さとまたwiki

🏦 マイクロ法人で高利回り金融資産を運用する

— 何がベストプラクティスか。563A・カバードコール・YieldMaxを一次情報だけで検証する

✍️ 執筆: Claude Opus

この記事の前提

法人の性格資産運用会社(合同会社)。事業会社ではない
現在の立場すでに別の会社の取締役(そちらで健保・厚生年金に加入済み)
Phase 12〜3年以内に約500万円で運用開始したい
Phase 240歳頃に数千万円を投入(個人資産は数億円)
Phase 3最終形として売上1億円規模
法人形態・体制合同会社役員報酬は0円。会計・税務申告はすべて自分でやる(税理士に依頼しない)
相場観2026年8月時点でナスダックのPER・AI半導体に歪みがあり、壊滅的な調整もありうると見ている

本人が「当面は購入行動を取らない」と明言しているため、この記事は「今すぐ買え」ではなく「いつ、どの箱で、何を持つか」の設計に徹する。投資助言ではない。

数値は原則として一次情報(交付目論見書・指数メソドロジー・Robert Shiller配布データ・米国財務省CSV・Nasdaq公式ファクトシート・国税庁・日本年金機構)から取得している。二次情報を使った箇所はその都度明記した。取得日は2026年8月1日。

既存記事 マイクロ法人(合同会社)資産管理会社 設計書 の続編。設立手続き・合同会社と株式会社の比較・非属人ビジネス候補は既存記事にあるため、ここでは扱わない。

🎯 1. 結論を先に — 3フェーズ別ベストプラクティス

このセクションの3点

① Phase 1(500万円)で法人を作るのは割に合わない。設計値の利回り15%が出ても固定費が分配収入の15.4〜22.7%を食う

② 法人の箱の本当の価値は節税ではなく欠損金10年繰越。つまり「下落を想定する人ほど効く」

③ 高分配ETFの「利回り」は収益ではない。QYLDのSEC30日利回りは0.03%、MSTYは分配の97.56%が元本払戻

※ ①は投資効率の観点での評価である。この検討が趣味であり、かつ10年後に2億円を運用するための前段階であることを踏まえた別の評価軸を、12章に置いた。

15〜23%

元本500万・利回り15%のとき、固定費が分配収入に占める割合

0.03%

QYLDのSEC30日利回り(分配率は11.85%)

97.56%

MSTYの直近分配のうち元本払戻(ROC)が占める割合

41.37

CAPE(2026年7月)。2021年12月は38.30

フェーズ別の結論

フェーズ何を持つか理由
Phase 1
500万円・2〜3年以内
個人の特定口座
法人は作らない
高分配商品を「試す」なら少額で。主軸は低コストの指数連動固定費(均等割7万+バーチャルオフィス+会計ソフト=11.6〜17.0万円)が、設計値どおり利回り15%でも分配収入の15.4〜22.7%を食う。利回り10%なら23.2〜34.0%
Phase 2
数千万円・40歳頃
法人化を検討する水準法人で持つなら分配を出さない資産を主軸に。高分配は法人で不利固定費比率が数%まで下がる。ただし法人の価値は節税ではなく損失の繰越10年にある
Phase 3
1億円・売上1億
法人+個人の併用法人=含み益で回す資産/個人=分配を受ける資産、という役割分担法人は分配金が全額益金算入。分配を受ける器としては個人の申告分離20.315%のほうが軽くなりうる

この記事で覆る「常識」

常識1

「法人なら配当が益金不算入で有利」

米国株指数連動ETFは租税特別措置法67条の6の対象から除外されている。563Aや2865の分配金は法人では全額益金算入。→ 3章

常識2

「マイクロ法人で社会保険料が下がる」

すでに他社の取締役なら二以上事業所勤務として報酬が合算され標準報酬月額が決まる。下がる前提が崩れる。→ 4章

常識3

「分配利回り15%の商品がある」

15%は指数がプレミアム獲得の目標として掲げる数値であり、分配金利回りの約束ではない。目論見書に確定値の記載はない。→ 7章

既存記事の訂正

当サイトの マイクロ法人 資産管理会社 設計書(2026年3月)には、①「国内ETF配当は益金不算入20%適用後で実質16〜18%、法人が若干有利」②「2866=S&P500カバード・コールETF」という記述があるが、今回の一次情報調査の結果、いずれも正確ではない。①は米国株指数連動型が措置法67条の6から除外されているため、②は Global X Japan 公式ページ上 2866 は「米国優先証券 ETF」、S&P500カバード・コールは 2868 であるため。本記事の内容を優先されたい。

→ 次の2章では、この結論の出発点である「箱の固定費」を円単位で積み上げる。

📦 Section 2: 箱の選択 — 個人特定口座 / NISA / マイクロ法人

このセクションの3点

① 役員報酬0円・自分で申告する前提の法人固定費は、均等割7万円+バーチャルオフィス2.58万〜6万円+会計ソフト2万〜4万円=11.58万〜17万円

② 分配利回り15%(563Aの指数が掲げるTarget Premium)を主シナリオにすると、元本500万円の固定費比率は15.4〜22.7%

③ 15%は目標値であり実績で検証できていない。563Aの実績分配は1回のみで、年率換算は読み方次第で6.4%〜16.8%まで振れる

11.6万〜17万円

定常年固定費(均等割+バーチャルオフィス+会計ソフト)

15%

563A連動指数のTarget Premium(利回り確約ではない)

15.4〜22.7%

元本500万円・15%想定時の固定費比率

1,544万〜2,267万円

固定費比率が5%を切る元本水準

三つの箱を比較する

分配金の課税損失の扱い年間固定コスト向く規模
個人特定口座申告分離20.315%(所得税等15.315%+住民税5%)上場株式等の譲渡損失は3年繰越(措置法37条の12の2)。給与・事業所得とは損益通算不可0円Phase1〜(少額から可)
個人NISA成長投資枠非課税制度上「損失」として繰越・通算する対象にならない0円対象商品のみ。カバードコール型はGlobal X Japan公式のNISA対象66本(2026/7/30時点)に1本も含まれず、事実上選べない
マイクロ法人(合同会社・役員報酬0円)措置法67条の6により外国株指数連動型は益金不算入の対象から除外=全額益金算入(→法人税等の課税対象)欠損金は10年繰越(法人税法57条)均等割7万円+バーチャルオフィス2.58万〜6万円+会計ソフト2万〜4万円=11.58万〜17万円(自分で申告する前提)元本が1,500万円台以降で固定費比率が5%を切ってくる

法人の年間固定コストを積み上げる(自分で申告する前提)

費目低位高位確度
法人住民税均等割(東京都特別区・資本金1000万円以下)70,000円70,000円確定・東京都主税局公式PDF(地方税法52条・312条)。赤字でも課税
バーチャルオフィス(登記住所)25,800円60,000円二次情報。月2,150円は当サイト既存記事「/wiki/luxury-resale-office-cost」の構成に基づく
会計ソフト(法人向けクラウド)20,000円40,000円二次情報(各社公表価格。freee/マネーフォワード等の法人プラン)
税理士報酬0円0円自分で申告する前提(下記「自分でやるコスト」参照)
合計(定常年)115,800円170,000円約12万〜17万円。20万円には届かない
(初年度のみ)設立費用・登録免許税60,000円60,000円二次情報中心(条文原文未確認。複数の司法書士事務所サイトが一致)

初年度は登録免許税6万円を加えて175,800円〜230,000円。参考として税理士に外注する場合は年20万〜40万円がさらに上乗せされる(二次情報のレンジ・主軸ではない)。

損益分岐点 — 元本別に固定費が分配収入の何%を食うか

計算式: 年間分配額 = 元本 × 分配利回り。固定費比率 = 固定費 ÷ 年間分配額。

主シナリオは分配利回り15%(563Aの連動指数が掲げるTarget Premium)。固定費は定常年レンジ115,800円〜170,000円を使う。感応度として10%も併記する。

元本年間分配(15%)固定費比率(15%)固定費比率(10%・参考)
500万円75万円15.4%〜22.7%23.2%〜34.0%
1,000万円150万円7.7%〜11.3%11.6%〜17.0%
2,000万円300万円3.9%〜5.7%5.8%〜8.5%
3,000万円450万円2.6%〜3.8%3.9%〜5.7%
5,000万円750万円1.5%〜2.3%-
1億円1,500万円0.8%〜1.1%-

固定費比率が5%を切るのは元本1,544万円〜2,267万円から(固定費÷(0.05×0.15)で算出)。3%を切るのは元本2,573万円〜3,778万円から(固定費÷(0.03×0.15))。

15%という数字の扱いには注意が要る。これは563Aが連動する指数(NDXDCP15)がプレミアム獲得の目標として掲げる Target Premium(年15%固定・カバレッジ比率計算式のTP項)であり、分配金利回りの約束ではない。目論見書にも確定した利回りの記載はない。563Aの分配実績は2026年7月10日の1回のみ(100口当たり1,400円・税引前、第1計算期間は2026年4月21日〜7月10日の約80日)で、年率換算は読み方で大きく変わる。①月次として単純に12倍すると 1,400円×12÷100,031円=年率16.8%相当。②実際の期間80日として年換算すると 1,400円×365÷80÷100,031円=年率6.4%相当。この2つの推計値は倍以上開いており、実績で15%を検証できる段階にはない。

NISAについて一点補足する。Global X Japan公式のNISA成長投資枠対象ファンドリスト(2026年7月30日時点・66本)に、カバードコール型は1本も含まれていない。高分配カバコを非課税で持つという選択肢は、少なくとも同社の対象リスト上は事実上存在しない(リストは対象を列挙したものであり、対象外を宣言する文書ではない点は留保する)。

固定費が11.58万〜17万円に確定したことで、元本500万円でも15%想定なら固定費比率は15.4〜22.7%まで下がる。ただし「自分でやる」の負担は金額に出ない。法人税申告は個人の確定申告と別物で、別表の作成・有価証券の期末評価・分配金の源泉徴収の取り戻し(所得税額控除)まで自力でこなす必要があり、時間コストと申告誤りのリスクは「無料ではない」。この負担を重いと感じるなら、税理士外注込みの比率(固定費27万〜47万円)側で判断すべきだ。

