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🏢 マイクロ法人の資本金はいくらにするか — 数億円を入れるなら「資本金」ではなく「役員借入金」

✍️ 執筆: claude-opus-5

合同会社を作って、そこにほぼ全ての資産を移す。いずれ数億円まで積む。そう決めているなら、資本金をいくらにするかは設立の細目ではなく、最初に決めるべき最大の論点になります。結論は50万円で、そこから一度も動かしません。3億円を資本金で入れた場合と役員借入金で入れた場合の差は、税だけで10年2,000万円を超えるからです。この記事は実在の設立計画(2026年9月・東京・合同会社・決算日8月31日)の数字をそのまま使っています。データ基準日は2026年8月29日。

✅ Section 1: 結論 — 資本金50万円、増資しない、残りは全部借入金

このセクションの3点

① 資本金は500,000円にして、設立から先ずっと動かしません。1,000万円にも1億円にも触れさせません

② 法人に入れる金は資本金以外すべて「役員借入金」にします。数億円でも同じです。役員借入金は資本金等の額に入らないため、いくら入れても均等割も資本割も増えません

③ 唯一の弱点は相続です。役員借入金は貸付金債権として額面で相続財産に入ります。残高が1億円に届く前に出口を設計します

500,000円

資本金。ここから一生動かさない

1,575万円

3億円を資本金で入れた場合の資本割 10年分(東京都・0.525%)

0円

同じ3億円を役員借入金で入れた場合の資本割

70,000円

均等割。借入金で入れる限り何億入れてもこの額(東京23区・従業者50人以下)

この記事の結論

会社にいくら入れるかと、資本金をいくらにするかはまったく別の問題です。同じ3億円を入れても、それを資本金として登記するか、社長個人からの貸付金として入れるかで、毎年かかる税がまるごと変わります。資本金は登記簿に載っているだけで課税対象になり、役員借入金はなりません。だから「たくさん入れるから資本金も厚くしよう」は、税の面では逆になります。たくさん入れる人ほど、資本金は薄くすべきです。

この記事で扱う会社の前提は次のとおりです。合同会社/東京都内のバーチャルオフィス/決算日8月31日/役員報酬0円/社員(出資者)は本人1名。設立の実費は約70,000円、2期目以降の年間維持費は約100,000円(法人住民税の均等割70,000円+バーチャルオフィス+申告ソフト+ドメイン)。個人側の現金は2,540,744円です(2026年8月末・実測)。

当初の計画は資本金100万円+毎月100,000円の役員借入金でした。この記事はそれを組み直しています。

→ 次のSection 2では、資本金がどこで高くなるのかを見ます。段差は2か所しかありません。

📏 Section 2: 全体像 — 資本金の分岐点は2つしかない

このセクションの3点

① 資本金のコストは連続的に増えるのではなく、1,000万円と1億円の2か所で段差になっています

② 線と線のあいだでは税も手数料も変わりません。500,000円と8,571,428円はまったく同じ負担です

③ だから資本金の額は「税」では決まりません。決めるのは手元にいくら残すか、口座審査に通るか、戻すのに何が要るかの3つです

資本金登録免許税均等割/年消費税 第1期外形標準課税中小企業者等の特例
500,000円60,000円70,000円原則免税対象外使える
1,000,000円60,000円70,000円原則免税対象外使える
8,571,428円60,000円70,000円原則免税対象外使える
10,000,000円70,000円180,000円課税対象外使える
100,000,000円700,000円180,000円課税対象外使える
100,000,001円〜資本金×0.7%さらに上がる課税対象使えない

登録免許税は資本金×0.7%、ただし最低60,000円です。0.7%が60,000円に届くのは資本金8,571,428円なので、そこまではずっと60,000円のままになります。つまり50万円で登記しても857万円で登記しても、法務局に払う額は同じです。

均等割は東京23区・従業者50人以下の場合、資本金等の額が1,000万円以下なら年70,000円、1,000万円超1億円以下なら年180,000円です(東京都主税局/freee・2026-08-29時点)。差は年110,000円、10年で110万円です。

1億円の線は、越えた瞬間に別の税制に入ります。外形標準課税の対象になり(付加価値割+資本割)、さらに中小企業者等の特例をまとめて失います。法人税の軽減税率15%、30万円未満の少額減価償却資産の特例(年300万円まで)、交際費800万円の枠、欠損金の全額控除。これらが全部なくなります。

