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🏦 資産運用に特化した法人を100万円で作り、1億円まで育てる設計

本業の会社が別にある人が、資産運用だけをする法人をもう1つ作る。資本金100万円、投資先は海外REIT、目標は1億円規模。この記事は2部構成である。A部(第2〜5章)は「100万円で何をするか」——登録免許税6万円、維持費バッファ35万円、最初の建玉59万円という円単位の内訳と、年間固定費を7万円に抑える条件。B部(第6〜14章)は「1億円を非属人で運用する設計」——東証に5本しかない海外REIT ETFからの確定配分、NAV倍率での買い付け判断、統治と出口。税では個人が有利であることは条文で確認したうえで認め、それでも法人にする理由を税から切り離した。判断を専門家に投げず、全部決めて書いた。

🎯 結論 — 100万円は何に消えて、何に化けるのか

このセクションの3点

① 100万円の内訳は、登録免許税6万円・維持費バッファ5年分35万円・最初の建玉59万円。合同会社なら定款認証はいらないので、器そのものを作る費用は6万円で済む

② 年間の固定費は7万円(法人住民税の均等割)だけにできる。条件は役員報酬をゼロにすること。報酬を出すと社会保険が発生して年36.7万円になり、100万円は2.5年で尽きる

③ 税では個人が有利である。それは事実として認めたうえで、この法人を作る理由を税から切り離す。均等割の年7万円は、節税の対価ではなく「本業と切り離した器」を持つための年会費である

6万円

合同会社の設立実費(登録免許税)

年7万円

維持費(役員報酬ゼロの場合)

約13年

100万円で維持できる年数

5本

東証に上場する海外REIT ETFの数

この記事は2部構成である。A部(第2〜5章)は「100万円で何をするか」B部(第6〜14章)は「1億円を非属人で運用する設計」を扱う。この2つは目的も、時間の尺度も、抱える課題も違う。混ぜて書くと、どちらの答えにもならない。

100万円の使途 — 円単位の内訳

資本金100万円を、次のように割り当てる。これが本記事の主たる回答である。

費目金額根拠・考え方
登録免許税(設立登記)60,000円資本金×0.7%と6万円のいずれか高い方。資本金100万円なら7,000円より6万円が上回るので6万円(登録免許税法別表第一)
定款認証手数料0円合同会社は定款認証そのものが不要(日本公証人連合会)。株式会社なら3〜5万円かかる
維持費バッファ(5年分)350,000円法人住民税の均等割 年70,000円 × 5年。分配金が積み上がるまでの間、相場が下がっていても売らずに済むようにする
最初の建玉(海外REIT ETF)590,000円残りの全額。銘柄は2515の1本に絞る(第3章)
合計1,000,000円

この表には法人実印の作成費と、登記事項証明書・印鑑証明書の取得手数料が入っていない。一次情報で金額を確認できなかったため、推測値を書かずに計上を見送った。実際にはこの分だけ建玉に回せる額が減る。金額の桁は数千円から1万円程度と見込まれるが、本記事では断定しない。

年間の維持費は7万円。ただし条件がひとつある

この設計が成立するかどうかは、役員報酬をゼロにできるかの一点で決まる。ゼロにすれば社会保険の被保険者にならず、固定費は均等割の年7万円だけになる。報酬を出せば最低等級でも社会保険が年約29.7万円発生し、固定費は年36.7万円に跳ね上がる。

年間の固定費 — 役員報酬の有無で5倍以上変わる
役員報酬ゼロ(均等割のみ)
7万円

年7万円 → 100万円で約13年もつ

役員報酬あり(均等割+社会保険)
36.7万円

年36.7万円 → 100万円で約2.5年

出典: 東京都主税局(均等割・資本金1,000万円以下・従業者50人以下の年額70,000円)/社会保険料は別途試算(標準報酬月額88,000円=最低等級)。取得日2026年8月9日

この設計は役員報酬ゼロを前提にして初めて成立する

100万円で法人を作って維持するという設計は、役員報酬ゼロを前提にして初めて成立する。報酬を出す設計に変えた瞬間、100万円は「13年もつ器」から「2.5年で尽きる器」に変わる。根拠と、そのために必要な条件(設立時から恒常的に無報酬であること)は第4章で条文と通知を引いて示す。

