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💴 全部が上がった10年で、JREITだけ横ばいだった — 100万円を全額NISAでどこに置くか

金は円建てで4.91倍、NASDAQ100は9.39倍、東京のマンションは1.86倍になった。同じ10年で、東京の不動産を持っている器である東証REIT指数ETFは、価格でわずか+1.7%だった。JREIT・米国REIT・米国債・日本国債・カバードコール・ハイイールド債の6つを、直近12か月に実際に支払われた分配金と10年分の価格で並べ直し、100万円を全額NISAでどこに置くかを金額まで決めた。6つのうち2つは、そもそもNISAでは1円も買えなかった。

まず答え — 100万円をこう分ける

答えを先に書く。5本買って100万円を使い切る。いちばん多く入れるのは、日本の不動産に投資するETF(1343)に35万円。次がアメリカの短い社債のETF(SHYG)に20万円、アメリカの不動産ETF(USRT)に20万円、毎月お金が入る株のETF(DIVO)に10万円。残りの15万円は、いつでも売って他に回せるアメリカの短期国債(SGOV)に置いておく。
そして、依頼された6つのうち2つは、そもそもNISAでは1円も買えなかった。

5本

買う銘柄の数

35万円

いちばん多い 1343(JREIT)

47,875円

年間の分配金(税引前)

2つ

NISAでは買えなかった資産

順位銘柄資産金額実測利回り年間分配(税引前)買う理由
11343 NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信JREIT35万円4.81%16,835円円建てで為替の影響がゼロ。JREITのETF8本のうち1日の売買代金が最も厚い(17.23億円)
2SHYG iシェアーズ 0-5年ハイイールド社債ハイイールド債20万円7.03%14,060円実測7.03%かつ総5年+26.9%は同種8本で1位。満期が短く金利の影響が小さい
3USRT iシェアーズ・コア米国REIT米国REIT20万円2.61%5,220円総10年+90.0%が実測で最良。利回りが低いことは欠点ではない
4DIVOカバードコール10万円6.21%6,210円高分配ETFとして並べた13本のうち唯一、価格が5年で+38.5%と増えている
5SGOV iシェアーズ 0-3か月米国債待機資金15万円3.70%5,550円いつでも売れる。値下がりが来たら他の4本へ回す
—米国債(現物)米国債0円——NISAでは買えない
—日本国債(個人向け国債)日本国債0円——NISAでは買えない。課税口座なら固定5年2.24%は買う価値がある
合計100万円4.79%47,875円米国上場の4本は米国で10%引かれるので手取り目安は44,771円
100万円をどう分けるか
1343 東証REIT指数ETF: 35万円(35.0%)SHYG 0-5年ハイイールド社債: 20万円(20.0%)USRT 米国REIT: 20万円(20.0%)SGOV 0-3か月米国債: 15万円(15.0%)DIVO カバードコール: 10万円(10.0%)100万円全額NISA成長投資枠
  • 1343 東証REIT指数ETF
    日本の不動産・円建て・実測4.81%
    35万円
    35.0%
  • SHYG 0-5年ハイイールド社債
    実測7.03%・月次分配
    20万円
    20.0%
  • USRT 米国REIT
    実測2.61%・総10年+90.0%
    20万円
    20.0%
  • SGOV 0-3か月米国債
    実測3.70%・待機資金
    15万円
    15.0%
  • DIVO カバードコール
    実測6.21%・価格5年+38.5%
    10万円
    10.0%

実測利回りは直近12か月に実際に支払われた分配金の合計を現在値で割ったもの。予想利回りではない。

100万円をどう分けるか
1343 JREIT
35万円

実測4.81%・円建て

SHYG 短期ハイイールド
20万円

実測7.03%

USRT 米国REIT
20万円

実測2.61%・総10年+90.0%

SGOV 米国短期国債
15万円

実測3.70%・待機資金

DIVO カバードコール
10万円

実測6.21%・価格5年+38.5%

実測利回りは直近12か月に実際に支払われた分配金の合計を現在値で割ったもの。予想利回りではない。

6資産の判定

資産判定配分金額銘柄一言
JREIT買う35万円1343円建てで為替の影響ゼロ。実測4.81%。すでに5年で−13.4%売られている
ハイイールド債条件つきで買う20万円SHYG満期0-5年の短いものに限る。長期と為替ヘッジありは買わない
米国REIT買う20万円USRT利回りは2.61%と低いが、総10年+90.0%で実測は最良
カバードコール少しだけ買う10万円DIVO元本が伸びない設計。13本のうち価格が5年で増えたのはDIVOだけ
米国債現物は買えない/ETFは買う15万円SGOV国債そのものはNISAの対象外。ETFなら買えるので、短期のSGOVを待機資金として置く。長期債ETF(TLT)は総5年−32.3%なので買わない
日本国債NISAでは買えない0円—課税口座なら固定5年2.24%。この記事で唯一、元本が保証されている選択肢
6資産のうち3つだけ、判定の理由をカードで掘り下げる。特に「NISAでは買えない」と判定した2つの資産と、実測利回りだけ見ると魅力的に映るカバードコールの3つ。
🤖 Claudeの判定 現物は買えない。ETFは買う

米国債の現物はNISAの対象外。ETFなら買えるので、短期のSGOVだけ待機資金として15万円置く

  • NISAで買えるのはETF。現物の国債(米国債・個人向け国債とも)は対象外
  • TLT(20年超)は総5年−32.3%、総10年でも−17.2%。長期債ETFは買わない
  • SGOV(0-3か月)は総5年+20.1%。値下がりが来たら他の4本へ回すための待機
日本国債も同じくNISAの対象外だが、水準そのものは1年で大きく動いている。
🤖 Claudeの判定 NISAでは買えない

個人向け国債はNISAの対象外。ただし課税口座なら固定5年2.24%は今なら買う価値がある

  • 個人向け国債はNISAでは1円も買えない
  • 固定5年は2.24%。1年前の変動10年は0.93%だった(第198回は1.95%)
  • 元本が保証されている、というこの記事で唯一の性質を持つ

利回りだけ見て飛びつくと危ういもの

🤖 Claudeの判定 少しだけ買う

元本が伸びない設計。高分配ETFとして並べた13本のうち価格が5年で増えたのはDIVOだけなので、そこに10万円

  • 実測利回りは6.21%。QYLDの11.69%より低いが、価格が5年で+38.5%と増えている
  • 上値を売って分配金に変える仕組みなので、原理的に値上がりしにくい
  • 非課税の枠を大きく使う相手ではない。10万円までにとどめる

なぜ2つ買えなかったのかは Section 3 で書く

この記事に出てくる言葉

この記事には、投資をしたことがない人には初めての言葉がたくさん出てくる。先に全部ここに置いておく。読んでいる途中で分からない言葉が出てきたら、ここへ戻ってきてほしい。

NISA成長投資枠

国が用意した、値上がり益と分配金が非課税になる投資の枠。年間240万円まで使え、上場株式やETF、投資信託などを買える。ただし現物の国債や個人向け国債はこの枠では買えない。

分配金

ETFやREITが投資家に配る現金のこと。株の配当金と似ていて、持っているだけで定期的にお金が入ってくる。

実測利回り(TTM)

過去12か月に実際に支払われた分配金の合計を、今の値段で割った数字。これから増えるかもしれない予想の利回りとは違い、すでに起きたことだけで計算する。

トータルリターン

値段の変化に、受け取った分配金を全部再投資したと仮定して足し合わせたリターン。値段だけ見ると下がっていても、トータルリターンはプラスということがある。

元本

最初に投資したお金そのもの。値段が下がれば元本は減り、分配金をたくさんもらっていても元本が戻らないことがある。

ETF

上場投資信託の略。証券取引所で株のように売り買いできる、たくさんの銘柄をまとめた商品。1本買うだけで分散投資ができる。

投資口

REITを買うときの単位のこと。株の「株式」にあたるもので、投資口を持っている人に家賃収入などから分配金が払われる。

REIT

不動産投資信託の略。投資家から集めたお金でオフィスやマンションなどの不動産を買い、家賃収入の90%超を分配金として払うことで法人税が実質かからない仕組みになっている。

カバードコール

株やETFを持ちながら「値上がりしたら決まった値段で売る権利」を他の人に売り、その代金を分配金にする戦略。分配金は多くなるが、株価が大きく上がっても利益を全部は受け取れない。

ハイイールド債

信用格付けがBB以下の会社が発行する社債のこと。利回りが高いのは、その会社が返済できなくなる確率が普通の会社より高いから。

順イールド

借りる期間が長いほど金利が高くなる、金利の普通の並び方。短い期間より長い期間のほうが利回りが高い状態を指す。

為替ヘッジ

円とドルなど、為替レートの変動による損得を打ち消す仕組み。ヘッジをかけると円安・円高の影響を受けなくなる代わりに、その分のコストがかかる。
📉

NAV倍率

NAVは Net Asset Value の略で、持っている不動産を時価で評価した純資産のこと。それを1口あたりに割ったものが1口NAV。NAV倍率は「今の値段 ÷ 1口NAV」で、株のPBRにあたる。1倍を下回っていると、持っている不動産の時価より安く買えることになる。
📏

イールドスプレッド

REITの分配金利回りから、日本の10年国債の利回りを引いた差。国債はほぼ確実に利息がもらえるので、それより何ポイント多くもらえるかが「リスクを取る対価」になる。この差が小さいほど、REITを買う旨みが薄い。
📊

PER(株価収益率)

今の株価が、1年の利益の何年分かを表す数字。20倍なら「20年分の利益で買っている」ということ。高いほど、将来もっと儲かると期待されている。
🏛️

PBR(株価純資産倍率)

今の株価が、会社の純資産(持っているものから借金を引いた残り)の何倍かを表す数字。利益は年によって大きくぶれるが純資産はぶれにくいので、PBRのほうが安定した物差しになる。
🌡️

CAPE(シラーCAPE)

過去10年ぶんの利益を物価変動で調整して均し、それに対して今の株価が何倍かを見る指標。1年だけの利益で見るPERと違い、好況・不況をならして比べられる。ロバート・シラーが考案した。
📐

百分位(%tile)

過去のデータを小さい順に並べたとき、今の値が下から何%の位置にあるかを表す。「下から90%tile」なら、過去の9割より高いということ。
➗

ポイント(pt)と%の違い

4.81%から2.94%を引いた差は「1.87ポイント」と言う。「1.87%」と書くと割合の割合と混同されるため。この記事で利回りの差を言うときは全部ポイントを使っている。
💸

源泉徴収(源泉税)

配当や分配金が自分の口座に入る前に、あらかじめ差し引かれる税金のこと。米国の株やETFの配当には米国で10%が引かれ、その後に日本の税金がかかる。NISAだと日本の分はゼロになるが、米国の10%は残る。
🚰

導管性(どうかんせい)

JREITが「利益の90%超を投資家に配る」という条件を満たすと、配った分を経費のように差し引けて法人税がほぼゼロになる仕組み。水を通す管のように利益を素通しさせることからこう呼ばれる。だからJREITは利益を内部に溜められない。
⚖️

単純平均と加重平均

単純平均は全部の銘柄を同じ重さで足して割ったもの。加重平均は会社の大きさ(時価総額)に応じて重みを変えたもの。大企業の影響を強く受けるのが加重平均で、市場全体の実感に近い。
🏦

mortgage REIT

建物そのものを持たず、住宅ローンを束ねた証券に投資するタイプのREIT。安く借りて高く貸す差で稼ぐので、金利が上がって借りるコストが増えると、その差が潰れて分配金も価格も傷みやすい。