→ 次のSection 3では、なぜ資本金だと課税され、借入金だと課税されないのかという仕組みを見ます。

🔍 Section 3: 原因 — 「資本金等の額」という概念が全部を決めている

このセクションの3点

① 均等割も資本割も、判定に使うのは「資本金等の額」です。資本金と資本剰余金が入り、借入金は入りません

② 資本剰余金に積んでも逃げられません。資本金等の額に含まれるため、均等割と資本割は資本金と同じ扱いになります

③ 逃げ道は役員借入金だけです。会社から見れば負債なので、資本金等の額にも消費税の判定にも入りません

法人住民税の均等割と、外形標準課税の資本割は、どちらも「資本金等の額」という税務上の概念で判定します。これは会社が株主・社員から払い込みを受けた金額の合計にあたるもので、資本金だけでなく資本剰余金も含みます。

ここを勘違いすると設計を間違えます。「資本金を小さくして、残りは資本剰余金に入れればいい」という発想は、登録免許税と消費税の判定は避けられても、均等割と資本割は避けられません。

資本金資本剰余金役員借入金
資本金等の額に入るか入る入る入らない
→ 均等割・資本割への影響増える増える増えない
消費税の免税判定に入るか入る入らない入らない
登録免許税0.7%(最低6万円)資本金組入分に0.7%なし
個人へ戻す方法減資(官報公告+1か月+登記)減資に準じる手続き返済だけ。いつでも何回でも
会社の貸借対照表での位置純資産純資産負債

外形標準課税の対象は「資本金1億円超」

資本割が発生するのは、外形標準課税の対象法人になったときだけです。対象は原則として各事業年度末の資本金または出資金が1億円を超える法人です(AGSコンサルティング/PwC Japanグループ・2026-08-29時点)。資本割の税率は資本金等の額×0.525%(東京都)です。

なお2026年(令和8年)4月1日以後開始事業年度からは、特定法人の100%子法人等のうち資本金と資本剰余金の合計が2億円超の法人も対象に加わります(山田&パートナーズ・2026-08-29時点)。個人が100%出資する1社だけの構成なら直接は当たりませんが、グループを組むなら確認が要ります。

役員借入金には登記が要りません。資本金は登記事項なので、増やすたびに登記と登録免許税(0.7%)が発生します。役員借入金は帳簿上の処理だけで、法務局に行く必要も、お金を払う必要もありません。3億円を入れるのに登録免許税210万円を払うか、0円で済ませるかの差になります。

→ 次のSection 4では、実際に3億円を入れた場合の10年コストを、両方の方法で計算します。

💸 Section 4: 規模 — 3億円を入れた場合の10年コスト

このセクションの3点

① 資本金として3億円を入れると、資本割だけで年1,575,000円。10年で15,750,000円かかります

② 同じ3億円を役員借入金で入れると、資本割は0円です。均等割も年70,000円のまま変わりません

③ 登録免許税・均等割の増分・付加価値割・中小企業者等の特例を失う分を足すと、10年の差は2,000万円を超えます

資本金等の額資本割(年)10年で備考
100,000,000円525,000円5,250,000円ここから外形標準課税の対象
300,000,000円1,575,000円15,750,000円増資の登録免許税が別途2,100,000円
500,000,000円2,625,000円26,250,000円
1,000,000,000円5,250,000円52,500,000円

計算は単純で、資本金等の額 × 0.525%です。3億円なら1,575,000円。これは利益がゼロでも、赤字でもかかります。運用がうまくいかなかった年も、事業を止めていた年も、同額です。

ここに付加価値割(収益配分額+単年度損益に対する課税)が加わり、均等割も上がり、増資のたびに登録免許税0.7%がかかります。さらに中小企業者等の特例を失うので、所得800万円以下に適用されていた法人税の軽減税率15%も使えなくなります。

項目資本金で3億円役員借入金で3億円
資本割年1,575,000円0円
均等割大きく上がる年70,000円のまま
外形標準課税対象対象外
中小企業者等の特例失う維持
登録免許税2,100,000円0円
消費税の免税判定影響する影響しない
個人へ戻す方法減資(官報公告+登記)返済だけ