判断のタイムライン

  1. 1

    現状(Phase1)

    元本500万円・15%想定・自分で申告

    固定費比率15.4〜22.7%。ただし15%は目標値であり、実績(6.4〜16.8%相当)はまだ検証段階にない。

  2. 2

    分岐点

    「自分でやり切れるか」の自己評価

    申告実務の負担が重いと判断すれば税理士外注(固定費27万〜47万円)に戻る選択もある。

  3. 3

    元本拡大局面

    元本1,544万円〜2,267万円

    固定費比率が5%を切る水準。Phase2(40歳頃・数千万円投入)で自然に到達し得る。

  4. 4

    再評価

    次章の税制差と合わせて判断

    固定費だけでなく、益金不算入の除外・欠損金10年繰越・役員報酬0円ゆえの出口の重さ(sec3)を合わせて総合判断する。

→ 次のSection 3では、法人という箱を選んだ場合に税制が具体的に何を変えるか(益金不算入の除外・欠損金10年繰越・期末評価・役員報酬0円の帰結)を見る。

🧾 Section 3: 法人だと税が何が変わるか

このセクションの3点

① 措置法67条の6により、外国株指数連動型ETFの分配金は法人では益金不算入が使えず全額益金算入になる(国税庁PDFで確定)

② 欠損金は法人10年繰越(法人税法57条)、個人は上場株式譲渡損失3年繰越・給与等と損益通算不可(措置法37条の12の2)。下落を想定するほど法人が効くという非直感的な結論になる

③ 役員報酬0円だと住民税の特別徴収は発生しない(事務が1つ消える)が、給与所得控除が使えず、個人へ資金を戻す出口(配当・退職金・解散時分配)が重くなる

67条の6

措置法・外国株指数連動型を益金不算入から除外

10年

法人の欠損金繰越(法人税法57条)

3年

個人の上場株式譲渡損失繰越(措置法37条の12の2)

0円

役員報酬(確定)→ 給与所得控除は使えない

益金不算入からの除外 — 分配金課税を個人と法人で比べる

項目個人特定口座マイクロ法人(役員報酬0円)出典・確度
分配金の課税方式申告分離課税20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)全額益金算入 → 法人税等の課税対象。役員報酬による所得圧縮の手段がないため、法人所得にそのままかかる確定(措置法67条の6・国税庁PDF)
益金不算入の適用制度上該当なし(個人は別の課税方式)使えない(外国株価指数連動型は特例の対象から除外)確定(同上)
実効負担のイメージ20.315%で固定法人税等の実効税率相当(資本金1000万円以下法人の具体的な実効税率は本リサーチで未算出=不明)不明(要税理士確認)

役員報酬0円の帰結 — 出口が重くなる

役員報酬0円だと、住民税の特別徴収(給与にかかる天引き・納付事務)はそもそも発生しない。給与の支払いがないためだ。ただし裏返しとして、法人の利益を役員報酬で圧縮する手段がなく、給与所得控除も使えない。個人へ資金を戻す手段は限られ、いずれも「出口が重い」。

出口手段内容課税上の扱い出典・確度
配当法人から個人(株主)へ配当を支払う法人段階で法人税課税済みの利益に、個人段階で配当課税が重なる(二重課税)不明(具体的な二重課税排除措置・条文原文は要税理士確認)
役員退職金将来の退任時にまとめて支給する退職所得として分離課税される制度がある不明(VERIFIED-NUMBERSに具体的数値なし。要税理士確認)
解散時の残余財産分配法人解散時に残余財産を株主へ分配する資本金等の額を超える部分は利益の配当とみなされる(みなし配当課税)所得税法25条1項3号(条文見出しのみ確認。原文一部未確認)

社会保険については、役員報酬0円なら被保険者にならず、マイクロ法人側での健保・厚生年金の加入は発生しない。詳細は次章(sec4)で扱う。

欠損金の繰越 — 下落を想定するなら法人が効く

項目法人個人出典
繰越期間10年3年法人税法57条/措置法37条の12の2
通算できる範囲青色申告要件下で当該事業年度以降の所得と通算上場株式等の譲渡所得・配当所得のみ。給与・事業所得とは損益通算不可国税庁タックスアンサーNo.5762/同上(繰越禁止規定の条文原文は不明)
大きな下落局面での含意10年あれば損失を使い切れる可能性が高い3年で使い切れなかった損失は切り捨てになる-

大きな含み損を出す局面を想定するかどうかで結論が変わる。CAPE 41.37が2022年の谷27.08まで戻ると算術上−34.5%になる(史上最高44.20までの距離は+6.8%)。この振れ幅を前提に置くなら、繰越期間の長さは無視できない差になる。

期末評価 — 含み損は「売らなければ使えない」

法人税法61条の3・施行令119条の12により、売買目的外の有価証券は原価法で評価され、期末の含み損益は実現するまで課税所得に影響しない。つまり含み損があっても、売却しない限り欠損金として使うことはできない。売買目的有価証券に該当しないための区分要件(帳簿上の区分経理の要否等)は条文本文まで確認できておらず、要税理士確認

分配金の源泉徴収 → 所得税額控除(自分で申告する負担が増える箇所)

法人が受け取る分配金にも所得税が源泉徴収され、法人税申告の際にこれを所得税額控除として取り戻す申告作業が要る。役員報酬0円で住民税の特別徴収という事務は消えるが、こちらの申告作業は残る。会計・税務をすべて自分でやる前提(sec2)では、この控除計算まで含めて自力でこなす必要があり、時間コストと申告誤りのリスクが伴う。

外国税額控除・二重課税調整について一点補足する。国税庁No.5761の分配時調整外国税相当額控除の枠組みは確認できたが、563A(韓国籍ETF経由のfund of funds型)が対象銘柄リストに含まれるかはJPX公式ページが取得できず不明のままである。

法人化した場合の年間事務フロー(役員報酬0円)

  1. 1

    分配金受領時

    源泉徴収された状態で入金

    所得税が天引き済みの金額が法人口座に着金する。

  2. 2

    決算・申告(自分でやる)

    所得税額控除を適用

    源泉徴収された所得税を法人税申告で控除し、取り戻す作業が発生する。税理士なしでは自力での計算・記載になる。

  3. 3

    給与事務(消える事務)

    住民税の特別徴収は発生しない

    役員報酬0円で給与の支払いがないため、天引き・納付の事務そのものが起きない。

  4. 4

    含み損局面

    欠損金は10年繰越可

    ただし期末評価は原価法のため、未実現の含み損は繰越金額に反映されない(要税理士確認)。

→ 次のSection 4では、既に取締役として社会保険に加入しているあなたが役員報酬0円の法人を作った場合、社保がどう扱われるかを見る。

🏥 Section 4: 既に取締役のあなたの社保はどうなるか

このセクションの3点

① 役員報酬0円なら、マイクロ法人側で健保・厚生年金の被保険者にならない(実務上の取扱い=要確認)

② 「マイクロ法人で社保を最適化する」一般論は、役員報酬0円の資産保有法人には当てはまらない

③ 既にA社取締役であることの影響は「A社側は変わらない」の一行で決着する

世間で言う「マイクロ法人で社保を最適化する」スキームは、個人事業主が国民健康保険・国民年金から、マイクロ法人の最低等級の厚生年金へ移ることで保険料を抑える手法だ。前提は「役員報酬を(低くても)支払うこと」にある。今回は役員報酬0円であり、この前提そのものが存在しない。

要確認(年金事務所):健康保険・厚生年金は報酬から保険料を徴収する仕組みのため、役員報酬が0円であれば当該法人では被保険者資格を取得しない、という扱いが実務上一般的とされる。ただし日本年金機構の一次情報(法令逐条ページ・疑義照会回答集PDF)でこの点を明記した条文・回答は本調査では確認できなかった(厚生年金保険 適用 疑義照会回答(PDF)ほかを確認したが該当記載を発見できず)。実行前に必ず年金事務所へ確認すること。断定はしない。

上記が実務どおりだとすれば、当初想定していた「二以上事業所勤務でA社報酬とマイクロ法人報酬が合算され社保が上がる」という論点はそもそも発生しない(合算は両方の事業所で報酬が発生している場合の話であり、片方が0円なら対象外)。A社側の社会保険は従来どおり変わらない。

表1: 世間のスキーム vs 今回のケース vs A社取締役への影響

論点世間のマイクロ法人スキーム今回のケース(役員報酬0円)A社取締役への影響
社会保険国保・国民年金→法人の最低等級の厚生年金へ移り保険料を抑える報酬0円のため被保険者資格が発生しない(要確認)A社側の標準報酬月額・保険料は変わらない
住民税の特別徴収給与支払いがあるため特別徴収の対象になる給与支払いが無いため発生しない(事務負担が1つ消える)影響なし
給与所得控除低めの役員報酬でも給与所得控除を使い個人の課税所得を圧縮できる給与自体が無いため使えない。法人利益を圧縮する手段が無い影響なし
個人へ資金を戻す出口役員報酬という定期的な出口がある配当(二重課税)・将来の役員退職金・解散時残余財産分配(みなし配当)のみ影響なし

表2: 役員報酬0円のデメリット

デメリット内容対応
給与所得控除が使えない法人利益を役員報酬で圧縮できない法人税等はそのままかかる。調整手段は欠損金10年繰越のみ
出口が限定される配当・退職金・解散時分配のみ個人へ資金を戻すタイミングを別途設計する必要がある
自分で申告する負担税理士報酬0円の前提。有価証券の評価・外国税額控除等の申告は難度が高い金銭コストではなく時間コストとして認識する

結論:「マイクロ法人=社保節税」という一般論は、役員報酬0円の資産保有法人には当てはまらない。この法人の価値は社保でも節税でもなく、欠損金10年繰越・経費計上・資産分離にある。既にA社取締役であることの影響は「A社側は変わらない」の一行で終わる論点であり、当初想定した山場ではなかった。