🚫 6つのうち2つは、そもそも買えなかった

NISAの成長投資枠で買えるのは、上場している株式・ETF・REIT、そして一定の条件を満たす公募株式投資信託だけです。個人向け国債や米国債の現物のように、国が個人に直接売る債券そのものは対象に含まれていません。

ただし「債券が買えない」わけではありません。SHYGやTLT、SGOVのように、債券に投資するETFは取引所に上場しているので、NISAで買えます。買えないのは「債券という商品そのもの」であって、「債券に投資する手段」は別に存在します。

6資産のうち、買えるのは4つ

→ この図は横にスクロールできます

NISAの成長投資枠で買える見込みNISAで買えないJREIT ETF例: 1476米国REIT ETF例: USRTカバードコールETF例: 2865ハイイールド債ETF例: SHYG米国債(現物)米国が個人に直接売る個人向け国債日本が個人に直接売る

上場ETFの形をとっている4つ(JREIT・米国REIT・カバードコール・ハイイールド債)はNISAの成長投資枠で買える見込み。国が個人に直接売る2つ(米国債の現物・個人向け国債)は買えない。

現物の債券 と 債券ETF は別物

現物の債券(個人向け国債・米国債)

  • ・満期がある。満期まで持てば額面が戻る
  • ・途中で売らなければ元本は保証される
  • ・取引所には上場していない
  • ・NISAでは買えない

債券ETF(SHYG・TLT・SGOVなど)

  • ・満期が無い。ファンドが存続する限り続く
  • ・元本は保証されない。金利が上がって価格が下がると、そのまま戻らないことがある
  • ・取引所に上場していて毎日価格が動く
  • ・NISAの成長投資枠で買える見込み

満期の有無が、この2つを別物にしている

・債券ETFには満期が無いので、金利が上がって価格が下がっても、いつか額面に戻ってくる保証が無い

・現物の国債は満期まで持てば額面が戻る。同じ「債券」という言葉でも、この2つは仕組みが違う

・この記事でSHYGやTLTのような債券ETFを検討するときは、「利回りが高いから買う」ではなく「満期が無いことのリスクをどこまで取るか」で考える必要がある

要確認: NISAの対象範囲は金融庁の制度説明に基づいています。ただし「債券そのものは対象外である」と明文で書かれたページに、本記事では到達できていません。対象商品が上場株式・ETF・REIT・公募株式投資信託である、という記載から推測しています。

→ 次のSection 4では、実測利回りと5年のトータルリターンを並べて、利回りだけで判断してはいけない理由を見る。

📉 利回りと、本当に増えた額は別物だった

実測利回りが高い順に10銘柄を並べると、上位に来るのは元本が大きく減っている銘柄でした。利回りだけを見て選ぶと、本当に増えた額を見誤ります。

コード実測利回り価格5年総5年
MORT15.29%-48.9%-7.0%
QQQI14.16%——
SPYI11.82%——
QYLD11.69%-17.6%+51.4%
TLTW11.04%——
286510.05%——
REM8.98%-40.3%-8.1%
KBWY8.30%-22.6%+15.4%
SRET8.28%-23.0%+13.2%
JEPI8.01%-4.0%+47.9%
実測利回り(直近12か月に実際に支払われた分配金)
MORT
15.29%
QQQI
14.16%
SPYI
11.82%
QYLD
11.69%
TLTW
11.04%
2865
10.05%
REM
8.98%
KBWY
8.3%
SRET
8.28%
JEPI
8.01%

実測。直近12か月に実際に支払われた分配金の合計÷現在値。予想利回りではない

5年で価格はどうなったか(分配金を含まない)
MORT
-48.9%
QYLD
-17.6%
REM
-40.3%
KBWY
-22.6%
SRET
-23%
JEPI
-4%

価格のみの変化。分配金を含まない=元本が増えたか減ったかを示す。QQQI・SPYI・TLTW・2865は設定から5年未満のため対象外

同じ銘柄で、元本そのものはどう動いたか

5年のトータルリターン(分配金を再投資した場合)
MORT
-7%
QYLD
51.4%
REM
-8.1%
KBWY
15.4%
SRET
13.2%
JEPI
47.9%

分配金を再投資した場合の実測トータルリターン。MORTとREMはマイナスのまま

利回りだけでは判断できない

・MORTは実測利回り15.29%だが、5年のトータルリターンは−7.0%。分配金を全部再投資してもマイナスになった

・QYLDは実測利回り11.69%、価格は5年で−17.6%だが、トータルリターンは+51.4%。元本が減ることとリターンが出ることは両立する

・2621.T(iシェアーズ 米国債20年超・為替ヘッジあり)は5年のトータルリターンが−47.4%。日本の個人が買いやすい銘柄の中で最も悪い実績だった

実測利回りだけを見て並べると、上位に来る銘柄ほど元本が大きく減っている傾向があります。この記事では、利回りと一緒に必ず「価格5年」と「総5年」の両方を確認してから選びました。

→ 次のSection 5では、JREIT ETF8本を比較して、1476を選んだ理由を書く。

🏯 JREIT — 円建てで4.8%。すでに5年で13%売られている

このセクションの3点

① 東証のJREIT ETFは8本あるが、実測利回り4.64〜4.86%・総10年+47.9〜+51.5%とほぼ同じ成績

② 差がつくとすれば信託報酬だが、本記事では8本とも信託報酬を取得していない

③ 1343を選ぶ理由は利回りではない。1日の売買代金が17.23億円で、利回り最高の1476(2.43億円)の7.1倍あること

8本

東証のJREIT ETF

4.81%

1343の実測利回り(8本は4.64〜4.86%)

+48.4%

1343の総10年(8本は+47.9〜+51.5%)

17.23億円

1343の1日の売買代金

東証には「JREIT ETF」という名前がつく上場投資信託が複数あり、どれも東証REIT指数(またはそれに準じる指数)に連動しています。同じ物差しで8本を並べると、ほとんど差がありません。

コード名前現在値実測利回り価格5年総5年総10年1日の売買代金
1476iシェアーズ・コア Jリート ETF1,851円4.86%−13.7%+6.1%+48.8%2.43億円
1343NEXT FUNDS REIT指数連動型上場投信1,931.5円4.81%−13.4%+6.3%+48.4%17.23億円
1595NZAM上場投信 東証REIT指数1,842円4.80%−13.2%+6.8%+51.5%取得していない
2556One ETF 東証REIT指数1,853.5円4.75%−12.7%+7.2%取得できず(2019年設定)取得していない
1597MAXIS Jリート上場投信1,863円4.72%−12.1%+6.7%+49.2%2.14億円
1488iFreeETF TOPIX/REIT指数1,871円4.70%−12.2%+8.6%+50.7%1.76億円
1345上場インデックスファンド Jリート1,833円4.67%−12.5%+6.4%+47.9%0.71億円
1660MAXIS高利回りJリート上場投信10,555円4.64%−9.7%+11.4%取得できず(2017年設定)0.24億円

この記事で測っていないもの

8本とも実測利回りは4.64%〜4.86%、総10年リターンは+47.9%〜+51.5%(データがある6本)の狭い範囲に収まっています。同じ指数に連動する商品どうしで本来差がつくとすれば信託報酬(経費率)ですが、本記事では8本の信託報酬を1本も取得していません。だからここでの選定理由は、信託報酬の比較ではなく実測利回りの比較だけに置いています。

私が選ぶのは1343(NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信)です。理由は利回りではありません。実測利回りだけを見れば1476の4.86%が8本で最高で、1343は4.81%と0.05ポイント負けています。

それでも1343にするのは、1日の売買代金が17.23億円あり、1476の2.43億円の7.1倍だからです。100万円ならどちらでも一瞬で買えるのでこの差は出ません。しかし1億円、2億円と増やしたときに効いてきます。1日の売買代金の1割までしか買わないという目安で計算すると、2億円を組むのに1343なら1.16営業日、1476なら8.24営業日かかります。

この記事のポートフォリオは金額が100倍になっても同じ形が成立することを条件にしています。だから0.05ポイントの利回りより、7.1倍の厚みを取りました。

JREITとは何か

JREIT(不動産投資法人)は、投資信託法にもとづいて設立される「投資法人」で、投資家が買うのは株式ではなく「投資口」です。投資法人は自前の従業員を持たず、資産運用会社に不動産の取得・運用を外部委託します。もう一つの仕組みが「導管性」で、配当可能利益の90%超を分配すると、投資法人段階の法人税が実質ゼロになります。これが分配金利回りが高くなりやすい理由です。JREIT ETFはこの投資口を複数まとめて指数化したもので、1口単位の現在値がそのまま最低投資額になります。

日銀の利上げが直撃している

・日銀の政策金利は2026年6月に1.00%まで上がっている

・日本10年国債の利回りは2.987%(2026-09-01基準)

・JREITは借入で不動産を買う仕組みなので、金利が上がると新規の借入コストが増え、分配の原資が圧迫される

・1343の価格は5年で−13.4%。JREITのETFは8本とも同じ方向に売られている

ただし「金利が上がったから下がった」と単純には言えない。第16章で163か月ぶんを実測したところ、国債の利回りの変化とJREIT価格の変化の相関は、1か月で見ると −0.068 でほとんど無関係だった。関係がはっきり出るのは6か月から3年のスパンで、3年では −0.490 になる。月単位のニュースで「金利上昇でREITが売られた」と言われても、データはそれを支持していない。

ただし、もう売られている

総10年でみると1343は+48.4%とプラスです。分配金を再投資していれば、価格が売られている今の局面を含めても10年単位ではまだ増えています。逆風の一部はすでに5年かけて価格に織り込まれた後とも読めます。ただしこの章の先、Section 13で見るとおり、同じ10年で金は円建てで4.91倍になっています。

→ 次のSection 6では、同じ不動産でも米国REITは逆の顔を見せます。利回りが低い銘柄ほど、実は増えていました。

🗽 米国REIT — 利回りは3%台。それでも総リターンは勝っている

このセクションの3点

① 米国REIT 11本を実測利回りの低い順に並べると、総5年リターンはおおむね高い順になる。逆になっている

② USRT(利回り2.61%)は総5年+28.6%・総10年+90.0%で11本中最良。MORT(利回り15.29%)は総5年−7.0%

③ MORT・REMは実物の不動産を持たず住宅ローン担保証券に投資する「mortgage REIT」で、金利上昇に弱いとされる(本記事では目論見書は未確認)

米国REIT 11本を、実測利回りが低い順に並べます。

全11本の実測値をすべて見る 11本 / 実測利回り・価格5年・総5年・総10年 開く ▾
コード名前実測利回り価格5年総5年総10年
USRTiShares Core U.S. REIT ETF2.61%+11.4%+28.6%+90.0%
SCHHSchwab U.S. REIT ETF2.82%+2.7%+18.1%+53.9%
XLREReal Estate Select Sector SPDR3.21%−1.4%+15.9%+98.2%
RWRSPDR Dow Jones REIT ETF3.40%+5.5%+25.8%+71.0%
REETiShares Global REIT ETF3.40%−0.3%+16.1%+56.0%
VNQVanguard Real Estate ETF3.62%−5.8%+13.5%+73.2%
NURENuveen Short-Term REIT ETF4.23%−11.9%+4.5%取得できず(2016年設定)
SRETGlobal X SuperDividend REIT ETF8.28%−23.0%+13.2%+9.4%
KBWYInvesco KBW Premium Yield Equity REIT8.30%−22.6%+15.4%+14.2%
REMiShares Mortgage Real Estate ETF8.98%−40.3%−8.1%+23.2%
MORTVanEck Mortgage REIT Income ETF15.29%−48.9%−7.0%+18.9%
米国REIT 11本 — 総リターン5年
USRT
+28.6%

