さとまたwiki

📦 投資だけをするマイクロ法人を500万円で作り、役員報酬0で積み立てる

NISAは使わない。損が出てもいい。趣味として、自分の資産が会社という器の中に入っている状態そのものを持ちたい——そういう人のための実務記事である。東京23区に合同会社を1つ作り、役員報酬0円で、法人口座に積み立てる。会社に入れるのは合計500万円。内訳は資本金100万円+役員借入金400万円で、資本金を上げない理由は登録免許税も均等割も消費税の免税も同額のまま、戻しやすさだけが違うからである。設立実費66,820円と均等割5年分350,000円を引いた4,583,180円が最初の建玉になり、以後は毎月10万円を足していく。入らない月があってもいい。10年で投入1,700万円、そのうち維持費は766,820円(4.5%)。NISAの生涯投資枠1,800万円とほぼ同じ器を、借り物ではなく自分で作る。含み益に課税されない根拠は法人税法61条の3、均等割が年70,000円である根拠は地方税法312条を734条の読替表で読んだ結果、上場ETFの分配金が20%益金不算入になる範囲と外れる範囲は措置法67条の6。銀行と証券の審査は犯罪収益移転防止法4条から逆算した。数値はすべて2026年8月時点の一次資料で確認し、確認できなかったものは未確認と明記した。全19章。

📦 結論 — 100万円で作る「投資専用の器」の全体像

このセクションの3点

① 会社に入れるのは合計500万円。内訳は資本金100万円+役員借入金400万円。このうち416,820円(設立実費66,820円+均等割5年分350,000円)は相場に触れないまま出ていき、残る4,583,180円が最初の建玉になる

② 毎月10万円を役員借入金として入れ続ける。入らない月があってもよい。10年で投入合計は17,000,000円、そのうち維持費はわずか766,820円(4.5%)にとどまる

③ 毎月10万円ぶんを、自分の手で発注する。法人口座で自動積立が使えると明記した公式ページを、どの証券会社にも見つけられなかった。だから自分で発注する前提で組む(第3章で5社を確認する)

👥 みんなはどうしている?

資本金100万円以下の法人は684,650社あり、日本の全法人299万9,680社の22.8%を占める。100万円で会社を作るのは特殊なことではなく、5社に1社以上がその規模である(国税庁「会社標本調査」令和6年度分)。

この記事は、NISAの非課税枠をこれ以上使う予定がなく、損が出ても構わないと考えていて、自分の資産が会社という器の中に入っていること自体に価値を感じる人のために書く。得か損かという問いには第8章で正確に答えるが、この記事全体の目的はそこではない。

合同会社を1つ作り、役員報酬0円で、法人口座に毎月10万円を積み立てる。器を作る費用と、器を維持する費用と、その中で何を買うかを、円単位ですべて先に見せる。

これが全部です — 依頼者のループ

500万円を会社に入れる → 金融商品に分割する → 毎月10万円足す → また分割する → 事業で当たった金(不動産やSNSマーケなど)も同じ器に入る → 一定の現金は残す。依頼者はこのループをこう言い切っている。「バンバンと大きくしていきます。それだけです。ただ、それだけ。簡単なループです」。この記事は、このループを回すための値札と手順を、円単位で全部先に見せる。

5,000,000円

会社に入れる金額

4,583,180円

最初の建玉

100,000円

毎月足す額

70,000円

毎年の均等割

会社に入れる500万円の内訳

項目金額性質
資本金1,000,000円登記事項証明書に記載される。個人に戻すには減資または清算の手続きが要る
役員借入金(設立時)4,000,000円個人が会社に貸す形。返済するだけで個人に戻せる
合計5,000,000円

資本金として会社に払い込むのは1,000,000円。役員借入金として会社に貸し付けるのは4,000,000円で、こちらは会社が成立したあとに入金する(第2章)。500万円のうち資本金と役員借入金の内訳を分けているのは、コストが変わらないのに戻しやすさだけが変わるからである。理由は次の見出しで示す。

表A:500万円が何になるか

用途金額誰に払うか性質
登録免許税60,000円法務局公定
登記事項証明書 2通980円法務局公定
印鑑証明書 2件840円法務局公定
会社実印5,000円印章店相場
法人都民税 均等割 5年分350,000円東京都公定
会計ソフトと申告まわり0円自作またはOSS
小計(箱を5年維持する費用)416,820円
最初の建玉4,583,180円市場
合計5,000,000円

登録免許税60,000円をはじめとする設立実費66,820円は、会社がまだ存在しない時点で払うものなので、いったん個人が立て替える。会社が成立したあとに創立費として精算し、同額を会社から個人へ戻す。会社実印は、証券会社が法人口座の開設時に法人の印鑑証明書を求めるため必要になる(第9章)。登記事項証明書と印鑑証明書は、いずれもオンライン請求の手数料(登記手数料令3条1項・10条2項)。均等割5年分350,000円を先に確保したうえで、残る4,583,180円が最初の建玉になる。なお、法人都民税の均等割は、法人税を計算するうえでの損金には算入されない(法人税法38条2項2号)。

なぜ資本金を上げないのか

資本金500万円資本金100万円+役員借入金400万円
登録免許税60,000円60,000円(同じ)
均等割70,000円/年70,000円/年(同じ。1,000万円以下は同一区分)
消費税の免税使える使える(同じ。1,000万円未満)
会社に入る金額500万円500万円(同じ)
個人に戻すとき減資または清算の手続きが要る返済するだけ

「500万を会社に入れる」という条件は同じでも、内訳は選べる。結論は、資本金を最小にすることである。登録免許税は資本金×0.7%だが、500万円でも35,000円で最低額6万円を下回るため、100万でも500万でも6万円で同じになる。均等割・消費税の免税・会社に入る金額もすべて同一。コストも税も入る金額も完全に同じで、違うのは戻しやすさだけ。資本金を500万円にする理由が1つもない。

500万円の内訳を長さで見る
最初の建玉
4583180円

4,583,180円

均等割 5年分
350000円

350,000円

設立実費
66820円

66,820円(登録免許税・証明書・実印)

金額は2026年8月11日時点の公定価格と相場。均等割は東京23区・資本金等1000万円以下・従業者50人以下の場合

維持費は、もう「最も確実に減るもの」ではない

500万円のうち416,820円は、株にもETFにも一度も触れないまま、法務局と東京都と印章店に消える。ただしこの記事の設計は、ここで終わらない。毎月10万円を10年間足し続けると、投入総額は17,000,000円になり、10年間の維持費(設立実費66,820円+均等割70,000円×10年=766,820円)は投入総額のわずか4.5%にとどまる。100万円だけの小さな設計なら維持費の比率は無視できなかったが、毎月10万円を足し続けるこの設計では、維持費は「重い」とは言えない水準まで薄まっていく。

表B:最初に何を買うか

銘柄コード口数金額この枠の役目
MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信25591,060口3,187,420円core。世界全体を1本で持つ
NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信1489212口743,484円法人で持つ意味がある唯一の枠。国内株ETFなので分配金の20%が益金不算入になり得る
NEXT FUNDS 外国REIT(除く日本・ヘッジなし)2515318口542,190円株式と値動きの源泉が違うものを1本
小計4,473,094円
手元に残す現金110,086円端株調整と手数料の余白。あわせて「一定の現金は持ちながら回す」という方針そのもの
合計4,583,180円

口数と金額は、2026年8月11日の終値(2559=3,007円、1489=3,507円、2515=1,705円)で計算したものである。実際の約定価格は日々変わるので、発注日に最新の価格・売買単位・手数料で計算し直す。予備の現金を超えた場合は、オルカン(2559)の口数を優先して調整する(この記事の優先順位)。

毎月いくら、何を買うか

銘柄コード口数金額
MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信255927口81,189円
NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信14895口17,535円
合計98,724円(残1,276円は翌月に繰り越す)

毎月の10万円は、個人の口座から法人の口座への貸付(役員借入金)として入れる。会社の売上ではないので、法人に利益として課税されることはない。そして、後で会社が個人にこのお金を返済しても、個人の側に税金はかからない。自分の資産を自分の会社に移し替えているだけだからである。依頼者自身が「ちょっと使いすぎたりすると入らないかも」と言っているとおり、入らない月があってよい。基本は毎月だが、義務ではない。この入金経路の詳しい設計は第7章で扱う。

💴

均等割

会社の儲けが赤字でも、東京都に必ず払わなければならない税金。今回は毎年70,000円と決まっている。
📉

益金不算入

会社が受け取ったお金の一部を、税金を計算するときの「もうけ」に含めなくてよいというルール。もらった金額そのものが減るわけではない。
🤝

役員借入金

社長が自分のお金を、自分の会社に貸すこと。会社は借用書のようなものを作るだけでよく、後で返してもらっても社長個人に税金はかからない。
🏦

特定口座

証券会社が税金の計算を代わりにやってくれる、個人だけが使える口座の種類。会社の口座にはこの仕組みがない。
📈

売買目的外有価証券

すぐに売り買いするためではなく、長く持ち続けるために買った株や投資信託のこと。この扱いにしておけば、値上がりしても売るまでは税金がかからない。
🏢

合同会社

株式会社より安く早く作れる会社の種類。この記事で作る会社はこの形にする。

→ 次の第2章では、会社の名前を決める日から最初の1口を買う日まで、実際にやることを日付順に並べる。

⚙️ この法人の絶対条件 — 非属人で続く資産だけを入れる

このセクションの3点

① この会社には絶対条件が1つだけある。自分が動かなくても成り立つ利益しか入れない。ETFしか買わないのはリスクが低いからではなく、値動きが指数の判断であって自分の判断ではないから

② 唯一の例外はSNS。完全に属人的で儲かる保証も無いが、儲けを当てにしていないので、止まっても会社を壊さない。属人的なものを入れてよい条件は「それが無くても成り立つこと」

③ 役員報酬0円も非属人の一部。報酬を取らなければ、この会社は「自分が働く場所」ではなく「資産が置いてある場所」のままでいられる。依頼者は別の会社の役員報酬500万円で生活の側を完結させている

👥 みんなはどうしている?

これは統計が無い。「非属人的な利益しか入れない」という基準で会社を設計している人が何人いるかを示す公的なデータは見つからなかった。概算として言えるのは、赤字法人が60.3%あるという事実だけで、その中に「儲けを急いでいない会社」がどれだけ含まれるかは分からない。

この会社には、絶対条件が1つだけある。自分が動かなくても成り立つ利益しか入れない。例外はSNSだけで、それはそもそも儲けを期待していないから許される。ここから先の判断は、全部この1文から出てくる。

属人と非属人を、どう見分けるか

収益源自分が倒れたら止まるか判定この会社に入れるか
ETFの値上がりと分配金止まらない非属人入れる
個別株の売買止まる(銘柄選定が自分の判断)属人入れない
現物不動産(管理委託あり)ほぼ止まらない準・非属人条件つきで入れる(第17章)
REIT・不動産ETF止まらない非属人入れる
YouTube・メンバーシップ完全に止まる属人例外として入れる。儲けを当てにしない
コンサル・受託止まる属人入れない

だからETFしか買わない

個別株を買わないのは、リスクが高いからではなく、属人だからである。「どの会社を選ぶか」という判断が自分の中にしか無い時点で、その利益は自分に依存している。自分が入院しても、飽きても、忙しくなっても、その判断は誰も代わりにできない。

ETFは指数が決める。日経平均や東証REIT指数がどの銘柄をどれだけ組み入れるかは、自分の判断ではなく、指数のルールが決める。自分がいなくても同じ結果になる。この基準で選ぶと、買えるものはETFにほぼ絞られる。

SNSだけが例外である理由

SNSは完全に属人的である。撮るのも話すのも編集するのも自分で、代わりはいない。しかも儲かる保証もない。この会社の絶対条件からすれば、本来いちばん入れてはいけないものに見える。

それでも入れてよいのは、儲けを当てにしていないからである。期待していない収益は、止まっても会社を壊さない。動画が1本も出ない月があっても、この会社の資産は減らない。属人的なものを入れてよい条件は「それが無くても成り立つこと」であって、「儲かるかどうか」ではない。

前提投資の側SNSの側
①期待する利益ETFの値上がりと分配金。会社の存在理由そのもの無い。最初から儲けを見込んでいない
②止まったときの影響止まらない。自分が何もしなくても指数どおり動く更新が止まるだけ。会社の資産には影響しない
③かける時間毎月同じ日に買うだけ。数分撮影・編集・配信に継続的な時間がかかる
④会社の存続に必要か必要。これが会社の本体不要。無くなっても会社は残る

非属人を保つために、やらないこと

非属人を崩すのは、たいていこの5つから

・個別株の銘柄選定をしない

・相場を見て売買のタイミングを計らない。毎月同じ日に同じ額を買う

・レバレッジをかけない

・他人の金を預からない

・自分にしかできない取引先を作らない

役員報酬0であることも、非属人の一部である。報酬を取ると、その報酬に見合う労働をしているという建て付けになる。0にしておけば、この会社は「自分が働く場所」ではなく「資産が置いてある場所」のままでいられる。

依頼者は別の会社で取締役として役員報酬500万円を得ている。生活はそちらで完結していて、この会社に生活費を頼っていない。だから0円のまま5〜10年続けるという判断が成り立つ。

非属人は、儲けの条件ではなく、続ける条件である

非属人にしたからといって、儲かるわけではない。指数に任せても下がるときは下がる。非属人にすると変わるのは、儲けの大きさではなく、続けられるかどうかである。

自分が飽きても、忙しくても、病気で動けなくても、この会社は同じことを続けられる。判断が自分の外側にあるからである。第1章で「器が美しい」と書いたのは、中身の値上がりの話ではなく、誰にも壊されずに10年そこにあり続けられるかどうかの話だった。非属人という条件は、その器を10年もたせるための条件である。

→ 次の第3章では、この非属人の条件で回すこの会社を、AI/APIだけでどう記帳・申告するか——会計ソフトの選び方を検討する。

🧮 AI/APIだけで運用する会計ソフトの選び方

このセクションの3点

① 依頼者は「会計ソフトはAIとAPIでしか運用しない予定」だと言っている。画面を開いて手で入力する運用はしない。この条件を置いた瞬間、価格や機能より先に公式APIの有無が効く

② この14本のうち、公式APIとAIから叩けるMCPサーバーの両方を持つのはマネーフォワード(32,736円/年・17ツール)とfreee(35,760円/年・6API)の2つだけ。それ以外はAPIが無いので、いくら安くても、いくら申告書まで作れても、この人の運用方針では使えない

③ 0円で運用したいなら、既製品では実現できない。自分でAPIを作る(第4章)しか無い。既製品を選ぶならマネーフォワードが第一候補になる

👥 みんなはどうしている?

これは公的な統計が無い。会計ソフトのシェアを示す一次情報は見つからなかった。分かっているのは、公式APIとMCPサーバーを持つのがマネーフォワードとfreeeの2社だけという事実で、AIから触りたい人の選択肢はもともと狭い。

この会社の帳簿は、毎月の積立と年に数回の分配金・配当を合わせても年30〜40仕訳ほどしか動かない。この規模だけを見れば、選ぶ基準は①多機能さより単純さ②税制改正にベンダーが追随してくれるか③決算書までか法人税申告書まで作れるか、の3つで足りるはずだった。しかし依頼者は「会計ソフトはAIとAPIでしか運用しない予定」だと明言している。画面を開いて手で入力する運用はしない、という前提である。この条件が加わると、④公式APIとAIから叩けるインターフェースがあるか、が他のどの基準よりも先に効く。どれだけ安くても、どれだけ申告書まで自動で作ってくれても、APIが無いソフトはこの人の運用方針では触れない。

ソフト提供元料金法人決算書別表まで改正への追随API / MCP / AI
フリーウェイ経理Liteフリーウェイジャパン永年無料(登録データ1件まで)記載なし保守費用は発生しないと明記。改正対応方針は※未確認無し
JDL IBEX出納帳Major日本デジタル研究所無料不可(上位の有償製品が別途必要)※保守契約の概念が確認できず無し
円簿会計円簿インターネットサービス新規登録から1年間無料(以降の金額は公式に記載なし)記載なし税制改正のバージョンアップ・保守は自動・追加費用不要と明記無し
GnuCashOSS無料制限なし○(勘定科目は自作)不可(日本の別表テンプレート無し)日本の税制改正に追随する仕組みが無い無し
全力法人税全力初年度21,800円(税抜・割引時19,620円)/翌年度以降10,000円/年度。都度課金・自動更新なし○(申告書一式・勘定科目内訳書・事業概況説明書まで)クラウドで自動追随無し
税理士いらずアイソフト16,500円(税込)買い切り+2年目以降バージョンアップ5,500円○(資本金1億円以下・事業所1つ)○(決算書から法人税・消費税申告書まで)年度版の買い直しが前提無し ※公式サイトがSSLエラーで直接確認できず、価格は検索キャッシュ
MJS かんたん!会計ミロク情報サービス15,950円/1年、43,065円/3年、55,825円/5年(税込)+サポート別途※確認できず※サポート加入前提と推測無し
エプソン 財務会計セイコーエプソンミニマム22,000円/年(税込)※確認できず※未確認無し
わくわく財務会計11コラボ33,000円(税込)買い切り※未確認保守契約不要で無料アップデート。ただし法令変更を伴う改変は有料バージョンアップと明記無し
マネーフォワード クラウド会計マネーフォワード年払29,760円(税抜)=32,736円/年(税込)。経営者1名・仕訳500件まで単体は決算書中心。別表は別製品の可能性クラウドで自動公式API(OAuth2.0)+2026年3月26日から公式MCPサーバーを全プラン提供(勘定科目・仕訳・試算表など17ツール。Claude Code等から利用可)
freee会計(ひとり法人)freee年払35,760円/年(税込)単体は決算書中心。別表は「freee申告」が別途必要な可能性クラウドで自動公式freee API(開発用アカウント無料)+公式MCPサーバー freee-mcp をGitHubで公開(6API・OAuth2.0+PKCE)
会計王ソリマチ44,000円(税込)買い切り。初年度サポート無償、2年目以降は有償※別表まで作れるかは確認できず更新プログラムはサポート契約期間中のみ無し
弥生会計 Next弥生エントリー年34,800円+税〜※確認できず※未確認無し
法人税の達人NTTデータLight 27,170円 / Standard 40,810円 / Professional 61,490円○(別表・電子申告まで)毎年度版。年間保守が実質前提無し
ちまたの会計無料非営利団体限定不可無し

※ 弥生会計 オンライン(法人向け・旧)は新規申込終了。弥生会計 Next へ移行済み。

年間コスト(2年目以降)
フリーウェイ経理Lite
0円
JDL出納帳Major
0円
税理士いらず
5500円
全力法人税
10000円
MJSかんたん会計
15950円
エプソン
22000円
マネーフォワード
32736円
freee
35760円

