけを見ていると住宅ローンなどの負債が見えなくなるということだ。40歳未満の二人以上世帯は、貯蓄より負債のほうが多く、差し引きの純貯蓄はマイナスになる。

→ 次のSection10では、私A・私Bが家賃を払っていないという条件を踏まえ、東京の生活余力(住居費を引くと何が残るか)を見る。

🏠 東京の生活余力 — 住居費を引くと何が残るか

このセクションの3点

① ★東京都の家賃は全国1位・94,802円/月(年113.8万円)。宮崎県(最安)の約2倍、全国平均の1.45倍にあたる

② 関東ブロックは家賃で見ると均質ではない。東京94,802円に対し埼玉65,848円・千葉65,813円で、東京は埼玉の1.44倍。第8章の「関東の中央値990万円」を東京の数字として読んではいけない

③ 私A・私Bはともに父の持ち家に同居し、家賃を1円も払っていない。東京都平均で借りていれば年113.8万円が消えていた計算になる

この章では、私A・私Bが日本で最も家賃の高い東京都に住みながら、実は家賃を1円も払っていないという特殊な条件を数字で確認する。まず全国の家賃の分布を見たうえで、私たちの立場がどれだけ有利か、そしてその有利さを差し引いても何が残るかを見ていく。

東京・神奈川・全国平均・宮崎の家賃

総務省 令和5年住宅・土地統計調査 第112-1表(2023年10月1日時点・民営借家<専用住宅>・家賃0円を含まないベース)から、この記事で軸になる4つの数字だけをまず並べる。全47都道府県の順位は下の折りたたみにまとめている。

都道府県月額年額順位
東京都94,802円1,137,624円(113.8万円)全国1位
神奈川県76,356円916,272円(91.6万円)全国2位
全国平均65,496円785,952円(78.6万円)—
宮崎県46,290円555,480円(55.5万円)全国最安

94,802円

東京都の月額家賃(全国1位)

46,290円

宮崎県の月額家賃(全国最安)

2.05倍

東京都 ÷ 宮崎県

113.8万円

東京都の年額家賃

主要都道府県の家賃(月額)
東京都
94802円

全国1位

神奈川県
76356円

全国2位

埼玉県
65848円

全国3位

千葉県
65813円

全国4位

全国平均
65496円
大阪府
64263円

全国6位

愛知県
60601円

全国8位

宮城県
56735円

全国10位

北海道
51199円
宮崎県
46290円

全国最安

総務省 令和5年住宅・土地統計調査 第112-1表(2023年10月1日時点・民営借家<専用住宅>・0円含まず)

📎 都道府県別の家賃 全国ランキング(上位10・下位10) 全47都道府県のデータは総務省の同じ出典にある 開く ▾
順位都道府県月額年額
—全国平均65,496円785,952円(78.6万円)
1東京都94,802円1,137,624円(113.8万円)
2神奈川県76,356円916,272円(91.6万円)
3埼玉県65,848円790,176円(79.0万円)
4千葉県65,813円789,756円(79.0万円)
5兵庫県65,097円781,164円(78.1万円)
6大阪府64,263円771,156円(77.1万円)
7京都府62,210円746,520円(74.7万円)
8愛知県60,601円727,212円(72.7万円)
9奈良県57,664円691,968円(69.2万円)
10宮城県56,735円680,820円(68.1万円)
順位都道府県月額年額
1(最安)宮崎県46,290円555,480円(55.5万円)
2青森県46,340円556,080円(55.6万円)
3鹿児島県46,916円562,992円(56.3万円)
4大分県47,163円565,956円(56.6万円)
5秋田県47,534円570,408円(57.0万円)
6高知県47,624円571,488円(57.1万円)
7愛媛県47,942円575,304円(57.5万円)
8山口県48,482円581,784円(58.2万円)
9和歌山県48,709円584,508円(58.5万円)
10鳥取県48,745円584,940円(58.5万円)

★この章の最大の発見 — 関東ブロックは均質ではない

「関東の中央値990万円」を東京の数字として読んではいけない

・東京都の家賃は94,802円/月。これに対し埼玉県65,848円・千葉県65,813円で、東京は埼玉の1.44倍にあたる

・神奈川県は76,356円で、東京と埼玉のちょうど中間に位置する

・第8章で使ったJ-FLECの「関東ブロック」(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川の9ブロック区分)は、二人以上世帯の金融資産中央値990万円で全国1位だった。だがその関東ブロックの内側で、家賃という具体的な生活コストを見ると東京都だけが突出して高く、埼玉・千葉は全国平均(65,496円)とほぼ同水準にすぎない。関東ブロックの中央値990万円を「東京都の数字」として読むと、この家賃の落差を見落とすことになる

第2章で確認した「東京と関東を混同しない」という断層に、家賃という実額の証拠がついたことになる。関東ブロックが1つの数字で語られるとき、その中身は東京都と埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬・神奈川という、家賃で見れば全く異なる水準の地域が混ざっている。

東京 vs 地方の差を実額で

比較倍率・差額
東京都 ÷ 宮崎県(最安)2.05倍(年額の差 582,144円)
東京都 ÷ 全国平均1.45倍(年額の差 351,672円)
私Aの金融資産300万円 ÷ 東京都の年間家賃113.8万円2.64年分
私Aの金融資産300万円 ÷ 宮崎県の年間家賃55.5万円5.40年分

もし私Aが東京都の平均的な家賃で部屋を借りていたら、金融資産300万円は2.64年で家賃だけに消える計算になる。同じ300万円でも、宮崎県の平均家賃なら5.40年もつ。同じ金融資産額でも、住む場所によって「何年分の余力があるか」は2倍以上変わる。

手取りの目安 — 税額は自分で計算しない

年収から手取り(可処分所得=税金や社会保険料を引いたあとの、実際に使えるお金)を出す際、所得税・住民税・社会保険料を個別に計算することはしない。令和7年度の税制改正で基礎控除等の制度が動いており、この記事の設定では正確な税額を確定できないためである。以下は参考の概算であり、この記事の主判定には使わない。

📎 参考: 家計調査の比率で仮に計算すると 結論には使わない概算 開く ▾

総務省「家計調査」2025年平均・勤労者世帯(二人以上)の実収入と可処分所得の比率をそのまま私A・私Bの年収に当てはめた、本人の年収と世帯の実収入が同額であると仮定した場合の概算である。実収入は世帯の収入概念であり、本人個人の役員報酬とは単位が異なる。父と同居する私A・私Bの世帯に、この比率をそのまま当てはめる根拠は無い。

区分金額比率
実収入(世帯)653,901円/月100%
可処分所得(世帯)532,408円/月81.42%
ペルソナ年収(本人)世帯の実収入と同額と仮定した場合の概算可処分所得(× 81.42%)
私A500万円約407.1万円
私B2,000万円約1,628.4万円

81.42%を使うときの限界(必ず読む)

・この81.42%は「平均的な勤労者世帯」の実収入に対する可処分所得の比率であり、私A・私Bの個人の役員報酬にそのまま当てはまる根拠は無い

・日本の所得税は累進課税(収入が多い人ほど税率が高くなる仕組み)なので、高所得になるほど手取り率(可処分所得 ÷ 実収入)は下がっていく。私Bの約1,628.4万円は、実際の手取りより高めに出ている可能性がある上限側の目安にすぎない

