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💰 同じ45〜49歳で、男は15.5%減り女は22.7%増えた — 1990年からの実質年収と貯金

1990年・2000年・2010年と比べて日本人は金持ちになったのかを、20代から50代まで年代別に判定した。国税庁の年齢階級別平均給与を消費者物価指数で実質化したところ、男性は55〜59歳を除く全年代でマイナス、女性は20〜24歳を除く全年代でプラスだった。男女計の-7.3%は、この両者が打ち消し合った数字である。

まず答え — 年代別の判定表

このセクションの3点

① 20代・30代・40代・50代を1990年と2024年で比べると、答えは年代よりも先に男女で真っ二つに割れる。

② 男性は50代後半を除くすべての年代で収入が減り、女性は20代後半以上のすべての年代で収入が増えていた。

③ 「日本人は金持ちになったか」という問いは、性別を言わないと答えられない。

同じ年代でも、男女で符号が逆になる
実質年収の変化 1990→2024(45〜49歳) 0% 男性 -15.5% 女性 +22.7% 45〜49歳の男女計は -11.6%。混ぜると どちらの実態も見えなくなる

この記事でいちばん大事な断り — 収入と貯金は同じ表に並べられない

・収入は国税庁の統計で単位が個人。年齢は本人の年齢。1990年と2024年を比べている

・貯金は家計調査の統計で単位が世帯。年齢は世帯主の年齢。しかも2019年と2024年しか無い

・年齢の刻みも違う(収入は5歳きざみ、貯金は世帯主40歳未満などの粗い区分)

・したがって「20代は貧しくなった」のように1行でまとめることができない。以下は収入だけの判定で、貯金は別に置く

年代男性の実質年収 1990→2024女性の実質年収 1990→2024収入だけで見た判定
20〜24歳-16.4%-10.7%男女とも減った
25〜29歳-4.2%+10.8%男は微減、女は増えた
30〜34歳-7.4%+12.4%男は減り、女は増えた
35〜39歳-10.2%+14.9%男は減り、女は増えた
40〜44歳-12.9%+20.3%男は減り、女は増えた
45〜49歳-15.5%+22.7%差が最も大きい
50〜54歳-9.8%+18.1%男は減り、女は増えた
55〜59歳+3.1%+18.1%男女とも増えた(男性で唯一)
世帯主の年齢貯蓄の平均 2019→2024(万円)負債の平均 2024(万円)純貯蓄 2024(万円)
40歳未満691 → 8671,765-898
40〜49歳1,076 → 1,3141,445-131
50〜59歳1,704 → 1,7987291,069
60〜69歳2,330 → 2,6592702,389
貯金の表は参考であって、上の収入の判定と足し算できない。単位も年齢の意味も対象期間も違う。純貯蓄がマイナスであること自体は「貧しい」を意味しない——負債の多くが住宅ローンなら、その裏側に住宅という資産がある。この記事はその資産を測っていない。
⚖️ Claudeの判定 性別を言わないと答えられない

「日本人は金持ちになったか」に、1つの答えはない。

  • 男性は50代後半を除くすべての年代で収入が減っていた
  • 女性は20代後半以上のすべての年代で収入が増えていた
  • 男女をまとめた「日本人全体」の数字は、この2つが打ち消し合った結果にすぎない