A部とB部は何が違うのか

A部 — 100万円(2027年)B部 — 1億円(10年以上)
目的器を作り、一周回ることを確かめる入金を積み、人が抜けても回る状態にする
扱う金額100万円1億円規模
主な支出登録免許税6万円+均等割 年7万円入金額そのものと、信託報酬(年0.17%)
最大の課題金額が小さすぎて運用にならない属人性が抜けない/出口で課税される
成功の判定1期の決算を自分で締められたか自分が抜けても配分が維持されるか
判定に使わないものいくら増えたか単年の騰落率
本記事の該当章第2〜5章第6〜14章

A部の成功は金額では測らない。59万円が年4%で回っても年2.3万円である。これは儲けるための金額ではなく、注文・約定・分配金の入金・決算での計上までが一通り回ることを確かめるための金額だからだ。ここを取り違えると、A部で「増えなかった」という理由でB部に進めなくなる。

税では個人が有利である — これを認めたうえで法人を作る

この設計にあたって、依頼者自身がこう指摘している。「トレードは金融所得課税が一律だから、マイクロ法人でやる理由がない」。この指摘は税務上そのとおりである。本記事はこれを否定しない。

論点個人法人(合同会社)
運用益・分配金への課税申告分離課税 20.315%法人税15%(年800万円以下)/23.2% + 住民税・事業税
海外REIT ETFの分配金の益金不算入対象外。全額が益金になる(法人税法23条1項の各号に該当しない)
J-REIT現物の分配金の益金不算入対象になるが、保有割合が小さければ益金不算入は20%相当額のみ
赤字でも出ていく固定費0円均等割 年70,000円
損失の繰越上場株式等の範囲内で3年欠損金を10年繰越(中小法人)

法人にすると税が軽くなる、という話ではない。むしろ重くなる。それでも法人を作るのは、税ではない4つの理由による。①本業の会社が無くなったときの社会的信用の受け皿になること ②個人名義で数億を持つことで生じる親族からの要求を遮断すること ③資産をいくら持っているかを外から見られないようにすること ④器を作ること自体が目的として成立していること。均等割の年7万円は、この4つを買うための年会費である。

③については、合同会社なら決算公告の義務がないことが効く。株式会社は毎年の決算を公告する義務を負うが、合同会社にはその規定がない。そのかわり代表社員の住所は登記に出る——2024年10月に始まった住所非表示の措置は株式会社だけが対象で、合同会社には使えない。この交換条件をどう判断したかは第2章で書く。

→ 次の第2章では、会社形態・資本金・所有者・役員報酬を、理由とともに1つずつ確定させる。

🔑 器を確定させる — 合同会社・資本金・所有者・本店

このセクションの3点

① 会社形態は合同会社にする。理由は決算公告が不要で財務内容が外から見えないこと。代わりに代表社員の住所は登記に出る(非表示措置の対象外)という代償を払う

② 資本金は100万円、所有者は個人100%、役員報酬はゼロ、決算期は本業法人と別月、事業目的は自己資金の有価証券保有・運用に限定する

③ 役員報酬を恒常的にゼロにすれば社会保険料は発生しない。ただし「今年だけゼロ」は通らない。設立時から恒常的な無報酬である必要がある

項目私の決定そう決めた理由
会社形態合同会社決算公告が不要で財務内容が外から見えない。代わりに代表社員の住所は登記に出るが、これは払う代償として下で詳述する
資本金100万円(1,000万円を超えない)法人住民税の均等割を最低区分(年7万円)に維持するため。1,000万円を超えると年18万円に上がる
所有者個人が100%(本業法人に持たせない)目的が「本業が無くなった時の受け皿」である以上、本業法人に持たせては目的と矛盾する
役員報酬ゼロ(設立時から恒常的に)年間固定費が7万円になり、100万円で13年もつ。報酬を出すと37万円・2.5年に縮む
決算期本業法人と別の月申告作業が本業法人と重ならないようにするため
事業目的自己資金による有価証券の保有・運用に限る他人から資金を集めない=金融商品取引法の登録が必要な側に入らないため