・役員報酬は一般的な給与所得と異なり、雇用保険の対象外になるという制度上の性質もある。これは一般的な制度の説明であって、私A・私Bの契約内容や税務上の扱いを判定するものではない

住居費はなぜ消費支出の5.9%しかないのか

家計調査の消費支出(二人以上世帯・1か月当たり314,001円)のうち、住居費はわずか18,678円で、比率にすると5.9%しかない。「日本人は家賃にほとんどお金を使っていない」と読むのは誤りである。この5.9%が小さいのは、家賃を払っている世帯が少数派だからだ。家計調査の対象世帯の多くは持ち家世帯であり、住宅ローンの返済は消費支出に含まれない(ローン返済は借入金の返済であって、消費支出という費目の外に置かれる)。だから消費支出の住居費18,678円は、賃貸で家賃を払っている世帯と、ローンを完済した持ち家世帯・ローンの返済が消費支出にカウントされない持ち家世帯が混ざった、いわば薄まった平均である。

この第112-1表の都道府県別データと、家計調査の消費支出314,001円・住居費18,678円は別の統計・別の集計区分である。前者は住宅・土地統計調査(民営借家の家賃実額)、後者は家計調査(消費支出の費目別内訳)で、混ぜて比較しない。

私A・私Bの立場 — 東京にいながら東京のコストを負っていない

私A・私Bは、いずれも東京都内にある父の持ち家に同居しており、家賃を1円も払っていない。もし東京都の平均的な家賃で部屋を借りていたら、年113.8万円が家賃として消えていた計算になる。

家賃を払う場合 ⇄ 私A・私Bの場合

東京都の平均家賃で借りる場合

仮に東京都平均の民営借家に住むなら

  • ・家賃 113.8万円/年(東京都平均)が毎年の支出に上乗せされる
  • ・私Aの金融資産300万円は、家賃だけで2.64年分に相当

私A・私Bの実際

父の持ち家に同居・家賃なし

  • ・家賃 0円/年
  • ・家賃を払わない分、その113.8万円/年が手元に残る計算になる
  • ・ただし住居そのものは自分名義の資産ではない(父名義)

第9章で見たとおり、世帯主が40歳未満の二人以上世帯は貯蓄994万円に対し負債1,882万円で、純貯蓄は▲888万円、負債保有世帯の割合は64.3%だった。私A・私Bは家賃という定期支出を負っておらず、本人個人としては住宅ローンも無い。ただし、この64.3%という数字は世帯主の年齢による分類であり、私A・私Bの世帯の世帯主が本人か父かはこの記事では確定できない。父が世帯主であれば、そのままこの数字と比較することはできず、世帯全体としての住宅ローン・住居維持費の有無も不明である。それでもなお、私Aの金融資産は300万円で、年収500万円の0.60年分(第6章)にとどまる。個人としての住居費負担が無いことと、資産の積み上がりは、必ずしも比例していない、という読み方ができる。

正直に書く限界

取得できなかったもの・混同してはいけないもの

・1畳当たり家賃の都道府県別データは取得できなかった。取得できたのは全国値のみ(民営借家・木造2,916円/非木造4,151円)

・第112-1表の全国平均65,496円と、住宅・土地統計調査の概要PDFに載っている民営借家(木造54,409円/非木造68,548円)は別の表・別の集計区分であり、混ぜて比較していない

・関東の金融資産中央値(990万円・第8章)が高い理由が、収入水準が高いからなのか、持ち家率など他の条件が違うからなのかは、この記事で使っている統計だけでは分けられない。家賃という支出の高さと、金融資産という蓄えの多さは、同じ地域で同時に観測される事実にすぎず、片方が原因でもう片方が結果だと断定はできない

この章で分かったのは、東京都の家賃が突出して高く、しかも同じ関東の中でも均質ではないということだ。私A・私Bは家賃ゼロという有利な条件にいるが、その有利さがそのまま資産の多さに直結しているわけではない。

→ 次の第11章では、独身・既婚・子あり・親と同居という世帯類型別のデータを見る。私A・私Bがどの区分に入るかを改めて確認する。

👨‍👩‍👧 独身・既婚・子あり・親と同居 — 比較単位が変わる

このセクションの3点

① 依頼者(独身・父と二人暮らし)は「世帯主夫婦のみ」でも「夫婦と子のみ」でもなく、J-FLECの区分では「その他・類型不能」(n=1,043・中央値312万円)に該当する可能性が高い

② 夫婦のみ(中央値1,000万円)と夫婦と子のみ(中央値700万円)の差は300万円あるが、年齢構成が違うため「子がいると損」とは言えない

③ 持家かどうかの差はさらに大きい。二人以上世帯で中央値が3.3倍、単身世帯で8.2倍に開く

この章の分類は世帯主ベース・世帯合計の金融資産(単位の詳しい説明は第2章)。単位の違いを踏まえて参考として読む。

世帯類型別(二人以上世帯・n=5,000)と単身世帯

世帯類型n金融資産非保有%平均(万円)中央値(万円)依頼者から見て
世帯主夫婦のみ1,87313.42,1451,000比較不可(配偶者がいる世帯。依頼者は独身)
世帯主夫婦と子のみ2,00215.01,737700比較不可(同上)
世帯主夫婦と親のみ827.32,6881,400参考比較(親と同居は共通するが、世帯主に配偶者がいる)
その他・類型不能1,04321.71,905312参考比較(該当する可能性が高い区分。原表から世帯類型のコーディング規則は確認できない)
単身世帯(全国・参考)2,50030.1919130参考比較(独身という点は共通だが1人世帯で人数が違う)

日本の統計は「結婚していない大人が親と暮らす世帯」に固有の名前を与えていない。世帯主が誰であっても、依頼者のような独身・親と二人暮らしの世帯は「世帯主夫婦のみ」にも「世帯主夫婦と子のみ」にも当てはまらず、「その他・類型不能」(類型不能=決められた分類のどれにも当てはまらない、という意味)に該当する可能性が高い。ただし原表から世帯類型のコーディング規則そのものは確認できておらず、ここに分類されると断定はできない。この区分の中央値は312万円で、二人以上世帯全体の中央値720万円の半分以下しかない。非保有率も21.7%で、夫婦のみ(13.4%)や夫婦と子のみ(15.0%)より高い。

世帯のかたちで、貯金はどれだけ違うか(グラフ)

真ん中の人の貯金(中央値)— 世帯のかたち別
独身・一人暮らし
130万円

単身世帯 n=2,500・一人分

独身で親と同居など
312万円

その他・類型不能 n=1,043・依頼者に近い区分

夫婦と子
700万円

n=2,002・世帯合計

夫婦のみ
1000万円

n=1,873・世帯合計

夫婦と親
1400万円

n=82・世帯合計・標本が小さい

J-FLEC 2025年6月調査。独身・一人暮らしだけが一人分の額で、それ以外は世帯全員分の合計。人数が増えれば合計が増えるのは当たり前なので、金額の大小をそのまま優劣として読まない。