→ 次の章では、この記事に出てくる言葉を先にまとめて説明する。

用語カード

→ 次の章では、出回っている主張がなぜ食い違って見えるのかを分解する。

錯綜の正体 — どの主張が何を測っているか

このセクションの3点

① 「給料が上がっていない」「平均給与は過去最高」「ジニ係数は拡大」「富裕層は増え続けている」は、どれも別のものを測っている。

② 何を測っているか、単位が個人か世帯か、名目か実質か、税・社会保険料の前か後かを揃えると、主張の大半は両立する。

③ 誤っているのは主張の中身そのものではなく、「〜し続けている」という言い方だけである。

個人

国税庁の給与統計の単位。本人の年齢

世帯

家計調査とJ-FLECの単位。世帯主の年齢

名目

物価を調整していない額

実質

消費者物価指数で割り戻した額

主張何を測っているか単位名目/実質税・社会保険料の前後成り立つか
給料が30年上がっていない給与水準の実感個人(給与所得者)実質で見れば男性の大半の年代で下落。名目では上がっている年代もある前(額面)半分成り立つ — 男性の実質収入は大半の年代で下落しているが、名目ではむしろ上がっている年代もある
平均給与は過去最高男女計の名目の平均給与個人名目(2024年477.5万円は過去最高水準)前(額面)成り立つ — ただし男女計の平均であり、男性・女性を分けたり実質にすると、この言い方は崩れる
実質賃金は下がり続けている実質収入の推移個人実質前(額面)半分成り立つ — 男性の大半の年代では下落だが、女性は20代後半以上の全年代で上昇しており、「下がり続けている」を全員には言えない
ジニ係数は拡大している世帯間の所得格差世帯当初所得(拡大)と再分配所得(ほぼ横ばい)は別の動き当初所得は前・再分配所得は後半分成り立つ — 当初所得は1990年0.4334から2023年0.5855へ拡大したが、再分配後は0.3643から0.3825でほぼ横ばい。2014年から2017年は一度下がってもいる
富裕層は増え続けている純金融資産1億円以上の世帯数(民間推計)世帯記載なし-半分成り立つ — 2011年から2023年で世帯数は約2.04倍に増えたが、2007年から2011年にかけては一度減っている
錯綜の正体は、主張どうしが矛盾しているのではない。測っているもの(個人か世帯か、名目か実質か、税・社会保険料の前か後か)が違う数字を、同じ「日本人の暮らし」として並べていることにある。誤っているのは中身ではなく、「〜し続けている」という言い方だけで、ジニ係数も富裕層の世帯数も、途中で一度下がった年がある。

→ 次の章では、名目と実質の違いだけで結論が逆になる例を見る。

名目と実質 — 同じ数字から逆の結論が出る

このセクションの3点

① 同じ1990年から2024年への変化でも、名目の金額で見るか、物価を差し引いた実質で見るかで、結論が逆になることがある。

② 男性30〜34歳の給与は、名目では+12.1%増えているのに、物価を差し引いた実質では−7.4%減っている。

③ 1990年から2024年の間に、物価(消費者物価指数)は21.1%上がっている。

「給料が上がった」も「給料が下がった」も、同じ年齢区分の給与から出てくることがある。答えを分けているのは、物価を差し引くかどうかだけである。

名目とは、物価の変動を差し引く前の、そのままの金額。実質とは、物価の変動を差し引いたあとの金額。1990年の給与と2024年の給与を名目のまま比べると、1990年の100万円と2024年の100万円は同じ「100万円」として扱われる。しかし2024年の100万円は、1990年の100万円よりも買えるものが少ない。

年消費者物価指数(2020年=100)
199089.6
199595.9
200097.3
200595.2
201094.8
201598.2
2020100
2022102.3
2023105.6
2024108.5
2025111.9

物価は1990年から2024年で+21.1%、2000年から2024年で+11.5%、2010年から2024年で+14.5%上がっている。名目の給与がこれ以上に増えていなければ、実質では目減りしていることになる。

男性30〜34歳が、その典型である。名目の給与は1990年から2024年で+12.1%増えている。しかし物価の上昇分を差し引いた実質では−7.4%で、むしろ減っている。同じ1本の数字から、「増えた」も「減った」も正しく言えてしまう。

648.0万円 → 663.0万円

男性45〜49歳の名目給与(1990→2024)

723.2万円 → 611.1万円

同じ年齢区分を実質(2020年基準)で見た給与(1990→2024)