合同会社 vs 株式会社 — 何が見えて、何が見えないか

「資産をいくら持っているかを見られたくない」という目的に対して、合同会社と株式会社では見え方の質が違う。決算公告の義務と、代表者住所の登記上の扱いが逆転している。

項目合同会社株式会社
決算公告の義務不要(会社法6章に持分会社を対象とする規定が無い)義務あり(会社法440条1項・怠ると100万円以下の過料)
代表者の住所の登記上の扱い登記に出る(住所非表示措置の対象外)非表示にできる(商業登記規則31条の3第1項・令和6年10月1日施行)
設立実費(最低)約6万円約18万円(合同会社の約3倍)
役員・社員の任期による重任登記条文上の期間制限規定なし(発生しない)非公開会社は最長10年で定款設定可。10年ごとに重任登記が発生しうる

出典: e-Gov法令検索 会社法440条・911条3項・914条・332条1項2項、法務省「代表取締役等住所非表示措置について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html。取得日2026年8月9日。

私の決定は合同会社。理由はこの5つ

1. 依頼者の目的の核は「資産をいくら持っているかを見られたくない」であって、住所ではない。金額に直撃するのは決算公告のほうであり、合同会社ならそれが不要になる。

2. 誰でも無料で検索できるのは法人番号公表サイトの商号・本店所在地・法人番号の3つだけ。代表者の住所は登記事項証明書を取得しないと見えず、そもそも商号を知らなければ辿り着けない。

3. 株式会社にすると設立実費が約3倍(6万円→18万円)になり、10年ごとに重任登記の手間とコストが発生する。

4. 住所非表示措置は住所を変えるたびに再度申し出が必要な手続きで、忘れれば新住所がそのまま出る。手続きが属人的であり、この法人を「本業が無くなっても回る非属人の受け皿」にするという目的と矛盾する。

5. 法務省自身が非表示措置には「融資・不動産取引で不都合が生じ得る」という代償があると注意している。株式会社を選んでもタダで住所を隠せるわけではない。

法務省の原文(住所非表示措置について): 「金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類が増えたりするなど、一定の影響が生じることが想定されます」

払う代償を隠さず書く。合同会社を選ぶ以上、代表社員の住所は登記に出る。これは避けられない。その代わりに、より直撃度の高い決算公告を消す。

役員報酬ゼロと社会保険 — 通る条件と通らない条件

役員報酬をゼロにすれば社会保険料はゼロになる。ただし「今年だけ」は通らない

出典: 日本年金機構「疑義照会回答(厚生年金保険 適用)」同PDF。取得日2026年8月9日。

原文(昭和24年7月28日保発第74号): 「役員であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする」

判断基準(昭和27年12月4日保文発第7241号ほか): 「法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準として判断されたい」

ただし同じPDFには、次の注意も書かれている: 「経営状況に応じて、給料を下げる例は多く、このような場合は今後支払われる見込みがあり、一時的であると考えられるため、低報酬金額をもって資格喪失させることは妥当でない」

「今年だけゼロ」は通らない。設立時から恒常的に無報酬である必要がある。途中から報酬を止める運用は、この法人には向かない。

→ 次の第3章では、設立実費を引いた残りの金をどこに置くかを決める。

🪙 残った金をどこに置くか — 最初の建玉

このセクションの3点

① 資本金100万円から設立実費・維持費バッファを引くと、最初の建玉に回せるのは約58万円

② 銘柄は2515(NEXT FUNDS 外国REIT・S&P先進国REIT指数・除く日本・為替ヘッジなし)1本にする。東証上場の海外REIT ETFは5本しかなく、その中で最も分散が広く信託報酬が最安