金額の順番は「一人暮らし → 親と同居 → 夫婦と子 → 夫婦のみ」。ただし下にいくほど数えている人数が増えているだけでもある。次に同じ並びで平均値を見ると、中央値との開き方が分かる。

平均値 — 世帯のかたち別
独身・一人暮らし
919万円

中央値は130万円

夫婦と子
1737万円

中央値は700万円

独身で親と同居など
1905万円

中央値は312万円

夫婦のみ
2145万円

中央値は1,000万円

夫婦と親
2688万円

中央値は1,400万円

同じ調査の平均値。中央値と並べると、どの区分でも平均のほうが2〜7倍大きい。上のほうの人に引っ張られるため。

どの区分でも平均は中央値の2〜7倍ある。とくに「独身で親と同居など」は中央値312万円に対して平均1,905万円で、6.1倍。上のほうに大きな人がいるということだ。次は金額ではなく、そもそも貯金がゼロの人がどれだけいるかを見る。

貯金がゼロと答えた割合 — 世帯のかたち別
独身・一人暮らし
30.1%
独身で親と同居など
21.7%

依頼者に近い区分

夫婦と子
15%
夫婦のみ
13.4%
夫婦と親
7.3%

n=82・標本が小さい

金融資産を保有していないと答えた世帯の割合。低いほど良い。独身・一人暮らしが最も高い。

持ち家かどうかで、真ん中の人の貯金はこれだけ違う
独身・持ち家なし
61万円
家族と同居・持ち家なし
300万円
独身・持ち家あり
500万円
家族と同居・持ち家あり
1000万円

同じ調査の持家別の中央値。独身では持ち家かどうかで8.2倍、家族と同居では3.3倍の差がつく。ただし持ち家だから貯まるのか、貯まる人が家を買えるのかは、この統計では分けられない。

依頼者は独身だが一人暮らしではないので、上の「独身・一人暮らし」にも「夫婦」にも入らない。統計上は「その他・類型不能」に近い位置で、そこは中央値312万円・貯金ゼロが21.7%だった。ただしこの区分には三世代同居やきょうだい同居も混ざっているので、依頼者だけを取り出した数字ではない。

📎 「その他・類型不能」の中身について

この区分には、依頼者のような独身・親と二人暮らしのほかに、三世代同居、きょうだい同居、ひとり親と子の世帯なども混ざっている。n=1,043は「独身・親と二人暮らし」だけの数ではない。中央値312万円は、これら異なる世帯形態を合算した数字として読む必要がある。

子がいると中央値は300万円低い。ただし年齢構成が違う

夫婦のみの中央値1,000万円と、夫婦と子のみの中央値700万円を比べると、300万円の差がある。数字だけを見れば「子どもがいると貯まらない」ように見える。

ただし年齢構成が違う点は必ず断っておく必要がある。夫婦のみの世帯には、子が独立して家を出たあとの60代・70代の夫婦が多く含まれる。金融資産は年代が上がるほど積み上がる傾向がある(第7章で見た通り、60代の二人以上世帯の中央値は1,400万円で全年代の中で最も高い)。夫婦のみという類型が高年齢層に偏っているのだとすれば、300万円の差の少なくとも一部は「子の有無」ではなく「年齢」の差である可能性が高い。この表だけから「子どもは損」という結論は出せない。

持家か非持家か — さらに大きな差

世帯区分区分n非保有%平均(万円)中央値(万円)
二人以上世帯持家3,21512.02,2251,000
二人以上世帯非持家1,78522.31,421300
単身世帯持家91723.41,535500
単身世帯非持家1,58334.056361

3.3倍

二人以上世帯 持家1,000万÷非持家300万の中央値の差

8.2倍

単身世帯 持家500万÷非持家61万の中央値の差

312万円

その他・類型不能(依頼者が該当する可能性が高い区分)の中央値

21.7%

同区分の金融資産非保有率

二人以上世帯では持家の中央値1,000万円が非持家300万円の3.3倍(1,000÷300)、単身世帯では持家500万円が非持家61万円の8.2倍(500÷61)になる。依頼者・私A・私Bはいずれも父名義の持家に同居しており、家賃を払っていない。この持家効果を、世帯類型の差と混同しないよう注意する必要がある。

世帯で見るか、個人で見るか

世帯類型で見る

J-FLECの区分に依頼者を当てはめる

  • ・依頼者は「その他・類型不能」(n=1,043)に該当する可能性が高い(断定はできない)
  • ・中央値312万円・非保有率21.7%(世帯合計の金融資産)
  • ・三世代同居・きょうだい同居等も混ざった残余区分
  • ・独身・親と二人暮らしという形態に固有の統計は存在しない

単身世帯で見る

「独身」という属性だけを揃える

  • ・依頼者は法律上・戸籍上は独身だが、世帯としては単身ではない(2人世帯)
  • ・単身世帯(全国)の中央値は130万円。世帯が1人のため本人個人の資産と単位が揃う
  • ・世帯人数が違うため、家計の実態は大きく異なる(家賃・生活費を父と分担)
  • ・「独身」という言葉だけで単身世帯の統計を使うと世帯の実態とズレる

この章で分かったのは、依頼者の暮らし方に固有の統計上の分類は存在せず、世帯で見るか単身で見るかで比較の中身が変わるということだ。

→ 次のSection 12では、私A(300万円)の位置が母集団によってどう動くかを、上位31.4%から68.1%まで並べて見せる。

🔄 比較相手を変えると判定はどう動くか — 31.4%から68.1%まで

このセクションの3点

① 私A(金融資産300万円)について「300万円以上と回答した世帯の割合」は、比べる相手によって31.4%から68.1%まで動く。幅は36.7ポイント

② 7つの母集団のうち、個人の数字と単位が揃うのは単身世帯の2つだけ(30代31.4%・全国40.5%)。残り5つは二人以上世帯の世帯合計で、単位が違う

③ 年収でも同じ構造が起きる。年収500万円超の割合は、男女計なら36.7%、男性だけなら51.0%。私Aの年収はその境界にちょうど位置する

私A(金融資産300万円)の位置 — 母集団を変えると

比べる母集団n単位が揃うか300万円以上と回答した世帯の割合
30代・単身世帯325揃う(世帯=本人1人)31.4%
全国・単身世帯(全年代)2,500揃う(世帯=本人1人)40.5%
その他・類型不能(依頼者が該当する可能性が高い参考区分)1,043揃わない(世帯合計)51.9%
30代・二人以上世帯648揃わない(世帯合計)52.0%
全国・二人以上世帯(全年代)5,000揃わない(世帯合計)64.1%
関東・二人以上世帯1,735揃わない(世帯合計)67.2%
年収500〜750万円帯・二人以上世帯1,440揃わない(世帯合計)68.1%

31.4%

単位が揃う相手(30代・単身世帯)で300万円以上と答えた割合

68.1%

単位が揃わない相手(年収500〜750万帯・二人以上世帯)で300万円以上と答えた割合

36.7pt

両者の差(68.1−31.4)。大半は単位の違いから来る

300万円

私Aの個人金融資産(不変)