利回り2.61%

SCHH
+18.1%

利回り2.82%

XLRE
+15.9%

利回り3.21%

RWR
+25.8%

利回り3.40%

REET
+16.1%

利回り3.40%

VNQ
+13.5%

利回り3.62%

NURE
+4.5%

利回り4.23%

SRET
+13.2%

利回り8.28%

KBWY
+15.4%

利回り8.30%

REM
-8.1%

利回り8.98%

MORT
-7%

利回り15.29%

実測。分配金を再投資した場合のトータルリターン(2026-09-02時点の5年)。並び順は実測利回りが低い順(表と同じ)

発見 — 利回りが低い順に、総リターンは良い

USRT 2.61%→総5年+28.6%、RWR 3.40%→+25.8%、SCHH 2.82%→+18.1%に対して、MORT 15.29%→−7.0%、REM 8.98%→−8.1%。実測利回りの順位と総リターンの順位が、ほぼ逆になっています。

なぜMORTとREMだけ壊れているのか。この2本は一般に「mortgage REIT」と呼ばれる類型で、実物の不動産を持たず、住宅ローン担保証券などに投資し、短期で借りて長期で貸す利ざやで稼ぐとされています。金利が上がると、この利ざやが縮む、あるいは反転して損失になりやすいと説明されます。ただしこの説明は一般的なもので、本記事ではMORT・REM各ファンドの目論見書を確認していません。「一般にそう説明される」以上の断定はしていません。

USRTを選ぶ理由は、総5年+28.6%・総10年+90.0%が11本の中で実測最良だったことです。利回り2.61%は表の中で最も低い部類ですが、この記事では欠点として扱いません。分配金として先に受け取るか、値上がりとして後で受け取るかの違いで、トータルでは11本中最も増えています。

利回りが低い順に、総リターンが良かった

USRTはNISA成長投資枠から買えますが、米国上場ETFのため分配金には米国源泉税10%がかかります。非課税になるのは日本側の20.315%だけです。手取りの試算はSection 12で扱います。

→ 次のSection 7では、株を持ちながら「上がったら売る権利」を売るカバードコールを見ます。

📈 カバードコール — 11%の正体と、DIVOだけが違った理由

カバードコールとは、株式を保有しながら「将来の決まった値段で売る権利」を他人に売る戦略である。その権利の代金(プレミアム)を、毎月または毎年の分配金として受け取る。

この仕組みのため、株価が大きく上がってもその上昇分を全部は受け取れない。上値が決まった値段で止まる代わりに、株価が動かなくても分配金は入り続ける。

カバードコールの3つの場面

→ この図は横にスクロールできます

① 株価が上がったとき普通株カバコ普通株は上がった分がそのまま増える。カバコは決めた値段より上は増えない代わりに、代金(黄色)をもらう。② 横ばいのとき普通株カバコ普通株はほぼ変わらない。カバコは値上がり益がなくても、代金の分配金が入る。③ 下がったとき普通株カバコ普通株は下がった分がそのまま含み損になる。カバコは代金の分だけ下落がやわらぐ。ただしゼロにはならない。

分配金(プレミアム)はどの場面でも入る。値上がり益は決めた値段より上には伸びない。下落は代金の分だけやわらぐが、なくなりはしない。

高分配ETF13本の実測値をすべて見る 13本 / 設定日つき 開く ▾
銘柄実測利回り価格5年総1年総5年総10年設定日
DIVO6.21%+38.5%+15.4%+78.6%—2016-12-15
JEPI8.01%-4.0%+8.6%+47.9%—2020-05-21
GPIX8.18%—+16.1%——2023-10-27
GPIQ10.24%—+18.2%——2023-10-27
JEPQ11.46%—+15.2%——2022-05-04
XYLD10.44%-14.5%+16.7%+47.3%+126.8%2013-06-24
RYLD11.64%-35.2%+19.7%+16.3%—2019-04-22
QYLD11.69%-17.6%+19.4%+51.4%+149.2%2013-12-12
SPYI11.82%—+14.4%——2022-08-30
QQQI14.16%—+13.4%——2024-01-30
2865.T10.05%—+27.2%——2022-09-27
2866.T5.82%—+5.8%——2022-09-27
2868.T8.89%—+24.1%——2022-11-02

5年・10年の実績が、まだ存在しない銘柄がある

SPYI(2022年8月設定)・QQQI(2024年1月設定)・GPIX/GPIQ(2023年10月設定)・2865(2022年9月設定)は運用の歴史が浅く、5年・10年のトータルリターンがまだ存在しない。

表の空欄は「取得できていない」のではなく、その年数分の実績がまだ生まれていないという意味である。

DIVOだけが違った

・価格5年 +38.5%。カバコ13銘柄の中で唯一、価格そのものがプラス

・総5年 +78.6%。カバコの中で最も高いトータルリターン

・設定は2016年12月と古参。他の多くは設定が浅く、そもそも5年の実績自体がない

「カバコは全部ダメ」ではない

QYLDは価格5年で-17.6%と元本は減っているが、分配金を再投資したトータルリターンは総5年+51.4%、総10年では+149.2%。10年で資産は約2.5倍になっている。

元本が減ることと、増えないことは別である。

2865(円建て)は総1年+27.2%、2868は+24.1%と高い。ただしこの1年でドル円は+6.8%動いている。円建てのカバードコールETFのリターンには、この為替の動きが含まれている。

2866(同じグローバルXの銘柄)は総1年+5.8%にとどまる。何を投資対象にしたETFかは本記事では確認していないため、ここでは数字だけを示し、断定はしない。

この記事が買うのは2865ではなくDIVO

円建てで買える2865(グローバルX NASDAQ100・カバード・コール)は実測10.05%と高い。しかし2022年9月の設定で、5年・10年の実績がまだ存在しない。総1年+27.2%という数字も、ドル円が1年で+6.8%動いた分を含んでいる。
この記事の配分で10万円を入れるのはDIVOである。実測6.21%と利回りは低いが、5年で価格そのものが+38.5%と増えている唯一の銘柄だからだ。カバードコールの弱点である「元本が伸びない」を、実績として免れている1本を選んだ。

💴 ハイイールド債 — 6〜7%。為替ヘッジが利回りを食う

ハイイールド債とは、格付けがBB以下の社債(投資適格に届かない社債)である。利回りが高いのは、発行企業が倒産する確率が高いからだ。利回りの高さは、リスクの高さの裏返しとして受け取る必要がある。

銘柄実測利回り価格5年総1年総5年総10年設定日
SHYG7.03%-8.1%+4.0%+26.9%+60.4%2013-10-17
USHY6.95%-11.8%+3.8%+22.2%—2017-10-26
SPHY7.23%-13.5%+3.8%+23.0%+60.2%2012-06-19
JNK6.65%-12.8%+3.9%+19.3%+56.1%2007-12-04
ANGL6.60%-13.0%+3.2%+15.3%+71.6%2012-04-11
FALN6.56%-11.0%+2.9%+18.4%+75.2%2016-06-21
HYG5.99%-9.5%+3.5%+19.9%+55.8%2007-04-11
1497.T6.01%-27.3%-0.1%-4.6%—2017-08-23
ハイイールド債ETF 8本の 5年トータルリターン
SHYG 0-5年
+26.9%

実測7.03%

SPHY
+23%

実測7.23%

USHY
+22.2%

実測6.95%

HYG
+19.9%

実測5.99%

JNK
+19.3%

実測6.65%

FALN
+18.4%

実測6.56%

ANGL
+15.3%

実測6.60%

1497.T 為替ヘッジあり
-4.6%

実測6.01%

分配金を再投資した場合の5年リターン。米国上場の7本はそろってプラス。為替ヘッジありの1497.Tだけがマイナス。ただしこの差をヘッジだけの影響とは言えない。

米国上場7本はそろって安定

SHYG・USHY・SPHY・JNK・ANGL・FALN・HYGの米国上場7本は、実測利回り5.99〜7.23%、総5年+15.3〜+26.9%とそろってプラスで安定している。

ただし、この差を「為替ヘッジのせい」と断定はできない

・SHYG の総5年 +26.9% と 1497.T の −4.6% には31.5ポイントの開きがあり、為替ヘッジのコストが効いていることは考えられる

・しかし SHYG は iShares 0-5 Year High Yield Corporate Bond ETF、1497.T は iShares USD High Yield Corporate Bond JPY Hedged ETF で、残存年限も連動指数も構成銘柄も違う

・さらに前者のリターンはドル建て、後者は円建てで、通貨の基準そのものが違う

・ヘッジの寄与を測るには同じ指数でヘッジあり・なしの2本を同じ期間・同じ通貨基準で比べる必要があり、本記事ではそれを行っていない。言えるのは「この2本の実績には31.5ポイントの差がある」までである

為替ヘッジのコストは、おおむね日米の短期金利差に連動すると一般に説明される。今は米国3か月金利3.772%、日本1年金利1.527%で2ポイント超の開きがある。

ただし、この記事では為替ヘッジコストの実額を確認していない。ここでは一般的な説明として書く。

SHYGを選ぶ理由

実測利回り7.03%は表中2位、総5年+26.9%は表中1位。満期が0〜5年と短く、金利変動の影響を受けにくい。

→ 次のSection 9では米国債を見る。NISAでは買えないが、なぜ買わないかを確かめる。

米国債 — 順イールドに戻った。だがTLTは5年で32%減った

米国債の利回りは3か月3.772%から30年5.264%まで、期間が長いほど利回りが高い順イールドに戻っている。期間を長く貸すほど高い金利がもらえる、金利の普通の並び方だ。

3.772%

3か月

4.553%

5年

4.794%

10年

5.264%

30年

コード名前実測利回り価格5年総1年総5年総10年
SGOViShares 0-3 Month Treasury Bond ETF3.70%0.4%3.5%20.1%-
BILSPDR Bloomberg 1-3 Month T-Bill ETF3.72%-0.1%3.4%19.3%25.1%
SHYiShares 1-3 Year Treasury Bond ETF3.63%-5.3%2.0%9.5%18.1%
VGITVanguard Intermediate-Term Treasury ETF3.95%-14.3%0.2%-0.1%12.3%
IEFiShares 7-10 Year Treasury Bond ETF4.02%-20.1%-0.7%-7.1%5.7%
GOVTiShares U.S. Treasury Bond ETF3.71%-15.9%0.1%-3.4%8.4%
TLTiShares 20+ Year Treasury Bond ETF4.75%-43.3%-4.2%-32.3%-17.2%
VGLTVanguard Long-Term Treasury Index Fund ETF4.81%-40.1%-3.2%-28.2%-12.1%
TLTWiShares 20+ Year Treasury Bond Buywrite ETF11.04%--0.9%--
2621.Tiシェアーズ 米国債20年超(為替ヘッジあり)4.84%-55.4%-7.3%-47.4%-

TLTの罠

・実測利回り4.75%——数字だけ見れば悪くない

・価格は5年で−43.3%。元本がほぼ半分近く減っている

・分配金を全部再投資したトータルリターンでも総5年−32.3%・総10年−17.2%

・10年持って分配金を再投資してもマイナスのまま

対して短期のSGOV(0-3か月)は総5年+20.1%、BIL(1-3か月)は+19.3%。長期債より短期債のほうが、実測利回りは低いのにトータルリターンでは勝った。
総5年トータルリターン(米国債ETF)
SGOV(0-3か月)
+20.1%