入れるときも、持っているあいだも、出すときも、役員借入金のほうが安く済みます。資本金を厚くして得をする場面が、この構成では見当たりません。

→ ただし、役員借入金にも弱点が1つあります。次のSection 5はその話です。

⚠️ Section 5: 例外 — 役員借入金の唯一の弱点は相続

このセクションの3点

① 社長が会社に貸している金は、社長個人の貸付金債権です。相続が発生すると額面で相続財産に計上されます

② 3億円貸していれば3億円が相続財産に乗ります。会社にその現金が残っていなくても、原則は額面です

③ この一点だけは資本金のほうが有利になりえます。出資持分は会社の純資産価額などで評価されるためです

残高が大きくなってからでは選択肢が減ります

・貸付金債権は<strong>額面で評価されるのが原則</strong>です。回収の見込みが薄くても、自動的に減額されるわけではありません

・役員借入金を増やし続けることは、<strong>社長個人の相続財産を増やし続けること</strong>と同じ意味になります

・対策の多く(生前返済・DES・疑似DES)は<strong>会社に現金があるか、時間があるか</strong>を前提にします。相続が起きてからでは使えません

・DES(債務の資本化)は<strong>債務消滅益に法人税がかかることがあり</strong>、しかも資本金が増えるのでSection 4の税が発生します。節税策として安易に使うものではありません

出口は主に4つ

💴

① 生前に返済する

いちばん素直

会社に現金があるうちに計画的に返します。返済そのものに課税は生じません(元本の返済なので)。金額の上限もありません。会社が現金を持っている状態を作っておくことが条件になります。
🔄

② DES(債務の資本化)

使うなら必ず事前試算

借入金を資本金に振り替えます。相続財産としての貸付金は消えますが、債務消滅益に法人税がかかることがあり、資本金が増えれば均等割・資本割も増えます。専門家と試算してからでなければ触らないほうが安全です。
🔁

③ 疑似DES

現金を回す方法

個人が現金を出資し、会社がその現金で借入金を返済します。債務消滅益を避けられることがありますが、資本金は増えます。出資額を1,000万円未満・1億円以下に抑える設計が要ります。
🛡️

④ 生命保険で納税資金

債権はそのまま

貸付金債権は残したまま、相続税を払う原資だけ別に用意します。会社を清算せずに済むので、事業を続ける前提なら現実的です。

着手の目安

役員借入金の残高が50,000,000円を超えた時点で、税理士と出口を決めてください。「そのうち考える」で1億円まで積むと、選べる手が減ります。これは資本金の設計とは別に、日付を決めて着手すべき論点です。逆に言えば、残高が数千万円のうちは急ぐ必要はありません。

もう1つ、実務上の注意があります。役員借入金が積み上がると、貸借対照表の上で会社は債務超過に見えます。融資を受けるとき、金融機関は社長からの借入金を実質自己資本と見てくれることが多いのですが、保証はありません。ただしこれは融資を取りに行く段になってから、そのときだけDESや資本組み入れを検討すれば足りる話です。先回りして資本金を厚くしておく必要はありません。

→ 次のSection 6では、では数年でどう運用するのか、期ごとのロードマップに落とします。

📅 Section 6: 実務 — 数年でどうするか

このセクションの3点

① 資本金の欄は5年間ずっと500,000円のままです。変えるのは役員借入金の残高だけになります

② 第2期は消費税の判定期です。特定期間(前期の上半期)で判定されるため、この期の増資は絶対に避けます

③ 増資してよいのは融資・許認可の要件・相続対策の3条件のどれかを満たしたときだけ。上限は9,990,000円です

  1. 1

    第1期

    資本金500,000円で設立する

    青色申告の承認申請を最優先で出します(期限は設立後3か月経過日と第1期末のいずれか早い日の前日)。逃すと初年度の赤字を10年繰り越せません。役員借入金の入金と同時に、金銭消費貸借契約書を作ります。
  2. 2

    第2期

    増資は絶対にしない

    消費税は特定期間(前期の上半期)の課税売上高と給与等支払額で判定されます。「資本金1,000万円未満だから2期目も免税」とは限りません。この期に増資すると期首資本金で判定が動きます。
  3. 3

    第3期

    余剰資金は役員借入金として追加する

    金額に上限はありません。資本金は据え置きます。入れた額と返した額を必ず帳簿と契約書の両方に残します。ここを曖昧にすると、後で「本当に借入金か」を説明できなくなります。
  4. 4