私Aの個人資産300万円は、母集団を変えると300万円以上の割合がどう動くか
30代・単身世帯
31.4%

n=325・単位が揃う(世帯=本人1人)

全国・単身世帯
40.5%

n=2,500・単位が揃う(世帯=本人1人)

その他・類型不能
51.9%

n=1,043・単位揃わず(世帯合計)/依頼者が該当する可能性が高い参考区分

30代・二人以上世帯
52%

n=648・単位揃わず(世帯合計)

全国・二人以上世帯
64.1%

n=5,000・単位揃わず(世帯合計)

関東・二人以上世帯
67.2%

n=1,735・単位揃わず(世帯合計)

年収500〜750万帯・二人以上世帯
68.1%

n=1,440・単位揃わず(世帯合計)

各値は「300万円以上を保有する世帯の割合」。母集団のnはJ-FLEC令和7年調査。単身世帯のみ個人の単位と揃う。

「300万円以上と回答した世帯の割合」は、比べる相手を変えるだけで31.4%から68.1%まで動く。幅にすると36.7ポイント。だがこの動きの大半は、比較の厳しさが変わったからではない。7つの母集団のうち単位が揃うのは単身世帯の2つだけ(30代31.4%・全国40.5%)で、残り5つは二人以上世帯=世帯合計の数字であり、私Aの個人資産300万円とは本来単純には比べられない。単位が揃う2つの範囲(31.4%〜40.5%)と、単位が揃わない5つの範囲(51.9%〜68.1%)を並べると、そもそも単位が違うものが混ざっていた、というほうがこの動きの正確な説明になる。

📎 計算方法

「300万円以上と回答した世帯の割合」は、金融資産の階級別分布(J-FLEC)で300万円以上に該当する階級の構成比%を単純合算して求めている。無回答は分母に残したまま、加算はしていない。300万円は「300〜400万円未満」階級の下限にちょうど一致するため、その階級を含めて「300万円以上」として数えた。この割合は、300万円ちょうどの人が世帯の中でどこに位置するかまでは示さない(300〜400万円未満の階級内の分布は不明なため)。

私B(3億円)の位置 — 同じ操作をすると

比べる母集団n単位が揃うか3,000万円以上の割合
30代・単身世帯325揃う(世帯=本人1人)3.4%
30代・二人以上世帯648揃わない(世帯合計)7.9%
全国・単身世帯2,500揃う(世帯=本人1人)9.6%
その他・類型不能1,043揃わない(世帯合計)15.9%
年収500〜750万帯・二人以上世帯1,440揃わない(世帯合計)16.9%
全国・二人以上世帯(全年代)5,000揃わない(世帯合計)18.8%
関東・二人以上世帯1,735揃わない(世帯合計)22.3%

私Bの3億円についても同じ操作をすると、「3,000万円以上と回答した世帯の割合」は3.4%から22.3%まで動く。ここでも単位が揃うのは単身世帯の2つ(30代3.4%・全国9.6%)だけで、残りは二人以上世帯の世帯合計。しかも3,000万円以上がJ-FLECの階級分布における最上位区分であり、私Bの3億円がその中のどこに位置するかは、この調査からは分からない。言えるのは「30代・二人以上世帯で3,000万円以上と回答したのは7.9%」というところまでで、その内側の順位はNRIの資産階層(第5章)で補うしかない。ただしNRIの階層も境界額による区分であって、百分位ではない点は第5章で確認した通りである。加えて私Bの3億円は父との共有であり、単身世帯の数字とは世帯構成そのものも異なる点に注意する。

年収でも同じことが起きる

これは金融資産だけの現象ではない。第4章で見た年収500万円も、母集団を変えれば見え方が動く。国税庁の給与階級別分布(第16表)で、年収500万円超の割合は、男女計(給与所得者5,137万人)では36.7%だが、男性だけ(2,925万人)で数えると51.0%になる。私Aの年収500万円はこの境界(400万円超〜500万円以下の上限)にちょうど位置しており、母集団の性別構成を変えるだけで、境界の上下比率が14ポイント動く。母集団を変えれば見え方が動くのは、資産に限った話ではない。

📎 Claudeの判定 そもそも単位が違う相手と比べていた

「私Aは300万円以上の中でどこにいるか」という問いは、比べる相手の単位が揃っているかを確認しない限り、そもそも成立しない。

  • 私Aの個人資産300万円と単位が揃うのは、単身世帯の2つの母集団(30代31.4%・全国40.5%)だけ。残り5つは世帯合計であり、個人の数字をそのまま当てられない
  • 単位が揃う相手だけで見ると31.4%〜40.5%の範囲に収まる。68.1%まで動いて見えたのは、単位が違う二人以上世帯の数字を混ぜていたため
  • 私Bの3億円・年収500万円でも同じ構造が起きる。母集団の単位や性別構成を変えるだけで、同じ数字の見え方が大きく動く
くわしい根拠を読む ▾
★注記: 当初この章は「比較相手を変えると私Aの位置は上位31.4%から上位68.1%まで動く」という一つの発見として書いていた。幅36.7ポイントという数字自体は今も有効だが、内訳を見ると単位が揃うのは単身世帯の2つ(30代・全国)だけで、残り5つは二人以上世帯の世帯合計だった。つまりこの幅の大半は、比較の厳しさの違いというより、そもそも比べてはいけない数字(個人と世帯合計)を比べていたことによる。この記事では、単位が揃う母集団(単身世帯)を主たる比較に置き、二人以上世帯の数字は「単位が違う参考比較」として残す。「私Aは上位◯%」という表現も、J-FLECの階級分布から出せるのは「◯万円以上と回答した世帯の割合」であって300万円ちょうどの人の百分位ではないため、本章では使わない。年収でも同じ構造が起きる(500万円超の割合は男女計で36.7%、男性のみで51.0%。私Aの年収はその境界にちょうど位置する)。第13章では、金額の相対順位だけに頼らない5つの軸で、私A・私Bを改めて見る。

この章で分かったのは、比較相手を変えるだけで同じ300万円の見え方が31.4%から68.1%まで動くということだ。動きの原因は比較の厳しさではなく、単位が揃う相手とそうでない相手が混ざっていたことにある。

→ 次のSection 13では、金額の相対順位から離れ、生活防衛力・所得の安定性・負債・流動性・時間の自由度という5つの軸で、私A・私Bが恵まれているのかを判定する。

🎯 恵まれているのか — 金額以外の5軸で裁く

このセクションの3点

① 私Aの金融資産300万円は、単身世帯の支出基準では約17.3か月分。二人以上世帯の支出を本人が全額負担すると仮定した場合の下限値では約10.0か月分。私Bは同じ基準で数十年(純金融資産2億円なら55.7〜96.3年)もつ

② 私Aは個人としては住宅ローンも家賃も無い。ただし世帯主が本人か父かは不明で、同年代64.3%との比較はそのままはできない。私Bは年収では明確に上位だが、資産は区分への当てはめができず、現金2億円の中身と父との共有という制約も付く