③ A部の目的は運用益ではない。58万円が年4%でも年2.3万円にしかならない。目的は注文・約定・分配金の入金・決算での計上までが一通り回ることを確かめること

残り約93万円から、さらに維持費バッファを引く

項目金額内訳・理由
資本金100万円第2章の決定2
設立実費約6万円登録免許税(最低6万円)。合同会社は定款認証が不要
印鑑・登記事項証明書等約1万円印鑑作成・印鑑証明書・登記事項証明書の取得実費
設立後の残り約93万円100万円 − 6万円 − 1万円
維持費バッファ(年7万円×5年分)35万円分配金が出るまでの期間と、相場が下がった時に売らずに済ませるための待避枠
最初の建玉に回す金額約58万円93万円 − 35万円

私の決定: 維持費バッファは5年分(35万円)を先に確保する

理由は2つ。1つ目は、この法人はまだ分配金による収入が無い状態で年7万円の均等割だけが確実に出ていくこと。2つ目は、建玉を最小にしておけば相場が下がった局面でも生活資金化のために売る必要が無く、規則通りに保有を続けられること。バッファを削って建玉を増やすほど、下落局面で「売らなければ均等割が払えない」という状況に近づく。この法人の目的は運用益の最大化ではなく仕組みを回すことなので、バッファを厚めに取る。

銘柄選定 — 東証上場の海外REIT ETFは5本しかない

出典: JPX 銘柄一覧(ETF)不動産(REIT)カテゴリ https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/issues/01-07.html。取得日2026年8月9日。国内J-REIT連動を除くと、日本以外のREITに連動する東証上場ETFはこの5本のみである。

コード名称連動対象・信託報酬
2515NEXT FUNDS 外国REIT・S&P先進国REIT指数(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み)/信託報酬0.17%以内
1659iシェアーズ 米国リート ETFFTSE Nareit Equity REITsインデックス(円建て)/信託報酬0.20%以内
2018グローバルX US REIT・トップ20 ETFSolactive GPR US REITs Top 20 Index/信託報酬0.375%以内
1555上場インデックスファンド豪州リートS&P/ASX200 A-REIT指数/信託報酬0.45%程度
1495上場インデックスファンドアジアリートFTSE EPRA/Nareitアジア(除く日本)リート10%キャップ指数/信託報酬0.65%程度

私の決定: 最初の建玉は2515を1本だけにする

理由は2つ。1つ目は、5本の中で2515が最も広く分散しており(先進国十数か国のREITを内包)、信託報酬も最安の0.17%以内であること。2つ目は、金額がまだ小さいうちは分散よりも「注文から決算計上までの手順が実際に回ること」を確かめるほうが優先だということ。58万円を複数銘柄に分けても1銘柄あたりの金額が小さくなるだけで、確認の質は上がらない。

採らない理由: 1659は米国という1地域への集中、2018はさらに米国内20銘柄への集中、1555は豪州1国への集中で、いずれも2515より分散が狭い。1495は分散はアジアに広がるが信託報酬0.65%が5本中最も高く、比率は上げない(第2章の決定7・ポートフォリオの本体設計は第4章で扱う)。

A部の目的は運用益ではない

58万円が年4%で運用できても年2.3万円にしかならない。この金額は儲けるためのものではない。注文・約定・分配金の入金・決算での計上までが一通り回ることを確かめるための金額である。金額を大きくするのは、この一通りが実際に回ることを確認してからでよい。

2515の1口価格・純資産総額・分配金利回りは取得できていない。推測値は書かない。実際の発注時に証券会社の画面で確認する。

→ 次の第4章では、この会社を1年維持するのにいくらかかるかを積算する。

💰 年間維持費をいくらにできるか — 7万円か、37万円か

このセクションの3点

① 役員報酬をゼロにすれば年間固定費は約7万円(均等割のみ)。役員報酬を出すと社会保険料が加わり約36.7万円になる

② 100万円で法人を作ると設立実費で約6万円が消え、残り約94万円が固定費に充てられる。役員報酬ゼロなら約13年もつが、報酬を出すと約2.5年で尽きる

③ 「今年だけ無報酬」は日本年金機構の基準上通らない。役員報酬ゼロは設立時から恒常的に続ける前提でなければ成立しない

この記事の設計が「100万円で作って100万円で維持する」を名乗れるかどうかは、この章の数字だけで決まる。結論を先に書く。役員報酬をゼロにすると年間固定費は約7万円に収まり、94万円は約13年もつ。役員報酬を出すと年約36.7万円に跳ね、約2.5年で底をつく。私はこの法人で役員報酬をゼロにする。