買い切り型は2年目以降のバージョンアップ費用で比較した。初年度の本体価格は別。

買い切りは、本当に買い切りか

本体価格だけを見て「買い切りだから一番安い」と判断するのは早い。買い切りと書かれていても、税制改正に追随するには2年目以降に金がかかることが多いからである。

ソフト本体価格(買い切り)2年目以降条件
会計王44,000円(税込)有償更新プログラムはサポート契約期間中のみ。初年度サポートは無償だが、2年目以降は有償契約が必要
わくわく財務会計1133,000円(税込)無償アップデートは継続ただし法令変更を伴う改変は、保守契約とは別の有料バージョンアップと明記されている
税理士いらず16,500円(税込)5,500円(バージョンアップ)年度版の買い直しが前提。税制が変わった年度に対応した版を都度買う設計

無料ソフトの罠

・GnuCashは無料で使えるが、日本の税制改正に追随する仕組みが無い。日本の別表テンプレートも無いので、そのまま申告書は作れない

・JDL IBEX出納帳Majorは無料で法人の決算書まで作れるが、別表は作れない。別表を作るには上位の有償製品が別途必要になる

・ちまたの会計は無料だが非営利団体限定で、この法人のような営利法人は対象外

・円簿会計は新規登録から1年間だけ無料で、以降の金額は公式サイトに記載が無い。2年目以降いくらになるかは、使う直前に自分で確認する必要がある

AIと繋げられるのは、実質2つだけ

依頼者は会計ソフトをAIとAPIでしか運用しない予定だと言っている。画面を開いて手入力する運用はしない。この条件を置くと、公式APIが無いソフトは、価格や機能に関係なく最初の時点で選択肢から外れる。下の表の「AI/APIだけで運用できるか」の列がその判定である。

ソフト公式APIMCPサーバーAI/APIだけで運用できるか
マネーフォワード クラウド会計あり(OAuth2.0)あり(2026年3月26日から全プラン提供・17ツール)○ 運用できる
freee会計あり(開発用アカウント無料)あり(freee-mcp、GitHubで公開、6API・OAuth2.0+PKCE)○ 運用できる
全力法人税無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
フリーウェイ経理Lite無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
JDL IBEX出納帳Major無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
円簿会計無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
GnuCash無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
税理士いらず無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
MJS かんたん!会計無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
エプソン 財務会計無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
わくわく財務会計11無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
会計王無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
弥生会計 Next無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)
法人税の達人無し無し✕ 運用できない(GUI操作が前提)

マネーフォワードは2026年3月26日から、公式MCPサーバーを全プラン向けに提供している。勘定科目・仕訳・試算表など17個のツールが用意されていて、Claude Codeのようなツールから直接、会計データを読み書きできる。freeeは freee-mcp という名前でMCPサーバーをGitHub上に公開している。6つのAPIをOAuth2.0+PKCEで叩く構成で、こちらも開発用アカウントは無料で作れる。この14本のうち、AIから直接触れる公式の経路を持っているのはこの2つだけである。年10,000円で申告書まで作れる全力法人税は、コストパフォーマンスだけ見れば最も良いソフトだが、公式APIが無いので、AIとAPIでしか運用しないという依頼者の条件のもとでは最初の時点で外れる。

オープンソースという選択肢

ここまでの14本はすべて商用ソフトだった。もう一つ、既製品でもAI/APIの条件を満たせる可能性がある選択肢がある。オープンソースのプレーンテキスト会計(Beancount・hledger・Ledger)である。これらは帳簿そのものが1本のテキストファイル(.beancount / .journal / .ledger)で、AIエージェントは通常のファイル読み書きだけで仕訳を追加・修正できる。マネーフォワードやfreeeがHTTP APIとMCPサーバーで「AIから触れる」のに対し、こちらはそもそもHTTP APIを介さない、という違う形で同じ条件を満たす。

Beancountについては、BQL(Beancount Query Language)でAIから帳簿を問い合わせる非公式MCPサーバー(vanto/beanquery-mcp など)が複数存在することを確認した。ただしいずれも非公式・experimental であり、Beancount公式が提供しているものではない。帳簿はGitでバージョン管理できるが、これが電子帳簿保存法の「訂正削除履歴の確保」の要件を満たすと明記した公式情報は確認できていない(未確認)。

一方で、Beancountは勘定科目に日本語が使えない。公式GitHub Issue #398(CJK文字を勘定科目名に使えるようにする要望)はOpenのまま解決していない。勘定科目の各要素は大文字始まりが必須という構文上の理由で、漢字・ひらがなには「大文字」の概念が無いため構文エラーになる。回避策は、勘定科目名自体をローマ字にし、日本語は摘要(narration)やFava等のレポート層で補う運用である。日本の決算書様式(資産の部・負債の部という表示区分など)のテンプレートも標準搭載されておらず、自分で設計する必要がある。そして法人税申告書(別表)を作れるOSSは、今回の調査範囲では1つも存在しなかった。

ソフト言語ライセンスAIから触れるか日本語の勘定科目日本の申告書備考
Beancount未確認未確認○ テキストファイルを直接読み書き可(非公式MCPサーバーも複数あり、いずれもexperimental)✕ 大文字始まり必須のため構文エラー(Issue #398 Open)。ローマ字表記で回避不可Gitでバージョン管理可。ただし電子帳簿保存法の要件充足は未確認
Fava(Beancountの表示層)未確認未確認未確認(API記載なし。Beancountの帳簿を閲覧するWeb UI)△ 表示層でのラベル置換で補う運用が考えられるが、公式プラグインの有無は未確認不可Beancount単体では出しにくい日本語表示を補う付属ツール
hledger未確認未確認△ テキストファイルなので直接編集は可能なはず。MCPサーバーの公式実装は今回の調査で確認できず未確認(Unicode対応の可否は確認できず)不可JPY含む複数通貨に標準対応
Ledger未確認未確認△ hledgerと同様、直接編集は可能なはず。MCPサーバーの実装は確認できず未確認不可JPY含む複数通貨に標準対応
GnuCash未確認未確認✕ 公式APIが無い未確認(勘定科目は自作)不可(日本の別表テンプレート無し)日本の税制改正に追随する仕組みが無い

ERPNext・Odoo Community・Akaunting・Firefly IIIなど他のOSS会計/ERPソフトも存在するが、今回の調査ではAI/API連携や日本の決算対応を確認できる一次情報に到達できなかったため、上の表には含めていない。

OSSも、同じ壁の前で止まっている

Beancount・hledger・Ledgerはいずれも、日本の法人税申告書(別表)を作れない。これは次章(第4章)で線引きする「帳簿は自作し、申告書はe-Taxソフト・eLTAX PCdeskに手入力する」という設計と、行き着く場所が同じである。OSSを選んでも、申告書だけは国のソフトに任せる壁を越えられない。0円で運用できるという長所と、日本の様式には自分で手を入れる必要があるという制約は、OSSも自作も同じ形をしている。

Claudeランキング — この法人の条件で順位をつける

中身重み
① AI/APIだけで運用できるかGUIを開かずに済むか。満たさなければ失格必須条件
② 10年の総額年額×10年
③ 税制改正への追随自分が追わなくて済むか
④ 日本の法人決算に対応しているか勘定科目・決算書の様式
⑤ 法人税申告書まで作れるか

⑤の重みを小さくしたのには理由がある。第5章で確認したとおり、法人税・消費税の申告書はe-Taxソフトとeltax(eLTAX)PCdeskで無料で作れる。第4章では「申告書は自作せず、国のソフトに手入力する」という線引きをすでに置いている。会計ソフト側が申告書まで作れることは、この設計ではもう必須ではない。年10,000円で決算書から別表一式まで作れる全力法人税が、②③④⑤をすべて満たしながらこの順位では下位になるのは、①のAI/API条件だけを満たさないからである。

順位ソフト10年の総額①AI/API②費用③改正追随④日本の決算⑤申告書この順位の理由
1自作(第4章)0円○ 完全に満たす(自分でAPIを設計するため)◎ 0円自分で追随(ベンダー無し)◎ 自分で設計するので日本語表記も様式も自由不可(e-Taxソフト・eLTAX PCdeskへ手入力)①〜④をすべて自分の裁量で最適化できる。ただし開発のすべてを自分で担う必要がある
2Beancount + Fava0円○ テキストファイルを直接読み書き(非公式MCPサーバーもあり)◎ 0円自分で追随(ベンダー無し)△ 勘定科目に日本語が使えず、様式も自分で設計不可0円で①を満たす既製のOSS。ただし日本語の勘定科目という制約が残る
3hledger / Ledger0円△ 直接編集は可能なはずだが、MCPサーバーの公式実装は未確認◎ 0円自分で追随(ベンダー無し)未確認(Unicode対応・様式ともに確認できず)不可0円だが、AIとの連携実績・日本語対応ともに確認が取れていない
4マネーフォワード クラウド会計327,360円○ 公式MCP・17ツール○ 32,736円/年◎ クラウドで自動◎ 日本の決算に最強△ 単体は決算書中心。別表は別製品の可能性既製の商用ソフトで唯一、①③④を高い水準で同時に満たす。有償だが最も枯れている
5freee会計357,600円○ 公式freee-mcp・6API○ 35,760円/年◎ クラウドで自動◎ 日本の決算に強い△ 単体は決算書中心。「freee申告」が別途必要な可能性マネーフォワードとほぼ同格。API数(6)と価格でわずかに劣る
6全力法人税100,000円✕ 公式APIが無い◎ 10,000円/年◎ クラウドで自動追随◎ 日本の決算に対応◎ 申告書一式・勘定科目内訳書まで作れる②③④⑤をすべて満たすのに、①のAI/API条件だけを満たさないため失格。この条件でなければ最有力候補だった
7GnuCash0円✕ 公式APIが無い◎ 0円✕ 税制改正に追随する仕組みが無い△ 勘定科目は自作。日本の別表テンプレート無し不可①を満たさないので圏外。無料だが③の弱さも大きい
8フリーウェイ経理Lite・JDL IBEX出納帳Major・円簿会計・税理士いらず・MJS かんたん!会計・エプソン 財務会計・わくわく財務会計11・会計王・弥生会計 Next・法人税の達人(表H参照)✕ 全て公式APIが無い(表H参照)(表H参照)(表H参照)(表H参照)①を満たさないので圏外。GUI操作が前提のため、この依頼者の運用方針では選べない

1位と2位の差は、金額ではない

1位の自作と2位のBeancount+Favaは、どちらも10年で0円という点では同じである。差はAIの触りやすさと、日本の様式への対応にある。自作は最初から日本語の勘定科目・日本の決算書の様式を前提に設計できるが、その分すべてを自分で作る手間がかかる。Beancountはすでに動く複式簿記エンジンとGitの変更履歴、そして非公式ながらMCPサーバーの実績があるので、ゼロから作る手間は要らない。ただし勘定科目に日本語が使えないという制約は、自作では発生しない制約である。どちらを選ぶかは、開発の手間を惜しむか、日本語表記の自由を取るかの判断になる。

この法人なら、どれを選ぶか

依頼者は「会計ソフトはAIとAPIでしか運用しない予定」だと明言している。画面を開いて手入力する運用はしない、という前提を置くと、比較の軸は価格ではなく、インターフェースの有無になる。

年0円:Beancount等のプレーンテキスト会計、または自作する(第4章)。プレーンテキスト会計は帳簿そのものがテキストファイルなのでAIが直接読み書きでき、自作なら自分でAPIを作るのでAIからいくらでも叩ける。どちらも申告書はe-Taxソフト・eLTAX PCdeskに手入力する。

年32,736円:マネーフォワード。公式MCPサーバーが17個のツールを出しているので、Claude Code等から直接操作できる。商用の既製品でAIから運用するなら、これが実質の第一候補になる。

年35,760円:freee。freee-mcpは6個のAPIをOAuth2.0+PKCEで叩く構成で、こちらも公式に使える。

参考:年10,000円の全力法人税は、決算書から申告書一式まで作れてクラウドで税制改正に自動追随する、コストパフォーマンスは最も良いソフトである。ただし公式APIが無いので、GUIを開いて手で入力する運用が前提になる。AIとAPIでしか運用しない、という依頼者の条件のもとでは、全力法人税は選択肢から外れる。

商用の既製品を選ぶなら、AIから触れるのはマネーフォワードとfreeeの2つだけであり、その中では公式MCPのツール数(17対6)と価格(32,736円対35,760円)でマネーフォワードがやや有利になる。0円にしたいなら、Beancount等のプレーンテキスト会計を使うか、自作するか(第4章)の2つの道がある。

→ 次の第4章では、この会計ソフトの一部を自分で作るとしたら、どこまでを自作してよく、どこからは自作してはいけないかを、制度変更に追随する義務があるかどうかで線引きする。自作すればAPIも自分の設計になり、年会費0円でAIとAPIだけの運用を実現できる。

🛠️ 自作会計はどこまで作り、どこから国のソフトに任せるか

このセクションの3点

① 帳簿は自作していい。申告書は自作しない。複式簿記のルールは何十年も変わらないが、法人税の別表と地方税の様式は毎年変わる

② 銀行はGMOあおぞらのスタンダードAPI28種が無償で使える。証券には法人が使える公式APIが無いので、月2〜3行を手入力するのが現実解

③ 電子帳簿保存法は、自作の出力を紙で保存する運用を正式に認めている。ただし電子取引データの保存義務は自作の有無に関係なく発生する

👥 みんなはどうしている?

これも統計が無い。会計システムを自作している法人の割合を示す公的データは見つからなかった。ただし帳簿の様式は法令が決めていない(法人税法施行規則)ので、自作でも表計算でも要件を満たせば構わない、という点だけは制度上はっきりしている。

結論を先に書く。帳簿は自作していい。申告書は自作しない。複式簿記のルール——仕訳帳に取引を記録し、総勘定元帳に転記し、試算表から貸借対照表と損益計算書を組む——は何十年も変わっていない。一方、法人税の別表と税率、地方税の様式は毎年のように変わる。依頼者には、その変更を追い続ける時間がない。だから、変わらないものだけを自分の手に置く。

依頼者はもう一つ条件を出している。会計ソフトはAIとAPIでしか運用しない。画面を開いて手入力する運用はしない、という前提である。この条件は、選べるソフトの数を一気に絞り込む。第3章で比較した会計ソフトのうち、公式のAPIとMCPサーバー(AIエージェントから直接操作できる仕組み)を持つのはマネーフォワード(年32,736円・公式MCP 17ツール)とfreee(年35,760円・freee-mcp 6API)の2つだけである。全力法人税・税理士いらず・フリーウェイ経理Lite・円簿会計・JDL出納帳Major・GnuCash・会計王などには、APIもMCPも無い。つまり「AIとAPIで運用する」という条件は、「年32,736円を払い続けるか、自分で作るか」の二択になる。自作すれば費用は0円になり、しかもAPIの形もAIとの繋ぎ方も自分で設計できる。自作の対価は、この2つである。

対象中身変わるか判断
帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・試算表)複式簿記のルール何十年も変わらない自作してよい。作ったら放置できる
決算書(貸借対照表・損益計算書)様式はほぼ固定ほとんど変わらない自作してよい
法人税の別表税率・様式・特例毎年変わる自作しない。e-Taxソフトに手入力
地方税の第6号様式税率・様式変わる自作しない。PCdeskに手入力

制度変更を追う義務を、国に預ける

年30〜40仕訳の規模なら、申告側の手入力は年1回で済む。帳簿だけを自作の範囲に置けば、税制改正を自分で追いかける必要がなくなる。別表の書式が変わっても、変わるのはe-Taxソフト側であって、自分が書いたコードではない。自作の範囲を線引きすることは、手を抜くことではなく、追いかける対象を自分で選ぶことである。

銀行APIで、入出金を自動で取り込む

銀行API費用注意点
GMOあおぞらネット銀行スタンダードAPI 28種(参照系・更新系・通知)無償(オプション7種は有償・個別見積)審査・契約が必須。申込から契約完了まで最短1週間。サンドボックスsunabarは口座があれば審査なしで無料
住信SBIネット銀行残高照会・取引履歴照会のAPI未確認自社利用での契約可否は未確認
PayPay銀行法人向けAPI連携(OAuth2.0)未確認「電子決済等代行業・資金移動業への登録が必要となる場合がある」と公式に明記
楽天銀行法人ビジネス口座向け参照系API未確認「電子決済等代行業者へ提供する体制」という書き方で、自社直接契約の可否は未確認
みずほ/三菱UFJ BizSTATION/三井住友 Web21法人向けIBのオプションとしてAPIあり未確認料金は未確認
💳

スタンダードAPI 28種

口座一覧・残高照会・入出金明細(参照系)、振込依頼・総合振込(更新系)、入金明細通知(イベント通知)。無償で使える
🧪

サンドボックス sunabar

個人・法人いずれかの口座があれば、審査なしで無料。開発を先に試せる
🔐

認証はOAuth 2.0 / OpenID Connect

仕様書が公開されている(認可編 v1.8.0)

開始まで審査と契約が必須

申込から契約完了まで最短1週間
🏢

対象は法人口座保有企業のみ

個人・個人事業主は対象外。この法人のような合同会社なら対象になる

電子決済等代行業の登録(断定しない)

・銀行法52条の61の2は、更新系(為替取引の依頼の媒介等)と参照系(口座情報を取得して利用者に提供する行為)の2類型を登録対象と定めている

・自社の口座を、自社の会計システムのために読むだけの行為が、この登録の対象になるかどうかは一次情報では断定できなかった

・他人のために口座情報を取得して提供する行為が規制の趣旨なので、自社利用のみなら対象外と考えられるが、断定はしない

・GMOあおぞらとの契約手続きの中で、この点を必ず確認する

証券側は、自動化できない

証券会社API法人での利用可否
auカブコム証券 kabuステーションAPIProfessionalプラン以上で無料公式ページに「個人向け」表記が見られ、法人口座での利用可否は明記されておらず未確認
立花証券 e支店API無料の日本株API公式に「個人のための」無料APIと明記されている
SBI・楽天・マネックス・松井法人が使える公式APIは確認できなかった
代替手段電子交付の取引報告書・取引残高報告書楽天証券はCSV保存が可能(※公式未確認)。月1回、2〜3行を手入力するのが現実解

だから証券は手入力でいい。毎月の買付は2〜3行、分配金の受け取りは年に数回。この程度の量なら、自動化のコストをかけるより、電子交付された取引報告書を見ながら仕訳を打ち込むほうが早い。自動化で減らせるのは銀行側の入出金だけであり、証券側は最初から手入力を前提に設計したほうがいい。

作るとしたら、これだけ

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    STEP1

    勘定科目を10個だけ決める

    現金・普通預金・有価証券・役員借入金・受取配当金・支払手数料・租税公課・雑費など、この法人で実際に使う科目だけに絞る。多機能な会計ソフトの科目一覧をそのまま真似する必要はない。
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    STEP2