→ 次のSection 5では高利回り商品カタログを一覧比較する。

📊 Section 5: 高利回り商品カタログ

このセクションの3点

① 日本上場6本・米国上場9本を同じ形式で並べる。空欄は埋めず「不明」と書く。

② QYLD は分配率11.85%に対しSEC 30日利回りは0.03%。「利回り」は測る対象が違う3種類がある。

③ 法人保有時の課税とNISA可否、国内証券での買付可否(未検証)も併せて事実として置く。

まず日本上場のカバードコールETF6本。2858・576Aは情報開示が薄く「不明」が多いが、網羅性のため行は残す。

コード名称原資産カバコの型実質経費率分配頻度直近12ヶ月分配利回り純資産上場日NISA
563ANASDAQ100・デイリー・カバード・コールNASDAQ100デイリー(原則1DTE、K≧前日終値)約0.2775%毎月不明(実績1回のみ)約448.9億円2026/4/23対象外(目論見書に明記)
2865NASDAQ100・カバード・コールNASDAQ100不明約0.6275%毎月10.14%約486.6億円2022/9/28Global X公式リスト非掲載
2868S&P500・カバード・コールS&P500不明約0.6385%毎月8.73%約79.9億円2022/11/4Global X公式リスト非掲載
2866米国優先証券米国優先証券不明約0.2575%毎月5.60%約77.8億円2022/9/28Global X公式リスト非掲載
2858日経225カバード・コール(プレミアム再投資型)日経225プレミアム再投資型(詳細不明)不明不明不明不明2022/7/29承認不明
576Aチャイナテック・カバード・コールチャイナテック株不明不明不明不明不明2026/5/28承認不明

次に米国上場の9本。「分配率」列と「SEC 30日利回り」列を隣に並べる。この2列の差が構造を語る。

ティッカー戦略(分類)経費率分配頻度分配率SEC 30日利回り純資産設定日
QYLD指数カバードコール(NASDAQ100)0.60%月次11.85%0.03%$8.03B2013/12/11
SPYI指数オプション収入(S&P500)0.68%月次11.99%0.48%$10.92B2022/8/29
YMAX複数単一銘柄オプション収入ファンドオブファンズ1.33%(gross)週次40.22%(7/28時点)92.32%(表示・未検証)$386.81M2024/1/16
YMAG複数単一銘柄オプション収入ファンドオブファンズ1.34%(gross)週次42.81%65.24%(表示・未検証)$278.92M2024/1/29
MSTY単一銘柄オプション収入(MicroStrategy)1.03%週次90.51%3.26%$756.08M2024/2/21
CONY単一銘柄オプション収入(Coinbase)1.04%週次75.03%3.27%$355.77M2023/8/14
AMDY単一銘柄オプション収入(AMD)1.00%週次73.61%1.65%$388.32M2023/9/18
TSLY単一銘柄オプション収入(Tesla)1.07%週次53.04%2.52%$637.93M2022/11/22
NVDY単一銘柄オプション収入(NVIDIA)1.09%週次51.42%2.64%$1.33B2023/5/10
YMAX・YMAGのSEC 30日利回り表示(92.32%・65.24%)は、他の単一銘柄型(1.65〜3.27%)と整合しない。未検証として扱う。

同じ「利回り」という言葉でも、測っている対象が違う。3つを区別する。

呼び名何を測るか含まれないもの
① 分配率(Distribution Rate)直近の分配金実績を年率換算し、基準価額(または市場価格)で割った実績値将来の分配を保証しない。原資(オプションプレミアム/ROC)の内訳は含まない
② SEC 30日利回り直近30日間の配当・利子収入から経費を差し引いた、SEC規格の標準化指標オプションプレミアム、元本払戻(ROC)は含まれない
③ トータルリターン値上がり益(or 値下がり損)+分配金再投資を合算した実際の投資成果563Aは設定来(2026/6/30時点)+9.22% vs ベンチマーク+13.21%と3.99ポイント劣後(実測)

法人でこれらを持つ場合、課税の扱いは箱ごとに違う。

法人での課税上の扱い備考
東証ETF(563A・2865等)分配金は益金算入。措置法67条の6により外国株指数連動の特定株式投資信託は益金不算入の対象から除外される方向配当控除・益金不算入の適用なし(563A目論見書に明記)
米国ETF(QYLD等)米国源泉徴収+日本の法人税課税。外国税額控除(国税庁No.5761の枠組み)で二重課税を調整563Aが外国税額控除の対象銘柄かはJPXで403となり未確認=不明
NISA法人は制度を利用できない(個人限定)563Aは仮に個人でもNISA対象外と目論見書に明記
国内証券会社での買付可否: SBI証券の米国株取扱銘柄リストにYieldMax系ティッカーは見当たらなかった(調査時点)。ただしリストの網羅性そのものは未検証であり、断定はできない。個別の取扱可否は証券会社に要確認。

実際に持っていたらどうなったか — 実績トータルリターン

分配率・経費率は「箱の仕様」でしかない。実際に保有した投資家が同期間の指数・原資産と比べてどうだったかを、Yahoo Finance調整後終値(二次情報・分配再投資込み・税は考慮していない)で同一期間突き合わせる。

−90.0%

CONY 価格(2.96年)

−89.7%

TSLY 価格(3.69年)

−88.5%

MSTY 価格(2.45年)

−86.2pt

2865.T 対MAXIS NASDAQ100・円建て(3.85年)

ファンド比較対象期間ファンド価格リターンファンドTR比較対象TR差(pt)
QYLDQQQ12.58年−29.4%+168.3%+775.8%−607.5pt
XYLDSPY13.08年−2.0%+170.2%+448.2%−278.0pt
RYLDIWM7.28年−36.5%+48.2%+119.6%−71.4pt
JEPISPY6.20年+14.7%+93.9%+161.2%−67.3pt
JEPQQQQ4.25年+18.4%+88.1%+127.7%−39.6pt
SPYISPY3.92年+8.7%+72.7%+118.2%−45.4pt
QQQIQQQ2.50年+5.8%+51.0%+57.8%−6.8pt
GPIQQQQ2.77年+43.2%+89.6%+78.6%+11.0pt
GPIXSPY2.77年+41.7%+77.8%+68.1%+9.7pt
YMAXQQQ2.54年−63.4%+29.9%+57.8%−27.9pt
YMAGQQQ2.50年−45.0%+56.3%+57.8%−1.5pt
MSTYMSTR2.45年−88.5%+12.7%−42.7%+55.3pt
TSLYTSLA3.69年−89.7%+19.3%+150.7%−131.4pt
NVDYNVDA3.23年−39.8%+316.0%+416.6%−100.6pt
CONYCOIN2.96年−90.0%+25.4%+101.9%−76.6pt
AMDYAMD2.87年−50.6%+225.6%+152.1%+73.5pt
2865.T2631.T(MAXIS NASDAQ100・円建て)3.85年+28.0%+89.3%+175.4%−86.2pt
2868.T1655.T(iシェアーズ S&P500・円建て)3.75年+14.9%+62.4%+126.2%−63.8pt

※ Yahoo Finance 調整後終値ベース(二次情報)。分配金は再投資したものとして遡及調整済みだが、分配にかかる税は考慮していない。ファンドと比較対象は同一期間で突き合わせている。太字の枠で囲った行は本文で言及する代表例。

この記事の数字は検算できる

2865の分配利回りは自前計算10.06%・発行体公表値10.14%でほぼ一致。563Aの分配実績は自前計算1口14.00円・目論見書&JPX記載「100口当たり1,400円」で一致。二次情報(Yahoo Finance)と一次情報(発行体公表)が食い違わないことを確認したうえで表を作っている。

→ 次のSection 6では「実際に運用している人はどうなったか」を、成功例と撤退例の両方から検証する。

👥 Section 6: 実際に運用している人はどうなったか

このセクションの3点

① 見つかった実運用記録は6件(成功3・撤退/マイナス3)。いずれも個人ブログ・noteの自己申告で検証不能

② 「毎月分配が入る」体感と、SEC30日利回りやROC比率など一次データを突き合わせると、分配の中身は必ずしもインカムではない

③ 法人名義でカバードコールETFを運用した公開記録は見つからなかった。これ自体が「前例が乏しい」という情報

前置き — これは一次情報ではない

以下の表はすべて個人ブログ・noteの自己申告であり、数字の正確性・改ざんの有無は検証不能。証券会社への直接的なアフィリエイトリンクは今回採用した記事には確認されなかったが、投稿者の投稿動機(アクセス収益・SNSでの評価等)まではわからない。ここでの役割はあくまで「実運用の生の声」を紹介することであり、一次データではないので過度に一般化しない。

媒体・時期銘柄保有期間累計分配評価損益トータル損益本人の総括
イピリカ/2023年3月QYLD 421株2021〜2023年3月(約2年)+182,160円-144,614円(-13.44%)+37,546円為替差益が大きい。株価下落だけならマイナス
アメブロ romuox/2024年10月QYLD 226株明記なし(継続中)866ドル(税引後)-405ドル+460ドル「いちおうプラスで保有継続のモチベーション」
note まも/時期不明(2025頃)QYLD 3,000株長期(複数年)直近月61,068円明記なし配当込み+17%超「上昇相場で指数に置いていかれる」も保有継続
hatenablog 40代G/2025年3月QYLD 7,000株2024年末〜2025年3月(約3ヶ月)128,293円(税引後)-739,974円(-8.19%)-579,000円(-6.4%)「凹んでも諦めがつく資金」1年は実験継続
tanukichi1155/2026年7月YieldMax複数(ULTY/MSTY/CONY/NVDY/PLTY等)継続中(開始年不明)2026年+47,665円-190,850円(MSTY -72.24%)マイナス「失敗だったと思っています」タコ足懸念を明言
honest-farm.com/2023年8月QYLD 36株 vs JEPI 13株2021年11月〜2023年8月(約2年)月5ドル程度(明細なし)VOO>VYM>JEPI>>QYLDQYLDが最劣後QYLDは売却しJEPIは継続(撤退判断を伴う唯一の例)