項目役員報酬ゼロ役員報酬あり(標準報酬月額88,000円=最低等級)
社会保険料(年・労使合計)0円約297,000円
均等割(年)70,000円70,000円
年間固定費 合計約70,000円約367,000円
設立実費を引いた残94万円が何年もつか約13年約2.5年

出典: 東京都主税局(均等割)、日本年金機構「疑義照会回答(厚生年金保険 適用)」(役員報酬と社会保険の加入基準)。取得日2026年8月9日。標準報酬月額88,000円は健康保険・厚生年金の最低等級。

年間固定費の内訳(万円)
均等割
7万円

年7万円・赤字でも発生

社会保険(報酬ありの場合)
29.7万円

年約29.7万円

合計(役員報酬ゼロ)
7万円

年7万円

合計(役員報酬あり)
36.7万円

年36.7万円

均等割は資本金1,000万円以下・東京23区・従業者50人以下の場合。社会保険は役員報酬を支払う場合(標準報酬月額88,000円)の年額。出典は上表と同じ。

100万円という設計は、役員報酬ゼロを前提にして初めて成立する

100万円で法人を作って何年も維持するという話は、役員報酬を出す前提では成り立たない。約2.5年で固定費が資本金を食いつぶすからだ。この記事が「100万円で作れる」と言えるのは、役員報酬をゼロにする決定とセットのときだけである。私はこの前提を隠さず、役員報酬ゼロを設計の中核に置く。

「今年だけ無報酬」は通らない

役員報酬ゼロで社会保険の加入義務が生じないのは、それが設立時から恒常的な無報酬である場合に限られる。日本年金機構の疑義照会回答は、この境界を次のように示している。

日本年金機構の判断基準(原文引用)

「役員であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする」(昭和24年7月28日保発第74号)

判断基準は「法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるか」(昭和27年12月4日保文発第7241号ほか)。

特に重要な一文: 「経営状況に応じて、給料を下げる例は多く、このような場合は今後支払われる見込みがあり、一時的であると考えられるため、低報酬金額をもって資格喪失させることは妥当でない

出典: 日本年金機構「疑義照会回答(厚生年金保険 適用)」 https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/gigishokai.files/kounen_tekiyou.pdf 取得日2026年8月9日。

私の結論はこうだ。「業績が悪いから今年だけ報酬をゼロにする」というやり方は、この基準では認められない。一時的な減額は「今後支払われる見込みがある」とみなされ、被保険者資格は外れない。だから私は設立の登記の時点で役員報酬をゼロに決め、以後もずっとゼロで通す。「様子を見て後で決める」という選択肢はこの制度上そもそも存在しない。

役員報酬ゼロで失うもの — それでも私はゼロを選ぶ

失うもの内容私の評価
役員報酬を損金にできない報酬自体を出さないので、損金算入という選択肢がそもそも発生しない資産運用法人はETFの保有益・分配金が中心で所得自体が小さい。損金を作れないことの影響は限定的
厚生年金の加入期間・受給額が増えないこの法人の役員としては被保険者にならないため、加入期間が積み上がらない本業の会社で既に厚生年金に加入しているなら、実害はほぼ無い。この法人は年金のための箱ではない
法人から個人へ日常的に金を移す経路が無くなる役員報酬という定期的な資金移動の手段が無くなる出口は配当や退職金など別の経路で扱う。第12章で具体的に決める。日常的な資金移動を諦めることと、法人から一切金を出せないことは同義ではない