    仕訳テーブルを1つ作る

    日付・借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額・摘要の6列だけを持つテーブルを1つ用意する。複式簿記の記録はこれで足りる。
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    STEP3

    総勘定元帳と試算表はSQLのビューで出す

    仕訳テーブルさえあれば、勘定科目ごとの集計(総勘定元帳)と全体の集計(試算表)はSQLのビュー1つずつで作れる。別のテーブルを持つ必要はない。
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    STEP4

    貸借対照表・損益計算書は試算表から組む

    試算表の科目を資産・負債・資本と収益・費用に分けて並べ替えれば、決算書の骨格になる。様式は法人税法施行規則57条の別表二十五を目安にする。
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    STEP5

    GMOあおぞらのAPIで入出金を取り込み、仕訳の候補を作る

    口座の入出金明細を取得し、金額とパターンから仕訳の候補を自動生成する。確定は人が見て承認する運用にすれば、誤りをそのまま帳簿に流し込まずに済む。
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    STEP6

    証券の取引は手入力する

    月2〜3行、分配金は年数回。自動化する量ではないので、電子交付された取引報告書を見ながら打ち込む。
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    STEP7

    決算で試算表を印刷し、e-Taxソフトに手で転記する

    自作システムの仕事はここで終わる。別表への転記は、毎年変わる部分を国が作ったソフトに任せる。

画面ではなく、AIから叩かれる前提で作る

依頼者の条件を踏まえるなら、この会計システムは最初からAIから叩かれる前提で設計したほうがいい。仕訳の登録・取得は、まずAPIとして先に切る。画面は後から作るか、そもそも作らなくてもよい。MCPサーバーとして実装すれば、Claude Code等のAIエージェントから直接呼べる。年30〜40仕訳という量なら、AIに「この取引を仕訳して」と伝えて登録できれば、それで運用としては足りる。画面を作らないという判断は、手抜きではなく、この規模には妥当な設計である。

相場データの取得には、証券会社のAPIも有料の配信サービスも要らない。JPXの銘柄別公式PDF(信託報酬・売買単位)とnextfunds.jpの静的HTML(基準価額・最低取引金額・分配金利回り)を定期的に取得すれば、この法人が扱うETFの情報としては足りる。どちらも無料で、法人向けの契約も不要である。

自作システムが満たすべき法定要件は、法令の言葉で言えばそれほど多くない。青色申告法人は「複式簿記の原則に従い」帳簿を記録し(法人税法施行規則53条)、仕訳帳と総勘定元帳その他必要な帳簿を備え(54条)、貸借対照表と損益計算書を作成し(57条)、これらを7年間(欠損金が出た事業年度は10年間)保存しなければならない(法人税法126条・施行規則59条、国税庁タックスアンサーNo.5930)。法令はソフトの名前や機能を指定していない。複式簿記のルールを満たしていれば、自作でも表計算でも構わない。

「紙に印刷して保存すれば、電子帳簿保存法の要件を満たさなくてよいのか」——答えはイエスである。自作システムで作った帳簿を電子データのまま保存したい場合にだけ、システム関係書類の備付け・見読可能装置の備付け・税務職員のダウンロードの求めへの対応、または「優良な電子帳簿」の要件(訂正削除履歴・帳簿間の相互関連性・検索機能)を満たす必要がある。これらを満たさないなら電子帳簿保存法そのものが適用されず、各税法の原則どおり紙で保存すれば足りる。自作システムを「作成の道具」として使い、出力を紙で保存する運用は、正式に認められた選択肢である。

ただし、電子取引データの保存義務は、自作するかどうかに関係なく発生する。証券会社からPDFやWeb明細で受け取った取引報告書は、紙に印刷して原本の代わりにすることが認められず、電子データのまま保存する義務があるとされている。これは自作システムの外側で決まっているルールで、表計算で帳簿をつけていても、既製の会計ソフトを使っていても同じように発生する。この記事では条文番号までの一次確認はできておらず、証券会社からの電子交付データは、受け取った形式のまま別途保存しておくという運用を勧めるにとどめる。

作らないという選択も、同じくらい正しい

年30〜40仕訳なら、表計算でも十分に足りる。しかし依頼者は会計ソフトをAIとAPIでしか運用しないと決めている。その条件のもとでは、自作の理由は年30,000円ではなく、年32,736円と、器を自分で作りたいかどうかである。既製品を選ぶなら、AIから触れるのはマネーフォワードかfreeeの2つだけであり、それを選ぶのも同じくらい正しい。この法人自体が、資産を置くためだけに作った器だった。帳簿をどう記録するかも、同じ発想の続きに過ぎない。作れば愛着が増すが、作らなくてもこの法人は同じように機能する。

→ 次の第5章では、この法人の年間維持費を最小化する。会計ソフトを自作した場合と既製品を使った場合とで、年間コストがどれだけ変わるかを見る。

💸 この法人の年間維持費を最小化する

このセクションの3点

① 毎年の費用は下げられる部分と下げられない部分に分かれる。下げられないのは法人都民税の均等割70,000円。下げられるのは会計ソフト代・電子証明書・証券口座の管理料・売買手数料・銀行口座の維持費で、すべて0円にできる(この記事の確定設計では自作・OSSで運用するため、実際に0円)

② 会計ソフトを既製品で使う場合との比較でみると、10年間の総額は既製品ありが1,066,820円、確定設計(自作)が766,820円。差は300,000円。この設計は10年の投入合計17,000,000円の4.5%しか維持費にかからないので、この差自体、大勢に影響しない

③ 依頼者は会計ソフトをAIとAPIでしか運用しない予定だと言っている。この条件を置くと0円には戻らない。既製品でAPIを使うならマネーフォワードで年32,736円かかり、年間の下限は102,736円になる。0円に戻す道は自作しかない(第4章)

👥 みんなはどうしている?

赤字法人は180万7,925社で全体の60.3%(国税庁「会社標本調査」令和6年度分)。6割の法人が、利益が出ていなくても均等割を払い続けている。維持費を下げる話は、少数派の悩みではない。

この章の結論を先に書く。下げられるのは会計ソフト代・電子証明書・証券口座の管理料・売買手数料・銀行口座の維持費。下げられないのは法人都民税の均等割70,000円と、設立時にかかる登録免許税60,000円。この2つは制度で決まっている金額で、依頼者がどれだけ工夫しても変わらない。それ以外の費目をすべて0円にすると、毎年の下限は70,000円になる。この記事の確定設計は会計ソフトを自作・OSSで運用するので、実際にこの70,000円が毎年の下限になる。

70,000円

年間の下限(確定設計。AI/API運用の既製品を使うなら102,736円)

300,000円

10年間で既製品の会計ソフトより浮く額

0円

申告ソフト代(e-Taxソフト・PCdeskとも無料)

費目既製品を使う場合確定設計(自作・最小)方法
法人都民税 均等割70,000円70,000円(下げられない)制度の詳細は第12章
会計ソフト30,000円0円自作・OSSで運用(第3章・第4章)
電子証明書3,800円/年0円代表者個人のマイナンバーカードで代用
証券口座の管理料0円マネックス証券・auカブコム証券は無料と明記
国内ETFの売買手数料0円SBI証券のゼロ革命。インターネットコース+電子交付なら法人も対象と公式FAQに明記
法人銀行口座の維持費0円GMOあおぞら・住信SBI・PayPay銀行・楽天銀行の4行とも開設手数料・月額維持手数料が無料
本店0円自宅を本店にする
10年で出ていく総額
既製品の会計ソフトを使う場合
1066820円
確定設計(自作・最小構成)
766820円

AIとAPIで運用するなら、年70,000円ではない

ここまでの「年70,000円」という下限は、会計ソフト代を0円にした場合の数字である。

依頼者は「会計ソフトはAIとAPIでしか運用しない予定」だと言っている。画面を開いて手で入力する運用はしない、という前提である。

この前提を置くと、選べるソフトは限られる。公式APIとAIから叩けるMCPサーバーの両方を持つのは、マネーフォワード(32,736円/年)とfreee(35,760円/年)の2つしかない(第3章)。AIとAPIで運用したいなら、年間の下限は70,000円ではなく、70,000+32,736=102,736円になる。

0円に戻す道は1つだけある。自分でAPIを作ること(第4章)。自分で作れば、APIもAIとの接続も自分の設計になるので、既製品の年会費は要らない。つまり「AIとAPIで運用したい」という条件は、この会社に「年32,736円払うか、自分で作るか」の二択を突きつけている。10年で見ると、マネーフォワードを選べば327,360円、自作すれば0円。この差額が、自作するかどうかの判断材料になる。

申告を自分でやると、ソフト代が0円になる

項目結論根拠
法人税の申告e-Taxソフト(ダウンロード版)で別表一・四・五(一)・五(二)・六(一)・七(一)を作成・送信できる。ソフトは無料国税庁 e-Tax 法人向け案内
決算書・勘定科目内訳明細書e-Taxの標準フォーム(Excel/CSV)で作成して送信できる国税庁
地方税eLTAXの無償ソフト PCdeskで第6号様式を作成・送信できるeLTAX(※公式サイトが調査時403で、利用料無料の公式原文は未確認)
法人のID・パスワード方式使えない。個人利用者専用。令和7年10月1日から新規発行も停止国税庁 e-Tax FAQ
電子証明書代表者個人のマイナンバーカードで代用できる。商業登記電子証明書は必須でない → 0円国税庁 e-Tax よくある質問
商業登記電子証明書(取る場合)1か月500円 / 3か月1,100円 / 6か月2,000円 / 12か月3,800円 / 24か月7,400円 / 27か月8,300円(令和7年4月改定)法務省

法人税・地方税とも、申告ソフトそのものは無料で用意されている。ただし法人はID・パスワード方式が使えない。これは個人利用者専用の仕組みで、令和7年10月1日からは新規発行そのものが止まる。法人が電子申告するには電子証明書がいるが、会社の実印で作る商業登記電子証明書を取らなくても、代表者個人のマイナンバーカードで代用できる。これで電子証明書の費用が0円になる。それでも商業登記電子証明書を取る場合の料金は、1か月500円から27か月8,300円まで期間ごとに設定されている。

eLTAXの公式サイトは調査時にアクセスできず、PCdeskの利用料が無料であるという公式の原文は確認できていない。使う前に自分でeLTAXの公式ページを確認すること。

設立のときにも削れるところがある

項目標準最小根拠
登録免許税60,000円60,000円(下げられない)登録免許税法別表第一24号(1)ハ
会社実印5,000円0円にできる令和3年2月15日から、オンラインで登記申請する場合は登記所への印鑑の提出が任意(法務省)。書面申請なら従来どおり必要
登記事項証明書窓口600円/通オンライン請求+窓口受取490円 / 郵送520円登記手数料令 第3条第1項(条文原文で確認済み)
印鑑証明書窓口500円/件オンライン420円 / 郵送450円登記手数料令 第10条第2項(条文原文で確認済み)。印鑑を届け出ないならそもそも不要

印鑑を届け出ない選択の落とし穴

・令和3年2月15日からオンライン申請であれば印鑑提出は任意になった(法務省)。ここだけ見ると会社実印の5,000円は丸ごと削れるように見える

・ただし印鑑を届け出ないと、法人の印鑑証明書がそもそも発行されない。銀行・証券の法人口座開設で法人の印鑑証明書を求められると、その場で詰む(この記事の確定設計では実印を作る前提で66,820円の設立実費を組んでいる。第1章・第8章)

・法務省の公式ページにはこの詰みのパターンについての記載が無い。実印を作らない選択をする前に、口座を開く予定の金融機関に「印鑑証明書無しで法人口座を開けるか」を先に確認してから決める

均等割は、経費にすらならない

法人税法38条2項2号は、地方税法の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税を含むものとし、退職年金等積立金に対する法人税に係るものを除く)を、損金の額に算入しないと定めている。つまり均等割70,000円は、現金では確実に出ていくのに、法人税の計算上は経費にならない。一方で、会計ソフト代・売買手数料・法人事業税は損金になる。同じ「出ていくお金」でも、税務上の扱いが違う。

合同会社を選んでいること自体が、コスト削減になっている

📝

定款の公証人認証が不要

合同会社は株式会社と違い、定款を公証人に認証してもらう必要が無い(法務省)。認証にかかる手数料がまるごと発生しない。
🔁

役員に任期が無く、重任登記が不要

株式会社の取締役には最長10年の任期があり、任期が来るたびに重任の登記と登録免許税がかかる。合同会社の業務執行社員にはこの任期が無いので、この費用が10年間ずっと発生しない。
💤

みなし解散が無い

会社法472条1項の休眠会社のみなし解散は、条文の括弧書きで「株式会社であって、登記が最後にあった日から十二年を経過したもの」と株式会社に限定されている。持分会社の解散事由を定める会社法641条にも、みなし解散は入っていない。
⚠️

ただし均等割は同じ

合同会社であることが効くのは登記関係の費用だけ。法人都民税の均等割70,000円は会社の種類に関係なくかかる。休眠にしても止まらない。

消費税法12条の2は、資本金の額または出資の金額が千万円以上である法人を、新設法人の納税義務免除の特例から外している。資本金100万円のこの会社は該当しないので、基準期間がない第1期・第2期は原則として免税事業者になる。インボイス発行事業者に登録すると、その時点で課税事業者になる。売上が無いうちは登録しない、というのがこの記事の判断である。

→ 次の第6章では、YouTube・メンバーシップの収益をこの法人に入れるかどうかを検討する。非属人の原則にどう影響するか、事業収入ができた場合に何が変わるかを見る。

🎥 YouTube・メンバーシップを同じ法人に入れる前の判断

このセクションの3点

① 事業収入ができると、第14章で書いた前提が1つひっくり返る。繰り越した欠損金は事業の利益とも相殺できるようになる

② 有料メンバーシップで投資の情報を出すことは、無登録で投資助言業を行っていると判断されるリスクがある。条文の除外規定は「文書」にしか書かれておらず、動画・会員制配信への当てはめは断定できない

③ この章は結論を出す章ではない。確認すべき論点の一覧である。実際に始める前に、金融庁の相談窓口または弁護士に個別に確認すること

👥 みんなはどうしている?

投資助言・代理業の登録業者数は金融庁が公表しているが、今回は取得できなかった(未確認)。分かっているのは、金商法2条8項11号の除外規定が「文書」にしか書かれていないという条文上の事実だけである。

この章で扱うのは2つである。①事業収入ができると第14章の前提が1つひっくり返る。②有料メンバーシップで投資の情報を出すと、登録が要る可能性がある。依頼者は「同じ法人でYouTubeとメンバーシップもやりたい」と言った。FX会社が自社のYouTubeチャンネルで相場解説をしながら口座開設に誘導する、あの形に近い。②は無登録で行うと刑事罰の対象になりうる論点なので、断定せず、確認できたことと確認できなかったことを分けて書く。

事業収入ができると、投資の損が活きる

第14章で「繰り越した欠損金は、この法人が将来出す利益としか相殺できない。この投資法人には事業収入がないので、損はほとんど活きない」と書いた。YouTubeとメンバーシップの収入が入ると、この前提が変わる。同じ法人の中で計算する以上、事業の利益と有価証券の譲渡損は同じ所得の計算に入る。ETFを売って出した譲渡損を、広告収入やメンバーシップ収入という事業の利益で穴埋めできるようになる。

論点投資だけの法人YouTubeもやる法人
①繰越欠損金の使い道この法人の将来の売却益・分配金としか相殺できない。事業収入が無いので実質ほとんど活きない(第14章)広告収入・メンバーシップ収入という事業の利益とも相殺できるようになる
②経費ETFの売買手数料など、限られた範囲しか損金にならないカメラ・PC・通信費・編集ソフトなどが損金になる
③消費税有価証券の譲渡は非課税取引が中心で、課税売上そのものがほぼ立たない広告収入・メンバーシップ収入が課税売上になりうる。免税事業者の判定に影響する(下記)
④均等割年70,000円(変わらない)年70,000円(変わらない。事業の有無に関係なく発生する)
⑤申告の手間別表中心で比較的単純収入と経費の区分、消費税の判定、源泉徴収の有無の確認が増え、手間が増える
⑥非属人という条件(第2章)全ての収益源を非属人に保てる唯一の属人的な収益源が入る。第2章の例外として、儲けを当てにしない前提で扱う

★どこから登録が要るのか

金融商品取引法2条8項11号は「投資顧問契約」を、助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約と定義している。この契約に基づいて実際に助言を行うと「投資助言業」になり、内閣総理大臣の登録が要る。

そのうえで条文には除外規定がある。「口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し」——つまり新聞・雑誌・書籍のように、不特定多数へ販売する目的で発行され、不特定多数が随時購入できるものは、除外の対象になる。ここで最も重要なのは、この除外規定が「文書」の中にしか書かれていないという点である。条文に「動画」「配信」「サブスクリプション」という語は一切登場しない。YouTubeの有料メンバーシップがこの除外規定の趣旨に乗るのか、それとも媒体が違うので乗らないのか、条文の原文だけでは判断できない。

ケース登録要否確信度
YouTubeで無料の投資情報発信(相場解説・一般論)原則不要。報酬を支払う契約(投資顧問契約)が成立しないため、2条8項11号の構造に乗らない高(条文原文で確認)
YouTubeの有料メンバーシップ(月額・誰でも随時加入・会員全員に同一内容)グレー。除外規定は「文書」に限定して書かれており、動画・会員制配信に及ぶかは条文だけでは判断できない。「不特定多数が随時購入可能」という要件を満たす設計は除外の趣旨に近づくが、断定できない低(グレー)
個別銘柄の売買推奨を、会費と結びつく形で行う登録が必要になるリスクが最も高い。「投資判断」の定義(下記)に直接該当しやすい
自分の実際の売買記録の公開(事実の開示のみ)グレー。単なる事実の開示は「助言」そのものではない可能性があるが、推奨の趣旨を含めば助言と評価されるリスクが残る低(グレー)
会員限定で個別の相談に応じる登録が必要になる可能性が高い。「不特定多数向け」の除外の趣旨から外れ、個別の相手方への助言という条文の構造に該当しやすい
自己資金のみの株・ETF運用(他人の金を預からない)登録不要。投資運用業は他人の財産の運用が要件中(条文原文の突合は未実施)

2条8項11号ロは「投資判断」を、投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断と定義している。だから、動画の中で「この銘柄を、この価格で、いつ買え」という話をすればするほど、この定義に直接当てはまっていく。逆に、指数の解説や制度の説明にとどめている限りは、この定義から遠い。個別銘柄の売買推奨が最も危ないのは、この定義文言そのものが理由である。