③ 最終判定は、私Aが「金額は中央付近、住居費は有利だが順位は断定できない」、私Bが「年収は明確に上位、資産は区分への当てはめができない」

専門用語を使わずに先に答える。私Bはかなりお金がある。ただし自由に全部使えるとは限らない。私Aは年収は平均あたりで、家賃を払っていないのは有利。ただし貯金300万円は安心し切れる額ではない。この先は、その理由を5つの軸に分けて説明する。

5つの軸の定義

ここまでの章は「年収」「金融資産」という金額だけを、それぞれ別の物差しで測ってきた。だが「恵まれているか」という問いは、金額の大きさだけでは決まらない。同じ資産額でも、住宅ローンを抱えているかどうか、その資産をすぐ現金化できるかどうか、自分ひとりの判断で動かせるかどうかで、実質的な余裕はまったく違う。ここでは金額以外の5つの軸で、私A・私Bをもう一度並べる。

軸何を測るか私A私B
① 生活防衛力金融資産が、収入を失っても何年もつか0.60年分15.0年分(父との持分1/2なら7.5年分)
② 所得の安定性給与か役員報酬か。金額を誰が決めるか役員報酬役員報酬
③ 負債と固定支出住宅ローン・家賃があるか父の持ち家に同居・家賃なし・ローンなし同左(ただし不動産1億円のローン有無は不明)
④ 資産の流動性と集中度すぐ使えるか(流動性)。1か所に寄っていないか内訳不明(保険・投資信託等を含む可能性)のため判定不能不動産1億円は流動性が低い。現金2億円には役員貸付金が含まれる
⑤ 支配権その資産を自分だけの判断で動かせるか動かせる父との共有。単独では動かせない

① 生活防衛力 — 金融資産は年収の何年分か、生活費の何か月分か

第6章で見た通り、私Aの金融資産300万円は年収500万円の0.60年分。私Bは3億円なら15.0年分、父との持分を1/2として1.5億円で数えても7.5年分になる。同じ年収帯の中央値世帯が1.28年分であることと比べると、私Aはそこにも届いていない。

この軸はさらに、総務省「家計調査年報(家計収支編)」2025年平均の消費支出額を使えば、「収入が止まったら金融資産で何か月暮らせるか」という生活費ベースで測り直せる。

対象単身世帯の支出(173,042円/月)で割ると40歳未満・二人以上世帯の支出(299,100円/月)で割ると
私A 300万円17.3か月(1.4年)10.0か月(0.8年)
私B 純金融資産2億円1,155.8か月(96.3年)668.7か月(55.7年)
私B 持分1/2 = 1億円577.9か月(48.2年)334.3か月(27.9年)
私B 全資産3億円(不動産込み)1,733.7か月(144.5年)1,003.0か月(83.6年)

単身世帯の支出(173,042円/月)で割った値は単位が揃う。単身世帯は世帯人数が1人であり、個人の資産と世帯の支出が同じ単位になるためだ。私Aの17.3か月、私Bの96.3年(純金融資産2億円の場合)は、この意味で有効な比較になる。

一方、40歳未満・二人以上世帯の支出(299,100円/月)で割った値は、世帯全体の支出を個人の資産で割っているため単位が揃っていない。これは本人が世帯の支出を全額負担している場合の下限値という位置づけであり、実際に父と支出をどう分担しているかは分からない以上、そのまま本人の生活防衛力として読むことはできない。

私Aは、単身世帯基準では約17.3か月、二人以上世帯基準の下限値でも約10.0か月で金融資産が尽きる。私Bは同じ基準で数十年もつ。金額の順位より、この軸のほうが「恵まれているか」を分かりやすく分ける。

さらに、これは全国平均の消費支出で割った概算であって、本人の実際の支出ではない。私A・私Bはともに父の持ち家に同居しており、住居費が平均(二人以上世帯で18,678円)より低い可能性が高いが、その実額は不明である。

② 所得の安定性 — 役員報酬という集中リスク

私A・私Bはどちらも役員報酬を得ている。★訂正: 当初ここで『役員報酬であり給与所得者ではない』と書いたが、これは誤りだった。役員報酬は給与所得に含まれる。第4章では『役員報酬は給与所得なので母集団に含まれる』と正しく書いていたのに、この章では矛盾する記述をしていた。正しくは、雇用契約に基づく従業員とは異なり、役員報酬は会社の経営判断と強く結びついているという点が特徴である。役員報酬の金額をいつ・どのような手続きで変更できるかという具体的な税務上のルールには、この記事では立ち入らない。

ここで効いてくるのは、会社の業績と個人の収入が同じ一点に集中しているという点だ。雇用契約に基づく一般の従業員であれば、給与は労働契約や労働法の枠組みの中で決まり、会社の業績が傾いても給与を守る仕組みが働く場面がある。これに対し役員報酬は、株主総会や取締役会など会社の経営判断そのものによって決まる。第4章で使った国税庁の給与所得者統計は「1年を通じて勤務した給与所得者」が母集団であり、会社役員の役員報酬もこの母集団に含まれる一方、この種の変動リスクそのものは統計には現れない。私A・私Bはともにこのリスクを負っている点で共通しており、金額の大小がこのリスクの有無を変えるわけではない。

③ 負債と固定支出 — 持ち家同居という共通条件

第9章で見た通り、家計調査(2025年平均)では世帯主が40歳未満の二人以上世帯の64.3%が負債を持ち、平均1,882万円の負債が貯蓄994万円を上回って純貯蓄は▲888万円になる。私A・私Bはどちらも父の持ち家に同居しており、少なくとも本人個人としては住宅ローンも家賃も負っていない。ただし、この64.3%という数字は世帯主の年齢による分類であり、私A・私Bの世帯の世帯主が本人か父かはこの記事では確定できない。父が世帯主であれば、この数字をそのまま比較対象にはできず、世帯全体としての住宅ローン・住居維持費の有無も不明である。それでも、本人が家賃を払っていないという点自体は、住居費の面で有利な条件だと言える。

ただし私Bについては、都内・神奈川に持つ不動産1億円分にローンが残っているかどうかがこの記事では分からない。父との同居分とは別の資産であり、「負債ゼロ」と言い切れるのは同居している住居についてだけだ。

④ 資産の流動性と集中度 — 現金2億円の中身

第5章で確認したNRIの「純金融資産」の定義は、預貯金・株式・債券・投資信託・保険等の合計から負債を引いたものであり、この列挙のなかに貸付金は入っていない。私Bの現金2億円には役員貸付金が含まれており、これは会社に貸している金であって、会社側の資金繰り次第では、いつでも引き出せるとは限らない。かといって「使えない金だ」と断定する材料もこの記事にはない。ここは数えた場合と数えなかった場合の両方があり得ると留保するにとどめる。

加えて、私Bの資産は現金2億円と不動産1億円に分かれており、不動産はそもそも流動性(すぐ現金にして使えるかどうか)が低い。★訂正: 当初『私Aの300万円は全額が流動的だと推定できる』と書いたが、これはBにだけ流動性の留保を付け、Aだけを確定扱いにする非対称な扱いだった。私Aの300万円は「金融資産」としか設定されておらず、保険や投資信託など、解約に時間や手数料がかかる商品を含む可能性がある。私A・私Bとも、資産の内訳が分からない以上、流動性は判定不能というのが正確な扱いになる。「額の大きさ」と「すぐ動かせるか」は別の軸である、という点だけは変わらない。