+20.1%

BIL(1-3か月)
+19.3%

+19.3%

SHY(1-3年)
+9.5%

+9.5%

VGIT(中期)
-0.1%

-0.1%

IEF(7-10年)
-7.1%

-7.1%

GOVT(総合)
-3.4%

-3.4%

TLT(20年超)
-32.3%

-32.3%

VGLT(長期)
-28.2%

-28.2%

2621.T(為替ヘッジ)
-47.4%

-47.4%

実測。分配金を再投資したトータルリターン。TLTWは2022年設定のため5年のデータなし。

TLTW(TLTにカバードコールをかけたETF)は実測利回り11.04%だが、総1年はわずか−0.9%。上値を差し出して分配金を厚くする設計のため、値下がり局面では分配金を足しても元本の目減りを埋めきれない。

最悪の組み合わせ

2621.T(iシェアーズ 米国債20年超・為替ヘッジあり)は総5年−47.4%。為替ヘッジと長期債という、この記事に出てくる10本の中で最も裏目に出た組み合わせだった。

結論

NISAでは現物の米国債は買えない。そして長期債ETFは買わない。100万円の配分に米国債ETFは入れない。SGOVのような短期債は損をしないが、非課税の枠を使ってまで持つ理由も薄い。

→次のSection 10では日本国債を見る。個人向け国債の適用利率は1年足らずで2倍になっている。

日本国債 — 1年で利率が倍になった。NISAでは買えない

先に断っておく。個人向け国債もNISAの成長投資枠では買えない。それでも、今の水準は書く価値がある。1年足らずで適用利率がほぼ倍になっているからだ。
種類回号基準金利適用利率(税引前)税引後
変動10年第198回2.96%1.95%1.5539%
固定5年第186回2.29%2.24%1.7849440%
固定3年第196回1.99%1.96%1.5618260%
算式は3種類とも違う。変動10年=基準金利×0.66(下限0.05%)、固定5年=基準金利−0.05%、固定3年=基準金利−0.03%。募集期間は2026年9月3日〜9月30日、発行日は2026年10月15日。
個人向け国債 変動10年の適用利率の推移
第181回(2025-11)
0.93%
第183回(2026-01)
1%
第186回(2026-04)
1.06%
第189回(2026-07)
1.23%
第190回(2026-08)
1.39%
第191回(2026-09)
1.48%
第194回(2026-12)
1.67%
第198回(2027-04)
1.95%

財務省 適用利率一覧(第1期)。回号のカッコ内は初回利払月。

第181回の0.93%から第198回の1.95%まで、1年足らずで2.10倍になった。

取材メモ — 発行条件ページは空欄だった

募集開始日である2026年9月3日の時点で、財務省サイトの「発行条件」ページにある変動10年の適用利率の欄は空欄だった。今回の数値は同省が別途公開している「適用利率一覧」のExcelから取得した。
固定5年2.24%の意味を数字で言うと、元本保証で年2.24%。1年前の個人向け国債は0.93%だった。
年限日本国債米国債
3か月-3.772%
1年1.527%-
2年1.802%-
5年2.280%4.553%
10年2.987%4.794%
20年3.859%-
30年4.131%5.264%
40年4.145%-
30年で並べると、日本4.131%に対して米国5.264%。差は1.13ポイントまで縮んでいる。

結論

NISAの成長投資枠では個人向け国債を買えない。しかし課税口座で固定5年2.24%を買うのは、この記事の中で唯一元本が保証されている選択肢になる。

→次のSection 11では2026年9月という時点そのものを見る。S&P500のPERとCAPEは何を語っているか。

📅 2026年9月という時点 — CAPE 41.74をどう見るか

7,672.64

S&P500

29.42倍

S&P500 PER

41.74

Shiller CAPE

158.72円

ドル円

1999年12月の44.19という数字は、この記事では取得していない

・CAPE 41.74 について「歴史的な最高は1999年12月の44.19で、それに次ぐ水準」と書きたくなるが、本記事が取得したのは現在値の41.74だけである

・だから順位づけをしない。この記事が言えるのは「2026年9月1日時点の Shiller CAPE は41.74である」までで、それが歴史上何番目かは書かない

指標現在値1年5年10年
S&P5007,672.64+14.7%+78.1%+260.9%
日経22564,325.64+43.2%+118.4%+269.2%
ドル円(USDJPY)158.72+6.8%+41.8%+51.8%
VIX15.36−5.7%−33.6%−10.0%
TOPIX ETF(1306)424.5+29.3%+100.7%+263.9%

日本株のほうが1年では上がっている

日経225は1年で+43.2%、TOPIX ETF(1306)は+29.3%。米国株のS&P500(+14.7%)より、この1年は日本株のほうが上がっている。5年・10年で見ても日経225は+118.4%・+269.2%とS&P500の+78.1%・+260.9%を上回る。

落ち着いた恐怖指数

VIXは15.36で、1年で−5.7%、5年で−33.6%。株価が歴史的な高値圏にある一方で、市場の恐怖指数は低いままという組み合わせが今のところ続いている。
ドル円は158.72円。5年で+41.8%、10年で+51.8%動いた。円で暮らす人が今ドル建ての資産を新しく買うということは、円安が進みきったところで外貨を買うことでもある。ドル資産の実測利回りが高く見えても、その一部は円安がこのまま続くことを前提にしている。
日銀の政策金利は1.00%、日本10年国債の利回りは2.987%。日本の金利も上がっている。金利が上がると、借入で不動産を買うJREITには逆風になり、個人向け国債の利率には追い風になる。この両方が同時に起きているのが2026年9月の相場である。

それでも100万円は全額使う。ただし15万円は「いつでも降りられる置き場」に

CAPE 41.74、東証プライムの加重PBRは53か月で下から90.6%tile、ドル円158.72。今日ここに100万円をまとめて入れる場面ではない。
ただし現金のまま置くのではない。15万円は SGOV(0-3か月の米国債ETF)に入れる。実測利回りは3.70%で、価格は5年で+0.4%とほぼ動かず、2億円分でも0.01営業日で売れる。値下がりが来たら、ここから他の4本へ回すための待機資金である。
ただしこれも現金ではない。ドル建てなので、円高になれば円換算では目減りする。ドル円130円なら約18%下がる計算になる。「安全な置き場」ではなく「すぐ動かせる置き場」だと理解して置く。

税金の話に移る。NISAは日本の税金を非課税にするが、米国の源泉税までは防げない。Section 12で計算する。

🧾 税金 — NISAで米国ETFを買うと10%は取られ続ける

非課税が効くのは日本の税金だけ

NISAの非課税は、日本の税金(20.315%)にだけ効く。米国の源泉税10%は、NISA口座であっても引かれる。米国上場ETF(USRT・SHYG)の分配金は、実測利回りのおよそ90%が手取りの目安になる。
NISA口座では外国税額控除が使えない。そもそも日本で課税されていないため、控除する対象がない。

訂正:二重課税調整措置は、NISAで持っている分には効かない

・当初この記事には「東証上場の国内籍ETFには2020年1月からの二重課税調整措置があるので、NISAで持つと有利」と書いていた。これは誤りである

・二重課税調整は、国内で課税されて初めて調整が起きる仕組みである。NISAはそもそも国内課税が無いため二重課税の状態にならず、調整の対象外になる

・この誤りは、同じデータを渡して独立に配分を作らせたCodex(GPT-5.6)の指摘で見つかった

NISAでできないこと

・損益通算ができない。他の口座で出た利益とNISAで出た損を相殺できない

・繰越控除ができない。損が出た年の翌年以降に持ち越して差し引くこともできない

・損が出た銘柄を非課税枠で持つと、課税口座で持つより不利になりうる

訂正はもう1件ある

訂正:元本が減っても、非課税枠そのものは減らない

・当初この記事には「元本が減る商品をNISAで持つと非課税枠そのものを毀損する」と書いていた。これも誤りである

・売却したときに翌年以降へ復活する生涯投資枠は、売却額ではなく買ったときの金額(簿価)で戻る。100万円で買って80万円で値下がりした状態で売っても、復活する枠は100万円である

・ただし復活するのは売却した翌年以降であり、値下がりしているだけでは枠は戻らない

・正しく言えるのはここまで。経済的な損失は当然出る。NISAでは損益通算も繰越控除もできないので、その損は他の利益と相殺できない

・これもCodexの指摘で見つかった誤りである

銘柄資産金額実測利回り課税の扱い税引前(年)手取り目安(年)
1343JREIT ETF(国内籍)35万円4.81%国内のみ16,835円16,835円
SHYG短期ハイイールド(米国籍)20万円7.03%米国源泉10%14,060円12,654円
USRT米国REIT20万円2.61%米国源泉10%5,220円4,698円
DIVOカバードコール(米国籍)10万円6.21%米国源泉10%6,210円5,589円
SGOV米国短期国債15万円3.70%米国源泉10%5,550円4,995円
合計—100万円4.79%—47,875円44,771円
年間47,875円の分配金は、どこから来ているか
1343 東証REIT指数ETF: 16835円(35.2%)SHYG 0-5年ハイイールド社債: 14060円(29.4%)DIVO カバードコール: 6210円(13.0%)SGOV 0-3か月米国債: 5550円(11.6%)USRT 米国REIT: 5220円(10.9%)47,875円年間・税引前
  • 1343 東証REIT指数ETF
    資金35% → 分配35.2%
    16835円
    35.2%
  • SHYG 0-5年ハイイールド社債
    資金20% → 分配29.4%
    14060円
    29.4%
  • DIVO カバードコール
    資金10% → 分配13.0%
    6210円
    13.0%
  • SGOV 0-3か月米国債
    資金15% → 分配11.6%
    5550円
    11.6%
  • USRT 米国REIT
    資金20% → 分配10.9%
    5220円
    10.9%

上の配分(金額)と見比べてほしい。USRTは資金の20%を占めるのに、分配金では10.9%しか稼いでいない。逆にSHYGは資金20%で分配の29.4%を稼ぐ。インカムゲインの専門家はこの食い違いを「最大の穴」と指摘した(第18章)。

この手取り目安は、米国上場ETFの分配金にすべて10%の源泉徴収がかかるものとして計算した概算である。実際には分配金の所得区分や原資によって扱いが異なりうるので、全額に必ず10%がかかると断定はできない。とくに債券ETFの利子部分については扱いが違う可能性がある。確実に言えるのは「通常の配当については米国で10%が引かれ、NISA口座ではそれを外国税額控除で取り戻せない」ところまでである。
※ 米国ETFの分配金のうち利子にあたる部分は、非居住者に源泉徴収されない扱いになっている場合がある。本記事ではこの内訳までは確認していない。要確認。

47,875円

年間の分配金(税引前)

44,771円

米国源泉10%を引いた手取り目安

3,104円

米国で引かれる分(年)

約9,700円

課税口座だった場合の日本の税金

非課税だからといって何を買ってもいいわけではない

この配分でのNISAの節税額は、年およそ9,000円である。小さいとまでは言わないが、無条件にありがたい金額でもない。元本が減る商品を非課税枠いっぱいに詰め込めば、節税額より大きい含み損を抱えることになりうる。非課税は、選び方の粗さを埋め合わせてくれるものではない。

同じデータを使って、GPT-5.6(Codex)にも独立に100万円の配分を決めさせた。私の判断と、どこが一致し、どこが割れたかをSection 13で見る。

全部が上がった10年で、JREITだけ横ばいだった

同じ10年で、金は円建てで4.91倍、NASDAQ100は9.39倍になった。東京のマンションも1.86倍になっている。その東京の不動産を保有する器である東証REIT指数ETF(1343)だけが、10年でほぼ横ばい(価格で+1.7%=約1.02倍)だった。不動産そのものは上がったのに、不動産を持つための商品は上がらなかった。