男性45〜49歳の名目給与は648.0万円から663.0万円へと、わずかだが増えている。ところが物価の上昇分を差し引いた実質では、723.2万円から611.1万円へと112.1万円減っている。名目のグラフだけを見ると、この世代の給与はほとんど動いていない(+0.0182、率にして約5.0%の上昇)か微増に見える。実質で見て初めて、大きく目減りしていることが分かる。

→ 次の章では、男性の実質年収を年代別に見ていく。

男性は55〜59歳を除く全年代で減っていた

このセクションの3点

① 男性は20〜24歳から50〜54歳まで、実質賃金がすべてマイナスだった。

② 下落が最も大きいのは20〜24歳の−16.4%と45〜49歳の−15.5%。

③ 唯一のプラスは55〜59歳の+3.1%で、他の年代とは逆方向に動いている。

実質賃金の変化 — 年齢階級別(男性・1990→2024年)

男性 年齢階級別 平均給与 実質変化率(1990→2024年)
20〜24歳
-16.4%
25〜29歳
-4.2%
30〜34歳
-7.4%
35〜39歳
-10.2%
40〜44歳
-12.9%
45〜49歳
-15.5%
50〜54歳
-9.8%
55〜59歳
+3.1%

唯一のプラス

出典: 国税庁「民間給与実態統計調査」長期時系列 第3-10表。2020年基準CPIで実質化。55〜59歳のみプラス。

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年齢階級実質変化率(男性・1990→2024年)
20〜24歳−16.4%
25〜29歳−4.2%
30〜34歳−7.4%
35〜39歳−10.2%
40〜44歳−12.9%
45〜49歳−15.5%
50〜54歳−9.8%
55〜59歳+3.1%

男性45〜49歳は名目給与が648.0万円から663.0万円へ上がっており、名目だけを見れば増えたように見える。しかし2020年基準の消費者物価指数で実質値に直すと、723.2万円から611.1万円へ下がっている。名目が増えても実質は減るという現象が、この年代でいちばん大きく表れている。

唯一プラスだった55〜59歳の男性も実質+3.1%にとどまり、他の年代の下落幅と比べれば小さな動きにすぎない。20〜24歳から50〜54歳までの7区分がすべてマイナスという結果は、男性の実質賃金が20代から40代を通じて1990年と2024年を比べると下がっていることを示している。

→ 次のSection「josei」では、同じ年齢階級を女性で見る。動きは男性とほぼ真逆になる。

女性は20〜24歳を除く全年代で増えていた

このセクションの3点

① 女性は25〜29歳から55〜59歳まで、実質賃金がすべてプラスだった。

② 最大の伸びは45〜49歳の+22.7%で、次いで40〜44歳の+20.3%。

③ マイナスなのは20〜24歳の−10.7%だけで、25歳以上は年代が上がるほど伸び幅も大きい。

実質賃金の変化 — 年齢階級別(女性・1990→2024年)

女性 年齢階級別 平均給与 実質変化率(1990→2024年)
20〜24歳
-10.7%

唯一のマイナス

25〜29歳
+10.8%
30〜34歳
+12.4%
35〜39歳
+14.9%
40〜44歳
+20.3%
45〜49歳
+22.7%

最大の伸び

50〜54歳
+18.1%
55〜59歳
+18.1%

出典: 国税庁「民間給与実態統計調査」長期時系列 第3-10表。2020年基準CPIで実質化。マイナスは20〜24歳のみ。

正確な数字で確認する グラフと同じ内容 開く ▾
年齢階級実質変化率(女性・1990→2024年)
20〜24歳−10.7%
25〜29歳+10.8%
30〜34歳+12.4%
35〜39歳+14.9%
40〜44歳+20.3%
45〜49歳+22.7%
50〜54歳+18.1%
55〜59歳+18.1%

女性45〜49歳は名目給与が248.0万円から368.6万円へ増え、物価上昇分を差し引いた実質でも276.8万円から339.7万円まで増えている。名目でも実質でも増えている点で、男性と最も対照的な年代になる。