出典: イピリカ / romuox / まも / 40代G / tanukichi1155 / honest-farm(いずれも自己申告・検証不能)

生存者バイアスに関する注記

「保有期間2年以上・売却して最終損益が確定した記録」を優先して探したが、日本語圏ではほぼ見つからなかった。継続中の投稿者が大半で、撤退後に振り返る投稿は少ない。撤退の記録は成功の記録より圧倒的に見つけにくい——これ自体が、ネット上のカバコ体験談が上振れて見える構造そのものである。

体感と一次データの突き合わせ

銘柄投稿者の体感一次データ突き合わせの意味
QYLD「毎月分配が入ってくる」(まも・romuox共通)分配率11.85% vs SEC30日利回り0.03%分配の実質すべてがインカム由来ではない
MSTY「評価損-72.24%でも分配は継続」(tanukichi1155)直近分配のROC比率97.56%分配のほぼ全額が元本の払い戻し
563A(2026年4月上場のため長期の自己申告記録は無し)分配金再投資基準価額+9.22% vs ベンチ+13.21%短期間でも3.99ポイントの劣後が一次情報で確認済

「毎月分配が入ってくる」感覚と「トータルで資産が増えているか」は別物である。QYLDのケースでは分配率とSEC利回りの差が、分配の中身がオプションプレミアム主体であることを示している。

典型的な失敗パターン

  1. 1

    Step 1

    分配は出続ける

    毎月・毎週、口座に分配金が振り込まれる。まも氏の3,000株のように「先月も入った」という体感が積み上がる。

  2. 2

    Step 2

    基準価額が下がる

    tanukichi1155のMSTYが-72.24%になったように、原資産の上昇を捨てた上で下落局面に巻き込まれると評価損が拡大する。

  3. 3

    Step 3

    分配利回りは見かけ上維持される

    分配額が基準価額に対する比率で算出される商品では、基準価額が下がっても「利回り◯%」の表示自体は高いまま出続けることがある。

  4. 4

    Step 4

    元本が削れていることに気づくのが遅れる

    まも氏が「毎月分配金が入ってくるため『まだ持っておこう』という心理が働く」と自己分析した通り、分配が続く限り含み損の拡大に向き合うタイミングを逃しやすい。honest-farm氏はこの構造をJEPIとの比較で認識し、QYLDのみ売却した。

法人名義での運用記録

今回のリサーチでは、QYLD・JEPQ等のカバードコールETFを法人名義で運用したという自己申告記録は見つからなかった。見つかったのは通常の高配当ETF(HDV/SPYD)をマイクロ法人で運用した1件(stairway-to-fire.com、2022年4月)のみで、カバードコール型ではない。「見つからない」こと自体が、この領域が前例の乏しい未開拓の運用形態であることを示している。

→ 次のSection 7では「何を失っているのか(カバードコールの構造)」を、体感ではなく指数ルールと算術で解剖する。

⚙️ Section 7: 何を失っているのか(カバードコールの構造)

このセクションの3点

① QYLDは12.58年の実績でQQQに−607.5ポイント劣後(価格−29.4%・TR+168.3% vs QQQ+775.8%)。上昇局面では大差で負ける。

② ただし常に負けるわけではない。MSTYは原資産MSTRが−42.7%だった期間に+55.3ポイント勝った。勝ち方は「原資産ほど減らない」であって「増える」ではない(MSTY自体の価格は−88.5%)。

③ 設計で差が出る。フルカバー型(QYLD等)は大敗、部分カバー・アクティブ型(GPIQ・GPIX等)は差が小さいか勝つ。563Aは後者に近い設計。

商品表示されている数値実体を示す数値意味
QYLD分配率 11.85%SEC 30日利回り 0.03%分配の実質すべてがインカム由来ではない
MSTY分配率 90.51%ROC(元本払戻)97.56%分配のほぼ全額が元本の払い戻し
563A分配再投資基準価額 +9.22%ベンチマーク +13.21%3.99ポイント劣後(設定来)

※ SEC 30日利回りは配当・利子収入のみを測る規格化指標で、オプションプレミアムは含まれない。

−29.4%

QYLD 価格(12.58年)

+168.3%

QYLD トータルリターン

+775.8%

QQQ トータルリターン(同期間)

−607.5pt

差(QYLD TR − QQQ TR)

Yahoo Finance調整後終値(二次情報・税考慮なし)。12.58年、QQQが上昇し続けた期間の実績。

設計タイプ代表銘柄対ベンチマーク差(実績)傾向
フルカバー型(毎回上値を全量売り渡す)QYLD・XYLD・RYLD−607.5pt/−278.0pt/−71.4pt上昇局面で大差の劣後
部分カバー・アクティブ型GPIQ・GPIX・QQQI・JEPQ+11.0pt/+9.7pt/−6.8pt/−39.6pt差が小さいか上回る
単一銘柄型(原資産急落時)MSTY・AMDY+55.3pt/+73.5pt下落局面で相対的に勝つ(価格自体は大幅下落)
563A(デイリー・ターゲットプレミアム15%)563A単独−3.99pt(設定来)部分カバー型に近い設計。フルカバー型ほどの大敗はしていない

MSTYの「勝ち」は増えたのではない。TRは+12.7%だが価格自体は−88.5%であり、原資産MSTRの−42.7%より目減りが緩やかだったに過ぎない。「下落局面で相対的に有利」は「上昇する」の意味ではない。

563A交付目論見書 原文

「原資産価格が上昇した場合の値上がり益が限定されるため、原資産のみに投資した場合に対して投資成果が劣後する可能性があります。戦略再構築を重ねた場合、原資産価格が下落しその後当初の水準程度まで回復しても、基準価額の回復は原資産価格に比べて緩やかになる可能性があります」

  1. 1

    行使価格の決定

    実質ATMを選ぶ

    前日NDX終値以上で最も低い行使価格(K_t ≥ NDX_t-1)を選ぶ。デルタでもOTM%固定でもない。

  2. 2

    満期の設計

    翌営業日満期(1DTE)

    原則として翌営業日満期のコールを売る。第3金曜前営業日のみ次のPM決済日を選択する。

  3. 3

    カバレッジ比率

    売る量を式で決める

    CR = min(1, (0.15/252) × NDX / C_bid)
  4. 4

    帰結

    プレミアムが薄い日ほど不利になる

    プレミアムが薄い日ほどCRが1(フルカバー)に近づき、上昇を捨てる量が増える。

563A固有の穴

評価タイミングが米韓市場終値の間で約13時間30分〜14時間30分ズレる(目論見書明記)。韓国籍ETF経由の二重課税で指数比パフォーマンスが押し下げられる。為替ヘッジなし。NISA対象外。

→ 次のSection 8では「今は買い場か」をCAPEと金利の一次データで見る。

🫧 Section 8: 入口の問題 — 今は買い場か

このセクションの3点

① 「割高/割安」を主観で語らず、各資産のインカム利回り − 同じ通貨の10年国債利回りという1つの物差し(スプレッド)で全資産を並べる。

② その物差しで見ると、S&P500の益回り3.93%は米10年債4.68%を−0.75pt下回り投資適格社債(LQD)は米10年債とほぼ同じ(−0.02pt)。リスクを取る対価が薄い。

③ 一方、日経平均は益回りベースで国債を+2.91pt上回り東証REITは+1.78pt。円建て資産の中では相対的に厚い。「買い場でない」は資産クラスで結論が違う。

物差しの定義 — インカム・スプレッド

スプレッド = 資産のインカム利回り(株式は益回り=1 ÷ PER、ETFは直近12ヶ月分配利回り) − 同じ通貨の10年国債利回り

円建て資産は日本国債10年(2.801%)、ドル建て資産は米国債10年(4.68%)を基準に引く。「買い場かどうか」を主観で語らず、この1つの数字で全資産を並べて裁く。スプレッドが薄い・マイナス=リスクを取る対価が支払われていない、と読む。

2.801%

日本国債10年(7/30)

4.68%

米国債10年(7/30)

3.93%

S&P500益回り(2026年3月)

41.37

CAPE(2026年7月)

国債利回り(財務省・米財務省)、日経平均PER・配当利回り(日経公式)、S&P500のPER・益回り(Shiller配布データ)は一次情報。ETF・指数の分配利回り・トータルリターン(表3・表4・後述カード内の数値)はYahoo Finance経由の二次情報であり、税は考慮していない。S&P500関連の数値は2026年3月時点(利益データの最新月)、国債・日経は2026年7月30〜31日時点。

表1: 無リスク金利(基準線)

年限日本国債(名目)米国債(名目)備考
2年1.497%4.23%順イールド(短期<長期)
5年2.033%米5年は未取得
10年2.801%4.68%米実質10年(TIPS)=2.41%(期待インフレ目安 約2.27pt)
20年3.680%5.22%
30年3.971%5.21%
40年3.967%米40年は未取得

表2: 株式のバリュエーション

指数実績PER益回り(1÷PER)配当利回り参考値
日経平均17.50(加重)/ 22.26(単純)5.71%1.66%PBR 1.87倍(加重)
S&P50025.433.93%1.21%長期平均PER 16.20倍・長期中央値 15.07倍
NASDAQ100不明(公式ファクトシート未記載)0.44%上位10銘柄45.04%・半導体4社20.39%

S&P500 PERの歴史的位置(Shillerデータ・実績PER基準):

時点PER益回り
2026年3月(現在)25.433.93%
2021年12月23.634.23%
2000年3月(ドットコム)28.313.53%
1999年12月(ITバブル最高値圏)29.663.37%

表3: 円建て資産のスプレッド一覧(基準=JGB10年 2.801%)