この記事で確認できなかったこと

・金融庁・日本投資顧問業協会の公式見解、パブリックコメント回答は取得できていない

・無登録営業の罰則の具体的な条文は未取得。「無登録営業は刑事罰の対象」という理解自体は妥当と考えられるが、懲役年数・罰金額を含む条文番号までは確認していない

・YouTube広告収入・メンバーシップ収入の消費税、米国の源泉徴収(W-8BEN-E)は未確認

・実際に始める前に、金融庁の相談窓口または弁護士に個別に確認すること。この章は結論ではなく、確認すべき論点の一覧である

安全側に倒すなら、どう作るか

個別銘柄の売買推奨をしない。

個別相談を受けない。

誰でも同じ内容が同じ値段で買える形にする。

投資顧問契約と呼べる契約を結ばない。

自分の売買記録は事実として出し、推奨の言葉を付けない。

ただし、これで確実に安全だと断定はしない。金融庁・JIAAの公式見解を確認していない以上、上記5点を守っても登録が必要と判断される可能性は残る。

収入の税務

論点内容確認状況
YouTube広告収入(AdSense)の消費税支払元法人が国外の場合の課税区分など、一般に語られる論点はあるが原文を取得していない未確認
チャンネルメンバーシップ収入の消費税決済主体・売上の相手方の整理が必要だが、原文を取得していない未確認
米国の源泉徴収(W-8BEN-E)日米租税条約による軽減税率の適用関係を含め、原文を取得していない未確認

消費税は、資本金100万円のこの法人であれば設立第1期・第2期は原則として免税事業者になる(消費税法12条の2。第5章F参照)。ただし事業収入が増えれば、第3期以降は基準期間の課税売上高で判定される。YouTubeとメンバーシップの収入が育てば、いずれ免税事業者ではいられなくなる可能性がある。

定款の目的にも関わる。投資の運用とYouTube・メンバーシップ運営を同じ法人でやるなら、設立時にその両方を目的に入れておく(第8章で決めた「有価証券の取得、保有及び運用」に、動画配信・情報提供に関する文言を加える形になる)。目的に入っていない事業を後から始めると、定款変更の手続きが要る。

1つの法人に入れるか、分けるか

同じ法人に入れる利点は、損益通算ができることと、均等割が1社分で済むことである。分ける利点は、規制の切り分けがはっきりすることと、投資の箱に属人的なものを持ち込まずに決算書がきれいなまま保てることである。

第2章の非属人の原則からは、本来は分けたほうが筋が通る。この記事は依頼者の希望どおり同じ法人に入れる前提で書いているが、分けるという選択も同じくらい正しい。

→ 次の第7章では、役員報酬0円でこの法人を運営する仕組みを扱う。生活費は別の会社の役員報酬で完結させ、この法人には資金を役員借入金として入れる、その入金の設計を見る。

0️⃣ 役員報酬0円で運営し、資金は役員借入金で入れる

このセクションの3点

① 役員報酬を0円にすることは法律上まったく問題ない。「毎月同じ額を払うなら経費にできる」というルールは、報酬を払う場合の条件であって、払わない自由を制限するものではない。

② 社会保険には別の2つの問題がある。法人が「適用事業所」になるかどうかと、代表社員が「被保険者」になるかどうかである。後者は報酬0円なら生じないが、前者の届出の要否は年金事務所に確認する必要がある。

③ 毎月の積立資金は、増資でも贈与でもなく「役員借入金(個人から法人への貸付)」として入れる。金額は毎月10万円が基本だが、入らない月があってもよい。負債として積み上がるだけなので、返済すれば個人に課税されずに戻せる。

👥 みんなはどうしている?

役員報酬が0円の法人が何社あるかという統計は見つからなかった。会社標本調査には役員給与の総額はあるが、0円の法人数は分からない。概算で言えば、赤字法人が60.3%を占める中には、役員報酬を取れていない会社も相当数含まれるとみられる(これは推定であって統計ではない)。

結論から書く。役員報酬を0円にすることは、法律上まったく問題ない。「役員報酬は毎月同じ額を払わないと経費にできない」というルール(定期同額給与)は、あくまで報酬を支給する場合にかかる条件であって、支給しないという選択そのものを制限する条文ではない。払わないのなら、そのルールの出番自体が無い。

だから「役員報酬0円の合同会社」は、税務上も会社法上も、成立しない設計ではない。ただし、報酬を0円にすると、そのぶん法人の中で起きなくなる手続きと、代わりに気をつけるべき点がある。それを1つずつ確認する。

📝

源泉徴収と年末調整が消える

報酬という支払いが存在しないので、源泉徴収する対象がない。毎月の源泉徴収も、年末の年末調整も発生しない。

開設届出の要否は要確認

給与を支払う事業所ができたときに提出する「給与支払事務所等の開設届出書」を、報酬0円のままでも出す必要があるかは、本記事の調査の範囲では確認できていない。税務署へ直接確認すべき事項として扱う。
🏥

被保険者にはならないが、届出は別問題

報酬が0円であれば被保険者としての資格は生じない。ただし法人が適用事業所になるかどうかは別の問題で、届出の要否は年金事務所への確認が要る。
💸

経費にできるものがほとんど無い

報酬という最大の損金科目が無いため、法人の利益から差し引ける経費はごく限られる。赤字であっても均等割は出ていく(第12章)。

社会保険はどうなるか

ここには2つの別々の問題がある。1つは「この法人が、健康保険・厚生年金保険の適用事業所になるか」という問題、もう1つは「代表社員が、その被保険者になるか」という問題である。この2つを混同すると整理を誤る。

法人は原則として強制適用事業所になり得る(健康保険法3条3項・厚生年金保険法6条1項)。だから「届出が一切要らない」とは言い切れない。一方で、報酬が0円なら被保険者としての資格は生じないという整理になる。適用事業所としての届出の要否と、被保険者になるかどうかは別の話である。

この点は公式資料で確定できていない。断定はしない。実際に法人を設立するときは、年金事務所へ「代表社員の報酬が0円の場合、この法人で新規適用の届出が必要か」を必ず確認する。ここは記事の中では埋められない、確認すべき事項として残す。

では、毎月の積立資金はどうやって会社に入れるのか

方法どういう扱いになるか個人に戻せるか注意点
役員借入金(個人から法人への貸付)法人の負債として計上される返済すれば、個人に課税されずに戻せる無利息でも法人側で問題にならない。毎月同額を入れる義務は無い
増資資本金等の額が増える出資の払い戻しという手続きが必要で、貸付ほど単純には戻せない資本金等の額が1,000万円を超えると均等割の区分が上がる(第12章)。この趣味の設計では避ける
贈与法人に受贈益が立つ贈与なので、そもそも戻す性質のものではない受贈益は法人税の課税対象になる

毎月10万円は、貸付として入れる。入らない月があってもよい

毎月の10万円は、役員借入金として法人に入れる。理由は単純で、他の2つの経路には難点がある。増資は均等割の区分に響き、贈与は法人に課税される受贈益を生む。貸付なら負債として積み上がるだけで、返済すればその分は課税されずに個人へ戻る。

また、毎月10万円は義務ではない。依頼者自身の言葉を借りれば「基本は毎月。ただちょっと使いすぎたりすると入らないかも」という前提である。役員借入金は、毎月定額を拠出すると約束する契約ではなく、都度個人が法人に貸すという行為の積み重ねに過ぎない。役員報酬にある「定期同額給与でなければ経費にならない」というルールは、貸付には存在しない。だから入れない月があっても、法律上・会計上の問題は生じない。

この箱を10年、20年と長く持ち続けるには、入れた金がいつでも返せる形になっていることが条件になる。ただし、貸したまま返済しないうちに本人に相続が起きると、その貸付金は相続財産の中の債権として評価される(第15章)。この一点だけは、頭の片隅に置いておく。

役員報酬0の落とし穴

・経費がほとんど作れないので、赤字の年でも均等割70,000円は必ず出ていく(第12章)

・記録も返済もないまま会社の金を個人の生活に使うと、役員給与・役員貸付金・配当などとして課税され得る。私的利用の境界線は第16章で扱う

・本業の会社の給与や経費と、この投資法人の資金を混ぜない。貸付として入れた金の動きは、帳簿と通帳で常に追える状態にしておく

→ 次の第8章では、合同会社を設立し、最初のETFを買うまでの手順を、日付順に並べる。

🧭 合同会社を設立し、最初のETFを買うまでの手順

このセクションの3点

① 会社を作る作業そのものに大きな費用はかからない。お金が動くのは登記申請の登録免許税60,000円と、証明書取得の1,820円だけである

② 紙の定款で印紙4万円を払う・資本金を1,000万円以上にする、この2つをやらなければ、500万円の配分(第1章の表A)は崩れない

③ 証券会社の審査には登記事項証明書と印鑑証明書がいる。取得は登記完了の後。資本金100万円は会社成立前に、役員借入金400万円は会社成立後に入れる。最初の1口を買うまでが第1期の始まりである

👥 みんなはどうしている?

合同会社は215,081社あり、全法人の7.2%。株式会社は2,692,201社で89.7%(国税庁「会社標本調査」令和6年度分)。合同会社はまだ少数派だが、20万社を超える規模で存在している。

  1. 1

    Day 0

    会社の名前と本店所在地を決める

    やること:商号(会社名)と本店所在地を確定する。同一住所に同一商号の会社が無いかだけ確認しておく。

    必要なもの:本店にする住所(自宅で構わない)。

    かかる金額:0円。

  2. 2

    Day 0

    定款を作る

    やること:合同会社の定款を作成する。事業目的の欄に、有価証券の保有・運用にあたる文言を必ず入れる(証券会社の審査で見られる。次の項で詳しく書く)。資本金は100万円、役員(代表社員)からの借入枠は別途会社成立後に設定する。

    必要なもの:商号・本店所在地・目的・社員(出資者)の氏名・資本金の額。

    かかる金額:0円。合同会社は株式会社と違い、定款の公証人認証そのものが不要。

  3. 3

    Day 1

    電子定款にして印紙4万円を回避する

    やること:定款をPDF等の電磁的記録で作成する。紙で作って収入印紙を貼る方式は選ばない。

    必要なもの:電子署名の環境(行政書士・司法書士に依頼すれば代行してもらえる)。

    かかる金額:0円。電磁的記録は印紙税の課税文書にあたらない(国税庁 質疑応答事例)。紙の定款だと収入印紙4万円がかかる。

  4. 4

    Day 1

    資本金100万円を代表者の個人口座に払い込む

    やること:資本金100万円を、代表社員個人の銀行口座に振り込む形で払い込む。通帳またはネットバンキングの明細で払込みの記録を残す。ここで入れるのは資本金の100万円だけ。残り400万円(役員借入金)は会社成立後、法人口座を開いてから入れる。

    必要なもの:代表社員個人の銀行口座。

    かかる金額:0円(振込手数料を除く)。

  5. 5

    Day 2

    法務局へ登記申請する

    やること:定款・払込みを証する書面などを添えて、本店所在地を管轄する法務局へ設立登記を申請する。

    必要なもの:定款、代表社員の印鑑(会社実印)、登録免許税の納付。

    かかる金額:登録免許税60,000円。資本金の0.7%だと7,000円だが、6万円に満たないときは1件60,000円になる(法務省「合同会社の設立手続について」)。資本金を500万円にしても0.7%は35,000円で、依然として最低額の6万円が適用される。会社実印の作成費は相場5,000円。

  6. 6

    Day 9〜

    登記完了を待つ

    やること:法務局の審査を待つ。申請日が会社の設立日になる。

    必要なもの:特に無し。

    かかる金額:0円。

  7. 7

    Day 10

    登記事項証明書と印鑑証明書を取る

    やること:登記完了後、法務局で登記事項証明書と印鑑証明書を取得する。銀行口座・証券口座の開設に必要になる。オンライン請求すると窓口交付より安くなる。

    必要なもの:登記完了の確認。

    かかる金額:登記事項証明書2通で980円(オンライン請求・窓口受取490円/通、登記手数料令第3条第1項)、印鑑証明書2件で840円(オンライン420円/件、登記手数料令第10条第2項)。合計1,820円。

  8. 8

    Day 10〜

    税務署へ法人設立届出書と青色申告の承認申請書を出す

    やること:本店所在地を管轄する税務署へ、法人設立届出書と青色申告の承認申請書を提出する。

    必要なもの:登記事項証明書、定款の写し。

    かかる金額:0円。法人設立届出書は設立の日から2か月以内(国税庁 No.5100)。青色申告の承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日とのうち、いずれか早い日の前日までに出す(法人税法122条)。第1期から青色申告にできないと、赤字を10年繰り越す道が閉じる。法人設立届出書と同時に出しておくのが確実である。

  9. 9

    Day 10〜

    東京都主税局へ法人設立・設置届出書を出す

    やること:本店を管轄する都税事務所へ、法人設立・設置届出書を提出する。

    必要なもの:登記事項証明書、定款の写し。

    かかる金額:0円。事業開始の日から15日以内(東京都都税条例第26条第1項)。税務署より期限が短いので、先に動く。

  10. 10

    Day 12

    法人の銀行口座を開く

    やること:法人名義の銀行口座を開設する。役員借入金(第7章)の受け皿と、証券口座への入出金に使う。

    必要なもの:登記事項証明書、印鑑証明書、定款の写し。

    かかる金額:口座開設そのものに費用はかからない。

  11. 11

    Day 13

    役員借入金400万円を法人口座へ入れる

    やること:代表社員個人の資金400万円を、役員借入金として法人の銀行口座へ振り込む。資本金100万円と合わせて、合計500万円が会社に入る。無利息で貸すこと(第15章)。

    必要なもの:法人の銀行口座(Day 12で開設済み)。

    かかる金額:0円(振込手数料を除く)。

  12. 12

    Day 20

    証券会社へ法人口座を申し込む

    やること:法人口座を申し込む。どの証券会社を選ぶかは第9章で扱う(自動積立ができると明記した公式ページは無い)。

    必要なもの:登記事項証明書、印鑑証明書、定款の写し、法人の銀行口座情報。

    かかる金額:口座開設そのものに費用はかからない。審査に数日から1週間程度かかる会社がある。

  13. 13

    Day 30

    入金して最初の1口を買う

    やること:法人の銀行口座から証券口座へ4,583,180円を入金し、第10章の配分どおりに発注する。

    必要なもの:証券口座の開設完了。

    かかる金額:4,583,180円(オルカン1,060口・国内高配当ETF212口・外国REIT ETF318口、手元に残す現金110,086円)。

提出書類の一覧

提出先書類期限根拠
税務署法人設立届出書設立の日から2か月以内国税庁 No.5100
税務署青色申告の承認申請書設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日まで法人税法122条
東京都主税局(都税事務所)法人設立・設置届出書事業開始の日から15日以内東京都都税条例第26条第1項

資本金1,000万円未満で作った新設法人は、基準期間がない事業年度(第1期・第2期)は原則として消費税の免税事業者になる(消費税法12条の2は「資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人」を免税の対象外としており、資本金100万円ならこれに当たらない。役員借入金は資本金の額に算入されない)。インボイス発行事業者の登録をすると課税事業者になるので、売上が無いこの法人では登録しない。ただし、この法人で別の事業(広告収入など)を始める場合は前提が変わるので、そのときに改めて確認する。

定款の目的欄に「有価証券の保有及び運用」にあたる文言を入れておくこと自体は無害で、目的外の取引にならないという意味では意味がある(証券会社の岡三オンラインが「取引を行うことが、当該法人の定款、その他内規等に違反しないこと」を要件にしている)。ただし「証券会社が有価証券の保有・運用という文言を求める」という要件は、法人口座を調べた9社の公式ページのどこにも見つけられなかった。断定せずに書く。

この段階でやりがちな失敗

・紙の定款にしてしまい、収入印紙4万円を払う。電子定款にすれば0円で済む差なので、代行してくれる専門家を先に探しておく

・資本金を1,000万円以上にしてしまう。均等割は資本金等が1,000万円を境に金額が上がる区分になっている。資本金100万円で始めるこの設計では、この境目を越えない。役員借入金は資本金等の額に算入されないため、400万円を貸し付けても均等割の区分は変わらない

・登記事項証明書を早く取りすぎて、証券口座の申し込み時に有効期限が切れている。証券会社はおおむね発行から6か月以内のものを求めるので、口座開設の直前に取り直す

・決算期を、法人設立月の直前月にしない。設立日から決算期末までの期間がいきなり短い第1期になり、初年度から慌ただしい決算・申告作業を強いられる

→ 次の第9章では、法人口座をどこで開くか、そして「法人口座で投信の自動積立ができる」と明記した証券会社が本当に無いのかを、5社の公式ページで確認する。

🏦 口座を開く — 銀行と証券、審査に落ちない順

このセクションの3点

① 口座が開けなければ何も始まらない。落ちる理由は銀行の気分ではなく、犯罪収益移転防止法4条が銀行に課している確認義務である

② 銀行はGMOあおぞらネット銀行が5つの軸すべてで最上位。AI面談で「事業の内容」を説明できるのが決定的

③ 証券はSBI証券が1位。ゼロ革命(国内株手数料0円)が法人も対象だから

👥 みんなはどうしている?