男女計でみた実質変化は−7.3%で、一見すると日本人全体の実質賃金が下がったように見える。しかしこれは男性の下落(20〜24歳〜50〜54歳がマイナス)と女性の上昇(25歳以上がプラス)が同じ平均の中で打ち消し合った結果であり、性別を分けずに「日本人が」と語ると、両方の実態が数字の裏に隠れてしまう。

→ 次のSection「chokin」では、貯金と負債の変化を見る。

貯金は増えたが、負債はもっと増えた

このセクションの3点

① 二人以上世帯の平均貯蓄額は2019年の1,755万円から2024年の1,984万円へ増えた。

② しかし40歳未満は貯蓄867万円に対し負債1,765万円で、純貯蓄は−898万円のマイナス。

③ 40〜49歳も負債を持つ世帯が69.0%に達し、純貯蓄は−131万円。

貯金は増えたが、負債はもっと増えた

年平均 (万円)40歳未満 (万円)40〜49歳 (万円)50〜59歳 (万円)60〜69歳 (万円)70歳以上 (万円)
201917556911076170423302253
202017917081081170323842259
202118807261134184625372318
202219018121160182824582411
202319047821208170524322503
202419848671314179826592441

−898万円

40歳未満の純貯蓄(2024年・二人以上世帯)

69.0%

40〜49歳で負債を持つ世帯の割合(2024年)

年齢(世帯主)貯蓄平均 (万円)負債平均 (万円)負債保有割合純貯蓄 (万円)
全体198466338.8%1321
40歳未満867176564.4%−898
40〜49歳1314144569.0%−131
50〜59歳179872953.6%1069
60〜69歳265927029.2%2389
70歳以上24415610.6%2385

「貯金は増えている」という主張は、平均値だけを見れば正しい。二人以上世帯の平均貯蓄額は2019年の1,755万円から2024年の1,984万円へ、229万円増えている。

ただし平均貯蓄には負債が含まれていない。40歳未満の世帯は貯蓄867万円に対し負債1,765万円を抱え、貯蓄から負債を引いた純貯蓄は−898万円になる。負債を持つ世帯の割合も64.4%に上る。40〜49歳も負債保有69.0%で、純貯蓄は−131万円とマイナスのままだ。

「貯金が増えている」という情報と「若い世帯は苦しい」という情報が両方存在するのは、前者が平均貯蓄だけを見て、後者が負債まで含めた純貯蓄を見ているという違いによる。

注意 — 貯金と収入は単位が違う

・この章の数値はすべて世帯単位(家計調査)で、年齢は世帯主の年齢である。dansei・josei章の収入は個人単位(国税庁)で、単位が異なるため1つの文で並べない。

・「平均貯蓄が増えた」という見出しは事実だが、平均は負債を差し引いていない。純貯蓄(貯蓄−負債)で見ると40歳未満と40代はマイナスになる。

→ 次のSection「chuoti」では、平均と中央値の差を見る。単身世帯では平均と中央値が7倍以上違う。

平均と中央値 — 単身世帯は130万円

このセクションの3点

① 単身世帯の金融資産は平均919万円だが、中央値は130万円しかない。

② 平均は中央値の7.07倍で、一部の高額保有世帯が平均を押し上げている。

③ 二人以上世帯でも平均1,940万円に対し中央値720万円で、平均で語ると実態からずれる。

平均と中央値 — 単身世帯は130万円

919万円

単身世帯 金融資産の平均値(J-FLEC 2025年)

130万円

単身世帯 金融資産の中央値(J-FLEC 2025年)

7.07倍

平均÷中央値(単身世帯)

世帯類型平均値中央値
単身世帯919万円130万円
二人以上世帯1,940万円720万円

単身世帯の金融資産は、平均値では919万円ある。しかし中央値は130万円で、平均の7.07分の1にすぎない。平均と中央値がこれほど離れるのは、一部の資産を多く持つ世帯が平均を押し上げているからで、真ん中の世帯の実態は中央値のほうに近い。