資産利回りスプレッド読み
日経225(1321・分配利回り)1.22%−1.58pt国債を下回る
TOPIX(1306)1.89%−0.91pt国債を下回る
日経平均 配当利回り(日経公式)1.66%−1.14pt国債を下回る
東証REIT指数(1343)4.58%+1.78pt円建て資産では相対的に厚い
米国債20年+・為替ヘッジ有(2621)4.79%+1.99pt
米国債7-10年・円建て(1656)3.74%+0.94pt
2865(NASDAQ100カバコ)10.06%+7.26pt見かけ上最大。中身は下記④参照

表4: ドル建て資産のスプレッド一覧(基準=UST10年 4.68%)

資産利回りスプレッド読み
S&P500 益回り3.93%−0.75pt株式の益回りが国債を下回る
S&P500 配当利回り1.01%−3.67pt
NASDAQ100 配当利回り0.44%−4.24pt
米国REIT(VNQ)3.50%−1.18pt国債を下回る
米国総合債券(AGG)4.05%−0.63pt
投資適格社債(LQD)4.66%−0.02pt信用リスクの対価がほぼゼロ
米長期国債(TLT)4.76%+0.08pt
ハイイールド社債(HYG)5.93%+1.25ptデフォルトリスクの対価としては薄い
QYLD(NASDAQ100カバコ)11.90%+7.22pt見かけ上最大。中身は下記④参照

参考: 日本の益回りスプレッド(日経平均 益回り5.71% − JGB10年2.801% = +2.91pt)と、米国の益回りスプレッド(S&P500 益回り3.93% − UST10年4.68% = −0.75pt)を比べると、株式の相対的な割高さは日本より米国のほうが顕著という比較ができる。

どれがなぜ買い場でないか — 資産クラス別の判定

米国株(S&P500)

S&P500の益回り3.93%米10年債4.68%を−0.75pt下回る。株式のリスクを取って国債以下の期待リターンしかない状態。CAPE 41.37は長期平均17.77の2.33倍。

日本株(日経平均)

日経平均の配当利回り1.66%は日本国債10年2.801%を−1.14pt下回るが、益回り5.71%で見れば+2.91ptのプラス。米国株より相対的に割安という非対称がある。

投資適格社債(LQD)

LQDの利回り4.66%は米10年債4.68%とほぼ同じ(−0.02pt)。企業の信用リスクを取る対価が事実上消えている。

ハイイールド社債(HYG)

HYGの利回り5.93%は+1.25pt。デフォルトリスクを取る対価としては薄い水準。

米国REIT(VNQ)

VNQの利回り3.50%は米10年債を−1.18pt下回る。国債より不動産のリスクを取って利回りが低い状態。

東証REIT

東証REIT指数の利回り4.58%は日本国債10年を+1.78pt上回る。円建て資産の中では相対的に厚く、「買い場でない」とは言い切れない。

カバードコールETF(QYLD +7.22pt/2865 +7.26pt)

見かけ上のスプレッドは全資産中最大。だがこれはスプレッドではない。QYLDのSEC 30日利回りは0.03%であり、分配の大半はオプションプレミアム由来。実績では12.58年でトータルリターン+168.3%に対しQQQ+775.8%(−607.5ポイント)。2865も3.85年でベンチマークに対し−86.2ポイント。詳細は7章参照。

タイムライン: 2022年に何が起きたか

  1. 1

    米10年債金利

    1.63%(1/3)→ 4.25%(10/24)=+262bp

    1年足らずで長期金利が2.6倍以上に急騰した年。

  2. 2

    CAPE(Shiller PER)

    38.30(2021/12)→ 27.08(2022/10)=−29.3%

    金利上昇と同時にバリュエーション倍率が3割近く縮んだ。

  3. 3

    NASDAQ100(トータルリターン)

    2022年 −32.38%

    株価が下がったのではなく、倍率(PER・CAPE)が縮んだ結果として指数が下落した年だった。

表5: 強気材料 / 弱気材料(両論併記)

観点強気材料弱気材料
バリュエーション日経平均は益回りベースで国債+2.91ptあり相対的な余地があるCAPE 41.37は長期平均17.77の2.33倍・史上最高44.20まで+6.8%
集中度NASDAQ100は上位10社以外の92銘柄に分散されている上位10社=45.04%、半導体4社だけで20.39%と一部業種に集中
金利米10年債は2026年レンジの下限3.97%まで低下した実績がある4.68%は日本より高く、S&P500の益回りが国債を下回る逆転が起きている
日米の差日本株は益回りスプレッドで見れば米国株より割安側にある日本株も配当利回りだけで見ると国債を下回り、無条件に安全ではない

→ 次のSection 9では、上昇・横ばい・暴落の3シナリオで税引後の手残りを商品別・法人/個人別に計算する。

📈 Section 8b: 歴史のどこにいるのか — 45ヶ月で+101%、CAPE40超は155年で2回

このセクションの3点

① Shiller 155年分データ(一次情報)で、2022年10月からの45ヶ月上昇を全1,822期間中に位置づけると第197位=上位10.8%だ。

② CAPEが40を超えたのは155年間でドットコム期と現在の2回のみ。1999年12月にCAPE44.2で買った投資家は10年後も実質−27.5%だった。

③ 1970年代型は「株価が暴落した」のではなく「インフレで実質価値が削られ、倍率(CAPE)が潰れた」下落だった。カバードコールは名目の分配を出すが、この種の実質毀損は防げない。

+101.4%

名目S&P500 45ヶ月上昇(2022/10→2026/7)

+87.5%

同期間の実質トータルリターン

第197位

全1,822期間中の順位(上位10.8%)

155年で2回

CAPEが40を超えた回数

表1: 今回の上昇(2022年10月→2026年7月・45ヶ月)

指標始点終点変化
名目S&P5003,7267,504+101.4%
実質トータルリターン+87.5%
CAPE(一次情報・Shiller)27.0841.37+52.8%

出所: Shiller ie_data.xls(一次情報)。実質トータルリターンはCPI調整・分配再投資込み。

表2: 同じ45ヶ月の実質TR 歴代トップ8

順位実質TR期間性質
1+275.3%1932.06→1936.03大恐慌からの反発
2+255.1%1932.07→1936.04大恐慌からの反発
3+220.9%1932.05→1936.02大恐慌からの反発
4+206.7%1925.12→1929.091929年大暴落の直前
5+201.9%1925.11→1929.081929年大暴落の直前
6+197.0%1933.02→1936.11大恐慌からの反発
7+193.1%1877.06→1881.03
8+190.4%1925.04→1929.011929年大暴落の直前

全1,822期間の中央値は+30.6%。今回の+87.5%は中央値の約2.9倍にあたる。トップ8のうち順位4・5・8は1929年大暴落の直前の45ヶ月であり、それ以外(1・2・3・6)は大恐慌からの反発局面。同じ「急騰」でも、暴落後の反発とバブル末期の急騰では意味が違う。

表3: CAPEが40を超えた2回(155年間)

局面期間ピークCAPE
ドットコム1999.01〜2000.09(21ヶ月)44.2(1999.12)
現在2026.05〜2026.07(3ヶ月・進行中)41.4(2026.07)

1999年12月にCAPE 44.2で買った投資家のその後(実質トータルリターン)

  1. 1

    3年後

    実質TR −39.0%(CAPE 23.1)

    ドットコム崩壊で倍率が半分近くまで収縮。名目・実質とも大きく毀損した局面。

  2. 2

    5年後

    実質TR −20.0%(CAPE 27.1)

    一部回復したが、なお実質マイナス圏。CAPEは現在の水準に近いところまで戻っていた。

  3. 3

    10年後

    実質TR −27.5%(CAPE 20.3)

    10年経っても実質でマイナスだった。倍率の圧縮が長期にわたってリターンを削り続けた。

1970年代型のシナリオ(1966年1月→1982年7月・16年半)

指標始点終点変化
名目S&P50093.3109.4+17.2%
実質トータルリターン−26.1%
CPI31.897.5+206.6%
CAPE24.066.64−72.4%
通過点1968.12 CAPE22.28/1973.01 CAPE18.71/1974.12 CAPE8.29/1979.01 CAPE9.26/1982.07 CAPE6.64

この16年半、株価が暴落したわけではない。名目では+17.2%上がっている。だがインフレ(CPI+206.6%)が実質価値を削り、CAPEが24.06から6.64まで潰れた。倍率収縮そのものが下落の正体だった。出発点のCAPEは24.06——現在の41.37はその1.7倍にあたる。

カバードコールは毎月の名目分配を出し続けられるが、この種の実質毀損(インフレによる購買力の削り取り)は防げない。分配金自体もインフレで実質価値が目減りする対象であり、倍率収縮を打ち消す仕組みではないからだ。

暴落は1種類ではない

期間何が起きたかカバードコールは有効か
2022年型約1年(2021.12→2022.10)金利急騰でCAPEが38.30→27.08へ収縮(−29.3%)。株価が名目で下落相対的に有効(下記sec8c参照)
2000年型10年(1999.12起点)バブル崩壊。CAPE44.2→10年後も実質−27.5%。倍率も高値から長期間戻らない限定的(分配は出るが元本の実質毀損は残る)
1970年代型16年半(1966→1982)名目は上がるがインフレで実質−26.1%。CAPEが24.06→6.64まで潰れる無効に近い(インフレによる実質毀損は分配で埋まらない)

現在の水準(CAPE41.37)が過去に一致した局面は、いずれも「その後に長期の実質毀損」を伴っている。これは予測ではなく、過去に同じ水準だった時に何が起きたか、という事実の提示である。

→ 次のSection 8cでは、この3つの相場局面で「カバコ・レバレッジ・素の指数」のどれが勝ち、どれが負けたかを実測で突き合わせる。

⚔️ Section 8c: カバコ vs レバレッジ vs 素の指数 — 3つの相場で勝つ商品は入れ替わる

このセクションの3点

① 上昇局面(2022/10→2026/7)ではTQQQ+534.1%に対しQYLDは+72.4%(価格は+9.2%)。レバレッジが圧勝する。

② 2022年の下落局面ではQYLD−19.6%・JEPQ−13.6%がQQQ−29.8%より良かった一方、TQQQは−74.8%。ただし現金なら0%だった。

③ 相場観と商品が一致していないことが最大の失敗。カバードコールは「横ばいに賭ける道具」であり、暴落に賭けるなら現金・国債の方が直接的。

表1: 今回の上昇局面(2022/10→2026/7)