法人口座の開設数・謝絶率を示す公的な統計は見つからなかった(未確認)。分かっているのは、楽天銀行が「事業実態の確認が取れない場合」を受付できない例として公式に列挙していることと、犯収法4条が銀行に確認を義務づけていることである。

この章で答えるのは2つだけだ。銀行と証券をどこで開くか。そして売上ゼロの新設法人が審査に落ちないために何を用意するか。依頼者が言うとおり、ここは「すべてはランキングなのです」で組む。ただし主観の点数はつけない。各社の公式ページが何を求めているかだけを条件に固定し、それに照らして順位をつける。落ちた・通ったという体験談は一切使っていない。未確認のものは未確認と書く。

なぜ落ちるのか — 法律が銀行に課している4つの確認

犯罪収益移転防止法4条1項は、銀行・証券会社が法人と取引を始めるときに、次の4つを確認するよう義務づけている。これは銀行の裁量ではなく、法律上の義務である。

確認事項(条文の文言)
本人特定事項(法人にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地)
取引を行う目的
当該顧客等が自然人である場合にあっては職業、当該顧客等が法人である場合にあっては事業の内容
その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定める者があるときは、その者の本人特定事項(=実質的支配者)

このうち二号(取引を行う目的)と三号(事業の内容)が、投資専用法人にとっての関門になる。売上ゼロ・自宅本店・従業員なしの新設法人が持っていないのは、まさにこの2つに答える材料である。

さらに4条2項は「ハイリスク取引」を定めている。なりすましの疑い・特定国等が関わる取引・その他「犯罪による収益の移転防止のために厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引」に該当すると、上の4つに加えて「資産及び収入の状況」まで確認される。

「投資専用法人だから謝絶される」という公的な規定・言及は、今回の調査では見つからなかった。落ちやすい構造は条文から論理的に導けるが、公的資料に明示があるわけではない。ここは正確に書く。

事業内容確認資料 — この法人が持てるのは「Webサイト」だけ

各行が「事業内容確認資料」として公式に例示しているものを並べる。

銀行例示している資料
ゆうちょ銀行会社案内/取扱商品のパンフレット/Webサイト/契約書/請求書/発注書または納品書。加えて決算書類等の財務状況書も求めると明記
PayPay銀行履歴事項全部証明書/銀行口座通帳の写し/事業所の賃貸借契約書/公共料金の領収書/事業許可証等/保険関連書類/法人設立関連書類/新規取得の許認可書類
三菱UFJ銀行具体的な書類名の例示は確認できず。「主たる事業について説明」を求め、「口座開設目的について事業内容も踏まえて確認」すると明記。未公開株・社債詐欺等の不正利用対策としての確認である旨も明記
GMOあおぞらネット銀行/ドコモSMTBネット銀行今回到達したページには具体的な記載が見当たらなかった(未確認)
銀行が求める資料の例この法人の状況
取扱商品のパンフレット無い
請求書・発注書・納品書売上が無いので無い
事業許可証・許認可書類要らない事業なので無い
事業所の賃貸借契約書自宅が本店なら無い
決算書類等の財務状況書1期目が終わるまで無い
Webサイト作れる。この一覧の中で唯一持てるもの

この法人が用意できる事業内容確認資料は、Webサイトしかない

ゆうちょ銀行が事業内容確認資料の例として挙げている6項目のうち、投資専用の新設法人が用意できるのはWebサイトだけだ。パンフレット・請求書・発注書・許認可証・賃貸借契約書・決算書は、いずれも持てない。

依頼者はWebアプリを自分で作れる技術者で、Cloudflare Pagesの無料枠が使える。審査対策として唯一有効な手段が、この人にとっては最も安く作れるものになっている。ただし断定はしない。Webサイトを事業計画書の代わりとして認めるかどうかは、今回の調査では確認できなかった。ゆうちょ銀行が例示に挙げているという事実だけが確認できている。

銀行ランキング

中身
① 事業実態を説明する機会があるか売上ゼロの投資法人にとって最大の壁。犯収法4条1項三号
② オンライン完結か郵送・来店の要否
③ 所要日数
④ 維持費口座維持手数料・振込手数料
⑤ 銀行APIがあるか第4章の自作会計と直結
順位銀行決め手
1位GMOあおぞらネット銀行オンライン完結・最短即日・維持費0円・銀行API28種が無償(第4章)・AI面談で事業内容を説明できる。5つの軸すべてで最上位
2位ドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行)「必要書類は運転免許証だけ」「来店不要」「最短翌日」「口座維持手数料・IB利用料は一切かからない」。書類要求が最も軽い。ただし事業内容確認資料の扱いが未確認で、APIも自社利用の可否が未確認
3位楽天銀行維持費0円・ファームバンキングも無料。ただし郵送必須、「事業実態の確認が取れない場合」は受付できないと公式に明記
4位PayPay銀行オンライン申込可。ただし事業内容確認資料として賃貸借契約書・許認可書類などを例示しており、自宅本店・売上ゼロでは出せるものが少ない。所要日数・維持費が未確認
5位三井住友銀行手数料無料・最短20日。ただし必要書類の詳細が未確認
6位三菱UFJ銀行維持費がかかる(IB利用料4ヶ月目以降 月1,760円、未利用口座管理手数料 年1,320円)。「主たる事業についての説明」を求める運用。未公開株・社債詐欺対策としての確認と明記されており、投資目的の新設法人は説明の負荷が高いと読める
7位ゆうちょ銀行窓口来店が前提。必要書類が最多で、決算書類等の財務状況書まで求める(1期目が終わるまで出せない)。審査1か月〜2か月超。設立6ヶ月以内は追加書類
圏外みずほ銀行/信用金庫公式情報を確認できていないため順位をつけない

GMOあおぞらのAI面談は、この法人のためにあるようなもの

犯収法4条1項三号が銀行に義務づけている「事業の内容」の確認について、GMOあおぞらネット銀行は説明の機会を用意している。登記情報をもとに生成されたAIからの質問に答える形式で、任意・約10分・予約不要。公式に「AI面談をご利用いただくと事業内容の確認がしやすくなるため、審査がよりスムーズに進む可能性が高くなります」と明記している。

書類だけでは伝わらないものを10分で埋められる。任意なので受けなくても審査は可能だが、事業実態が説明しにくいこの法人こそ受けるべきものだと考える。

最短即日開設の条件は2つ。①代表者と取引責任者が同一であること ②取引責任者がマイナンバーカードを持ち、署名用電子証明書パスワードを知っていること。

楽天銀行は「事業実態の確認が取れない場合」は受付できないと公式に列挙している

・受付ができない例として、事業実態の確認が取れない場合/寄付を募るために組織された法人格(登記)のない団体/日本における登記のない海外法人/任意団体(同窓会、組合)/有限責任事業組合を公式に列挙している

・審査基準は「楽天銀行で定めた一定の審査基準がございますが、詳細については公開しておりません」と明記されている

・申込は郵送必須。届いた書類について「電話での確認や追加書類の送付を依頼させていただくことがあります」とも明記している

・事前に断られる可能性を告知している銀行と、GMOあおぞらのように説明の機会を用意している銀行がある、という違いになる

維持費の差も見ておく。ネット銀行はいずれも口座維持手数料が無料だが、三菱UFJ銀行はIB利用料が4ヶ月目以降 月1,760円、未利用口座管理手数料が年1,320円かかる。第5章で出した「年間70,000円」という運用コストの下限に、銀行選びがそのまま効く。

証券ランキング

中身
① 新設法人で開けるか
② 国内ETFの売買手数料毎月買うので直撃
③ 口座管理料
④ 必要書類・物理的要件の少なさ
⑤ 所要日数
順位証券会社決め手
1位SBI証券ゼロ革命(国内株手数料0円)が法人も対象と公式FAQに明記。毎月ETFを買うこの設計では決定的。設立経過年数の要件は見当たらない。ただし郵送の要否・所要日数が公式で確認できず、情報開示は薄い
2位SBIネオトレード証券オンラインで申込・書類アップロードが完結すると明記。設立経過年数の条件が公式に見当たらない。ただし詳細ページに到達できず未確認が多い
3位マネックス証券口座管理料無料。必要書類は4点のみ。ただし非課税法人は開設不可と明記
4位auカブコム証券「手数料体系は個人のお客さまに準じます」と公式明記。管理料無料。書類はシンプル。ただし「本店所在地に固定電話の設置があること」という物理的要件があり、自宅本店で固定電話が無いと満たせない
5位松井証券日米租税条約表明文書まで必要で書類が最多。年33,000円の口座管理料は資本金1億円超等が対象で、この法人は対象外とみられる
6位楽天証券郵送必須・審査1〜2週間。「決算書のご提出をお願いすることがあります」「口座開設をお受けできない場合がございます」と公式に明記。1期目が終わるまで決算書は無いので新設に不利
7位岡三オンライン「法人設立登記から、原則1年以上経過していること」と公式に明記。新設法人は開けない。情報開示は最も具体的だが、条件そのものが合わない
圏外野村證券(対面)公式サイトで開設基準を確認できる作りになっていない
圏外大和コネクト証券法人口座に関する公式ページを発見できなかった(未確認)
圏外GMOクリック証券2019年4月1日から法人の証券口座の新規開設を休止。開けない

毎月ETFを買うこの設計では、国内株の売買手数料が効く。SBI証券のゼロ革命が法人も対象であることが公式FAQで確認できているのは大きい。

新設法人を門前で断る証券会社がある

・岡三オンラインは「法人設立登記から、原則1年以上経過していること」を公式に明記している。2027年に設立するなら、岡三オンラインは2028年まで開けない(第18章と接続)

・楽天証券は「決算書のご提出をお願いすることがあります」「口座開設をお受けできない場合がございます」と公式に明記している。9社の中で唯一、審査で追加書類(決算書)を求める可能性を公式に明言している

・マネックス証券は非課税法人(公益法人等)を口座開設不可と明記している

固定電話が要るのは、銀行ではなく証券だった

auカブコム証券(三菱UFJ eスマート証券)は「本店所在地に固定電話の設置があること」を要件にしている。あわせて「本店所在地で郵送物の受け取りが可能であること」も要件にしている。

銀行側では固定電話を必須と明記した記載を確認できなかったのに、証券側には実在した。自宅を本店にするなら、この1社だけは条件を満たせない可能性がある。

証券口座は銀行より通りやすいのか。求められる書類の量は、証券各社とも銀行とほぼ同じ組み合わせ(登記簿謄本・印鑑証明書・実質的支配者確認・取引担当者の本人確認)で、突出して多い会社は無い。銀行の審査で問題になる「事業計画書」「取引先一覧」「資金使途の説明資料」に相当する書類を、証券会社は誰も要求していない。

ただし「証券口座は銀行より通りやすい」と断定できる公式の裏付けも無い。楽天証券は決算書を求める可能性を明言しているし、auカブコム証券は固定電話を要件にしている。書類の種類は銀行とほぼ同じで、事業計画書のような「事業の中身を説明する資料」を求める証券会社は無かった。ただし通りやすいと断定できる公式の裏付けも無い、というのがこの調査での結論になる。

審査に通すために用意するもの

用意するものなぜ審査に効くのか費用いつまでに
履歴事項全部証明書(6か月以内)犯収法4条1項一号の本人特定事項(名称・本店所在地)を証明する。各社とも6か月以内の発行を求めるオンライン請求+窓口受取490円/郵送520円(登記手数料令3条1項)口座を申し込む直前に取る。早く取りすぎると期限切れになる
法人の印鑑証明書会社の実印が登記された印鑑であることを証明する。証券会社はほぼ全社が求めるオンライン420円/郵送450円(登記手数料令10条2項)同じく申込直前
代表者の本人確認書類(マイナンバーカードが最強)犯収法4条1項一号の本人特定事項を証明する。GMOあおぞらはマイナンバーカードと署名用電子証明書パスワードがあれば最短即日開設になるマイナンバーカードの取得自体は無料銀行口座を申し込む前に用意しておく
実質的支配者の申告犯収法4条1項四号。誰がこの会社を実質的に支配しているかを申告する義務0円(自己申告)口座申込時
定款の目的に有価証券の保有・運用を入れておく目的外の取引にならないという意味では無害。ただし証券会社がこの文言を必須としていると明記した公式ページは、調査した9社のいずれにも見つからなかった(第8章の訂正と同じ内容)0円(定款作成時に入れるだけ)定款作成時(第8章)
郵送物を受け取れる住所GMOあおぞらは転送不要の簡易書留を登録法人住所に送る。楽天銀行・楽天証券は書類郵送が前提0円(自宅を本店にすれば追加費用なし)申込前
繋がる電話番号楽天銀行は電話での確認を行うことがあると明記。auカブコム証券は本店所在地に固定電話の設置を要件にしている手段による(今回は未確認)使う口座を決めてから

GMOあおぞらネット銀行の最短即日開設には条件が2つある。①代表者と取引責任者が同一であること ②取引責任者がマイナンバーカードを持ち、署名用電子証明書パスワードを知っていること。マイナンバーカードを持っているかどうかで、即日開設の可否が決まる。今持っていないなら、これが最初にやることになる。

電話番号はどうするか

銀行:固定電話を必須と明記した銀行は確認できなかった。ただし楽天銀行は「電話での確認や追加書類の送付を依頼させていただくことがあります」と明記しているので、繋がる番号は要る。

証券:auカブコム証券は「本店所在地に固定電話の設置があること」を要件にしている。

結論:携帯番号だけで進められる可能性は高いが、auカブコム証券を使いたいなら固定電話が要る。どの口座を使うかを先に決めれば、固定電話が必要かどうかも決まる。

固定番号を取る手段は、名前だけ挙げておく。NTTの加入電話・ひかり電話・050番号のIP電話・クラウドPBX(03番号など)・バーチャルオフィスの電話オプション・法人名義の携帯。料金は今回調べきれていない(未確認)ので書かない。必要になった時点で自分で比較すること。

開いた後 — 自動積立は無い

口座を開いた後の話をしておく。口座を開設できるSBI証券・楽天証券・マネックス証券・松井証券・auカブコム証券の5社を調べたが、「法人口座で投資信託の自動積立ができる」と明記した公式ページはどこにも存在しなかった。個人向けの積立サービスの説明ページには「法人」という語自体が出てこない会社がほとんどで、使えるとも使えないとも書いていない。

唯一はっきりしているのはauカブコム証券だ。同社の積立サービス「プレミアム積立」は、公式の取引ルールに「口座区分は特定口座またはNISA口座を開設済みであるお客さまのみ選択が可能です」と明記されている。ところが同社は別のFAQで「特定口座は個人の株式等への投資に関する制度であり、法人口座には特定口座はありません」とも明記している。NISA口座も個人専用だ。積立の前提条件を法人口座はどちらも満たせない。だからauカブコム証券に限っては、法人口座での自動積立は不可と確定できる。他の4社は「わからない」というのが正直な答えで、確認できていないものを確認できたことにはしない。毎月の買い付けは、自分で証券口座にログインして発注するという前提でこの先を設計する。

会社法人口座投信の自動積立備考
SBI証券開設可銀行引落サービスは法人不可と明記。預り金からの積立は法人可否の記載なしゼロ革命(国内株手数料0円)はインターネットコース+電子交付なら法人も対象と公式FAQに明記
楽天証券開設可(郵送・審査約5日)クレカ積立は法人対象外と明記。引落は楽天銀行に限定法人向けリアルタイム入金の対応行あり
マネックス証券開設可(非課税法人は不可)預り金・MRFからの自動つみたての仕組みは公式FAQにあり、法人除外の記載なし口座管理料無料
松井証券開設可積立時に総合口座から自動振替される仕組みはあり、法人の記載なし年間取引報告書は法人口座は交付対象外
auカブコム証券開設可・管理料無料・手数料は個人に準じる不可(確定)。プレミアム積立は特定口座またはNISA口座の開設が条件で、法人口座にはどちらも無い「特定口座は個人の制度であり法人口座にはない」と公式明記
GMOクリック証券不可。2019年4月1日から法人の証券口座の新規開設を休止FXのみ法人可

毎月、自分で発注する

自動積立が使えないのは、手間としては手間だ。それを「だから良い」と言い張るつもりはない。個人のNISAならクレジットカードで積立設定をして、あとは月に1回明細を眺めるだけで済む。法人口座ではそうはいかない。毎月、証券口座にログインし、値段を確認し、口数を指定して、自分の手で発注ボタンを押す。

ただ、趣味としてこの箱を持つと決めた人にとって、この手間は設計から排除すべき欠陥ではない。毎月1回、自分の会社の口座に入って何を何口買うかを決める行為そのものが、この記事の依頼者が言う「すべての資産が会社に入っていることが美しい」という感覚と地続きにある。自動化すれば消える手間を、あえて手元に残す選択として書く。

📊

特定口座が無い

自分で損益を計算する。auカブコム証券が「特定口座は個人の制度であり法人口座にはない」と公式に明記している。
🚫

NISAが使えない

NISA口座は個人専用の制度で、法人名義では開設できない。第13章で個人との差として正確に計算する。
💳

クレジットカードでの積立が使えない

楽天証券はクレカ積立を法人対象外と明記している。ポイント還元を前提にした積立設計はそもそも成立しない。
🏦

銀行からの自動引落が使えない場合がある

SBI証券は銀行引落サービスを法人不可と明記している。入金は自分で振り込む前提になる。
📄

年間取引報告書が交付されない場合がある

松井証券は法人口座を年間取引報告書の交付対象外としている。損益の記録は自分で残す必要がある。

口座自体が開けない会社もある

GMOクリック証券は2019年4月1日から法人の証券口座の新規開設を休止している。法人向けはFXのみ。

→ 次の第10章では「非属人の条件で選ぶETF — 銘柄・口数・配分」を、この章で開いた口座で毎月自分で発注する前提のもと具体的に決める。

🧺 非属人の条件で選ぶETF — 銘柄・口数・配分

このセクションの3点

① 選ぶ基準は3つ。まとまった金額の中で1口が買えること、信託報酬が低いこと、法人で持つと税の扱いが変わる枠を1つ入れること

② 国内株のETFは分配金の20%が益金不算入になる。外国株価指数に連動するETFはその特例から外れる設計になっている

③ 最初の建玉4,583,180円と毎月の積立100,000円は、この記事ではオルカン・国内高配当・外国REITの3本で固定して置く。毎月10万円は「入らない月があってよい」前提で、法人口座に自動積立の機能が無いこと(第9章)はむしろこの前提と相性がいい

👥 みんなはどうしている?