⑤ 支配権 — 誰が動かせるか

私Bの資産合計3億円は、父との共有名義である。単独の判断だけでは処分できず、動かすには父の同意か、何らかの手続きが必要になる。これは金額の大きさとは別の制約であり、「3億円を持っている」ことと「3億円を自分の一存で使える」ことは同じではない。相続や持分の具体的な税務・法務の扱いは、この記事の範囲外として立ち入らない。

私Aの資産300万円は、私A自身の名義であり、単独の判断で動かせる。金額は小さいが、支配権という軸だけを見れば私Aのほうが自由度が高い。

自己採点チェックリスト

私A の5軸チェック

−

金融資産は年収の1年分以上あるか

0.60年分(第6章)。同じ年収帯の中央値1.28年分にも届かない

−

収入は、会社の業績とは切り離された給与所得か

役員報酬。会社の業績と個人の収入が同じ一点に集中している

✓

住宅ローンや家賃など、毎月の固定的な住居費を払っていないか

父の持ち家に同居。家賃もローンも無い

△

資産の全額を、今すぐ現金化できるか

内訳不明(保険・投資信託等を含む可能性)のため流動性は判定不能

✓

その資産を、自分ひとりの判断だけで動かせるか

300万円は私A自身の名義

私B の5軸チェック

✓

金融資産は年収の1年分以上あるか

3億円なら15.0年分、父との持分1/2(1.5億円)でも7.5年分

−

収入は、会社の業績とは切り離された給与所得か

役員報酬2,000万円。Aと同じ集中リスクを、より大きな金額で負っている

△

住宅ローンや家賃など、毎月の固定的な住居費を払っていないか

同居分は父名義でローン・家賃無し。ただし不動産1億円のローン有無は不明

−

資産の全額を、今すぐ現金化できるか

不動産1億円は流動性が低い。現金2億円にも役員貸付金が含まれる

−

その資産を、自分ひとりの判断だけで動かせるか

3億円は父との共有名義。単独では処分できない

🎯 Claudeの判定 金額は中央付近。住居費は有利、ただし断定はできない

私A(年収500万円・資産300万円)は、金額の順位ではほぼ真ん中に立つ。個人としては住居費という固定支出を負っていないが、世帯主が本人か父かが不明なため、同年代との比較で『明確に有利』とまでは断定できない。

  • 年収は男性給与所得者の上位51.0%で、ほぼ中央(第4章)
  • 資産300万円は比べる相手次第で上位31.4%〜68.1%まで動く(第12章)
  • 個人としては住宅ローンも家賃も無い。ただし世帯主が本人か父かは不明で、世帯主が40歳未満の二人以上世帯64.3%という数字とそのまま比較することはできない(第9章)
  • 収入が止まったら、単身世帯基準で約17.3か月、二人以上世帯基準の下限値では約10.0か月しかもたない(本章①)
くわしい根拠を読む ▾
私Aは収入も資産もおおむね平均的な位置にいる。それだけを見れば「恵まれても、恵まれてもいない」という判定で終わる。第9章で見た通り、世帯主が40歳未満の二人以上世帯の6割以上が住宅ローンなどの負債を抱え、純貯蓄がマイナスになっている。私Aは個人としてはローンも家賃も負っていないが、世帯主が本人か父かはこの記事では確定できず、この統計とそのまま比較して『明確に有利』とは言い切れない。個人の年収・資産の統計と、世帯単位の統計を混ぜずに読むと、私Aについて言えるのは『金額は中央付近で、少なくとも個人としての住居費負担は無い』というところまでであり、それ以上の順位の断定はできない。金融資産が年収の0.60年分(第6章)にとどまっている、という事実だけは金額のみから言える。
🎯 Claudeの判定 年収は明確に上位。資産は区分への当てはめができない

私B(年収2,000万円・資産3億円)は、年収では明確に上位に立つが、資産3億円がNRIのどの区分に当たるかは現在の情報では当てはめができず、その多くは本人が単独で自由に使える額でもない。

  • 年収2,000万円は「1,500万円超〜2,000万円以下」の階級に入り、この階級内の順位は出せない。2,000万円を超える男性給与所得者は約1.0%(29.2万人・母集団2,925万人)にあたる(第4章)
  • 負債がゼロで、現金2億円に含まれる役員貸付金をNRIの金融資産に含められる場合に限り、富裕層区分(1億円以上5億円未満・153.5万世帯・全世帯の2.76%)に入る。現在の情報だけでは、この区分への当てはめはできない(第5章)
  • 不動産1億円はNRIの定義に含まれず、現金2億円には役員貸付金が含まれる。しかも3億円は父との共有名義で、単独では動かせない(本章)
  • 生活防衛力では、単身世帯基準で96.3年・二人以上世帯基準の下限値でも55.7年もつ(本章①)
くわしい根拠を読む ▾
「3億円持っている」ことと「3億円を自分で使える」ことは別の話だ。年収だけを見れば私Bは明らかに上位にいるが、資産3億円の内訳を分解すると、すぐ現金化できるとは限らない資産(不動産・役員貸付金)と、単独では処分できない共有名義という二重の制約が付く。さらに、NRIの富裕層区分への当てはめ自体、負債額・役員貸付金の扱いという2つの不明点があるため、現在の情報では確定できない。第1章の判定でも触れた通り、これは3,000万円が最上位区分であるJ-FLECの限界とは別の、資産の中身そのものの限界である。

「恵まれているか」という問いは、比べる相手を誰にするか、そして何を数えるかで答えが変わる。金額だけを比べれば私Bが上、条件だけを比べれば私Aに分がある場面もある。この記事が出せたのは、あくまで一次統計の中での順位であって、幸福の判定ではない。私A・私Bのどちらが「良い人生」かを、この記事は決めない。

→ 次のSection 14では、この記事で使った数字の限界と、私自身の誤りの記録を残す。

🔍 数字の限界と、私の誤りの記録

このセクションの3点

① この記事が使った5つの調査は、実施主体・方法・母集団・調査年がすべて異なる。J-FLECはインターネットモニター調査で、無作為抽出の政府統計とは母集団が違う。数字を混ぜて足し引きしてはいけない

② 公開前のCodexクロスレビューで、重大6件・中8件、計14件の誤りが見つかった。最大の誤りは、本人個人の年収・資産を世帯の統計にそのまま当てていたこと。この記事の主判定がまるごと成立しなくなる誤りだった

③ 「男性だけ」「東京都単独」「35歳ちょうど」の金融資産はこの記事では分からない。答えられなかったことは10項目ある。標本が小さい箇所も残っている

5つの調査、5つの性質

この記事は5つの調査を使っている。どれも一次資料だが、実施主体・調査方法・対象にしている母集団・最新の調査年は、それぞれ違う。同じ「金融資産」「収入」という言葉を使っていても、調査ごとに数え方が違えば、数字を単純に足し引きすることはできない。