銘柄性格トータルリターン価格リターン
TQQQQQQ 3倍レバレッジ+534.1%+504.3%
QLDQQQ 2倍レバレッジ+328.4%+323.1%
SPXLSPY 3倍レバレッジ+312.9%+298.3%
SSOSPY 2倍レバレッジ+195.4%+187.6%
QQQ素の指数+151.6%+145.9%
JEPQプレミアム収益+110.7%+38.7%
SPY素の指数+101.8%+92.0%
2865.Tカバードコール+85.1%+25.2%
QYLDカバードコール+72.4%+9.2%

出所: Yahoo Finance 調整後終値(二次情報・税考慮なし)。上昇局面ではTQQQがQYLDの約7.4倍のトータルリターン。

表2: 2022年の下落局面(2021/11/19→2022/10/14)

銘柄性格トータルリターン
TQQQQQQ 3倍レバレッジ−74.8%
QLDQQQ 2倍レバレッジ−56.1%
SPXLSPY 3倍レバレッジ−53.9%
SSOSPY 2倍レバレッジ−37.1%
QQQ素の指数−29.8%
QYLDカバードコール−19.6%
SPY素の指数−17.7%
JEPQプレミアム収益−13.6%

QYLD−19.6%はQQQ−29.8%より10.2ポイント良く、JEPQ−13.6%は16.2ポイント良かった。下落局面ではカバコが実際に効いた。一方で現金なら0%——「守った」と呼べるかどうかは比較対象次第である。

表3: 長期(2014/1→2026/7・12.5年)

銘柄トータルリターン価格リターン
TQQQ+4,666.6%+4,430.9%
QLD+2,461.0%+2,411.6%
SPXL+1,690.9%+1,523.2%
SSO+985.4%+919.3%
QQQ+732.8%+656.6%
SPY+391.4%+298.1%
QYLD+157.7%−31.7%

12.5年でTQQQはQYLDの約30倍のトータルリターンを稼いだ。ただし、そのTQQQは2022年に−74.8%を経験している。長期の勝者は、途中の最大下落幅も引き受けた者である。

結論: 3つの相場局面で勝つ商品

相場最強最弱
上昇レバレッジ(TQQQ +534.1%)カバコ(QYLD +72.4%)
下落カバコ(QYLD −19.6% / JEPQ −13.6%)※現金は0%レバレッジ(TQQQ −74.8%)
横ばいカバコ(理論上)レバレッジ(減価)

では何を選ぶべきか — 相場観別の対応

  1. 1

    相場観: 上がると思う

    素の指数、確信が強ければレバレッジ

    レバレッジは上昇局面で最も直接的に応える。ただし−74.8%を耐えられるかが前提条件になる。

  2. 2

    相場観: 横ばいだと思う

    カバードコールはここでだけ合理的

    上値を捨てる代わりにプレミアムを取る設計は、上がりも下がりもしない相場で最も理屈が通る。

  3. 3

    相場観: 暴落すると思う

    現金・国債(米10年4.68%/日本10年2.801%)

    カバコではない。QYLDも2022年は−19.6%だった。暴落を避けたいなら、無リスク金利を確定させる方が直接的。

  4. 4

    相場観: 分からない

    素の指数を淡々と

    上昇・下落いずれでも極端に負けない選択。相場観が定まらないなら、道具にも極端な性格を持たせない。

相場観と商品が一致していないことが最大の失敗である。「暴落を警戒しているのにカバコを持つ」「横ばいを想定しているのにレバレッジを持つ」といったズレは、上の表が示す通り数字で裏切られる。

→ 次のSection 9では、上昇・横ばい・暴落の3シナリオ×商品×法人/個人で税引後の手残りを算出する。

📉 Section 9: リスクとリターンを数字で

このセクションの3点

① 上昇+20%/横ばい0%/暴落−32.38%(2022年NDX実測)の3シナリオで税引後手残りを比較する

② 商品はNASDAQ100直接・563A型(カバコ)・超高分配型(YieldMax型)の3つ

③ すべて簡略モデル。「暴落する」という予測ではなく「過去の下落幅が来たら」という算術

1,000万円

元本(Phase2想定)

+20%

上昇シナリオ

0%

横ばいシナリオ

−32.38%

暴落シナリオ(2022年NDX TR実測)

商品は(a)NASDAQ100そのもの(カバコ無し)、(b)563A型(デイリーカバコ・ターゲットプレミアム15%)、(c)超高分配型(YieldMax型・MSTYの分配率90.51%/ROC比率97.56%を借用したモデル)の3つ。箱は個人特定口座(分配20.315%課税)と法人(分配は益金算入・実効税率は本記事独自の簡易合算で約36.8%+均等割年7万円)。評価損益は保有継続を前提に未実現=法人は原価法(法人税法61条の3)で無税、個人も特定口座内で売却するまで無税として計算した。

  1. 1

    モデル①

    NASDAQ100直接=分配金なしの単純増減

    分配金は一次情報のファクトシートに記載が無いため0円と仮定。評価損益=元本×シナリオ変化率のみ。

  2. 2

    モデル②

    563A型=上昇はプレミアムで頭打ち、下落は素通し

    分配金=ターゲットプレミアム15%を固定計上。評価損益=シナリオ変化率がマイナスの時だけそのまま反映(プラスの時は0=上値はコールを売って手放す)。

  3. 3

    モデル③

    超高分配型=分配金の97.56%が評価損益を同額削る

    分配金=MSTY実測90.51%を固定計上。評価損益=元本×シナリオ変化率−分配金×ROC比率97.56%。分配のほぼ全額が自分の元本の払い戻しであるため、見た目の高分配がそのままNAVを削る。

① 上昇シナリオ(+20%)

商品分配金評価損益税引後トータル
(a)NASDAQ100直接個人0.0万+200.0万0.0万1,200.0万
(a)NASDAQ100直接法人0.0万+200.0万0.0万1,193.0万
(b)563A型個人150.0万0.0万30.5万1,119.5万
(b)563A型法人150.0万0.0万55.2万1,087.8万
(c)超高分配型個人905.1万▲683.0万183.9万1,038.2万
(c)超高分配型法人905.1万▲683.0万333.1万882.0万

② 横ばいシナリオ(0%)

商品分配金評価損益税引後トータル
(a)NASDAQ100直接個人0.0万0.0万0.0万1,000.0万
(a)NASDAQ100直接法人0.0万0.0万0.0万993.0万
(b)563A型個人150.0万0.0万30.5万1,119.5万
(b)563A型法人150.0万0.0万55.2万1,087.8万
(c)超高分配型個人905.1万▲883.0万183.9万838.2万
(c)超高分配型法人905.1万▲883.0万333.1万682.0万

③ 暴落シナリオ(−32.38%=2022年NDX実測)

商品分配金評価損益税引後トータル
(a)NASDAQ100直接個人0.0万▲323.8万0.0万676.2万
(a)NASDAQ100直接法人0.0万▲323.8万0.0万669.2万
(b)563A型個人150.0万▲323.8万30.5万795.7万
(b)563A型法人150.0万▲323.8万55.2万764.0万
(c)超高分配型個人905.1万▲1,206.8万183.9万514.4万
(c)超高分配型法人905.1万▲1,206.8万333.1万358.2万

前提(すべて簡略モデル)

・法人形態は合同会社、役員報酬0円、会計・税務申告はすべて自分で行う(税理士報酬0円)前提。給与所得控除は使えない

・元本1,000万円、保有継続(売却なし)。評価損益は未実現につき法人は原価法(法人税法61条の3)、個人も特定口座内では無税として計算

・法人の実効税率は独自の簡易合算=法人税23.2%+地方法人税(法人税額×10.3%)+事業税7.0%+特別法人事業税(事業税額×37%)+都民税法人税割(法人税額×7.0%)=約36.8%。事業税の損金算入による還流効果は含めない単純合算で、公式の実効税率算定式ではない

・法人の固定費は年約11.6〜17.0万円(均等割7万円+バーチャルオフィス2.58〜6万円+会計ソフト2〜4万円、税理士報酬0円)。会計を自分で行う分、有価証券評価や外国税額控除等の申告難度は時間コストとして別途発生する

・(b)563A型は目標プレミアム15%を年率固定とし、上昇時は評価損益0(上値をコール売りで手放す)、下落時はシナリオ変化率をそのまま評価損益に反映する簡略モデル。実際のカバレッジ比率は日々のプレミアム水準で変動する

・(c)超高分配型はMSTY実測値(分配率90.51%・ROC比率97.56%)を借用。MSTYは単一銘柄(MSTR)連動でNASDAQ100とは値動きが異なるため、本シナリオへの当てはめは「高分配・高ROC型商品の挙動の例示」であり実測ではない

・(a)NASDAQ100直接の分配金は一次情報未取得のため0円と仮定

・−32.38%は2022年のNDXトータルリターン実測値であり「将来暴落する」という予測ではない

① 暴落シナリオでは法人の箱が方向として効く:評価損益は未実現のうちは無税で、将来実現した場合の欠損金繰越も法人10年・個人3年(他の所得と通算不可)で法人が長い。ただし本シナリオの税引後トータル自体には評価損益を無税で揃えているため未反映で、効くのは「将来売却して損失を使う場面」だ。

② 上昇シナリオではカバコが最も損をする:NASDAQ100直接(個人1,200.0万円)に対し563A型(個人1,119.5万円)は約80.5万円少ない。上昇益をプレミアムの範囲に差し出す構造がそのまま数字に出る。

③ 超高分配型は分配金の見た目(905.1万円)ほど増えていない:ROCにより評価損益が同額圧縮され、上昇・横ばい・暴落いずれも税引後トータルは分配金ゼロのNASDAQ100直接と同水準かそれ以下に収まる。