二人以上世帯でも同じ構造があり、平均1,940万円に対し中央値720万円で、平均は中央値の約2.7倍になる。単身世帯のほうが平均と中央値の開きが大きいのは、単身世帯の中に資産の少ない世帯と多く持つ世帯の両方が同居しているためだ。

なお、同じJ-FLEC調査は単身世帯の過去1年の手取り収入(税引後)を平均274万円・中央値220万円としているが、これは家計調査や国税庁の個人単位の給与データとは調査主体も定義も異なる別の数値であり、dansei・josei章の実質賃金と単純に足し引きできない。

注意 — 貯金は世帯単位、年齢は世帯主

・この章の金融資産・収入はJ-FLEC調査による世帯単位の数値であり、年齢区分がある場合は世帯主の年齢を指す。

・「金融商品をいずれも保有していない」という設問(単身5.6%・二人以上1.6%)は金融資産ゼロとは別の設問であり、混同しない。

→ 次のSection「gini」では、ジニ係数が本当に拡大し続けているのかを見る。

ジニ係数は拡大していない(再分配後は)

このセクションの3点

① 当初所得のジニ係数は1990年0.4334→2023年0.5855へ拡大した

② 再分配後は1990年0.3643→2023年0.3825でほぼ横ばい

③ 2014年0.5704→2017年0.5594のように下がった年もあり「拡大し続けている」は誤り

当初所得は広がったが、再分配後はほとんど動いていない(+0.0182、率にして約5.0%の上昇)

当初所得と再分配後で、まったく違う国に見える
ジニ係数 1990 → 2023 当初所得(税と社保の前・年金を含まない) 0.4334 0.5855 再分配後(税と社保の後・年金を含む) 0.3643 0.3825 当初所得は大きく拡大したが 再分配後はほとんど動いていない(+0.0182、率にして約5.0%の上昇)
調査年当初所得再分配所得改善度
19900.43340.364315.9%
19990.47200.381419.2%
20050.52630.387326.4%
20110.55360.379131.5%
20140.57040.375934.1%
20170.55940.372133.5%
20210.57000.381333.1%
20230.58550.382534.7%

厚生労働省「所得再分配調査」のジニ係数を見ると、当初所得(税・社会保険料を引く前で、かつ公的年金を含まない所得)は1990年の0.4334から2023年の0.5855まで大きく広がっている。ここだけを見ると「格差が拡大し続けている」という主張は正しく見える。

ところが再分配所得(税・社会保険料を引き、年金や医療給付などの社会保障給付を加えたあとの所得)で見ると、1990年0.3643から2023年0.3825へ、34年でわずかに広がった程度でほとんど動いていない(+0.0182、率にして約5.0%の上昇)になる。改善度(再分配によってどれだけ縮んだか)は15.9%から34.7%へ上がっており、税と社会保障が拡大分の大半を吸収してきたことが分かる。

さらに時系列を細かく見ると、2014年の0.5704から2017年の0.5594へ当初所得のジニ係数自体が一度下がっている。一直線に拡大しているわけではなく、「拡大し続けている」という言い方は事実と合わない。

当初所得が大きく広がって見える理由の一つは、この指標が公的年金を含んでいないことにある。日本は高齢化が進み、年金収入だけで暮らす高齢無職世帯が増えるほど、年金を含まない当初所得の格差は自動的に広がる。つまり当初所得のジニ係数の拡大は、現役世代の格差というより高齢化そのものを映している面が大きい。

ジニ係数は「拡大し続けている」わけではない。当初所得は拡大したが、税と社会保障を通した後の再分配所得はほとんど動いていない(+0.0182、率にして約5.0%の上昇)で、しかも一度下がった年がある。