法人がETFをどれだけ保有しているかの統計は、今回は取得できなかった(未確認)。この章の銘柄データ(価格・売買単位・信託報酬)は、JPXの銘柄別公式資料と運用会社の公式ページから2026年8月11日に実測したものである。

銘柄を選ぶ基準は3つに絞る。①まとまった金額の中で1口が買えること。単元が大きく最低購入代金が高い銘柄は、月々の積立には使いにくい。②信託報酬が低いこと。長く持つ箱である以上、毎年差し引かれるコストは小さいほうがいい。③法人で持つと税の扱いが変わる枠を1つ入れること。これは個人のNISA口座には無い、この箱だけの理由だ。次の見出しでこの3本目を具体的に決める。

買える銘柄の実測一覧

価格は2026年8月11日終値。売買単位と信託報酬はJPXの銘柄別公式資料、NEXT FUNDS各種は運用会社の公式ページから取得した。

銘柄コード売買単位1口価格最低購入代金信託報酬(税込)分配金利回り
MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信25591口3,007円3,007円0.0858%
MAXIS米国株式(S&P500)上場投信25581口3,534円3,534円0.066%
iシェアーズ S&P500 米国株ETF165510口884.9円8,849円0.06%程度(JPX表記)
MAXIS トピックス上場投信13481口4,262円4,262円0.066%
iシェアーズ・コア TOPIX ETF147510口422円4,220円0.0495%
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信130610口427.6円4,276円0.0494%(JPX表記)1.86%
NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信14891口3,507円3,507円0.308%2.69%
NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信134310口1,937.5円19,375円0.1705%4.71%
NEXT FUNDS 外国REIT(除く日本・ヘッジなし)25151口1,705円1,705円0.187%2.88%
NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合251010口806.8円8,068円0.077%0.92%
NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債(除く日本)251110口1,178.5円11,785円0.132%2.88%
iシェアーズ 米国債20年超ETF(為替ヘッジあり)26211口1,002円1,002円0.154%
純金上場信託(現物国内保管型)15401口20,715円20,715円0.44%
SPDR ゴールド・シェア13261口63,150円63,150円0.40%
1口いくらで買えるか(最低購入代金)
2621 米国債20年超(ヘッジ有)
1002円
2515 外国REIT
1705円
2559 オルカン
3007円
1489 日経高配当50
3507円
2558 S&P500
3534円
1475 コアTOPIX
4220円
1348 トピックス
4262円
1306 TOPIX連動
4276円

2026年8月11日終値ベース。売買単位はJPX銘柄別公式資料、NEXT FUNDS各種は運用会社公式ページから取得。

法人で持つと税の扱いが変わる枠

ここがこの章の山場だ。法人税法23条は、法人が受け取る配当等の一部を益金に算入しない「受取配当等の益金不算入」を定めている。持株比率5%以下(非支配目的株式等)であれば、配当等の額の20%が益金に算入されない。租税特別措置法67条の6は、この扱いを「特定株式投資信託」、つまり信託財産を株式のみに投資し、金融商品取引所に上場している証券投資信託の分配金にも広げている。上場ETFの多くはここに該当する。

ただし、この特例には除外がある。「外国株価指数連動型特定株式投資信託」は対象から除かれる。措置法3条の2の括弧書と措置法9条1項3号がこの定義にあたる。つまり、同じ株式のETFでも、連動する指数が国内株か外国株かで、法人が受け取る分配金の扱いが変わる。

この記事では、国内株のETF(1348・1475・1306・1489)は分配金の20%が益金不算入になり、外国株価指数に連動するETF(2558・1655・2559)はこの特例から外れる設計になっている、と書く。ただし「外国株価指数連動型」に実際に該当するかどうかの最終判定は、政令が定める「外国株価指数」の範囲による。断定はしない。申告のときに税理士か税務署に確認すべき事項として扱う。REITのETF(1343・2515)、債券ETF(2510・2511・2621)、金(1326・1540)は、そもそも「株式のみに投資する証券投資信託」ではないため対象外だ。

銘柄タイプ具体例分配金の20%益金不算入理由
国内株のETF1348・1475・1306・1489該当すれば効く(要確認)特定株式投資信託として措置法67条の6・法人税法23条の対象になる
外国株価指数に連動するETF2558・1655・2559この特例から外れる設計(要確認)「外国株価指数連動型特定株式投資信託」は措置法67条の6の対象から除かれる
REITのETF1343・2515対象外株式のみに投資する証券投資信託ではない
債券ETF2510・2511・2621対象外株式のみに投資する証券投資信託ではない
1326・1540対象外証券投資信託ではない

措置法67条の6・3条の2・9条1項3号は、この特例が入るための入口を定めているにすぎない。銘柄コードだけで結論は出せない。実際の判定には、各ETFの信託約款と連動対象の確認が要る。

最初の建玉 — 4,583,180円をどう配分するか

最初の建玉は4,583,180円(第1章。会社に入れる500万円から、設立実費66,820円と均等割5年分350,000円を確保した残り)。2559・1489・2515の3本とも売買単位が1口なので、端数調整がしやすい。2026年8月11日終値で口数を組むと次のようになる。

銘柄コード口数金額この枠の役目
MAXIS全世界株式(オルカン)25591,060口3,187,420円core。世界全体を1本で持つ
NEXT FUNDS 日経平均高配当株501489212口743,484円法人で持つ意味がある唯一の枠。国内株ETFなので分配金の20%が益金不算入になり得る
NEXT FUNDS 外国REIT2515318口542,190円株式と値動きの源泉が違うものを1本
小計4,473,094円
手元に残す現金110,086円端数調整と手数料の余白。あわせて「一定の現金は持ちながら回す」という方針そのもの
合計4,583,180円

毎月10万円 — 入る月だけ買えばいい

毎月の追加は100,000円(第1章)。同じ3本の比率で口数を組むと次のようになる。ただし依頼者の言葉どおり、これは義務ではない。「基本は毎月。ただちょっと使いすぎたりすると入らないかも」という前提で設計されているので、入らない月があっても構わない。

銘柄コード口数金額
MAXIS全世界株式255927口81,189円
NEXT FUNDS 日経平均高配当株5014895口17,535円
NEXT FUNDS 外国REIT25150口0円(この月は買わない。現金で置く)
合計98,724円(残1,276円は翌月に繰り越す)

自動積立が無いことは、この設計にとって都合がいい

第9章で、法人口座には投信の自動積立が無いと書いた。個人のNISA口座なら、これは不便な制約になる。だが依頼者の設計では、これは制約ではなく都合のいい仕組みになっている。

「基本は毎月。ただちょっと使いすぎたりすると入らないかも」という前提は、そもそも定額を強制されたくないという前提だ。自動積立があれば、毎月同じ額が問答無用で引き落とされる。手動発注なら、入れられる月だけ、入れられる額だけ買えばいい。10万円入る月は10万円分、5万円しか入らない月は5万円分、0円の月は買わない。この記事の3本(2559・1489・2515)はすべて売買単位1口なので、どんな端数の金額でも口数を組み替えられる。自動積立が無いという不便が、この設計ではむしろ噛み合っている。

増やすためではなく、続けるための配分

オルカン1本だけでも、この箱は成立する。世界全体に分散した1本を毎月買い続けるだけで、投資としては十分に完結する。それでもこの記事では2559(オルカン)に加えて1489(日経平均高配当株50)と2515(外国REIT)を組み込んだ。

1489を入れているのは、法人で持つ意味がある唯一の枠だからだ。国内株のETFであるこの銘柄だけが、分配金の20%が益金不算入になるという、個人のNISA口座には存在しない扱いを受ける。値上がりを狙って選んだのではなく、この箱の中に「法人ならではの理由で持つもの」を1つ置いておくために選んだ。2515を加えたのは、株式と値動きの源泉が違うものを1本持っておくためで、これも増やす目的ではなく、箱の中身に単一の値動きしかない状態を避けるためだ。

→ 次の第11章では「含み益に税はかからない — 法人税法61条の3」を、この3本を売らずに持ち続けたときの扱いとして解説する。

🧊 ETFを持ち続ける間の税金 — 含み益・分配金・売却益

このセクションの3点

① 事業年度の終わりに持っている株式やETFは、値上がりしていても、原則として課税されない。売却するまで税はかからない(法人税法61条の3第1項第2号)。

② 課税されるのは「売買目的有価証券」だけ。専門の売買担当者を置かず、帳簿に短期売買目的と書かなければ、この記事の法人は課税対象に入らない(法人税法施行令119条の12第1号)。

③ 税が発生するのは「売って利益が出たとき」「配当・分配金を受け取ったとき」「均等割(第12章)」の3つだけ。持っているだけでは何も起きない。

👥 みんなはどうしている?

これは統計の話ではない。法人税法61条の3が定める評価方法は、保有している法人の数に関係なく一律に適用される。なお赤字法人が60.3%あるということは、その多くが含み損益とは無関係に赤字だということでもある。

結論を先に書く。この法人が期末に持っている株式やETFは、値上がりしただけでは課税されない。「法人は個人と違って毎年時価評価され、含み益にまで税がかかる」というのはよくある誤解だが、条文はそうなっていない。

法人税法61条の3第1項は、事業年度終了時に持っている有価証券を2種類に分け、評価方法を分けている。「売買目的有価証券」は時価法で評価し、評価益・評価損をその年の益金・損金に入れる。それ以外(売買目的外有価証券)は原価法で評価する。原価法は買ったときの値段のまま評価する方法であり、値上がり分は帳簿上の数字にならない。だから課税もされない。

区分期末の評価方法含み益への課税根拠
売買目的有価証券時価法(期末の時価で評価し直す)される。評価益が益金に算入される法人税法61条の3第1項第1号
売買目的外有価証券原価法(取得したときの価額のまま)されない。売るまで益金にならない法人税法61条の3第1項第2号

では何が「売買目的有価証券」になるのか

「売買目的有価証券」に当たるかどうかは、持ち主の主観ではなく、法人税法施行令119条の12第1号が定める2つの状態のどちらかに当てはまるかで決まる。

該当するもの具体的にどういう状態かこの記事の法人は当てはまるか
①専担者売買有価証券短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で行う取引に、専ら従事する者が取得したもの当てはまらない。役員報酬0円・従業員なしの法人で、売買専任の担当者そのものが存在しない
②帳簿への記載取得の日に、短期売買目的で取得した旨を帳簿書類に記載したもの当てはまらない。長期保有を前提に、その記載をしない設計にする

専門の売買担当者を置かず、帳簿にその記載をしなければ

この記事が想定する法人は、役員報酬0円・従業員なし・長期保有という設計そのものが、法人税法施行令119条の12第1号のどちらの要件にも当てはまらない形になっている。専担の売買担当者はおらず、取得の日に短期売買目的と帳簿に書くこともしない。

その結果として、保有する株式やETFは「売買目的外有価証券」に区分され、原価法で評価される。期末に含み益があっても、それだけでは益金にならない。これは「絶対に課税されない」という保証ではなく、条文の要件に、この法人の実態を当てはめた結果としてそうなる、という順番で理解しておく必要がある。取得時に帳簿の記載を誤らないことが、この扱いを保つための唯一の実務上の注意点になる。

では、いつ税が発生するのか

💰

売って利益が出たとき

保有していた株式やETFを売却し、譲渡益が出た年に、その譲渡益が益金として法人税の課税対象になる。含み益がどれだけ大きくても、売らない限りここには到達しない。
🪙

分配金・配当を受け取ったとき

ETFの分配金や株式の配当を受け取った年は、その受取額が益金になる。ただし持株比率によっては一部が益金不算入になる(次の表)。
📮

赤字でも毎年出ていくもの

法人都民税の均等割は、所得の有無・売買の有無にかかわらず毎年課される。所得とは無関係に発生する固定費であり、第12章で詳しく扱う。

受取配当等については、法人税法23条1項・6項に益金不算入の規定がある。持株比率5%以下の株式等(非支配目的株式等)は、受け取った配当等の額の20%を益金に算入しなくてよい。この法人が持つ銘柄はどれも発行済株式のごく一部にすぎないため、非支配目的株式等に当たる。

論点内容根拠
受取配当等の益金不算入持株比率5%以下(非支配目的株式等)は、配当等の額の20%を益金に算入しない。つまり配当・分配金の20%ぶんは課税対象から外れる法人税法23条1項・6項
上場ETFの分配金信託財産を株式のみに投資し、金融商品取引所に上場している証券投資信託(特定株式投資信託)の分配金も、措置法67条の6により23条の対象になり得る措置法67条の6第1項
ただし除かれるもの「外国株価指数連動型特定株式投資信託」は、この特例の対象から除かれる設計になっている措置法3条の2の括弧書・措置法9条1項3号

つまり、この法人では、国内株のETFの分配金は20%が益金不算入になる可能性がある一方、外国株価指数に連動するETFはこの特例から外れる設計になっている。どのETFが「外国株価指数連動型」に当たるかの最終的な判定は、政令が定める「外国株価指数」の範囲によるため、ここでは断定しない。申告の際に、保有銘柄ごとにこの区分へ当てはまるかを税理士か国税庁の照会窓口に確認する必要がある。

配当・分配金にはあらかじめ所得税15.315%が源泉徴収されている。この源泉徴収分は、法人税の申告で所得税額控除として法人税額から差し引くことができる(国税庁 No.5760)。控除しきれなかった分は還付される。二重に税を払ったままにはならない。

確定申告の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内と定められている(法人税法74条1項)。3月決算なら5月末、この記事のように仮に8月決算なら10月末が期限になる。均等割・法人税・地方法人税などをまとめてこの期限内に申告・納付する。

→ 次の第12章では「毎年出ていく70,000円 — この趣味の燃料計」を解説する。

赤字でも払う均等割 — 年70,000円の仕組み

このセクションの3点

① 赤字でも、1株も売らなくても、毎年70,000円が出ていく。これが法人都民税の均等割で、この趣味の会費に当たる。

② 「都民税2万円+市町村民税5万円=7万円」という説明はよく見かけるが、条文の構造は違う。地方税法734条の読替によって、312条の「五万円」が「七万円」に読み替わっているだけで、2万円を別に足しているわけではない。

③ 均等割は資本金等の額と従業者数で決まる区分制の税額。資本金100万円で始めるこの法人は最も低い区分(年70,000円)に入り、資本金を1,000万円以下に保つことがそのまま維持費を抑えることにつながる。役員借入金は資本金等の額に算入されないので、いくら貸し込んでもこの区分は動かない。

👥 みんなはどうしている?

赤字法人は180万7,925社、割合は60.3%(国税庁「会社標本調査」令和6年度分)。この180万社すべてが、利益ゼロでも均等割を払っている。均等割は所得と無関係に発生する税なので、赤字であることは免除の理由にならない。

結論から書く。赤字でも、1株も売らなくても、この法人には毎年70,000円が出ていく。これが法人都民税の均等割であり、所得の有無とは無関係に発生する固定費である。売買を一切せず、含み益が課税されない箱(第11章)の中でじっとしていても、この70,000円だけは毎年確実に消える。これがこの趣味の会費である。

70,000円がどこから来る数字なのか

「都民税2万円+市町村民税5万円=7万円」という説明をインターネット上でよく見かけるが、これは条文の構造とは違う。正しい構造を条文の順に書く。

説明内容根拠条文
よくある(誤った)説明「都民税2万円+市町村民税5万円=7万円」と、2つの税を別々に足し合わせるものとして説明されることが多い
23区内での特例(1)23区内では、都が道府県民税相当分と市町村民税相当分を合わせて一の税(都民税)とみなして課す。市町村民税を都民税とは別に2万円足しているわけではない地方税法734条2項
23区内での特例(2)同条の読替表により、地方税法312条1項が定める「五万円」という金額を、事務所等が特別区の区域外にも所在する場合以外(=23区内だけに事務所がある場合)は「七万円」に読み替える地方税法734条3項

つまり、この法人の場合、23区内にしか事務所を置かないため、312条1項の均等割の基準額そのものが「五万円」から「七万円」に読み替えられて課される。2万円を別枠で足しているのではなく、7万円という1つの金額に最初から読み替わっている。この違いは実務上の結果には影響しないが、条文を根拠に説明するならこちらが正確な構造である。

資本金等の額従業者数年額(23区内のみに事務所がある場合)
1,000万円以下50人以下70,000円
1,000万円以下50人超140,000円
1,000万円超1億円以下50人以下180,000円

均等割は地方税法312条1項が定める区分制の税額で、資本金等の額と従業者数によって段階的に上がる。この記事の法人は資本金100万円・従業者0人(役員報酬0円・従業員なし)なので、最も低い区分に入り、年額は70,000円になる。だから資本金を1,000万円以下に保つことが、この趣味では均等割を抑える方向にそのまま効く。500万円のうち400万円を役員借入金にしているのも、この区分を動かさないためである。役員借入金は負債であって資本金等の額には算入されないので、いくら貸し込んでも均等割の区分は変わらない。資本金を大きくして見栄えを良くする理由は、この法人には無い。

資本金等の額で均等割はこう変わる(23区内のみに事務所がある場合)
資本金等1,000万円以下
70000円

この法人はここ

資本金等1,000万円超1億円以下
180000円

根拠: 地方税法312条1項・734条3項の読替(従業者50人以下の区分で比較)。事務所が特別区の区域外にもある場合はこの読替が適用されず、金額が変わる。

確保しておいた維持費は、何年もつのか

会計ソフトは自作・OSSで運用するため0円(第3章・第4章)。だから2年目以降の固定費は、実質的に均等割70,000円だけになる。1年目はこれに加えて、設立にかかった公的な費用(登録免許税60,000円・会社実印5,000円・登記事項証明書980円・印鑑証明書840円の合計66,820円)が上乗せされる。設立時に確保した維持費416,820円(設立実費66,820円+均等割5年分350,000円)を1年目から積み上げると、次の表になる。

その年に出ていく固定費累計維持費として確保した416,820円の残り
1年目136,820円(均等割70,000円+設立実費66,820円)136,820円280,000円
2年目70,000円(均等割のみ)206,820円210,000円
3年目70,000円276,820円140,000円
4年目70,000円346,820円70,000円
5年目70,000円416,820円0円(ここで使い切る)
6年目70,000円486,820円追加で捻出が必要(年70,000円)
7年目70,000円556,820円追加で捻出が必要(年70,000円)
8年目70,000円626,820円追加で捻出が必要(年70,000円)
9年目70,000円696,820円追加で捻出が必要(年70,000円)
10年目70,000円766,820円追加で捻出が必要(年70,000円)

均等割は、経費にすらならない

均等割70,000円は現金として出ていくが、法人税を計算するときの損金にはならない(法人税法38条2項2号。条文に「都民税を含む」と明記されている)。

つまり「経費で落ちるから実質負担は軽い」という理屈が、この費目についてだけは成り立たない。

一方で、会計ソフト代・売買手数料・法人事業税は損金になる。同じ「毎年出ていく金」でも税務上の扱いが違う。

利益が出た年でも、均等割は課税所得を1円も減らさない。

6年目に、追加のお金が要る — ただし慌てる場面ではない

設立時に500万円(資本金100万円+役員借入金400万円)を配分した時点(第1章・第10章)で、均等割と設立実費の費用として確保していたのは5年分の416,820円だけである(会計ソフトは自作のため確保不要)。この表が示す通り、5年目でちょうどその416,820円を使い切る。6年目以降は、確保していた維持費の枠が無くなり、毎年70,000円をあらためて捻出する必要がある。

もっとも、この設計では毎月10万円を役員借入金として入れ続けるループ(第1章)がすでに動いている。70,000円は毎月10万円の0.7か月分に過ぎず、6年目以降に慌てて追加入金を用意する場面は事実上ない。入れ方は、個人から法人への貸付(役員借入金)が基本になる。役員借入金であれば、返済を受けても個人側に課税されない。この仕組みは第7章で扱う。

なお、赤字の年は法人事業税・特別法人事業税の所得割は課されない。これらは所得に対して課される税だからである。また、資本金1億円超の法人に適用される外形標準課税は、資本金100万円のこの法人には関係がない(東京都主税局)。だから赤字の年に発生する固定費は、均等割の70,000円だけである。この10年間の均等割・設立実費の合計766,820円は、設立時に入れる500万円と月10万円の追加(10年で1,200万円)を合わせた投入合計17,000,000円の4.5%に当たる。均等割は確かに毎年出ていくが、この設計の規模から見れば重いとは言えない。

→ 次の第13章では、この均等割を含めた実際の負担が、個人でNISAを使った場合と比べてどれだけ違うかを、円単位で計算する。

🧾 みんなはNISA、自分は合同会社 — 同じ1,800万円を、どの器に入れるか

このセクションの3点

① 「NISAのほうが得か」ではなく、同じ規模の資産をどの器に入れるかという話である。NISAの生涯投資枠1,800万円と、この設計の10年投入17,000,000円はほぼ同じ規模になる。

② 運用している間はほとんど差がつかない。売却時点の法人段階だけを見れば、税率差は所得400万円の年で2.08ポイントにすぎない。ただし法人の利益を個人が使うにはもう一段階の課税を通るため、実質の差はそこで広がる。

③ 維持費は年70,000円、10年で766,820円。投入総額17,000,000円の4.5%にすぎない。「負けている」のではなく、自分で作る器の年会費である。

👥 みんなはどうしている?