→ 次のSection 10では、これらの数字を踏まえたPhase別の提案を示す。

🧭 10. あなたへの提案

このセクションの3点

① 法人の箱が意味を持ち始めるのは、利回り15%想定で元本1,544〜2,267万円から(固定費が分配収入の5%を切る水準)

② ただし「高分配商品を法人で持つ」のは税制上ちぐはぐ。法人と個人で持つ資産を逆にすべき

③ Phase 1(500万円)でやるべきは法人設立ではなく記録を取ること

法人の箱が「割に合う」水準

年間固定費の内訳(会計は自分でやる/合同会社)

費目低位高位根拠
法人住民税 均等割70,000円70,000円赤字でも課税。東京都主税局で実額確認(地方税法52条・312条)
バーチャルオフィス(登記住所)25,800円60,000円月2,150円=当サイト オフィスコスト最小化 の構成(二次情報
会計ソフト(法人向けクラウド)20,000円40,000円各社公表価格(二次情報
税理士報酬0円0円自分で申告する前提。ただし時間コストは別途
合計(定常年)115,800円170,000円初年度のみ設立の登録免許税60,000円が加わる

固定費が分配収入に占める割合

563Aの連動指数が掲げる Target Premium は年15%。これを主シナリオとし、10%・5%を感応度として併記する。

元本年間分配
(利回り15%)
固定費比率
利回り15%(主)
利回り10%利回り5%
500万円
Phase 1
75万円15.4〜22.7%23.2〜34.0%46.3〜68.0%
1,000万円150万円7.7〜11.3%11.6〜17.0%23.2〜34.0%
2,000万円
分岐点付近
300万円3.9〜5.7%5.8〜8.5%11.6〜17.0%
3,000万円
Phase 2
450万円2.6〜3.8%3.9〜5.7%7.7〜11.3%
5,000万円750万円1.5〜2.3%2.3〜3.4%4.6〜6.8%
1億円
Phase 3
1,500万円0.8〜1.1%1.2〜1.7%2.3〜3.4%

計算式: 固定費比率 = 年間固定費(115,800〜170,000円)÷(元本 × 分配利回り)。

分岐点の目安

固定費が分配収入の5%を切るのは、利回り15%想定で元本1,544〜2,267万円から。3%を切るのは2,573〜3,778万円から。これは「箱の維持費が軽くなる水準」であって、「法人にすると得になる水準」ではない。税負担の向きは別に検討が必要(次の箱を参照)。

「15%」をそのまま信じてはいけない理由

15%は連動指数がオプションプレミアム獲得の目標として掲げる値であり、分配金利回りの約束ではない。目論見書に確定した利回りの記載は無い。563Aの分配実績は2026年7月10日の1回のみ(100口当たり1,400円・税引前)で、第1計算期間は2026年4月21日〜7月10日の約80日である。この1回から年率を推計すると、読み方で倍以上変わる。

読み方計算年率換算
月次分配として単純に12倍1,400円 × 12 ÷ 100,031円約16.8%
実際の対象期間80日として年換算1,400円 × 365 ÷ 80 ÷ 100,031円約6.4%

どちらも1回の実績からの推計にすぎない。基準価額は2026年7月31日時点で100,031円(100口当たり)。現時点では、実績で15%を検証できる段階にない。

最大の矛盾 — 高分配商品と法人は相性が悪い

この記事の出発点は「マイクロ法人で高利回り金融資産を運用する」だった。しかし調べた結果、その組み合わせ自体が税制上ちぐはぐである。米国株指数連動ETFの分配金は租税特別措置法67条の6の益金不算入から除外され、法人では全額が益金に算入される。一方、個人なら申告分離課税20.315%で完結する。分配を受け取る器としては、個人のほうが軽い可能性が高い(法人税等の実効税率は本調査では一次情報で確定できなかったため断定は避ける。要確認)。

さらに役員報酬0円なので、法人に残った利益を役員報酬で圧縮する手もない。出口は配当(二重課税)・将来の役員退職金・解散時の残余財産分配(みなし配当・所得税法25条)に限られる。分配金という「毎年課税される収入」を、出口の重い箱に貯め込む構図になる。

提案 — 持つ資産を法人と個人で逆にする

向く資産理由
法人分配を出さない/少ない資産(無分配・低分配の指数連動、含み益で回すもの)売買目的外なら原価法で、含み益は実現するまで課税されない。損失は10年繰り越せる(法人税法57条)。毎年の分配課税を避けられる
個人分配を受け取る資産(どうしても高分配を持つならこちら)申告分離20.315%で完結。益金不算入の除外規定の影響を受けない
NISAカバードコール型は選択肢に入らない563Aは目論見書で対象外と明記。Global X Japan公式のNISA対象66本にカバコ型は1本も含まれていない

今やること/やらなくていいこと

やること

  1. 個人の特定口座で少額の実地検証。563Aを1単元でも持てば、分配・基準価額・指数との乖離が自分の口座の履歴として残る。この記事の数字を自分で検算できるようになる
  2. 定点観測の対象を決めておく。CAPE(Shiller配布データ・月次更新)、10年債利回り(米財務省CSV・日次)、NDXの上位10ウェイト(Nasdaq公式ファクトシート・四半期)。いずれも無料で一次情報が取れる
  3. 法人設立は資産が閾値を超えてから。利回り15%想定で1,544〜2,267万円が固定費の目安ライン。40歳頃に数千万を入れる計画なら、その時点で条件を満たす
  4. 設立するなら先に申告を一度やってみる。法人税申告は個人の確定申告と別物で、別表の作成・有価証券の期末評価・外国税額控除の申告は難度が高い。「自分でやる」前提が崩れると固定費は税理士報酬の分だけ跳ね上がり、分岐点も動く

やらなくていいこと

  1. 500万円のために今すぐ法人を作ること。設計値どおり利回り15%が出たとしても固定費が分配収入の15.4〜22.7%を食う。利回りが10%に留まれば23.2〜34.0%。税負担の向きも法人が有利とは言えない
  2. 「利回り15%」を目当てにした集中投資。15%は指数がプレミアム獲得の目標として掲げる数値で、分配金利回りの約束ではない。563Aの目論見書に確定した利回りの記載はない
  3. YieldMax系への資金投入。MSTYは直近分配の97.56%が元本払戻。SBI証券の米国株取扱リストにも見当たらなかった(網羅性は未検証)
  4. 相場観を商品選択で表現しようとすること。「暴落しそうだからカバードコール」は噛み合っていない。理由は次章で述べる

→ 最後の11章では、ここまでの提案に対して私自身が反対する点を述べる。

⚖️ 11. 批評 — 私が反対する点

このセクションの3点

「暴落を警戒しているからカバードコール」は噛み合っていない。カバコが最も効くのは横ばい相場であって、暴落局面ではない

② 構想の中で最も弱いのは商品選択ではなく「高分配 × 法人」という組み合わせそのもの

③ それでも賛成できる点がある。今買わないという判断と、器を先に設計しておくという順番は正しい

① 客観データ(この記事で確認できた事実)

領域確認できた事実出所
相場水準CAPE 41.37(2026年7月)。2021年12月の38.30を上回る。長期平均17.77の2.33倍Shiller配布データ
集中度NDX上位10で45.04%。半導体4社で20.39%。3位がMicronNasdaq公式ファクトシート
商品QYLD 分配率11.85%/SEC30日利回り0.03%。MSTY 分配の97.56%が元本払戻各issuer公式
税制外国株価指数連動型は措置法67条の6の益金不算入から除外国税庁

② 成功仮説(この構想が成り立つ条件)

「マイクロ法人 × 高利回り」が機能するのは、次の3つが同時に成り立つときに限られる。

  1. 1

    条件

    相場が横ばいで推移すること

    カバードコールが原資産に勝てるのは、上がりも下がりもしない期間だけ。上昇すれば取り逃し、下落すればプレミアム分しか緩衝しない

  2. 2

    条件

    資産規模が固定費を薄められること

    利回り15%想定で1,544〜2,267万円。Phase 2以降で初めて満たす

  3. 3

    条件

    分配金を法人に貯めても出口が塞がらないこと

    役員報酬0円だと圧縮手段がなく、出口は配当・退職金・解散に限られる。ここが最も検証されていない

③ あなたの構想(私の理解)

「ナスダックのPERとAI半導体に歪みがあり、壊滅的な調整もありうる。だから指数をそのまま持つのではなく、高い分配を出す商品で受け取りながら、法人という箱で税を最適化したい」——というものだと理解した。

④ 批評 — 反論と盲点

反論 1・最も重要

カバードコールは「暴落が来ても大損しない」代わりに「来なかったら大負けする」賭けである

まず公平を期す。「カバードコールは下落局面で守らない」というのは言い過ぎだった。実データはむしろ逆を示している。MSTYは原資産MSTRが−42.7%だった2.45年間に、トータルリターンで+55.3ポイント上回っている。理論どおり、下落・横ばい局面では相対的に優位に立つ。

問題はそこではなく、賭けの非対称性にある。暴落予想が当たった場合の見返りは「原資産ほど減らない」程度にとどまる(MSTYのトータルリターンは+12.7%だが、価格は−88.5%まで削れている)。一方、予想が外れて相場が上昇した場合の代償は桁違いに大きい。QYLDは12.58年でQQQに−607.5ポイント、日本の2865も3.85年で−86.2ポイント負けている。

つまり「当たっても小さく勝ち、外れたら大きく負ける」構造である。相場観に賭けたいなら、これは効率の悪い賭け方だ。しかも今は、米国債10年が4.68%、日本国債10年が2.801%と、無リスクで取れる利回りが十分にある。壊滅的な調整を本気で想定しているなら、整合的な選択は国債か現金であって、カバードコールではない。