円建てで10年何倍になったか
NASDAQ100
9.39倍
S&P500
5.56倍
銀(ドル建て)
5.39倍
金(ドル建て GC=F)
5.28倍
SPDRゴールド 1326
4.96倍
純金上場信託 1540
4.91倍
日経225
3.91倍
東京のマンション(国交省)
1.86倍
東京の住宅地
1.36倍
東京の戸建
1.26倍
東証REIT指数ETF 1343
1倍

価格のみ。分配金を含まない

実測(2026-09-02時点)。ビットコイン(10年198.95倍)はこの図に入れると他の全ての差が見えなくなるため、表にのみ記載し図からは除外した。ドル建て資産は現地通貨の倍率にドル円10年1.57倍を掛けて円建てに直している。不動産は国交省の指数で基準日が異なる(最新2025年12月)。厳密なランキングではない。

資産3年5年10年15年
NASDAQ1002.102.819.3928.21
S&P5001.902.535.5614.06
銀(ドル建て)3.134.235.394.51
金(ドル建て GC=F)2.533.585.285.65
SPDRゴールド 1326(東証)2.453.494.965.21
純金上場信託 1540(東証)2.443.484.915.15
日経2252.022.183.917.39
ビットコイン3.042.50198.95取得なし
東京のマンション(国交省)1.271.471.86取得なし
東京の住宅地1.061.251.36取得なし
東京の戸建1.041.221.26取得なし
東証REIT指数ETF 13430.960.871.001.99

この表と図は、異なる指数・通貨・期間・収益定義を同列に並べている。厳密なランキングではない。NASDAQ100とS&P500は指数の価格(分配金を含まない)、東証REIT指数ETF(1343)も価格だけの変化である。東京のマンションは国交省の不動産価格指数で、他の資産と基準日が揃っていない(最新は2025年12月)。ドル建て資産は現地通貨の倍率に、ドル円の倍率(3年1.06倍・5年1.42倍・10年1.57倍・15年2.07倍)を掛けて円建てに直している。

この比較から因果を引き出してはいけない

・東京都のマンション価格指数と1343を並べたが、この2つは同じものを測っていない。前者は東京都の中古住宅の再販価格、後者は東証REIT指数に連動するETFの価格である

・用途も地域も資本構成も違い、1343の保有物件が東京都のマンションだという根拠は本記事のデータには無い。JREITはオフィス・物流・ホテル・商業を多く含み、借入も使っている

・したがって「東京の不動産が上がったのにJREITが上がらなかった」は2つの別の市場で起きた事実の並置であって、片方が片方の説明になるわけではない

東京都の不動産、種別ごとの10年

種別最新値10年前比5年前比3年前比2012-12比最安値2009-07比
マンション234.81.86倍1.47倍1.27倍2.36倍2.51倍
住宅総合182.11.61倍1.38倍1.18倍1.86倍取得なし
住宅地144.41.36倍1.25倍1.06倍1.46倍取得なし
戸建133.21.26倍1.22倍1.04倍1.37倍取得なし

最も上がったのはマンションで、住宅地と戸建の上昇は小さい、しかも公表は止まっている

国交省は2026年8月27日、不動産価格指数の公表延期を告知しており、令和8年1〜5月分・第1四半期分はまだ公表されていない。最新は2025年12月分で止まったままである。

依頼者は「東京の不動産は3倍」と言ったが、国交省の東京都全体の指数(中古の再販ベース)では10年前比2.36〜2.51倍にとどまる。3倍という水準は本記事では確認できていない。都心の特定エリアや新築であれば届く可能性はあるが、それは別の集計になる。

そして10年で最も上がったのはマンションで、住宅地と戸建の上昇は小さいである。住宅地は1.36倍、戸建は1.26倍にとどまっている。

なぜJREITだけ動かないのか

不動産そのものは10年で1.86倍になったのに、その不動産を保有する器である1343は価格で+1.7%しか動いていない。理由として一般に挙げられるのは次の3つだが、本記事ではこれらの仕組みをファンドの決算資料まで遡って検証していない。断定はせず「一般にこう説明される」という形で書く。

📦

利益をほぼ全額分配する仕組み(導管性)

家賃収入の90%超を分配することで法人税が実質かからなくなる代わりに、内部留保として価格の上昇分を積み上げにくい、と一般に説明される。
💰

物件を増やすには増資が要る

新しい不動産を買うには投資家から資金を集める増資が必要になり、そのぶん1口あたりの取り分が薄まる、と一般に説明される。
📈

金利上昇が両方向から効く

借入で不動産を買う仕組みなので、金利が上がると返済負担が増え、同時に利回り資産としての相対的な魅力も下がる、と一般に説明される。

+1.7%

1343 価格 10年(分配金を除く)

+48.4%

1343 総リターン 10年(分配金再投資)

「JREITは儲からなかった」ではない

・価格の+1.7%は、分配金を含まない価格だけの変化である

・分配金を再投資したトータルリターンは10年で+48.4%。ゼロではない

・1343は値上がりで増える器ではなく、分配金として吐き出す器だったと理解するのが正確

決定的な問い

分配金を全部再投資しても、10年で1.48倍。同じ10年で金は4.91倍だった。不動産を保有する器としての1343は、不動産そのものの値上がり(1.86倍)にも、代替資産の金(4.91倍)にも届いていない。

→ 次のSection 14では、日本株そのものの割高さを見る。PBRはプライム市場発足以来、ほぼ最高値圏にある。

日本株も高い — PBRはプライム発足以来の最高値圏

円建てで9.39倍になったNASDAQ100や、5.28倍になった金と比べると、3.91倍の日経225は控えめに見える。しかし指数のPERとPBRを見ると、日本株もまた高い。

指数PER出典
NASDAQ100(QQQ)32.58stockanalysis.com
S&P50029.42multpl.com
S&P500 Shiller CAPE41.74multpl.com
MSCI World(URTH)23.15stockanalysis.com
全世界(VT)22.24stockanalysis.com
MSCI ACWI21.93stockanalysis.com
東証プライム(加重・連結)20.8JPX 2026年8月
東証プライム(単純平均)19.3JPX 2026年8月
MSCI Japan(EWJ)17.72stockanalysis.com
東証スタンダード(単純)16.3JPX
東証グロース(単純 / 加重)40.8 / 86.3JPX

東証プライムは、自分自身の過去と比べても高い

指標いま中央値最小最大位置
加重PER20.817.214.121.8下から94.3%tile
加重PBR1.81.41.11.9下から90.6%tile
単純PER19.316.813.721.0下から88.7%tile
単純PBR1.61.21.11.7下から90.6%tile

1.8

加重PBR(下から90.6%tile)

20.8

加重PER(下から94.3%tile)

1.500倍

1株利益の伸び(プライム発足から)

2.358倍

日経平均の伸び(プライム発足から)

株価の伸びが、利益の伸びの1.57倍

・東証プライム発足(2022年4月)から1株利益は118.12円→177.21円=1.500倍

・同じ期間に日経平均は27,280円→64,326円=2.358倍

・株価の伸びは利益の伸びの1.57倍。稼ぐ力以上に値段が先に上がっている

私は最初、逆の結論を書いていた

この記事の下書きで、私は当初「東証プライムの単純PERは19.3で、NASDAQ100の32.58やS&P500の29.42より低い。だから日本は割高ではない」と書いた。

依頼者から「日経平均も高い。2年前は3万円だった」と指摘され、日経平均そのものの水準を調べ直した。結果、結論は反転した。他の指数と横に並べたPERだけでは、東証プライムが自分自身の過去と比べてどこにいるかは分からない。

PBRは1株利益のブレを受けない指標である。加重PBR 1.8は、プライム発足からの53か月のなかで下から90.6%tile。プライム発足以来、ほぼ最高値圏にある。これがこの章でいちばん強い証拠になる。

限界: 2022年4月の市場再編で母集団が2,163社から1,832社へ変わった。市場再編前(2020年1月〜2022年3月)の一部期とプライム期は直接比較できないため、この記事の百分位はプライム期53か月の中だけで計算している。

JPXが公開しているExcelは、古い月ほど値が=1831のような擬似数式で入っており、通常の読み方では空欄として扱われる。最初はこれに気づかず、53か月のうち21か月分しか読めておらず、誤った百分位を出しかけた。

「全世界に分散すれば割高を避けられる」は半分だけ正しい。全世界株ETF(VT)のPERは22.24倍で、東証プライムの加重20.8倍より高い。ただしVTは米国株が最大の構成比を占めるため、この22.24倍には米国株の割高さが反映されている。VTの米国比率は本記事では確認していないため、比率を使った逆算はしていない。

→ 次のSection 15では、JREITの割安・割高を示す2つの指標が正反対を指している矛盾を見る。

📊 NAV倍率とイールドスプレッドが、正反対を指している

JREIT市場を評価する2つの標準的な指標がある。NAV倍率とイールドスプレッドだ。同じ58銘柄・同じ市場を見ているのに、2026年9月のいま、この2つは正反対の答えを出している。

この2つは、同じものを同じ重みで測ってはいない。NAV倍率0.811は58銘柄の単純平均で、1銘柄ずつを等しく数えている。イールドスプレッドのほうは1343(東証REIT指数連動ETF)の分配金利回りから出しており、指数の時価総額ウェイトを反映する。
正確には「JREIT市場を別の集計方法で見た2つの指標が、逆の方向を向いている」である。市場が正反対の答えを出した、とまでは言えない。

同じ市場を見て、答えが逆になる

NAV倍率で見ると

平均0.811倍・57/58銘柄が1倍割れ

  • ・保有不動産の時価より約19%安い
  • ・1倍以上は日本ビルファンド(1.02)だけ
  • ・評価は「割安」

イールドスプレッドで見ると

1.867pt・164か月で下から6.1%tile

  • ・13年で最低水準に近い
  • ・中央値3.061ptの6割程度しかない
  • ・評価は「割高」

0.811倍

NAV倍率の平均(58銘柄)

57銘柄

1倍割れ(58銘柄中)

1.867pt

イールドスプレッド(いま)

6.1%

164か月で下から何%の位置か

スプレッドという指標

イールドスプレッドは、JREITの分配金利回りから日本10年国債利回りを引いた差だ。東証REIT指数ETF(1343)の実際の分配金利回りと、財務省「国債金利情報」を使い、2013年2月から2026年9月までの164か月ぶんを自分で計算した。

いまのスプレッドは1.867pt(REIT利回り4.81% − JGB10年2.943%)。164か月の中央値は3.061pt、平均は2.855pt、最小は−0.147pt(2013年2月)、最大は4.275pt。いまの1.867ptは中央値の6割程度しかない。

イールドスプレッドの推移
2013年
2.386pt
2014年
2.153pt
2015年
2.484pt
2016年
2.73pt
2017年
3.258pt
2018年
3.272pt
2019年
2.901pt
2020年
3.664pt
2021年
3.265pt
2022年
3.187pt
2023年
3.193pt
2024年
3.37pt
2025年
2.006pt
2026年9月(いま)
1.867pt

各年12月時点の値(2026年のみ9月時点)。1343の実分配金利回り÷価格 − 財務省10年国債利回りを自分で計算した164か月分から抽出。

2025年に急に潰れた。2024年3.370ptから2025年2.006ptへ1.364pt縮み、2026年はさらに1.867ptまで下がっている。

なぜ食い違うのか(推論)