NISA口座数は金融庁が公表しているが、今回は取得できなかった(未確認)。確実に言えるのは、法人ではNISAが一切使えないという制度上の事実である。

依頼者はこう言っている。「みんなはNISAで私はこの合同会社のイメージやねん」。この章はその一言から出発する。NISAの生涯投資枠は1,800万円。この設計で10年に投入する金額は17,000,000円で、ほぼ同じ規模の資産である。同じ規模の資産を、国が用意した器に入れるか、自分で作った器に入れるか。これがこの章の主題であり、「得か損か」という負け比べではない。

① 運用中:ここでは、ほとんど負けない

NISAは運用益が非課税になる制度である。個人の口座で保有している間、値上がりしても税金はかからない。

この法人の箱も、同じことが言える。売らずに持っている限り、含み益には課税されない(第11章・法人税法61条の3第1項第2号)。だから、積み立てて持っている限りでは、税金の面で大きな差はつかない。NISAが「非課税」、法人の箱が「売るまで課税されない」。どちらも、含み益に手を付けられている間は同じ土俵にいる。

② 出口:差は2ポイント

差が生まれるのは、売って利益を確定させたときである。ここで比べる税率は、法人段階だけの税率である。個人のNISA・特定口座と直接比べられるのは、この段階までにとどまる。東京23区・資本金100万円・不均一課税適用法人・軽減税率適用法人として計算すると、次のようになる。

税目計算金額
法人税4,000,000×15%600,000円
地方法人税600,000×10.3%61,800円
都民税法人税割600,000×7.0%42,000円
事業税所得割4,000,000×3.5%140,000円
特別法人事業税140,000×37%51,800円
合計895,600円(所得比 22.39%)

この表は所得に連動する税だけを並べたものである。これに加えて、所得がいくらであっても均等割70,000円が必ず出ていく(第12章)。均等割を含めた実際の資金流出は、この年で965,600円(所得比24.14%)になる。

所得が800万円の年になると、事業税の税率区分が上がるぶん、負担率もわずかに上がる。

税目計算金額
法人税8,000,000×15%1,200,000円
地方法人税1,200,000×10.3%123,600円
都民税法人税割1,200,000×7.0%84,000円
事業税所得割400万×3.5%+400万×5.3%352,000円
特別法人事業税352,000×37%130,240円
合計1,889,840円(所得比 23.62%)

この表も所得に連動する税だけである。均等割70,000円を足すと、この年の実際の資金流出は1,959,840円(所得比24.50%)になる。

売って利益が出た年の税率
法人(所得400万円)
22.39%
法人(所得800万円)
23.62%
個人の特定口座
20.315%
個人のNISA
0%

法人は東京23区・資本金100万円・不均一課税適用法人・軽減税率適用法人として計算。税率の内訳は上の表。

個人が特定口座で株式等を売却したときの申告分離課税は20.315%(所得税15.315%+住民税5%)。法人(所得400万円の年)の22.39%との差は、2.08ポイント。「法人だから税が重い」と言い切れるほどの差ではない。出口の税率だけを見れば、この2つはほぼ同じ勝負をしている。

② の続き:法人の利益を、個人が使うまで

法人で売却益を確定させ、法人税等を払っても、そのお金はまだ会社のものである。個人が使うには、役員報酬・配当・清算のいずれかを通り、そこでもう一度課税される。つまり法人ルートは二段階課税になる。個人の特定口座は一段階、NISAはゼロ段階である。

経路法人段階個人段階実質
役員借入金の返済法人税等(売却益が出た場合)課税なし(貸したものが返るだけ)この記事の設計で使う出口
役員報酬法人税等給与所得として課税二段階
配当法人税等配当所得として課税二段階
清算して分配法人税等所得として課税二段階

この記事の設計では、二段階目に当たらない部分がある

毎月10万円を役員借入金として入れているので、入れた元本のうち役員借入金ぶん(設立時4,000,000円+毎月100,000円×120か月=16,000,000円)は、返済という形なら課税されずに個人へ戻せる。資本金1,000,000円は、返済ではなく減資または清算の手続きが要る(第1章)。二段階課税になるのは、貸付元本を超えて増えた部分である。ただし返済の原資を作るためにETFを売れば、そこで法人段階の課税は発生する(第15章)。

③ 同じ規模の資産を、どちらの器に入れるか

ここまでで、税率の差はわずかであることが分かった。本当の差は、税率ではなく、その箱を持っているだけで毎年出ていく固定費である。ただし、その固定費は投入する金額が大きくなるほど、割合としては小さくなっていく(内訳と最小構成での圧縮方法は第5章)。

項目NISA(国の器)合同会社(自分の器)
非課税枠の上限1,800万円(生涯投資枠)上限なし
国が決めた商品・枠しか選べない資本金・借入・保有商品まで全部自分で決められる
年間の維持費0円70,000円(均等割)
10年の維持費0円766,820円(投入総額17,000,000円の4.5%)
運用中の課税非課税売らなければ課税されない

17,000,000円

10年の投入額(NISA生涯投資枠1,800万円とほぼ同じ規模)

766,820円

10年の維持費(投入額の4.5%)

70,000円

毎年の均等割

2.08pt

出口の税率差(所得400万円の年)

借り物の器に入れるか、自分で作った器に入れるか

NISAは国が用意した器。非課税で、枠は1,800万円。ただし国が決めた形しか選べない。合同会社は自分で作る器。枠に上限は無く、年70,000円かかる。ただし資本金・借入・保有する商品まで、形は全部自分で決められる。依頼者の言葉を借りれば、みんなはNISAで、自分はこの合同会社のイメージ、である。どちらが得かではなく、ほぼ同じ規模の資産を、どちらの器に入れたいかという選択である。

→ 次の第14章では、その箱の中で損が出た場合、この設計がどう動くかを見る。

📉 ETFを売って損が出たとき — 欠損金はどこまで使えるか

このセクションの3点

① 含み損も含み益と同じく期末には評価されない。損は「売った年」にしか確定しない

② 欠損金は10年繰り越せるが、相殺できるのはこの法人が将来出す利益だけ。本業の会社とは通算できない

③ 相場の損より先に、均等割と会計費用で年100,000円が確実に消えていく。取り返せるのはこちらではない

👥 みんなはどうしている?

赤字法人が60.3%あるということは、繰越欠損金を抱えている法人も相当数あるということ(国税庁「会社標本調査」令和6年度分)。ただし繰り越した欠損金を実際に使えたかどうかの統計は取得できなかった(未確認)。

先に結論を書く。含み損は、含み益と同じように、売却するまでは確定しない(法人税法61条の3第1項第2号・詳しくは第11章)。値下がりしただけでは、確定申告に書くことは何もない。

売って損が出たとき

値上がりを待たずに売り、買った値段より安く売れた場合は「譲渡損」になる。これは損金に算入できる。売った年の所得を押し下げ、その年の所得がマイナスになれば「欠損金」として扱われる。青色申告をしていれば、欠損金は10年間繰り越せる(法人税法57条)。

項目内容根拠
欠損金の繰越期間10年間繰り越せる(青色申告が条件)法人税法57条
繰越控除の上限中小法人は、繰り越した欠損金をその年の所得の100%まで使って相殺できる(資本金1億円超などの大法人は50%までの制限がある)法人税法57条・国税庁 No.5762
差し引ける相手その事業年度に、この法人が出した黒字(所得)だけ法人税法57条

ただし、この設計では損はほとんど活きない

ここが最も正直に書くべき点である。繰り越した欠損金は、その法人が将来出す利益としか相殺できない。この投資法人には事業収入がない。相殺できる相手は、将来この法人が出す売却益と分配金だけである。別に持っている本業の会社の利益とは通算できない。法人が違えば、税務上はまったく別の納税者だからである。10年という繰越期間の長さは、この法人が10年かけて利益を出し続けて初めて意味を持つ。

損が節税になるという話は、この箱では成り立たない

「趣味の法人で損を出せば、どこかの税金が減る」という期待は成り立たない。損を相殺できる相手は、この法人自身の将来の利益しかないからである。個人の場合と比べても構造は同じである。個人が上場株式等で出した譲渡損失も3年繰り越せるが、相殺できるのは株式などの譲渡益や配当所得に限られ、給与所得とは通算できない。つまり「損が本業の稼ぎと相殺できる」という期待は、法人でも個人でも成り立たない。

損が出ても構わない、とはどういう状態か

損の種類年間いくらか取り返せるか
相場の損金額は不定。保有している銘柄の値動き次第相場が戻れば戻る。売らない限り確定しない
均等割70,000円。毎年確実に発生する戻らない。事業年度が終われば必ず出ていく
会計ソフトと申告30,000円。毎年確実に発生する(想定額)戻らない
10年間で確実に失うもの(相場が一切動かなくても)
均等割 10年分
700000円
会計ソフト 10年分
300000円
設立の実費(初年度のみ)
67200円

相場の損益は含まない。これは相場が一切動かなくても出ていく金額(均等割と会計ソフトは毎年、設立の実費は最初の1回だけ)。設立の実費は登録免許税60,000円+登記事項証明書2通1,200円+会社実印5,000円+印鑑証明書2件1,000円の合計。

つまり「損が出ても構わない」と言うとき、本当に覚悟しておくべき損は、相場ではない。相場が1円も動かなくても確実に出ていく年100,000円(均等割70,000円+会計ソフト30,000円)のほうである。相場の損は戻る可能性があるが、この年100,000円は10年間で必ず1,000,000円になる。しかも均等割は損金にならないので、赤字を大きくすることにも使えない。相場の含み損とは違い、税務上できることが何も無い出費である。

→ 次の第15章では「会社の金は、自分の金ではない」を扱う。箱の中で増えた資産を、個人の生活費として使うにはどの経路を通るかを見る。

🚪 会社の資産を個人へ戻す出口

このセクションの3点

① 箱の中で増えた資産は、そのままでは使えない。個人に戻すには4つの経路のどれかを通る

② 一番自然な戻し方は役員借入金の返済。元本の返済には個人の課税が無い。ただし利息を取れば雑所得になるので、この記事の設計では無利息で貸す

③ 法人側では、借入金の返済は益金にも損金にもならない(法人税法22条2項)。ただし貸したまま相続が起きると、その貸付金は相続財産として評価される。10年で1,200万円を貸し込むなら無視できない

👥 みんなはどうしている?

これは統計が無い。役員借入金の残高や返済の実態を示す公的データは見つからなかった。制度上言えるのは、貸したものが返るだけなら個人に課税されないという一点だけである。

先に結論を書く。この箱の中で増えた資産は、そのままでは個人の生活費として使えない。個人の財布に戻すには、もう一度どこかで課税される経路を通る必要がある。それが「器」という言葉の、税務上の正確な意味である。

経路どうなるか個人側の課税使いどころ
役員借入金の返済個人が法人に貸していたお金が、そのまま戻ってくる元本は課税されない。利息を取れば雑所得になる(この設計では無利息)この記事の設計で最も自然な出口
役員報酬法人から個人へ、給与として払う給与所得として課税される定期同額給与のルールがあり、事業年度の途中で自由に金額を変えられない
配当法人が出した利益を、配当として払う配当所得として課税される利益が出た年に限られる
会社の清算会社をたたみ、残った財産を分配する個人の所得として課税される箱そのものをやめるとき

役員借入金の返済は、なぜ課税されないのか

何を受け取るか課税根拠
元本の返済課税されない所得税法が定める10種類の所得区分(利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時・雑)のいずれにも当たらない。貸付金という債権が現金に変わるだけで、財産は増えていない
利息雑所得として課税される所得税法35条。この記事の設計では無利息で貸すため、この課税は発生しない
(参考)役員報酬給与所得所得税法28条
(参考)配当配当所得所得税法24条

法人側では、借入金の返済は益金にも損金にもならない。法人税法22条2項は益金を「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引…に係る収益の額」と定義しており、借入金の返済はこの「収益」に当たらない。決算の利益に一切影響しない。

ただし債務免除を受けた場合は「無償による資産の譲受け」に当たり益金になる。これは返済ではなく、貸したお金を放棄してもらう別の行為である。

一番きれいな出口は、貸したお金を返してもらうこと

毎月10万円(入らない月があってもよい)を役員借入金として法人に入れているので、法人の帳簿には「個人に返す義務がある金額」が積み上がっていく。それを返してもらう形なら、個人には元本部分の課税がない。ただし返済の原資は法人の手元にある現金であり、口座残高が足りなければ、保有しているETFを一部売る必要がある。そこで初めて譲渡益に課税される。「借入金の返済そのものは非課税」だが、その手前に「ETFを売る」という課税イベントが挟まる、という順序を正確に理解しておく必要がある。

貸したまま相続が起きると、貸付金として評価される

役員借入金は、返済されない限り「個人が法人に対して持つ債権」であり続ける。貸したまま返済せずに本人に相続が起きると、その貸付金は相続財産として評価される。10年で1,200万円を貸し込むなら無視できない金額になる。返さないまま持ち続けるつもりなら、この点をあらかじめ知っておく必要がある。

たたむときにかかるもの

手続き内容
解散の決議と登記社員(合同会社の出資者)の総意で解散を決め、法務局に解散の登記をする。登記費用が別途かかる
清算人の選任会社の財産を整理する清算人を決める。多くの場合、代表社員がそのまま清算人になる
清算結了の登記財産の整理が終わったら、清算結了の登記をする。ここでも登記費用が別途かかる
清算中の均等割清算の手続きが終わるまでの期間も、法人都民税の均等割はかかりうる

会社は、作るより、たたむほうが手間がかかる。設立は登録免許税60,000円と数日の手続きで終わるが、解散・清算には登記が最低2回必要になり、費用も期間も別途かかる。金額は本文では確定できないので、始めるとき、あるいはたたむと決めたときに、司法書士や税理士に「解散と清算結了、それぞれの登記費用はいくらか」を直接確認する。始める前に、この手間があることだけは知っておく。

それでも、器の中にあるということ

依頼者は、自分のすべての資産が会社という器に入っていることを美しいと感じている。その感覚を否定する理由はどこにもない。ただし、器の中にあるということは、外に取り出すときに手続きを踏む必要がある、という意味でもある。役員借入金の返済という、一番静かな出口はすでにこの記事の中に用意されている。取り出し方を知ったうえでなお入れておきたいと思うなら、それは正しい選択である。

→ 次の第16章では「踏んではいけない線」を扱う。

🚧 この法人で越えてはいけない境界線

このセクションの3点

① この記事の設計は、すべて自分自身の資産を自分の会社で運用することが前提。他人の資金を集めて運用する形になると、登録の問題が生じうる

② 会社の資産を個人の生活費に直接使うと役員賞与とみなされる。役員報酬0円で運営しているからこそ、ここは厳密にする

③ 合同会社にみなし解散は無い。会社法472条1項が定める休眠会社のみなし解散は、株式会社に限定された制度である。ただし均等割は止まらない

👥 みんなはどうしている?

無登録営業の摘発件数は今回取得できなかった(未確認)。金融庁は無登録業者への警告を公表しているが、件数までは確認していない。この章は統計ではなく、条文で線を引いている。

自分の金だけを運用する。他人の金を預かった瞬間に別の話になる

・この記事で説明している設計は、すべて自分自身の資産を自分の会社で運用することを前提にしている

・家族や友人から「一緒に運用してほしい」とお金を預かり、それを運用して利益を分配する形になると、金融商品取引業の登録の問題が生じうる

・この境界がどこにあるかは相手の人数や関係性によって変わる。他人の資金を扱う予定が少しでもあるなら、始める前に専門家へ「この形は登録が要るか」を確認する

・この記事は、自分の金だけを動かす前提のときにだけ成立する

会社の資産を、個人の生活に使わない

・会社名義の証券口座から出た配当金や売却代金を、記録も返済もないまま個人の家賃・食費・買い物に直接使うと、役員給与・役員貸付金・配当などとして課税されたり、経費を否認されたりし得る。どれになるかは実態による

・役員給与と扱われた場合は、法人側で損金にならず(法人税法34条)、個人側では源泉徴収の問題になる

・役員報酬0円で運営しているからこそ、ここを緩めると「実質的に報酬を受け取っている」とみなされるリスクが一気に上がる

・会社から個人へお金を動かすときは、必ず役員借入金の返済という形にして、帳簿と通帳に残す

本業の会社と混ぜない

・資金・口座・帳簿は本業の会社と完全に分ける。同じ通帳・同じ証券口座で管理しない

・一方から他方へお金を動かす必要が生じたら、金額と日付と目的を書面に残す。貸し借りなら金銭消費貸借契約書のようなものを作る

・帳簿が混ざると、税務調査で最初に疑われるのがここになる

資本金等の額の境目

境目超えると何が起きるか根拠
1,000万円均等割の区分が上がる(23区内・従業者50人以下の場合、年70,000円の区分から次の区分へ)地方税法312条1項
1億円外形標準課税の対象になる。所得の有無にかかわらず、資本金や付加価値額に応じた税負担が生じる東京都主税局

この記事の設計は資本金100万円で始まる。積立を続けても、この法人の資本金等の額そのものは増えない(役員借入金は負債であって資本ではない)。それでもこの趣味では1,000万円を超えさせない。超える必要が生じたときは、それはもうこの記事が想定している「趣味の箱」の規模ではない。

休眠にしても費用は止まらない。ただし勝手に解散させられることもない

・均等割は会社が活動していなくても、登記が存在する限り毎年かかる。休眠させても年70,000円は止まらない

・一方で、合同会社には「みなし解散」が無い。会社法472条1項が定める休眠会社のみなし解散は、条文の括弧書で「株式会社であって、登記が最後にあった日から十二年を経過したもの」と株式会社に限定されている。持分会社の解散事由を定める会社法641条にも、みなし解散は入っていない

・同じ理由で、合同会社には役員の任期が無い。株式会社は取締役の任期が最長でも10年で、任期が来るたびに重任の登記と登録免許税が要る。合同会社の業務執行社員にはこれが無い。10年単位で見ると、この差は登記費用としてそのまま効く

・ただし、放置してよいという意味ではない。均等割の申告と納付は毎年発生する。本当にやめるときは解散・清算の手続きを取る(第15章)

法人の証券口座には、個人の特定口座のような仕組みがない。取得価額・売却損益・分配金・源泉徴収額を、自分で記録する必要がある。

買った日・銘柄・口数・単価・手数料を、買った都度その場で残す。まとめて後から思い出そうとすると、決算のときに必ず詰まる。

売買手数料は、取得価額に含める

有価証券の取得に直接要した費用(売買手数料など)は、原則として取得価額に含める(法人税基本通達2-3-5)。

買った年の費用として即座に落としてしまうと、売却したときの譲渡損益を誤る。だから記録するのは「買った金額」ではなく「買った金額+手数料=取得価額」である。

この扱いは確信度が高いが、実際の申告では確認すること。

短期売買目的である旨を、帳簿に書かない

第11章で見た通り、含み益に課税されないのは、この投資が売買目的外有価証券として扱われているからである。法人税法施行令119条の12は、取得の日に短期売買目的で取得した旨を帳簿書類に記載したものを、売買目的有価証券とみなすと定めている。

帳簿にその記載をしてしまうと、この枠は売買目的有価証券になり、期末の時価評価で含み益に課税される。長期保有する意図であるなら、そのような記載はしない。

→ 次の第17章では、不動産に投資の幅を広げるならどこから手をつけるかを扱う。資本金100万円のこの箱で、現物不動産にいつ手が届くのかを見る。

🏠 不動産に広げるなら — まずREIT、現物はその先

このセクションの3点

① この箱(資本金100万円+役員借入金の会社)は、設立直後にまとまった現物不動産を一括で買えるほどの規模ではない。非属人という絶対条件(第2章)に照らすと、最初に手が届くのはREITと不動産ETFである

② 東証REIT指数ETF(1343)の最低購入代金19,375円は、毎月の積立枠10万円に余裕で収まる。不動産に触れたいなら、明日から始められる

③ 現物不動産の利益の大半はレバレッジ(借入)から出ている。ローンを組まずに現物を買うなら、REITと比べて有利になる理由はほとんど無い

👥 みんなはどうしている?