調査実施方法母集団最新この記事での役割
J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査」金融経済教育推進機構インターネットモニター調査二人以上世帯5,000/単身2,5002025年6月20日〜7月2日年代別・地域別・年収別の中央値と平均
国税庁「民間給与実態統計調査」国税庁標本調査(全員でなく一部の人を選んで調べる方法/事業所抽出)1年を通じて勤務した給与所得者5,137万人(標本278,081人)令和6年分・公表2025年9月年収の分布
総務省「家計調査」総務省統計局無作為抽出の政府統計二人以上世帯(貯蓄・負債編は単身を含まない)2025年平均・貯蓄負債編は2026年5月19日公表貯蓄・負債・純貯蓄・消費支出
NRI「日本の富裕層」野村総合研究所推計(実査ではない)全世帯5,570.4万世帯2025年2月13日発表・2023年基準3億円の階層
総務省「住宅・土地統計調査」総務省統計局全数に近い大規模調査民営借家15,639,600戸令和5年(2023年10月1日時点)都道府県別の家賃

特に注意が要る点が3つある。第一に、J-FLECはインターネットモニター調査であり、無作為抽出の政府統計である家計調査とは母集団の性質が違う。ネットで調査に答える人に偏る可能性があり、高齢層・低所得層・資産ゼロ層の捕捉が政府統計と一致する保証はない。第二に、調査年が指標ごとに違う。J-FLECは2025年6月、国税庁は令和6年分、NRIは2023年基準、家計調査は2025年平均、住宅・土地統計調査は2023年10月と、同じ時点の話ではない。第三に、金融資産は自己申告である。他人に正確に答える動機は弱く、過少にも過大にも振れうる。

Codexクロスレビューで見つかった私の誤り

この記事は公開前にCodexへ全文レビューをさせた。見つかった誤りは重大6件・中8件、計14件。すべてここに残す。婉曲な言い方はしない。「表現を改めた」ではなく「誤りだった」と書く。特に重い4件だけを下の表に残し、残り10件は折りたたみに入れている(消してはいない)。

区分当初の記述なぜ誤りかどう直したか
重大1私Aの個人年収500万円をJ-FLECの「年収500〜750万円未満」帯(世帯収入)に当て、その帯の中央値800万円と比較し「500万円下回る」と判定していた。私Aの個人資産300万円も同様に、世帯の金融資産分布にそのまま当てていた。J-FLECの「年間収入」も「金融資産保有額」も世帯の数字であり、個人の数字ではない。父の収入・資産は一切不明であるため、本人個人の500万円・300万円を世帯統計にそのまま当てることはできない。第2章で「個人と世帯を混ぜない」と自分で宣言していたのに、その原則を自分で破っていた。この記事の主判定がまるごと成立しなくなる、最大の誤りだった。単位が揃うのは単身世帯の統計だけだと確定し、私Aの主たる比較相手を「30代・単身世帯」(300万円以上31.4%)に変更した。二人以上世帯の数値は削除せず残し「単位が違う参考比較」と明記した。「同じ年収帯の中央値800万円に届かない」という記述は★注記付きで残し、「日本人は年収の1.28〜1.38年分の資産を持つ」という発見自体は世帯ベースの事実として有効だが、Aの0.60年分とは単位が違うため直接比較できないと明記した。第2章の断層表に7つ目「本人の数字は個人、統計は世帯」を追加した。
重大4「NRIの富裕層は境界額による区分であって百分位ではない」と書いた同じ章の中で、「富裕層+超富裕層で2.97%なので上位約3%」とも書いていた。自分が直前に否定した読み方を、同じ章の中でもう一度使っていた。明確な自己矛盾であり、書いた文章を読み返していなかった。「上位約3%」という表現を全章から削除した。「1億円以上の区分に属する世帯は、NRIの推計で全世帯5,570.4万世帯の2.97%(165.3万世帯)。Bがその区分に入るかは前提次第で、区分の中での順位は分からない」という書き方に統一した。
重大6年収2,000万円超の割合を、構成比の丸め残り(100−98.9)から「上位1.1%」と書いた箇所と、実数の割り算(131千人+161千人÷2,925万人)から「約1.0%」と書いた箇所が、同じ記事の中に両方残っていた。単純な検算不足。構成比は原表の丸めを含むため、丸めた値同士の引き算と、実数を使った割り算は必ずしも一致しない。書いた時点で見比べていれば防げた。「2,000万円超は約1.0%(29.2万人/男性給与所得者2,925万人)」に全章で統一し、「上位1.1%」という表記をすべて置き換えた。2,000万円ちょうどの順位は階級内の分布が不明なので出せない、という限界も添えた。
中14第13章で「役員報酬であり給与所得者ではない」と書いていた。役員報酬は給与所得である。第4章では正しく「役員報酬は給与所得なので母集団に含まれる」と書いていたのに、第13章で自分自身と矛盾する記述をしていた。明確な誤り。「雇用契約の従業員とは異なり、役員報酬は会社の経営判断と強く結びついている」に直した。役員報酬をいつ・どう変更できるかという税務判断には踏み込まず、一般論以上は書かないことにした。

★特に重い誤り4件

重大1(単位のすり替え): 本人の年収も資産も個人の数字なのに、J-FLECもNRIも家計調査も世帯の数字だった。父の収入・資産が不明である以上、個人の500万円・300万円を世帯統計にそのまま当てることはできない。この記事の主判定がまるごと成立しなくなった、最大の誤りだった。

重大4(自己矛盾): 「NRIの富裕層は境界額の区分であって百分位ではない」と自分で書きながら、同じ章の中で「上位約3%」とも書いていた。書いた文章を読み返していなかった。

重大6(計算の食い違い): 年収2,000万円超の割合を、構成比の丸め残りから1.1%、実数の割り算から1.0%と、2つの異なる値を同じ記事の中に残していた。検算していれば防げた誤りだった。

中14(税務上の誤り): 「役員報酬であり給与所得者ではない」と書いたが、役員報酬は給与所得である。しかも第4章では正しく「役員報酬は給与所得なので母集団に含まれる」と書いていたのに、第13章で自分自身と矛盾する記述をしていた。