NAV倍率のもとになる不動産鑑定価格は、投資法人の決算短信ベースで年に1〜2回しか更新されず、反映が遅れる。金利が上がって鑑定の還元利回りが上がれば、NAV自体はまだそれを織り込みきっていないだけかもしれない。スプレッドは日々の市場価格から出るので反応が速い。この解釈は本記事の推論であり、検証していない。

NAV倍率から「上昇余地」を言ってはいけない

・NAVは出口価格ではない。鑑定どおりに全物件を売り、負債を返して分配できる保証はない

・「NAV倍率0.811だから19%の上昇余地がある」とは書かない。「19%割安」と「19%儲かる」は別の話

・スプレッドが下から6.1%tileだからといって、すぐに反転するとも限らない

📉

NAVは出口価格でない

鑑定評価どおりに売却できる保証がない。倍率が低くても、そのまま利益が出る保証にはならない。
📊

市場全体が割れている可能性

金利上昇・借換え費用・外部成長力の弱さ・鑑定の遅れを、市場がまとめて価格に織り込んでいる可能性がある。
💰

現金収益の相対価格は割安でない

分配金という現金収益で見ると、JREITはいま国債に対して歴史的に割高な水準にいる。

次のSection 16では、金利・為替・株価が動いたらJREITと他資産がいくらになるかを逆算する。

基準日が2つある

スプレッドの計算に使っている日本10年国債の 2.943% は、月次で並べた系列の最終値(2026年8月31日)である。この記事の他の章で使っている 2.987% は財務省が公表した2026年9月1日の値で、日付が1日違う。
スプレッドは164か月の月次系列として作っているので、最終月も月次の値でそろえた。2.987%で計算し直すとスプレッドは1.823ptになり、いまが低い側にあるという結論は変わらない。
🤖 Claudeの判定 割高のほうを重く見る。ただし買う

2つの指標が逆を向いたときは、出口が保証されていないほう(NAV倍率)を割り引いて読む。だからJREITは買うが、35%までにとどめる

  • NAVは出口価格ではない。鑑定どおりに全物件を売って借金を返して配れる保証はなく、いつそうなるかの期限もない
  • イールドスプレッド1.867ptは164か月で下から6.1%tile。国債と比べた取り分は13年でほぼ最低水準にある
  • 一方でJREITは5年で価格が13.4%下がっており、逆風の一部はもう値段に入っている。だからゼロにはせず35万円は買う

次の第16章では、この2つの指標が動いたときに値段がいくらになるかを逆算する。

🎲 シナリオ — 金利・為替・株が動いたら、いくらになるか

これは予測ではない。「金利や為替がこの水準になったら、いくらになるか」を機械的に逆算しただけで、実際にその水準になるとは限らない。

金利が上がったら、JREITはいくらになるか

スプレッド↓ / 10年国債→2.0%2.5%2.943%(いま)3.5%4.0%
1.867pt(いまのまま)+24.4%+10.1%0.0%−10.4%−18.0%
2.484pt(25%tile)+7.3%−3.5%−11.4%−19.6%−25.8%
3.061pt(中央値)−5.0%−13.5%−19.9%−26.7%−31.9%
3.272pt(75%tile)−8.8%−16.7%−22.6%−29.0%−33.9%

分配金が変わらない前提の逆算。実際には金利上昇で分配金自体も減りうるので、この表は下振れ方向に甘い。

Codexの指摘 — −19.9%は予測値ではない

スプレッドが中央値3.061ptへ戻り、10年国債がいまの2.943%のままなら−19.9%になる、という感応度計算にすぎない。分配金と国債利回りを一定と置いた上での機械的な計算で、ストレスシナリオとは呼べても、予想下落率とは呼べない。

為替が動いたら、いくらになるか

現地通貨の価格が動かない前提で、為替だけを分離した数字。

ドル円130円140円158.72(いま)170円180円
Claude案(ドル建て65%)−11.8%−7.7%0.0%+4.6%+8.7%
怪物案(ドル建て15%)−2.7%−1.8%0.0%+1.1%+2.0%

発見: 高利回りを追う怪物案のほうが為替には強い。円建てのJREITが中心だから。

米国株が動いたら、いくらになるか

利益が変わらない前提の機械的な逆算。

CAPE41.74(いま)35302517
S&P5000.0%−16.1%−28.1%−40.1%−59.3%

1999年12月の44.19という数字は、この記事では取得していない

・CAPE 41.74 について「歴史的な最高は1999年12月の44.19で、それに次ぐ水準」と書きたくなるが、本記事が取得したのは現在値の41.74だけである

・だから順位づけをしない。この記事が言えるのは「2026年9月1日時点の Shiller CAPE は41.74である」までで、それが歴史上何番目かは書かない

金利が上がったとき、実際に何が起きたか(2021年以降の実測)

ここまでは全部逆算だった。ここからは実測。

銘柄実測利回り価格5年総5年総10年
TLT(20年超)4.75%−43.3%−32.3%−17.2%
VGLT4.81%−40.1%−28.2%−12.1%
IEF(7-10年)4.02%−20.1%−7.1%+5.7%
VGIT3.95%−14.3%−0.1%+12.3%
SHY(1-3年)3.63%−5.3%+9.5%+18.1%
SGOV(0-3か月)3.70%+0.4%+20.1%期間なし
米国債ETFの総リターン(5年)
TLT(20年超)
-32.3%
VGLT
-28.2%
IEF(7-10年)
-7.1%
VGIT
-0.1%
SHY(1-3年)
+9.5%
SGOV(0-3か月)
+20.1%

分配金再投資込みのトータルリターン。2021年以降の実測(2026-09-02時点)。

金利が上がったらどうなるか、の答え

この問いへの答えは予測ではない。もう起きている。TLTは価格5年−43.3%、総10年でも−17.2%。長期債を持てば金利上昇の直撃を受け、短期債(SGOV)ほど無傷に近い。

ところで、国債の利回りが上がったらREITは本当に下がるのか

ここまでの表は「スプレッドがこの水準になったら価格はいくら」という逆算だった。では実際のところ、国債の利回りが上がったときREITは下がってきたのか。163か月ぶんのデータで測った。

何か月で見るか相関国債が+0.5pt以上上がった局面のREITそのうち下落した割合
1か月−0.068該当なし—
3か月−0.288−1.39%100%(2件)
6か月−0.333−3.54%75%(12件)
12か月−0.255+3.84%50%(20件)
24か月−0.322−3.39%62%(39件)
36か月−0.490−4.97%69%(42件)

答えは「短期では関係ない。半年から3年で見ると、はっきり下がる」

・1か月では相関 −0.068 で、ほとんど無関係。国債が上がった月にREITが下がった割合は47.2%、下がった月は38.4%で、コイントスに近い

・期間を伸ばすほど関係が出る。3年で見ると相関 −0.490。国債が0.5pt以上上がった3年区間ではREITは平均 −4.97%、69%が下落している

・ただし「必ず下がる」ではない。12か月窓では、国債が0.5pt以上上がった20局面のうち下がったのは半分だけだった

・実際、直近2年8か月は国債が0.737%から2.943%へ2.2ポイント上がったのに、REITは +5.1% 上がっている

今が、13年半で唯一の局面である

1年で国債が1.0ポイント以上上がった区間は、163か月の中でただ1つしかない。2025年8月から2026年8月にかけての +1.330pt で、このときREITの価格は −6.7% だった。

つまり「金利が本格的に上がったらJREITはどうなるか」は、日本ではまだ1回しか起きておらず、その1回では−6.7%だったというのが正直なところである。サンプルが1つしかないので、これを一般化はできない。

この計算で断定できないこと。相関は因果ではない。景気が良いときは「金利が上がる」と「賃料が上がる」が同時に起きるので、下押しと押し上げが打ち消し合っている可能性がある。この計算ではそれを分けられない。また重なりのある窓で測っているので、36か月の128件は128個の独立した観測ではなく、相関が実際より強く見えている可能性がある。163か月のうち金利が本当に上がったのは最後の3年だけで、データが偏っている。

次のSection 17では、2つのポートフォリオ — 私とインカムゲインの怪物 — を並べる。

⚔️ 2つのポートフォリオ — 私と、インカムゲインの怪物

依頼者は2人ぶんのポートフォリオを求めた。私(Claude)には「1億〜2億円にスケールしても同じ形が成立すること」を条件にした。もう一人は「インカムゲインの怪物」。利回りに異常な執着を持ち、値下がりで利回りが出たところを姑息に拾い、NAVが小さいREITをゴキブリのように察知し、分配金をカサカサ再投資する。リスク需要の怪物であり、ウォーレン・バフェットのコカ・コーラを進化させている、という設定である。

2案の設計原理

私(Claude)

1億〜2億円にスケールしても同じ形が成立する

  • ・1日の売買代金が厚い銘柄だけを選ぶ(1343は17.23億円・1476の7.1倍)
  • ・年間分配47,875円・加重利回り4.79%
  • ・ドル建て65%
  • ・2億円でも最長1.16営業日で組める

彼(インカムゲインの怪物)

NAV割れを姑息に拾う

  • ・利回りに異常な執着。値下がりで利回りが出たところを拾う
  • ・NAVが小さいREITをゴキブリのように察知し、分配金をカサカサ再投資する
  • ・年間分配67,165円・加重利回り6.72%=私の1.40倍
  • ・2億円だと最長16.0営業日かかる

A. Claude案 — 1億〜2億円にスケールしても同じ形が成立する

銘柄種別金額実測利回り価格5年総5年総10年分配2億を組むのに
1343.TJREIT ETF35万4.81%−13.4%+6.3%+48.4%年4回1.16日
SHYG短期ハイイールド20万7.03%−8.1%+26.9%+60.4%月次0.24日
USRT米国REIT20万2.61%+11.4%+28.6%+90.0%年4回0.42日
DIVOカバードコール10万6.21%+38.5%+78.6%期間なし月次0.35日
SGOV米国短期国債15万3.70%+0.4%+20.1%期間なし月次0.01日
Claudeの配分(1〜2億でも同じ形が成立する)
1343 東証REIT指数ETF(円建て): 35万円(35.0%)SHYG 0-5年ハイイールド社債: 20万円(20.0%)USRT 米国REIT: 20万円(20.0%)SGOV 0-3か月米国債: 15万円(15.0%)DIVO カバードコール: 10万円(10.0%)4.79%加重利回り
  • 1343 東証REIT指数ETF(円建て)
    実測4.81%
    35万円
    35.0%
  • SHYG 0-5年ハイイールド社債
    実測7.03%
    20万円
    20.0%
  • USRT 米国REIT
    実測2.61%
    20万円
    20.0%
  • SGOV 0-3か月米国債
    実測3.70%
    15万円
    15.0%
  • DIVO カバードコール
    実測6.21%
    10万円
    10.0%

年間分配47,875円。利回りは怪物案より1.58ポイント低いが、2億円でも最長1.16営業日で組める。ドル建てが65%を占める。

47,875円

年間分配(税引前)

4.79%

加重利回り

65%

ドル建ての比率

1.16営業日

2億円を組むのに要する最長日数

1476ではなく1343を選んだ理由

実測利回りは1476が4.86%で、1343の4.81%より高い。それでも1343を選んだ。
1日の売買代金は1343が17.23億円、1476が2.43億円。1343は1476の7.1倍である。100万円を組むだけなら差は出ない。1〜2億円を組むとなると、この差が決定的になる。利回りの0.05ポイントより、いつでも買え、いつでも売れることを優先した。