→ 次の章では、富裕層が本当に増えているのかを確かめる。

富裕層は2.04倍になった

このセクションの3点

① 野村総合研究所の推計で、純金融資産1億円以上の世帯は2011年81.0万世帯→2023年165.3万世帯へ約2.04倍

② 純金融資産の合計は2011年188兆円→2023年469兆円へ約2.49倍

③ 2007年96.4万世帯→2009年89.2万世帯→2011年81.0万世帯と、リーマン・ショック後は減っている

富裕層は2.04倍になった、ただし一度減っている

81.0万世帯

純金融資産1億円以上(2011年・最少)

165.3万世帯

同(2023年)。2.04倍

188兆円

その合計額(2011年)

469兆円

同(2023年)。2.49倍

年1億円以上の世帯数純金融資産の合計
200591.7万世帯213兆円
200796.4万世帯261兆円
200989.2万世帯240兆円
201181.0万世帯188兆円
2015121.7万世帯272兆円
2019132.7万世帯333兆円
2021148.5万世帯364兆円
2023165.3万世帯469兆円

野村総合研究所は、保有する純金融資産(預貯金・株式・債券・投資信託・一時払い生命保険・年金保険などの合計から負債を引いたもの)が1億円以上5億円未満の「富裕層」と5億円以上の「超富裕層」を合わせた世帯数を推計している。これは行政統計ではなく民間企業による推計値であり、単位は個人ではなく世帯である。

この推計によると、2011年に81.0万世帯だった1億円以上保有世帯は2023年に165.3万世帯へ増え、約2.04倍になった。保有する純金融資産の合計は188兆円から469兆円へ約2.49倍になっており、世帯数の伸び以上に金額が伸びている。つまり一世帯あたりの平均保有額も増えている。

ただし2005年から2023年までを通しで見ると、一直線に増えているわけではない。2007年の96.4万世帯から2009年に89.2万世帯、2011年に81.0万世帯へと、リーマン・ショックのあと2回連続で減っている。「富裕層が増え続けている」という言い方も、当初所得のジニ係数と同じく時系列としては正確ではない。株価や地価の変動を受けやすい資産である以上、上下しながら増えてきたというのが実態に近い。

2011年を底に、富裕層の世帯数は約2.04倍・保有資産は約2.49倍になった。ただし2007〜2011年は減少局面であり、この推計は民間の調査によるもので行政統計ではない。

→ 次の章では、この記事の比較そのものが持つ限界を書く。

1990年の30代と2024年の30代は別人である

このセクションの3点

① 1990年に30〜34歳だった人は、2024年には64〜68歳になっている

② 本記事の年代別比較は、年齢で輪切りにした「同じ年齢層」の比較であり、同じ人を追いかけた比較ではない

③ 同じ人を長期間追跡した「同一個人のコホート比較」の統計は存在しない

1990年の30代と2024年の30代は別人である

この記事の「30代」は、1990年の30〜34歳の給与所得者と、2024年の30〜34歳の給与所得者を比べたものである。1990年に30〜34歳だった人は、2024年にはすでに64〜68歳になっている。つまり「30代」という同じラベルの中身は、34年間でまったく別の人たちに入れ替わっている。

統計を年齢で輪切りにして時点間で比べる方法を年齢別断面比較と呼び、同じ人物または同じ生まれ年の集団を時間を追って追跡する方法をコホート比較と呼ぶ。両者は似ているようで問う内容がまったく違う。断面比較が答えるのは「今の30代は、34年前の30代と比べてどうか」という問いであり、コホート比較が答えるのは「34年前に30代だった人たちは、その後どうなったか」という問いである。

本記事の年代別の判定は、すべて年齢別断面比較である。国税庁の「民間給与実態統計調査」も家計調査もJ-FLECの調査も、同じ人物を1990年から2024年まで追跡した縦断調査ではなく、各年に独立して行われた横断調査だからである。同一個人・同一世代を追いかけたコホート比較の統計は、少なくとも本記事で確認できた範囲では存在しない。