📎 残り10件の誤り(重大2・3・5/中7〜13) 消してはいない・全部読める 開く ▾
区分当初の記述なぜ誤りかどう直したか
重大2「35歳のAは30代区分で比較する」とだけ書き、J-FLEC・家計調査の年齢区分が世帯主の年齢であることに触れないまま、二人以上世帯の年代別数値をそのままAに当てていた。J-FLECも家計調査も、年齢は世帯主のもの。父名義の持ち家に同居する35歳が世帯主とは限らない。世帯主が父であれば、「30代・二人以上世帯」の数値は依頼者の世帯に当てられない。「依頼者本人が世帯主である場合に限る」という条件を第1章の時点で明記した。世帯主が父なら二人以上世帯の年齢別比較は使えないと追記し、年齢を使わない比較(単身世帯・世帯類型別)を主判定側に置き、年齢別比較は条件付きの参考に格下げした。
重大3「現金2億円=NRIの富裕層区分」と断定し、役員貸付金はNRIの列挙に無いから除外できると書いていた。NRIの純金融資産は金融資産から負債を引いた額であり、私Bの負債額は不明。さらにNRI原文の列挙「預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など」の「など」は例示であって、貸付金が除外されると断定はできない。読みが片側に寄っていた。「純金融資産2億円=富裕層」という断定を削除し、「現在の情報だけでは当てはめができない」に修正した。「負債がゼロで、役員貸付金を金融資産に含められる場合」という仮定つきの例示に変更し、不明点を①負債額②役員貸付金の額③貸付金をNRIが金融資産に含めるか、の3点として明記した。
重大5J-FLECの階級分布から「私Aの上位31.4%」のように、300万円ちょうどの人の百分位であるかのような表現を使っていた。出せるのは「300万円以上と回答した世帯の割合」であって、300〜400万円未満という階級の中でAがどこにいるかは分からない。「上位◯%」という表現は、実際より細かい順位が分かっているかのように読める。表の見出しを「300万円以上の世帯の割合」に統一し、「私Aの上位%」という列名をやめた。本文も「上位31.4%」ではなく「300万円以上と答えたのは31.4%。Aはこの31.4%の中に入る」と書き直した。「31.4%から68.1%まで動く」という発見自体は、表現だけ直してそのまま残した。
中7第8章で「関東の都県内訳は確認できていない」と書きながら、別の箇所で1都6県を列挙し「東京は貯まる」と結論していた。確認できていないと自分で断ったはずの内訳を、別の場所で断定的に使っていた。関東ブロックの数字と東京都の数字を混同していた。結論を「関東ブロックは中央値で最も高い」に改め、「東京は貯まる」という書き方はやめた。一次資料で確認できない1都6県の列挙は削除した。
中8「独身で親と同居する世帯は『その他・類型不能』に分類される」と断定していた。原表からは世帯類型のコーディング規則そのものが確認できず、断定できる根拠が無かった。「該当する可能性が高い参考区分」にとどめ、「ここに分類される」という言い切りをやめた。「日本の統計に独身で親と同居する大人の枠が無い」という指摘自体は有効なので残した。
中9「Aは住宅ローンが無い」から「家計調査の40歳未満64.3%との比較で明確に有利」と、世帯全体のローンの有無まで断定していた。本人にローンが無いことと、父を含む世帯全体にローンが無いことは別の話。世帯の住宅ローン・住居維持費はこの記事では分からない。「本人が家賃を払っていない設定なら住居費の面では有利。ただし世帯の住宅ローン・住居維持費は不明」に限定した。家計調査64.3%との比較は、世帯主年齢が確認できる場合だけという条件を付けた。
中10私Bの現金2億円には流動性の留保(役員貸付金を含む)を付けながら、私Aの300万円は「全額が流動的」であるかのように確定扱いにしていた。Aの300万円は「金融資産」としか設定されておらず、保険や投資信託を含む可能性がある点はBの現金と同じはずなのに、Aにだけ留保を付けない非対称な扱いになっていた。Aも「内訳不明のため流動性は判定不能」に統一した。
中11「相続税額のある申告に係る被相続人は10.4%。残り約9割は基礎控除内」と書いていた。相続税額のない申告(特例適用等で税額がゼロになるケース)もあり、「課税割合が低い=残り全員が基礎控除内」とは言えない。「死亡者の10.4%が相続税額のある申告に係る被相続人。残りの内訳はこの表だけでは分からない」に直した。
中12「Bの資産構成(現金等約67%・不動産約33%)は相続財産全体の構成(現金等34.9%・土地30.2%・有価証券17.8%)と近い」と書いていた。土地の比率は近いが、現金等の比率(67% vs 34.9%)と有価証券の比率(0% vs 17.8%)は大きく違い、「近い」とまとめるのは不正確だった。この比較を削除した。残す場合は「土地の比率は近いが、現金と有価証券の比率は大きく違う」という正確な書き方にした。
中13家計調査の可処分所得比率81.42%を、そのまま本人個人の年収500万円・2,000万円に掛けて手取り額を結論として使っていた。家計調査の実収入は世帯の収入概念であり、本人個人の給与年収と同じではない。父と同居する二人世帯にこの比率を当てる根拠も無い。結論材料としては使わず、参考計算に格下げした。使う場合は「本人の年収と世帯の実収入が同額であると仮定した場合の概算」と明記した。

この記事が答えられなかったこと

調べても取れなかったこと、統計の作りそのものが答えを持っていないことを、正直に列挙する。

答えられなかった10項目

−

「男性だけ」の金融資産は分からない

J-FLECの年令別は世帯主ベース。男女別の資産分布はこの記事では取得していない

−

「東京都」の金融資産は分からない

J-FLECの地域区分は関東ブロック。第10章で見た通り、家賃では東京は埼玉の1.44倍で、関東は均質でない。「関東の中央値990万円」は東京の数字ではない

−

「35歳」の数字は無い

J-FLECは10歳刻み、家計調査は「40歳未満」という括り

−

「独身で親と同居」の枠が統計に無い

「その他・類型不能」(n=1,043)に三世代同居・きょうだい同居なども混ざる

−

都道府県別の貯蓄現在高は取得できなかった

家計調査に区分が無く、令和6年全国家計構造調査の資産・負債編は2026-08-18時点で未公表

−

都道府県別の1畳当たり家賃は取得できなかった

全国値(民営木造2,916円/非木造4,151円)のみ

−

私Bの純金融資産の正確な額は分からない

現金2億円に含まれる役員貸付金の額が不明。NRIの列挙に貸付金は無い

−

私Bの不動産1億円にローンがあるかは不明

同居分の父名義住居とは別の資産

−

年収2,000万円の手取り率は分からない

家計調査の81.42%は平均的な勤労者世帯の比率。累進課税により高所得ほど手取り率は下がる。1,628.4万円は上限側の目安

−

本人の実際の生活費は分からない

生活防衛力の月数は全国平均の消費支出で割った概算

標本が小さくて断定できない箇所

標本調査(全員ではなく一部の人を選んで調べる方法)では、選ばれた人数(n)が少ないほど、その数字のブレは大きくなる。以下は特にnが小さく、断定を避けるべき範囲である。

範囲n注意
単身世帯・年収750〜1,000万円帯59高収入帯の単身層として使用。断定を避けnを併記している
単身世帯・年収1,000〜1,200万円帯18同上。特に小さい標本
単身世帯・年収1,200万円以上19同上
地域別・四国(二人以上/単身)148/70関東との比較で使用。中央値の僅差を論じる際はnの小ささに留意する
地域別・北陸(二人以上/単身)200/83同上

この記事が最終的に出せたのは、私Aと私Bが日本のどこにいるかという「順位」ではなかった。出せたのは、どの母集団と、どの単位でなら比べられるか、という物差しの側の地図だった。個人の数字を世帯の統計に当てた重大1の誤りは、この記事の主判定そのものを一度崩している。誤りを直した後に残ったのは、「私Aは単身世帯という数え方でなら比べられる」「私Bの資産は区分への当てはめができない」という、以前より地味だが正確な結論である。

これで全14章が終わる。私A・私Bの判定は第1章に、金額以外の5軸は第13章に、そしてこの章に残した14件の誤りの記録も含めて、この記事の全部である。