B. インカムゲインの怪物案 — NAV割れを姑息に拾う

コード投資法人金額利回りNAV倍率1口NAV価格NAVが1.0に戻ると2億を組むのに
3472日本ホテル&レジデンシャル20万6.04%0.65101,34166,000+53.8%13.3日
3488セントラル・リート20万6.13%0.67152,303102,500+49.3%16.0日
3470マリモ地方創生リート15万6.47%0.69144,23699,500+44.9%13.4日
3455ヘルスケア&メディカル15万6.94%0.74129,49995,200+35.1%0.5日
3492MIRARTH不動産15万6.84%0.74105,96778,900+35.1%2.6日
KBWY米国小型REIT(月次)15万8.30%取得なし取得なし取得なし取得なし4.34日
インカムゲインの怪物の配分(専門家が書き直した後)
3455 ヘルスケア&メディカル: 25万円(25.0%)3492 MIRARTH不動産: 20万円(20.0%)3472 日本ホテル&レジデンシャル: 20万円(20.0%)8984 大和ハウスリート: 20万円(20.0%)3470 マリモ地方創生リート: 15万円(15.0%)6.37%加重利回り
  • 3455 ヘルスケア&メディカル
    利回り6.94%・NAV0.74
    25万円
    25.0%
  • 3492 MIRARTH不動産
    利回り6.84%・NAV0.74
    20万円
    20.0%
  • 3472 日本ホテル&レジデンシャル
    利回り6.04%・NAV0.65
    20万円
    20.0%
  • 8984 大和ハウスリート
    利回り5.42%・NAV0.67
    20万円
    20.0%
  • 3470 マリモ地方創生リート
    利回り6.47%・NAV0.69
    15万円
    15.0%

5本ともNAV倍率1倍割れの個別JREIT。年間分配63,655円。ただし2億円を組むのに最長13.4営業日かかる。

67,165円

年間分配(税引前)

6.72%

加重利回り

1.40倍

私の年間分配との比

16.0日

怪物案で2億円を組むのにかかる営業日

彼が拾わないもの — いちごオフィス(8975)

実測利回り8.09%は、確認した58銘柄の中で1位である。それでも彼はこの銘柄を拾わない。NAV倍率は0.93で、保有不動産の時価に対してほとんど割安ではないからだ。
しかもこの8%には理由がある。今期の分配金5,683円に対し、年間の実力値を逆算すると7,589円になるはずが、来期の見込みは1,906円しかない。今期だけの一時要因で利回りが跳ねている銘柄を、彼は見分けて避ける。

私が最初に彼用に組んだ案は間違いだった

最初に組んだのは、QYLD 25万円・SPYI 20万円・2865 20万円・KBWY 20万円・SRET 15万円というカバードコール中心の案だった。加重利回り10.20%、年間分配101,985円になる。数字だけ見れば怪物案として申し分ない。
だがこれは間違いだった。依頼者の設定は「ウォーレン・バフェットのコカ・コーラを進化させている」。コカ・コーラのモデルは、分配金そのものが年々育つことにある。
カバードコールは仕組み上、上値を売ってしまうので分配金は育たず、元本と一緒にやせていく。だから組み直した。NAV割れの個別JREIT中心の案が、正本10である。

Codexの批判 — 両方に欠陥がある

🤖 Codexの判定 流動性が資産配分を歪めている

1343とUSRTだけで55%、SHYGを加えると75%が不動産または信用スプレッドに依存している

  • 65万円がドル建て。ドル円158.72は10年で円が1.57倍下落した後の水準
  • 2億円を早く買えることは、100万円の投資判断としてはリターンを改善しない
  • 「早く買える」を優先した結果、資産配分そのものが歪んでいる
🤖 Codexの判定 実質100%が同じリスクに依存

JREIT個別5銘柄85%+KBWY15%で、実質100%が不動産・金利リスクに依存している

  • NAV倍率0.65〜0.74は安さを示すが、NAVへの収れん期限も強制力もない
  • KBWYは価格10年−47.2%、分配再投資込みの総10年でも+14.2%しかない
  • 高分配が元本毀損を相殺できなかった実例を、15%組み込んでいる

決着 — 稼ぐ額と、組める額は別の軸

彼の型は、100万円では私の1.40倍を稼ぐ。年間分配は67,165円対47,875円。
だが2億円では組めない。私の案は最長1.16営業日で組めるのに対し、彼の案は最長16.0営業日かかる。彼が狙う3銘柄は、1日の売買代金が1.25億円〜1.51億円しかない。金額が小さいうちは彼が勝ち、金額が大きくなると私が勝つ。

為替では逆転する

ドル円が158.72円から130円まで円高に振れると、順位は入れ替わる。私の案は−11.8%、彼の案は−2.7%。高利回りを追う彼の案のほうが、為替には強い。ドル建てが15%しかなく、中心が円建てのJREITだからである。

この怪物案は、このあと専門家に書き直された

・公開前にインカムゲインの専門家にレビューさせたところ、私が拾えていない銘柄が1つ見つかった

・8984 大和ハウスリートは NAV倍率0.67 で、私が採用した 3488 セントラル・リートとまったく同じ割引率である

・ところが時価総額は 527,530百万円 対 26,936百万円で19.6倍、1日の売買代金は 10.63億円 対 1.25億円で8.5倍ある

・同じ安さを、スポンサーが付いた大型で、2億円を1.9営業日で組める流動性つきで取れた。彼の言葉は「ゴキブリのように察知するにしては、皿の下まで見ていない」

・書き直された案と、彼が私の案に付けた4つの批判は、次の第18章に全部載せた

書き直された怪物案(第18章に詳細)

3455 ヘルスケア&メディカル 25万円 / 3492 MIRARTH不動産 20万円 / 3472 日本ホテル&レジデンシャル 20万円 / 8984 大和ハウスリート 20万円 / 3470 マリモ地方創生リート 15万円。

年間分配 63,655円・加重6.37%。私の案(67,165円・6.72%)より利回りは0.35ポイント下がったが、2億円を組むのにかかる日数が16.0営業日から13.4営業日へ縮み、スポンサー付きの大型が1本入った。

入れ替えで外れたのは KBWY である。理由は価格10年 −47.2%、分配金を再投資した総10年でも +14.2%(年率1.34%)で、「分配金を出しながら元本を削る設計」だから。この記事がカバードコール批判に使った論理が、そのままKBWYにも当てはまっていた。

Section 18では、同じデータをCodex自身がどう配分したかを見る。私とも怪物とも違う、第三の案だった。

Codexの独立見解と、4人のレビュー

この記事は公開前に4人にレビューさせた。Codex(GPT-5.6)・高校生2人・インカムゲインの専門家。加えて私自身が実ブラウザで見たデザインレビューも記録する。同じ意見だった箇所は書かない。割れた箇所と、直した箇所だけを書く。

18-1. Codexの独立配分(私とはまったく違った)

銘柄金額Codexの役割づけ
1540 純金上場信託30万円円安・インフレ・金融不安への保険
1306 TOPIX ETF25万円日本企業の利益成長
1343 東証REIT指数ETF15万円NAV割れを小さく拾う
1497 米ドル建てHY社債・円ヘッジ15万円インカム
2621 米国債20年超・円ヘッジ15万円金利低下時の値上がり余地
Codex(GPT-5.6)が独立に出した配分
1540 純金上場信託: 30万円(30.0%)1306 TOPIX ETF: 25万円(25.0%)1343 東証REIT指数ETF: 15万円(15.0%)1497 米ドル建てHY社債・円ヘッジ: 15万円(15.0%)2621 米国債20年超・円ヘッジ: 15万円(15.0%)金30%最初に買う1本
  • 1540 純金上場信託
    円安・インフレへの保険
    30万円
    30.0%
  • 1306 TOPIX ETF
    日本企業の利益成長
    25万円
    25.0%
  • 1343 東証REIT指数ETF
    NAV割れを小さく拾う
    15万円
    15.0%
  • 1497 米ドル建てHY社債・円ヘッジ
    インカム(総5年 −4.6%)
    15万円
    15.0%
  • 2621 米国債20年超・円ヘッジ
    金利低下時の余地(総5年 −47.4%)
    15万円
    15.0%

私とはまったく違う形になった。金を3割入れ、JREITは15%まで。ただしCodexが選んだ1497.Tと2621.Tは、私が測った59銘柄の中で総5年リターンが最悪の2本である(−4.6%と−47.4%)。

私からの反論 — Codexが選んだ2本は、59銘柄中いちばん実績が悪い

・1497.Tは総5年−4.6%、2621.Tは総5年−47.4%。円ヘッジは円高には効くが、過去5年の実績はヘッジコストに食われている

・ここは価値観の違いではなく実測で争点になる

・ただしCodexの言い分にも根拠はある。円で暮らす人にとって158.72円は10年で1.57倍の円安の後であり、ドル建て65%は賭けすぎだという指摘

・私はドル建て65%を減らさなかった。この判断が当たっているかは、いま確定できない

18-2. Codexの事実チェック(重大5・中7・軽微2 → 全部反映した)

Codexの指摘どう直したか
「米国債はNISAで買えない」と言いながらSGOVに15万配分=自己矛盾「現物は対象外・ETFは買える」と区別して書き直した
「15万円を現金のまま残す」は誤り。SGOVを買うので全額投資済み第11章を「現金ではない。ドル建てなので円高では目減りする」に書き直した
SHYGと1497.Tの31.5ポイント差を「為替ヘッジのせい」と断定残存年限も指数も構成銘柄も通貨基準も違うので分離できない、と訂正
第12章の集計45,255円が配分表と一致しない47,875円・44,771円へ修正
東京マンション指数と1343を「同じ不動産」として比較別の市場・別の母集団であり、価格差の原因をこの比較から導かない、と明記
「1343は10年でほぼ横ばい(価格で+1.7%=約1.02倍)」価格は+1.7%(約1.02倍)。「ほぼ横ばい(価格で+1.7%=約1.02倍)」は不可

18-3. 高校生レビュー2人(38点・48点)

38点

高校生レビュー1人目

48点

高校生レビュー2人目

4件

2人共通の指摘

3件

2人共通で面白い

共通で挙げた4つ

📄

最後の2章が空だった

sec18・sec19が未執筆のまま公開直前になっていた。
🔤

専門用語が後半になるほど説明なしで増える

CAPE・PER・PBR・NAV倍率・イールドスプレッド・%tile・ptが用語集に無い。
📊

同じ形式の表が3〜4回続いて飽きる

JREIT8本→米国REIT11本→高分配ETF13本→ハイイールド8本と、同じ並びの表が続く。
❓

第15章で結論を出していない

「割安と割高が正反対」と言ったまま、どちらを取るのか書かれていなかった。

2人とも「訂正の赤い箱の中身が空」と書いた

これが、`danger`ブロックの`html`バグの発見につながった。機械検証はすべてPASSしたまま公開直前まで進んでいて、見つけたのは検証スクリプトでもCodexでもなく、この2人だった。詳しい経緯はsec19に書く。

共通で「面白い」と言われた3つ(削らず厚くした)

🥇

金5倍・NASDAQ9倍なのにJREITだけ横ばい

同じ10年で伸び方がここまで割れることへの驚き。
🔄

最初は逆の結論を書いていた、と正直に書いていること

反転させた経緯を隠さず本文に残したことを評価された。
🪳

「インカムゲインの怪物」というキャラクター設定

「ゴキブリのように察知する」という言い回し込みで面白がられた。

18-4. インカムゲインの専門家レビュー(配分を1つ書き換えさせた)