過去に別の記事で、賃金構造基本統計調査の40〜44歳と50〜54歳という異なる年の別の年齢集団を「同じ人の10年間の変化」として書き、全章を書き直した経緯がある。今回は同じ誤りを避けるため、年齢別断面比較であることをここで明記する。

断面比較とコホート比較の違い

年齢別断面比較(本記事)

今の30代 vs 34年前の30代

  • ・各時点で独立に集計された30代どうしを比べる
  • ・中身の人はまったく別人
  • ・本記事の判定はすべてこちら

コホート比較(未実施)

1990年の30代のその後を追う

  • ・同一個人・同一世代を34年間追跡する
  • ・1990年に30代だった人は2024年に64〜68歳
  • ・この形の統計は確認できていない

→ この違いを踏まえたうえで、次は「結局、金持ちになったのか」に答える。

結局、金持ちになったのか

このセクションの3点

① 「日本人が」という主語では答えられない。性別を指定して初めて判定できる

② フロー(給料)は男性が全年代でマイナス、女性が全年代でプラスという逆方向に動いた

③ ストック(貯蓄・富裕層)は上位が積み上がる一方、40歳未満は純貯蓄がマイナスのまま

結局、金持ちになったのか

同じ問いに、性別で逆の答えが出る

男性

1990 → 2024・実質

  • ・55〜59歳を除く全年代でマイナス
  • ・最大の下落は20〜24歳の -16.4% と45〜49歳の -15.5%
  • ・名目では増えているので「上がった」とも言える

女性

1990 → 2024・実質

  • ・25歳以上の全年代でプラス
  • ・最大は45〜49歳の +22.7%
  • ・20〜24歳だけ -10.7% でマイナス
年代別の判定をもう一度確認する 第1章と同じ表 開く ▾
収入と貯金は同じ表に並べられない。収入は個人単位で1990年と2024年の比較、貯金は世帯単位で2019年と2024年の比較。年齢の刻みも違う。第1章に、収入だけの判定表と、貯金の参考表を分けて置いた。
⚖️ Claudeの判定 性別を指定しないと答えられない

「日本人は金持ちになったか」という問いは、そのままでは判定できない。

  • フロー(実質給与)は男性が55〜59歳を除く全年代でマイナス、女性は25歳以上の全年代でプラスと、方向がまったく逆
  • 男女計の−7.3%という数字は、両者が打ち消し合った結果であり、どちらの実態も表していない
  • ストック側では上位が2.04倍・2.49倍に積み上がる一方、40歳未満・40代は純貯蓄がマイナスのままで、こちらも一枚岩ではない

年代別の判定表を見ると、20代・40代は男女で判定が真っ二つに割れ、30代も同様である。唯一近い判定になるのは50代で、男性は実質でほとんど動いていない(+0.0182、率にして約5.0%の上昇)(−9.8%/+3.1%)、女性ははっきりプラス(+18.1%)だが、男性側も「貧しくなった」とまでは言えない水準まで来ている。

フロー(毎年の給料)で見ると、答えは性別で真逆だった。男性は55〜59歳を除く全年代で実質マイナス、女性は25歳以上の全年代で実質プラスである。男女計の−7.3%という数字は、下がった男性と上がった女性が足し合わされて打ち消し合った結果であり、「日本人が」という主語を使った瞬間に、男女どちらの実態も見えなくなる。

ストック(貯蓄・資産)で見ると、また別の顔が見える。平均貯蓄額は年代を問わずこの数年で増えているが、40歳未満は負債の増え方のほうが大きく純貯蓄はマイナス898万円のままであり、40代も純貯蓄マイナス131万円である。一方でジニ係数の再分配後はほとんど動いていない(+0.0182、率にして約5.0%の上昇)ながら、純金融資産1億円以上の世帯は2011年から2023年で約2.04倍に増えている。つまり中央から下の家計は借金を抱えたまま足踏みし、上位はより積み上がるという、フローとは別の形の分かれ方が起きている。