    第4期

    役員借入金の残高を見る

    50,000,000円を超えたら相続の出口設計を始めます。会社に現金が残っている状態を作れるかどうかで、選べる手が変わります。
  5. 5

    第5期以降

    数億円規模でも入れ方は変えない

    役員借入金のままです。資本金を動かすのは、下の3条件のどれかを満たしたときだけ。

増資してよくなる3つの条件

🏦

① 融資で自己資本が要るとき

必要になってからでよい

新設法人への融資は事実上オーナー個人の属性審査になるため、資本金を厚くしただけでは通りません。必要になった時点で増資すれば足ります。
📜

② 与信・入札・許認可の要件

要件の直上に合わせる

資本金の下限要件は具体的な数字で示されます。その額の直上に合わせ、それ以上は入れません。
⚰️

③ 相続の評価対策

試算してから

Section 5のDES・疑似DESがこれに当たります。債務消滅益と資本金増加の両方を試算してから実行します。

増資するときの上限

・<strong>9,990,000円まで。1,000万円に乗せてはいけません</strong>。均等割が年110,000円増え、消費税の判定にも影響します

・<strong>1億円は論外です</strong>。外形標準課税の対象になり、中小企業者等の特例をまとめて失います

・増資は<strong>期首の資本金</strong>で消費税の判定に効きます。期の途中で増やすときも、翌期首にどうなるかを先に確認してください

最後に、当初案との違いを1つだけ書いておきます。当初案は「毎月100,000円を役員借入金として入れる」という形でした。金額そのものではなく、毎月という固定の約束が問題になります。この個人の月次収支の平均は+5,430円(家計簿アプリの実測・14か月平均)で、年に直すと65,160円しかありません。毎月100,000円は家計から出ません。「余剰が出たときに入れる」という形にすれば、約束を破らずに済みます。

→ 最後のSection 7で、ここまでを1つにまとめ、この記事の限界と出典を示します。

🧭 Section 7: まとめと、この記事の限界

このセクションの3点

① 会社にいくら入れるかと、資本金をいくらにするかは別問題です。たくさん入れる人ほど資本金は薄くすべきです

② 資本金500,000円・増資なし・残りは全額を役員借入金。これで均等割は年70,000円のまま、資本割はゼロで固定されます

③ 代わりに相続の論点を引き受けます。残高5,000万円を超えたら、税理士と出口を決めてください

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この記事の限界(読む前に知っておいてください)

・<strong>均等割の1億円超の区分を確定できていません。</strong>資本割0.525%(東京都)と、1,000万円以下70,000円/1,000万円超1億円以下180,000円(東京23区・従業者50人以下)までは確認しましたが、それより上の区分は自治体の税率表で確認してください

・<strong>相続税の評価は個別性が高い分野です。</strong>貸付金債権が額面で評価されるのは原則であって、例外もあります。実際の評価は税理士の判断によります

・<strong>DESの債務消滅益を試算していません。</strong>この記事は「安易にやってはいけない」までしか書いていません

・<strong>法人口座の審査に通る資本金の額は論証できていません。</strong>500,000円は「説明のつく水準」として置いた数字で、銀行の審査基準を調べた結果ではありません(基準は公開されていません)

・<strong>これは金額の設計であって、手続きの正しさを保証するものではありません。</strong>税額や制度は自治体・年度・個別事情で動きます。実行前に必ず司法書士・税理士に確認してください

Section 1で「たくさん入れる人ほど資本金は薄くすべき」と書きました。理由はここまでで全部出ています。資本金は登記簿に載っているだけで毎年課税され、増やすのに登録免許税がかかり、減らすのに官報公告と1か月が要ります。役員借入金はそのどれもありません。引き受けるのは相続の一点だけで、それは残高が大きくなる前に手を打てば設計できます。

資本金は500,000円。それが答えです。

出典一覧(すべて2026-08-29時点)

  • 外形標準課税とは?税制改正の内容や計算方法、対象となる法人の条件 — AGSコンサルティング(資本割0.525%、対象は資本金1億円超)
  • 外形標準課税 — PwC Japanグループ
  • 外形標準課税における対象法人の見直し — 山田&パートナーズ(令和8年4月1日以後開始事業年度の改正)
  • 法人事業税・法人都民税 — 東京都主税局
  • 法人住民税とは?均等割や計算方法 — freee(1,000万円以下・従業者50人以下で年70,000円)
  • 法人住民税 — 総務省
  • 個人側の数値(現金2,540,744円、月次収支の平均+5,430円、カード支払い14か月平均231,710円): 筆者の家計簿アプリ satomatashikiookura の本番データベースを2026年8月29日に読み出したもの
  • 法人側の前提(合同会社/東京のバーチャルオフィス/決算日8月31日/役員報酬0円/設立実費 約70,000円/年間維持費 約100,000円): 筆者の法人管理システム satomatashikicompany の company-facts(前提の正本)

同じ内容を satomatashikiookura のコラムと satomatashikicompany のマニュアルにも掲載しています。

→ 設立そのものの手順(実費・期間・順番)は別記事にまとめる予定です。