反論 2

「高分配 × 法人」は税制上ちぐはぐで、組み合わせとして最悪に近い

米国株指数連動ETFの分配金は法人で益金不算入が使えない(措置法67条の6の除外)。一方で法人の強みである含み益の課税繰り延べ(売買目的外は原価法)は、分配を出さない資産でこそ効く。毎年強制的に課税所得を発生させる商品を、繰り延べが強みの箱に入れていることになる。役員報酬0円で圧縮手段もない。

盲点 1

563Aは実績が3か月しかない

設定は2026年4月21日。分配実績は2026年7月10日の1回(1,400円/100口)のみ。連動指数のIndex Live Dateも2024年4月22日で、それ以前はバックテストである。目論見書の参考グラフはファンド運用開始前の期間を示している。「実績で評価する」ことがまだできない商品を、相場観の受け皿にしようとしている。

盲点 2

為替と、韓国経由という構造上の摩擦

563Aは為替ヘッジなし。さらに韓国籍ETFを98.05%保有する構造のため、米国市場と韓国市場の終値の間に概ね13時間30分〜14時間30分の評価タイミングのズレが生じると目論見書に明記されている。二重課税により「課税前ベースで算出される対象指数との比較においてパフォーマンスを押し下げる要因となる」とも書かれている。設定来で基準価額+9.22%に対しベンチマーク+13.21%と3.99ポイント劣後しているのは、この摩擦の現れとして読める(要因分解の一次資料はなく、断定はできない)。

盲点 3

前例が見つからない

カバードコールETFを法人名義で運用している公開記録は、今回の調査では見つからなかった。これは「誰もやっていないから駄目」という意味ではないが、実務上の落とし穴を先人から学べないことを意味する。会計を自分でやる前提なら、有価証券の期末評価区分の判定や外国税額控除の申告を、参照事例なしで自力で処理することになる。

盲点 4

CAPEは水準を測るが、時期は当てない

CAPE 41.37は歴史的に極端な水準である。ただし1999年12月に44.20を付けた後もしばらく相場は続いた。割高であることと、いつ下がるかは別の問題である。この記事は「歪みがある」ことは数字で示せるが、「いつ調整するか」は示せない。そこを混同すると、待っている間ずっと機会を逃し続けることになる。

⑤ 改善案

  1. 1

    商品と相場観を一致させる

    暴落を警戒しているなら、それは入る時期で表現すべきで、商品で表現すべきではない。カバードコールに期待していい相場は「横ばい」であって「暴落」ではない

  2. 2

    箱と中身を入れ替える

    法人には分配を出さない資産を、個人には分配を受け取る資産を。法人の強みは繰り延べと10年繰越であり、分配課税を毎年受けることではない

  3. 3

    法人設立を資産規模に紐付ける

    「2〜3年以内」という時間ではなく、「利回り15%想定で1,544〜2,267万円」という金額を設立のトリガーにする。40歳頃に数千万を入れる計画なら自然に満たす

  4. 4

    出口を先に設計する

    役員報酬0円で法人に利益を貯める以上、取り出す方法を入口の時点で決めておく。将来の役員退職金規程の整備、解散時のみなし配当の見積もり。ここは税理士に一度確認する価値がある

賛成できる点

批判を並べたが、「今は動かない」という判断そのものは正しいと考える。CAPE 41.37という水準で、実績3か月の商品に、まだ作っていない箱で入る——という三重の不確実性を同時に取る理由はない。器を先に設計してから、条件が揃った時に動くという順番は合理的だ。この記事の役割は、その条件を金額(利回り15%想定で1,544〜2,267万円)と構造(分配は個人・含み益は法人)で具体化したことにある。

なお本記事は投資助言ではない。税務の判断は条文の解釈を伴い、本調査でも実効税率の計算式・有価証券の期末評価区分の判定要件・563Aが二重課税調整の対象銘柄かなど、一次情報で確定できなかった論点が複数残っている。実行前には税理士および年金事務所への確認を推奨する。

🎲 12. 補論 — 趣味であること、そして2億円の前段階であること

このセクションの3点

① ここまでの11章は投資効率で評価してきたが、前提が2つ抜けていた。これは趣味であり、10年後に2億円を運用するための前段階である

② その軸で見るとPhase 1の結論は反転する。年11.6〜17.0万円=月1.0〜1.4万円は、趣味の維持費として高くない。利回りで測る対象ではない

③ ただし7章から11章の分析は無効にならない。本番が2億円である以上、箱の設計ミスは10年で1,500万円規模の差になる

評価軸を間違えていた

ここまでの11章は、一貫して「投資として割に合うか」で書いた。その結果、Phase 1の500万円については「固定費が分配収入の15.4〜22.7%を食うので割に合わない」と結論した。

この評価は、前提が2つ抜けている。

抜けていた前提 1

これは趣味である

ゲームも酒も煙草もやらず、ビジネスそのものが趣味になった人にとって、法人を作り、口座を開き、自分で決算と申告まで回すこと自体が目的の一部である。分配金はその副産物にすぎない。

抜けていた前提 2

10年後に2億円を運用する、その前段階である

Phase 1の500万円は本番ではなく練習。ここで得るべきは利回りではなく、2億円を動かす時に正しい箱を選べる状態である。

ゴルフの年会費を「スコアあたりの費用対効果」で評価する人はいない。趣味の支出はリターンではなく、他の趣味との比較で測られる。年間固定費11.6〜17.0万円は、月あたり約1.0〜1.4万円である。

Phase 1についての結論の訂正

2章と10章で述べた「500万円で法人を作るのは割に合わない」は、投資効率の観点に限った評価である。趣味として、かつ2億円運用の練習として見るなら、月1万円強で法人格を1つ持ち、決算・申告・有価証券の評価区分・外国税額控除まで実地で回せるのは、支出として妥当だと考える。この場合、固定費比率という指標そのものが目的に合っていない。

ただし、分析が無効になるわけではない

趣味であることは、商品の中身を調べない理由にはならない。むしろ本番が2億円だからこそ、今のうちに構造を正しく理解しておく価値が跳ね上がる。次の数字がそれを示す。

3,000万

2億円・利回り15%のときの年間分配(円)

0.57%

そのとき固定費17万円が占める割合

150万

税率が5ポイント違うときの年間差額(円)

1,500万

その10年累計(円)

2億円規模での感応度

項目利回り5%利回り10%利回り15%
年間分配(元本2億円)1,000万円2,000万円3,000万円
固定費17万円の比率1.70%0.85%0.57%
税率1ポイント差の年間影響10万円20万円30万円
税率5ポイント差の10年累計500万円1,000万円1,500万円

計算式: 年間分配 = 2億円 × 利回り。税率差の影響 = 年間分配 × 税率差。法人税等の実効税率は本調査では一次情報で確定できなかったため、具体的な税率ではなく「差が何ポイントあったらいくらになるか」という感応度で示している。参考として、個人の申告分離課税20.315%を年間分配3,000万円に適用すると税額609.5万円・手残り2,390.6万円となる。

つまり、練習で覚えるべきことは「利回り」ではない

2億円の段階では、固定費は0.57%まで薄まって問題にならなくなる。代わりに支配的になるのが税率の差である。そして3章で見たとおり、米国株価指数連動ETFの分配金は法人で益金不算入が使えない(措置法67条の6の除外)。この一点の判断を誤ったまま2億円に到達すると、10年で1,000万円以上の差になりうる。

Phase 1で身につけるべきは、分配金がどの口座にどう入り、決算でどう処理され、申告書のどの別表に乗るのかを手を動かして確認することだ。500万円ならその作業を安全に間違えられる。2億円では間違えられない。

練習として、何を確かめるか

  1. 1

    1年目に確かめること

    分配金が法人にどう入り、どう課税されるか

    源泉徴収された所得税を、申告で所得税額控除として取り戻す一連の流れを自分で通す。ここが2億円の段階で最も金額に効く

  2. 2

    1年目に確かめること

    有価証券をどの区分で持つことになるのか

    売買目的か売買目的外か。この判定次第で含み損益が毎期課税対象になるかが変わる(法人税法61条の3)。少額のうちに実務で確認しておく

  3. 3

    2〜3年目に確かめること

    自分で申告を回し続けられるか

    回せないと分かったら、固定費に税理士報酬が乗る。その場合の分岐点は2章の税理士ありの列で確認する。回せるかどうかは、やってみるまで分からない

  4. 4

    本番前に決めること

    出口をどうするか

    役員報酬0円で2億円規模の資産を法人に置くなら、取り出す方法は配当・役員退職金・解散時の残余財産分配に限られる。金額が大きいほど出口の設計が効くので、練習段階のうちに方針を固めておく

まとめ

1章から11章は「投資として合理的か」を問うた。この12章は「趣味として、そして2億円への練習として合理的か」を問うた。答えは変わる。前者では500万円の法人化は割に合わないが、後者では月1万円強の妥当な支出になる。

ただし、どちらの軸で見ても変わらない結論が1つある。「高分配商品を法人の箱に入れる」という組み合わせは、税制上ちぐはぐだ。練習でそれを確かめるのは大いに意味がある。本番でそれを繰り返す理由はない。

出典と免責

本記事の数値は、原則として次の一次情報から2026年8月1日に取得した。Global X Japan 交付目論見書・月次レポート(563A)/Nasdaq, Inc. インデックス・メソドロジー(NDXDCP15)およびファクトシート(NDX・XNDX)/Robert Shiller 配布データ(ie_data.xls)/米国財務省 Daily Treasury Yield Curve Rates/連邦準備制度理事会 FOMC 声明/日本取引所グループ/国税庁/日本年金機構/東京都主税局/各ETF発行体の公式ページ。二次情報を用いた箇所は本文中にその旨を明記した。

本記事は投資助言ではなく、特定の金融商品の購入を推奨するものではない。税務・社会保険の取扱いには本記事で確定できなかった論点が複数残っている(法人税等の実効税率の計算式、有価証券の期末評価区分の判定要件、563Aが二重課税調整の対象銘柄か、役員報酬0円時の被保険者資格の一次情報での確認など)。実行にあたっては税理士・社会保険労務士・年金事務所への確認を推奨する。