法人がJ-REITをどれだけ保有しているかの統計は取得できなかった(未確認)。この章の1343・2515の価格と売買単位は、2026年8月11日にJPXと運用会社の公式資料から実測した値である。

依頼者はこう言った。「不動産投資もチャレンジしてみてぇ夢が広がります」。この章はその夢を否定しない。ただし数字で、いつなら手が届くかを示す。結論を先に書く。この箱は、設立直後にまとまった現物不動産を一括で買えるほどの規模ではない。そして非属人という絶対条件(第2章)に照らすと、最初に手が届くのはREITと不動産ETFである。

非属人の物差しで、不動産を分解する

持ち方必要な資金自分が動く量非属人かこの箱で買えるか
東証REIT指数ETF(1343)19,375円(10口単位・2026年8月11日終値1,937.5円)買うだけ非属人今すぐ買える
外国REIT ETF(2515)1,705円(1口単位)買うだけ非属人今すぐ買える。初期建玉に既に入っている
個別のJ-REIT銘柄数万〜数十万円銘柄選定が要る属人寄り買えるが、この会社の原則から外れる
現物の区分マンション数百万〜数千万円管理会社に委託すればほぼ不要準・非属人設立直後は買えない。年数を積めば射程に入る(次の表)
現物の戸建て・一棟数百万〜億修繕・入居付けの判断が要る属人寄り買えない

1343の最低購入代金19,375円は、毎月の積立枠10万円に余裕で収まる。つまり不動産に触れたいなら、明日からでも始められる。ただし、この法人は既に外国REIT(2515)を初期建玉に入れている(第1章)。国内REITも足すなら、月10万円の配分をどちらに寄せるかを見直すことになる。

現物に手が届くのは、いつか

累計で入れた元本区分マンションの相場(上表より)判定
5年目10,583,180円数百万〜数千万円地方・郊外の中古区分マンションなら、頭金を超えて物件本体に届く水準
10年目16,233,180円数百万〜数千万円都心の新築には届かないが、地方・郊外の中古区分マンションなら現金一括で届く価格帯に入る

第19章の10年推移をそのまま使う。ローンを組まない前提でも、10年積めば地方・郊外の中古区分マンションになら手が届く水準になる。ただし都心の新築や好立地の物件には、この累計だけでは届かない。ローンを組む前提なら話は変わるが、この記事の設計はローンを組まない。

ローンを組むかどうかが、本当の分岐点

現物不動産の利益の大半は、レバレッジ(借入)から出ている。自己資金だけで家賃収入と値上がり益を積み上げても、ETFの分配金と大きくは変わらない。ローンを組まずに現物を買うなら、REITと比べて有利になる理由はほとんど無く、むしろ管理の手間と流動性の低さ(すぐには売れないこと)で不利になる。

この箱の絶対条件——非属人(第2章)とローンを組まないこと——を保つ限り、答えはREITとETFになる。

ただし、非属人の条件を満たしたまま現物を持つ道が無いわけではない。管理を全部委託し、判断のほとんどを仕組みに落とせば、現物でも「準・非属人」にはなる。そこに行くための条件は、資金であって意欲ではない。この設計なら、5年目には累計元本が1,000万円を超えている(上表)。数百万円という頭金と、ローンを組むという判断ができて初めて選べる道である。

📉

減価償却が使える

建物の取得価額を法定耐用年数で費用に振り分けられる。現物ならではの税務上の扱いで、ETF・REITには無い。
🖋️

借入をすると個人保証を求められることが多い

法人名義でローンを組んでも、代表者個人の保証が付くことが多い。会社の器の中だけで完結しなくなる。
🧾

不動産取得税・登録免許税・固定資産税がかかる

ETF・REITには無い、現物を持つこと自体にかかる税金がある。保有しているだけで毎年発生する。
📊

均等割の区分が上がることがある(第12章)

資本金1,000万円を超えると法人都民税の均等割の区分が上がる。増資して現物を買おうとすると、維持費そのものが上がる。役員借入金のままなら、この区分は動かない。
💰

売却時の譲渡益は他の所得と合算される

個人の不動産譲渡のような分離課税ではなく、法人税の計算では他の所得と合算される。

この記事では、現物不動産の細部までは扱いきれない。同じサイトの /wiki/real-estate-invest-japan-world-2026(不動産投資 日本×世界 完全ガイド)と /wiki/shisan-unyo-hojin(資産運用に特化した法人を100万円で作り1億円まで育てる設計。海外REITの配分を扱っている)に、この先の検討を渡す。

夢を、いつ現実にするか

今この箱でできるのは、1343を1回買うことである。それは19,375円で、明日できる。毎月10万円の枠になら余裕で収まる。現物はその先にある。順番を飛ばさないことが、10年続ける唯一の方法である。

→ 次の第18章では、この記事をいつ実行に移すかを扱う。資本金と役員借入金を合わせて500万円を入れる設計にすると何が変わるのか、そして設立までの準備期間に無料でできることは何かを、今日の日付から逆算して示す。

📅 資本金500万円で、2027年に作る — 今日からの逆算

このセクションの3点

① 会社に入れるのは合計500万円。ただし資本金は100万円のままにし、残る400万円は役員借入金として入れる。コストは1円も増えない

② 最初の建玉は4,583,180円になり、そこから毎月10万円を役員借入金として積み増していく。500万円を入れる→分割する→毎月10万円足す→また分割する、というループを回し続ける(第1章)

③ 今日は2026年8月12日。設立まで5〜16か月ある。その間に無料でできることが3つある

👥 みんなはどうしている?

資本金500万円以下の法人は192万3,559社で、全体の64.1%資本金1,000万円以下まで広げると261万8,871社で87.3%(国税庁「会社標本調査」令和6年度分)。さらに合同会社に限れば、215,081社のうち213,647社=99.3%が資本金1,000万円以下500万円という額は、日本の法人の中では真ん中あたりで、境目を越えない設計は例外ではなく圧倒的多数派である。

「また今日の日付もみていつから作るべきかも考えましょう。個人的には来年くらいには作りたいなぁって500万くらい資本金できたらいいなって思っています」——依頼者の希望はこの2つだった。この章はその2つに数字で答える。ただし500万円を全額資本金にはしない。資本金100万円+役員借入金400万円で、合計500万円を会社に入れる。理由は次の見出しで示す。

資本金を上げても、コストは変わらない — だから上げない

資本金500万円資本金100万円+役員借入金400万円
登録免許税60,000円60,000円(同じ)
均等割70,000円/年70,000円/年(同じ。1,000万円以下は同一区分)
消費税の免税使える使える(同じ。1,000万円未満)
会社に入る金額500万円500万円(同じ)
個人に戻すとき減資または清算の手続きが要る返済するだけ

登録免許税は資本金×0.7%だが、500万円でも35,000円で最低額6万円を下回るため、100万でも500万でも6万円で同じになる。均等割は資本金等が1,000万円以下なら同じ区分にとどまる。消費税の免税も、資本金が1,000万円未満である限り同じ扱いになる。コストも税も入る金額も完全に同一で、戻しやすさだけが違う。資本金を500万円にする理由が1つもない。

500万円の内訳を長さで見る
最初の建玉
4583180円

4,583,180円

均等割 5年分
350000円

350,000円

設立実費
66820円

66,820円(登録免許税・証明書・実印)

維持費416,820円(設立実費66,820円+均等割5年分350,000円)は資本金をどう分けても変わらない

境目は1,000万円ひとつだけ

境目超えると根拠
1,000万円①均等割の区分が上がる ②消費税の免税が使えなくなる(設立1期目から課税事業者)地方税法312条1項、消費税法12条の2
1億円外形標準課税の対象になる東京都主税局

500万円は、この2つの境目のどちらにも当たらない。1,000万円を超えさせない——ここまでが、会社に入れる金額を決めるときの唯一の制約になる。

500万円は、登記の日までに用意する

会社法578条(合同会社の設立時の出資の履行)は、社員になろうとする者に「定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込」むことを求めている。分割払込みはできない。ただし全額を登記までに用意する必要があるのは資本金100万円だけである。役員借入金400万円は、会社が成立したあとに入金すればよい(第2章)。準備期間は、資本金100万円を確実に用意する期間ということになる。

今日から、設立日まで

  1. 1

    今日

    GMOあおぞらのサンドボックス sunabar で銀行APIを試す

    費用0円。法人口座は不要で、個人口座があれば審査なしで使える。法人を作る前に銀行APIを丸ごと検証できる(第4章)
  2. 2

    今日

    Beancount等で架空の仕訳を回してみる

    費用0円。会計は自作またはOSSで0円と決めている(第1章・第3章・第4章)。設立までにこの仕組みを組み立てておく
  3. 3

    今日

    e-Taxソフトをダウンロードして触る

    費用0円。法人の申告画面を先に見ておく(第5章)
  4. 4

    今年中

    YouTubeを同じ法人でやるかを決める

    定款の目的に書くかどうかが変わる(第6章)。設立後に変えると定款変更の手続きが要る
  5. 5

    今年中

    証券会社を決める

    法人口座は郵送・審査に日数がかかる(第9章)
  6. 6

    2027年

    資本金100万円+役員借入金400万円を用意する

    費用5,000,000円。登記までに全額の払込みが必要なのは資本金100万円のみ。役員借入金400万円は会社成立後に入れればよい(会社法578条)
  7. 7

    2027年

    設立月と決算期を決める

    均等割の月割が関わる(下の表)
  8. 8

    設立後

    15日以内に都税事務所へ/2か月以内に税務署へ届出

    費用0円。第8章の手順に沿う

設立前に、無料で全部試せる

GMOあおぞらのsunabarは、個人口座があれば審査なしで無料で使える。法人を作る前に、銀行APIを丸ごと検証できる。

Beancountも無料。架空の仕訳で1年回せば、設立の日には帳簿の仕組みと入出金の取り込みが動いている状態にできる。

1年の準備期間は、待つ時間ではなく作る時間である。

設立月と決算期の決め方

第1期の月数初年度の均等割
12か月70,000円
11か月64,166円
6か月35,000円
3か月17,500円

地方税法312条4項は、均等割の額に事務所を有していた月数を乗じて12で除すと定めている(1か月未満は1か月とし、端数は切り捨てる)。第1期を12か月より短く設計すると、初年度の均等割は月割で減る。ただし第1期を短くすると、その分だけ早く決算・申告が来る。手間と金額のトレードオフである。

申告そのものは年1回で済む。法人税法71条1項ただし書は、前事業年度の法人税額を基準にした金額が10万円以下の場合、中間申告書の提出を要しないとしている。この法人は当分そこに届かないので、申告は年1回(確定申告)だけで済む。

2027年に作るなら、この記事の数値を自分で洗い直す

・税制改正で数字が動く可能性がある。この記事の数値はすべて2026年8月時点のもの

・特に確認すべきもの:法人税の軽減税率15%(租税特別措置。適用期限が延長され続けている)、均等割の税率、電子申告まわりの制度

・設立を決めた時点で、この記事の数値を自分で洗い直すこと。この記事は「そのとき何を確認すべきか」の一覧としても使える

→ 次の章では、10年後にこの箱に何が残るかと、開始前の最終チェックリストを扱う。

10年後の姿と、開始前の最終チェックリスト

このセクションの3点

① 10年後、この箱にはETFの元本16,233,180円と、必ず出ていった固定費766,820円が残る。相場が上がるか下がるかはこの表に一切入っていない

② 設立の月にやることは7つ。名前を決める、目的の文言を決める、電子定款を用意する、資本金100万円と役員借入金400万円を用意する、登記する、口座を開く、最初の1,060口を買う。それまでの準備は第18章

③ この記事が答えなかったことが4つある。自動積立の実在確認、政令の最終判定、届出の要否、たたむときの費用。すべて自分で確認する必要がある

👥 みんなはどうしている?

日本の法人は299万9,680社あり、そのうち60.3%が赤字(国税庁「会社標本調査」令和6年度分)。この会社も、たぶんその60.3%の側に入る。それは失敗ではなく、最初からそう設計されている。

10年後、この箱には何が入っているか

累計で入れた金額出ていった固定費(累計)保有しているもの
設立時4,583,180円66,820円オルカン(2559) 1,060口/高配当ETF(1489) 212口/外国REIT(2515) 318口
1年目5,783,180円136,820円オルカン(2559) 1,384口/高配当ETF(1489) 272口/外国REIT(2515) 318口
3年目8,183,180円276,820円オルカン(2559) 2,032口/高配当ETF(1489) 392口/外国REIT(2515) 318口
5年目10,583,180円416,820円オルカン(2559) 2,680口/高配当ETF(1489) 512口/外国REIT(2515) 318口
7年目12,843,180円556,820円オルカン(2559) 3,328口/高配当ETF(1489) 632口/外国REIT(2515) 318口
10年目16,233,180円766,820円オルカン(2559) 4,300口/高配当ETF(1489) 812口/外国REIT(2515) 318口

相場がどうなるかはこの表に入れていない。入れられないから。この表にある金額は、すべて自分の手で入れた元本と、必ず出ていった固定費だけである。10年後にこの4,300口・812口・318口が実際にいくらの価値になっているかは、誰にも分からない。あらかじめ確保していた5年ぶんの均等割は6年目で使い切るため、6年目以降は毎月の入金のうち一部が均等割の支払いに回る。投資に回る額がわずかに減るのはそのためである。

16,233,180円

10年で入れる元本の合計(投入総額17,000,000円−維持費766,820円)

766,820円

10年で出ていく固定費の合計(設立66,820円+均等割70,000円×10年)

70,000円

やめない限り毎年出ていく額

この10年推移は、毎月10万円を欠かさず入れ続けた場合の数字である。依頼者の設計には「ちょっと使いすぎたりすると入らないかも」という前提が最初から入っている。入らない月がある年は、この表の伸びより緩やかになる。逆に、不動産やSNSマーケなど法人の事業が当たれば、その利益も同じ器(金融商品)に組み替えられ、この表の伸びより速くなる(第1章のループ)。

設立の日にやること

これは設立を決めた月にやることである。今日からの準備は第18章にある。

  1. 1

    Step1

    会社の名前と本店所在地を決める

    同一住所に同じ商号の会社が無いか、法務局のオンライン登記情報で確認しておく。かかる金額:0円
  2. 2

    Step2

    定款の目的の文言を決める

    「有価証券の取得、保有及び運用」のような1行を事業目的に加える。かかる金額:0円
  3. 3

    Step3

    電子定款を作る手配をする

    自分でPDF作成ソフトと電子署名を用意するか、行政書士に電子定款の作成だけを依頼する。電子定款にすれば紙の定款にかかる収入印紙は不要になる。かかる金額:0円(自分で作る場合)〜数万円(依頼する場合)
  4. 4

    Step4

    資本金100万円と役員借入金400万円を用意する

    自分名義の口座に100万円を移しておく。設立時、この口座の残高が資本金の証明に使われる。あわせて設立実費66,820円の立替分も用意する(会社成立後に創立費として精算して戻せる)。役員借入金400万円は、会社成立後に法人口座へ入金する。かかる金額:1,066,820円(うち66,820円は後で戻る)
  5. 5

    Step5

    法務局へ登記申請する

    定款・印鑑証明書・登録免許税の納付を添えて申請する。オンラインでも窓口でも出せる。かかる金額:60,000円(登録免許税)
  6. 6

    Step6

    法人口座を開く(銀行→証券の順)

    先に法人名義の銀行口座を開き、その口座情報を使って証券会社に法人口座を申し込む。審査に数日から1週間かかる。かかる金額:0円
  7. 7

    Step7

    2559を1,060口買う

    最初の建玉のうち、オルカン1,060口をまず買う。ここから第10章の配分に沿って残りを買い進める。かかる金額:3,187,420円

Step7までの口数と金額は、2026年8月11日の終値で計算したものである。実際の約定価格は変わるので、発注日に最新の価格・売買単位・手数料で計算し直す。予備の現金を超えた場合は、オルカン(2559)の口数を優先して調整する(この記事の優先順位)。

この記事が答えなかったこと

法人口座で投信の自動積立ができるかは、調べた5社どの公式ページにも書かれていない。開設したあと、自分でサポートに確認するしかない。

外国株価指数連動型特定株式投資信託に該当するかどうかの最終判定は、政令が定める範囲による。この記事は「除外される設計になっている」までしか書いていない。

役員報酬0円のときに、給与支払事務所等の開設届出が必要かどうか、社会保険の取扱いがどうなるかは、税務署と年金事務所に確認する必要がある。

会社をたたむときにかかる費用は、この記事では調べていない。

依頼者は、この設計を趣味だからだと言った。500万円を入れ、毎月10万円を足し、事業で当たった金も同じ器に入れながら、一定の現金を残して回していく。これがそのままの設計である。この記事は、その判断を変えさせるために書いていない。

出したのは値札と手順だけである。500万円のうち766,820円が、10年かけて相場に触れずに消えること——ただしそれは投入総額17,000,000円の4.5%にすぎないこと。毎年70,000円が出ていくこと。それでも含み益には税金がかからないこと。この箱に何を感じるかは、この記事の外側にある。

→ /wiki/shisan-unyo-hojin は資産運用に特化した法人を100万円で作り、1億円まで育てる設計を扱う。あれは利益の記事、これは趣味の記事。同じ合同会社という器でも、何のために持つかが違えば、入れる金額も選ぶ商品も出口も全部変わる。