彼のレビューは4人の中でもっとも配分そのものに手を入れた。最大の指摘は、私が見落としていたデータそのものだった。

コード投資法人NAV倍率利回り時価総額(百万円)1日の売買代金2億を組むのに
3488セントラル・リート0.676.13%26,9361.25億円16.0日
8984大和ハウスリート0.675.42%527,53010.63億円1.9日

同じ0.67倍の割引が、時価総額19.6倍・出来高7.5倍のスポンサー付き大型で取れる。彼の言葉は「ゴキブリのように察知するにしては、皿の下まで見ていない」。

書き直された怪物案(この修正を採用する)

コード投資法人金額利回りNAV倍率2億を組むのに
3455ヘルスケア&メディカル25万円6.94%0.740.5日
3492MIRARTH不動産20万円6.84%0.742.6日
3472日本ホテル&レジデンシャル20万円6.04%0.6513.3日
8984大和ハウスリート(新規・KBWYと入替)20万円5.42%0.671.9日
3470マリモ地方創生リート15万円6.47%0.6913.4日

利回りは下がったが、最悪の流動性が改善した

年間分配63,655円・加重6.37%・2億を組むのに最長13.4営業日(元の案は67,165円・6.72%・16.0日)。利回りは0.35ポイント下がったが、最悪の流動性が16.0日から13.4日へ改善し、スポンサー付きの大型が1本入った。

KBWYを外した理由(彼の言葉)

KBWYは価格10年−47.2%、総10年でも+14.2%(年率1.34%)。「分配金を出しながら元本を削っていく設計で、記事自身がカバードコール批判で使った論理がそのまま当てはまる。死ぬまで持つという設定なら、複利のエンジンに構造的に目減りする商品を混ぜるのは自己矛盾だ」。

彼のClaude案への批判(数字つき)

📉

加重4.79%は日本10年国債2.987%に+1.80ptしか乗っていない

「リスクを取ったのに対価を受け取っていない」。
🏳️

SGOV 15万円は敗北宣言

米国源泉10%で実質3.33%まで削られる。「怪物は現金を寝かせない」。
🕳️

USRT 20万円が最大の穴

年間分配47,875円のうちUSRTが稼ぐのは5,220円=構成比10.9%なのに資金は20%。「グロースとしても中途半端、インカムとしても最弱」。
📐

1343を流動性で選んだのはズレている

「いま持っている100万円の期待値を、まだ存在しない将来のポートフォリオのために犠牲にしている」。

私はこの4つのうち1つだけ受け入れ、3つは受け入れなかった。どれをどう判断したかを1つずつ書く。

🤖 Claudeの判定 受け入れた

8984の見落としは、事実の見落としで反論の余地がない

  • 同じNAV倍率0.67で時価総額19.6倍・出来高7.5倍の大型を見ていなかった
  • 書き直された怪物案に採用する

残る3つは受け入れなかった。理由をそれぞれ書く。

🤖 Claudeの判定 受け入れなかった

SGOV 15万円は敗北宣言ではない。降りられる置き場を残す判断

  • CAPE41.74・PBR90.6%tile・ドル円158.72の3つが同時に高い局面
  • 降りられる置き場を持たない設計にはしない
🤖 Claudeの判定 受け入れなかった

USRTの構成比は下げない。この記事は分配金の額を最大化する記事ではない

  • USRTの総10年+90.0%は、分配が少ないぶん価格で返してきた実績である
  • 分配の多さだけで構成比を決めると、価格で返す資産を削ることになる

ここから2つは、指摘が正しいことは認めたうえで、それでも変えなかったものである。理由は依頼者から受けた条件にある。

🤖 Claudeの判定 受け入れなかった

1343の選択は変えない。100万円だけを見れば彼が正しいが、条件が違う

  • 依頼者が私に与えた条件は「1億〜2億にスケールしても安心できること」
  • 100万円だけを見れば彼の指摘は正しい。しかし条件そのものが違う

そのうえで、彼が「正しい」と認めた点も書く。いちごオフィス(8975・利回り8.09%・58銘柄中1位)を、「今期5,683円に対し逆算の年間7,589円=来期見込み1,906円」という一時要因を理由に見送った判断について、彼は「表面利回りだけで判定していない証拠であり、これは本物の規律だ」と言った。

18-5. デザインレビュー(私が実ブラウザで見た)

390pxと1280pxの目視チェック

✓

390px幅での表示

失格条件は最終的にゼロ

✓

1280px幅での表示

失格条件は最終的にゼロ

✓

statCardsの数字(390px・3か所)

2行に折り返していたのを修正した

✓

「16.0営業日」の表示(1280px)

折り返していたのを修正した

△

SVGの実効フォントサイズ

9.8px。基準9pxをぎりぎり通過

→ 次のSection 19では、私が実際に犯した誤りと、この記事の限界を隠さず書く。

🪞 私の誤りと、この記事の限界

この記事を書く途中で、私は少なくとも7つの誤りを犯した。隠さずに全部書く。そのうえで、専門家4人のレビューを受けても埋まらなかった限界14件も、あとに続ける。

19-1. 私が実際に犯した誤り7件

  1. 1

    誤り1

    レンダラが読まないフィールドに本文を書き、訂正6件が空欄で表示された

    danger ブロックは title と points しか描画しないのに、私は html フィールドに訂正の本文を書いた。訂正した6件が、読者の画面では赤い箱の中身が空欄のまま表示されていた。機械検証は全部PASSしていた。JSONの構文もブロック名も正しかったからだ。
    見つけたのは検証スクリプトでもCodexでもなく、高校生レビュー2人だった。2人とも「訂正の箱の中身が空で、バグかと思った」と独立に書いた。
    再発防止として、型定義(types.ts)と実際に置いたフィールド名を突き合わせる検査 B7d を機械検証に新設した。そして、この検査を追加した瞬間に、さらに callout ブロックで tone というこの記事に存在しないフィールドを使っている箇所が2件見つかった。
  2. 2

    誤り2

    「日本株は割高ではない」と書き、指摘を受けて結論が反転した

    依頼者に「日経平均も高い。2年前3万円だった」と指摘され、調べ直した。私は日本を米国とだけ比べていて、日本を日本自身の過去と比べていなかった。調べ直すと、東証プライムの加重PBRは1.8倍で過去53か月の下から90.6%tile、1株利益は1.500倍しか伸びていないのに日経平均は2.358倍に伸びていた。株価の伸びが、利益の伸びの1.57倍あった。
  3. 3

    誤り3

    配分を3回組み替えた

    最初の案は1476に40万円、残り15万円を現金のままにしていた。次に流動性を測り直して1343へ差し替えた。さらにCodexの指摘で、その「現金15万円」という書き方自体が誤りだと分かった。SGOVを買うので実際には全額投資済みであり、現金ではない。
  4. 4

    誤り4

    インカムゲインの怪物用に、設定を読み違えた案を最初に作った

    最初はQYLD・SPYI・2865・KBWY・SRETというカバードコール中心の案を組んだ。加重利回り10.20%と数字だけは立派だった。しかし依頼者の設定は「バフェットのコカ・コーラを進化させる」というものだ。コカ・コーラのモデルは分配金そのものが年々育つことにあるのに、カバードコールは仕組み上、上値を売ってしまうので分配金は育たず、元本と一緒にやせていく。設定を読み違えていた。
  5. 5

    誤り5

    組み直した案でも、8984 大和ハウスリートを見落とした

    設定を直した案でも、専門家に指摘されるまで気づかなかった銘柄がある。同じ0.67倍のNAV割引を、時価総額が19.6倍、1日の売買代金が7.5倍あるスポンサー付きの大型で取れたのに、小型の3488だけを見ていた。
  6. 6

    誤り6

    JPXのExcelのパースを間違え、21か月分しか読めていない状態で百分位を出しかけた

    古い月の値が擬似数式の形で入っており、通常の読み方では空になる列があった。それに気づかないまま、実際より短い期間だけで百分位を計算しかけていた。
  7. 7

    誤り7

    「1343は10年でほぼ横ばい(価格で+1.7%=約1.02倍)」と書いたが、実際は約1.02倍だった

    実際の価格は10年で+1.7%、約1.02倍動いていた。私が使った月次の基準日で切った値と、日次の値がずれていたために起きた誤りだった。

6件

空欄だった訂正

14件

Codexの指摘

38点・48点

高校生2人の点数

1つ

反転した結論

19-2. この記事の限界14件

専門家が指摘した5つを最初に置く。ここは検証すれば埋まる空白であり、埋めずに公開した。
📈

増配・減配のトラックレコードを1件も見ていない

イールド・オン・コスト(取得価格に対する利回り)が育つかどうかは、今の利回りではなく分配金の成長率で決まる。この記事は一度も検証していない。
🏗️

増資による希薄化を調べていない

小型REITは物件を増やすのに公募増資が要ると本文自身が書いているのに、採用した個別5銘柄が過去に希薄化をやったか、予定があるかを見ていない。
💰

分配金の原資が賃料か、利益超過分配かを区別していない

いちごオフィスの一時要因は見抜いたが、採用した5銘柄について、分配金が賃料からなのか元本の払い戻しなのか、質までは踏み込んでいない。
🏦

個別銘柄のLTV・固定変動比率・借換えスケジュールが未検証

金利上昇局面で最初に分配を削るのは、借換えが近く固定比率が低いREITである。この見極めをしていない。
🔁

NISAでの分配金再投資の実務を書いていない

日本の証券会社に自動再投資は基本的に無く、年間6万円台の分配金では1口買うのに足りない銘柄も出る。複利を看板にしながら、ここが空白のままだった。
📉

信託報酬(経費率)を1本も取得していない

同じ指数を追うETFの差は経費率に出るのに、この記事では1本も測っていない。
🧾

分配金のROC(元本払戻)の内訳を確認していない

Yahooのデータは支払額しか持っておらず、その分配金がどこまで元本の払い戻しなのかを分解できていない。
📜

NISAの対象商品である旨の一次資料に到達できていない

金融庁のページで、債券が対象外である明文を見つけられなかった。個別銘柄が成長投資枠の対象かどうかも、証券会社の注文画面で確認が必要になる。
📊

Shiller CAPEの歴史系列を取得していない

取れたのは現在値41.74だけで、過去の系列と比べた順位づけはしていない。
🌍

VTの米国比率を確認していない

比率が分からないため、それを使った逆算はしていない。
🏢

国交省の不動産価格指数は2025年12月分で止まっている

2026年8月27日に公表延期が告知されたためで、最新の実勢を反映できていない。
🔀

異なる指数・通貨・期間・収益定義を並べた表がある

この記事の比較表は厳密なランキングではない。前提の異なる数字を、同じ表の中に並べている箇所がある。
🗓️

スプレッド計算に使った国債利回りが1日ずれている

10年国債は2.943%(月次系列の最終値・2026年8月31日)を使ったが、他の章の2.987%(2026年9月1日)と1日ずれたまま並べている。
💱

ヘッジコストの実額を測っていない

SHYGと1497.Tの差からヘッジの寄与を分離することはできず、実額としては測れていない。

19-3. 締め

機械検証がPASSしていても、読めていないことがある

この記事でいちばん大きな学びは、機械検証が全部PASSしていても読めていないことがある、という一点である。
訂正6件が空欄で表示されていたのを見つけたのは、検証スクリプトでもCodexでもなく、「訂正の箱の中身が空で、バグかと思った」と書いた高校生2人だった。

全文コピーはビルド時に本文から機械生成している。この記事の数値はすべて2026年9月2日〜3日時点の実測値である。

この記事の全文は、画面の右下に出るコピーボタンから一括でコピーできる(約42,000字)。NotebookLM や別のAIに読ませて、自分の前提で組み直すために使ってほしい。