まとめると、「日本人は金持ちになったか」という一つの問いには答えられない。性別を指定すれば、フロー面では男性は貧しくなり女性は豊かになったと言え、年代と資産・負債の組み合わせを指定すれば、40歳未満と40代は借金を抱えたまま足踏みし、50代以上と資産上位層はより豊かになったと言える。

→ 次の章では、この記事が確かめられていないことを書く。

私の限界

このセクションの3点

① 貯蓄の1990年・2000年・2010年の数値が取得できておらず、依頼の3時点比較は収入でしか実行できていない

② 収入は個人単位、貯金は世帯単位の統計で、単位が違うため1つの順位にまとめていない

③ ジニ係数と富裕層(NRI)の数値は、原典PDFを自分で開いて確認しておらず、Codexが集めた数値を採用している

私の限界

この記事で確認できていないこと(8項目)

−

収入は国税庁(個人単位)、貯金は家計調査・J-FLEC(世帯単位)で単位が違う

両者を掛け合わせた1つの順位・1つのスコアは作っていない

−

家計調査の年齢は世帯主の年齢であって、本人の年齢ではない

40歳未満・40〜49歳という区分は世帯主基準

−

貯蓄の1990年・2000年・2010年が取得できていない

貯蓄は2019〜2024年の家計調査しかなく、依頼の3時点比較は収入でしか実行できていない

−

家計調査の年齢区分(40歳未満/40〜49歳)と収入側の区分(20〜24歳等)の刻みが合っていない

5歳刻みと10歳刻みが混在している

−

ジニ係数とNRIの富裕層推計は、Codexが集めた数値を私が採用しており、原典のPDFを自分で開いて確認していない

厚生労働省「所得再分配調査」・野村総合研究所の一次資料に自分で当たっていない

−

国税庁の統計は「1年を通じて勤務した給与所得者」だけが対象

年の途中で入社した人・自営業・無職は入っていない

−

実質化は総合CPIで行った

年代ごとに買うものの構成は違うため、実感とはずれる可能性がある

−

60歳以上は年齢区分が途中で変わったため扱っていない

1990年・2000年は「60歳以上」で1区分、2010年・2024年は3区分に分かれる

注意 — 単位と時点をまたいだ断定はしていない

・収入(個人単位)と貯金(世帯単位)を1つの文で並べて優劣を付けていない

・1990/2000/2010年との比較は収入側だけで、貯蓄側は2019年以降しか無い

・ジニ係数・NRI推計は二次情報として扱い、一次資料での再確認はできていない

この記事でいちばん弱いところ

貯蓄の1990年・2000年・2010年が取得できていない。依頼は「1990年、2000年、2010年と比較して貯金と収入から」だったが、実行できたのは収入だけである。貯蓄は2019年から2024年までしか揃わなかった。

またジニ係数と富裕層の数値は、Codexが集めたものを私が採用した。原典のPDFを自分で開いて確認していない。ここは後から差し替わる可能性がある。

→ 以上。単位と時点をそろえないと、この問いには答えられない。

Codexに指摘されて直したこと

公開前に別のモデル(Codex)へ全文を読ませ、50件の指摘を受けた。この記事に対する最も重い指摘は、第1章と結論の判定表そのものだった。

収入は個人単位、貯金は世帯単位。年齢の刻みも違い、比較期間も1990→2024年と2019→2024年で違う。それを1行に並べて「貧しくなった/豊かになった」と判定していた。この記事自身が「混ぜてはいけない」と書いている禁を、看板の表で破っていた。表を2つに分け、判定は収入だけで行うように直した。

ほかに直したもの。「下がり続けている」は2時点の比較からは言えないので「1990年と2024年を比べると下がっている」に。「同じ人たち」は別人の集団なので「同じ年齢区分」に。「再分配後はほぼ横ばい」は評価が強いので実数(+0.0182・約5.0%)を添えた。純貯蓄がマイナスでも住宅ローンなら裏に住宅があるという指摘も反映した。