3つとも「失って構わない」という評価で一致する。本業がある間、この法人の役割は日常の生活費を稼ぐことではなく、資産を器の中で育てることだからだ。

決算・申告は自分でやるか、税理士に頼むか

項目自分でやる税理士に頼む
向いている取引量年数回のETF買付・入替のみ。仕訳の種類が少ない売買頻度が高い、複数の金融商品や事業を並行して扱う場合
必要な知識法人税申告書・勘定科目・減価償却の基本を自分で学ぶ必要がある税務知識は税理士側が持つため、自分で学ぶ負担は小さい
ミスのリスク申告誤りがあれば加算税・延滞税は自己負担になる税理士が関与することでミスの確率は下がる

私の決定はこうだ。A部の取引は年に数回のETF保有・入替に留まる。仕訳のパターンが少なく、法人税申告書も複雑にならないため、決算・申告は自分で行う。取引の複雑さが増した段階(B部で複数の資産クラスを扱うようになった段階)で、税理士への切り替えを検討する。なお税理士に依頼した場合の費用相場は一次情報を取得できていないため、この記事では金額を書かない。

→ 次の第5章では、100万円という金額そのものが抱える課題を4つ潰す。

🧩 A部の課題と解決 — 100万円という金額が抱える4つの問題

このセクションの3点

① 100万円という金額には「運用にならない」「登録業が要るのでは」「口座が作れないのでは」「初回発注までの手順が見えない」の4つの疑問が付きまとう。この章で全て決着させる

② 登録業の要否は自己資金か他人資金かで決まる。この法人は自己資金のみを扱うため、投資運用業等の登録は不要という整理で進める

③ 法人口座・証券口座の具体的な開設基準は一次情報を取得できていない。だから何もしないのではなく、複数行への並行申込という決まった動き方で対応する

資産運用に特化した法人を100万円で作る、という設計には必ず疑問が挟まる。「そんな少額で運用と呼べるのか」「登録業に該当するのでは」「そもそも口座が作れるのか」。この章はその疑問一つひとつに、私がどう決めてどう動くかを先に書く。

課題なぜ起きるか私の解決
100万円では運用にならない分散も複利も効きにくい金額であるためA部の目的を運用益でなく器の試運転と定義し直す。成功判定は「1期を自分で締められたか」
金融商品取引業の登録が要るのでは「資産運用会社」という名称が登録業者を連想させるため自己資金のみを扱い他人から資金を集めない設計にする。この条件を外さない限り登録は不要
法人口座・証券口座が作れないのでは新設法人・実体の薄い法人は金融機関の審査で警戒されやすいため複数の金融機関に並行して申し込み、事業目的の説明資料を用意しておく
設立から最初の建玉までの手順が見えない設立と証券口座開設が別の手続きで、順序を誤ると発注が遅れるため定款作成から発注までの手順を固定の順序で並べ、その順に進める

課題1: 100万円では運用にならない

100万円をETFに投じても、分散効果も複利の効きも小さい。この指摘は正しい。だから私はA部の目的を「運用益を出すこと」から「器を1期きちんと回せるか試すこと」に置き換える。決算を組み、申告を出し、均等割を払い、翌期の予算を立てる。この一連の動きを自分1人で止めずに回せるかどうかが、A部の成功条件である。

成功の判定基準はこうなる。「いくら増えたか」ではなく「1期を自分で締められたか」。増減は結果であって目的ではない。100万円という金額は、失敗しても本業に影響しない範囲で器を試すための金額であり、最初から資産形成の主戦場として設計していない。主戦場は次章以降のB部(1億円・非属人運用)である。

課題2: 金融商品取引業の登録が要るのではないか

「資産運用会社」という名前を掲げると、金融商品取引業の登録が必要な業者だと誤解されやすい。結論を先に書く。この法人は自己の資金だけを自社で運用する。他人から資金を集めない。この条件を外さない限り、投資運用業等の登録は不要である。

何をするか登録の要否私の対応
自己の資金を自社で運用する不要この法人が行うのはこれだけ。事業目的を「自己資金による有価証券の保有・運用」に限定する
他人から集めた資金を、裁量を委ねられて運用する投資運用業の登録が必要この法人では絶対に行わない。共同出資・預かり運用の依頼は全て断る
分析・助言のみを行い、投資の実行や裁量権を持たない投資助言・代理業で足りるこの法人では行わない(そもそも助言業を営む予定がない)

登録が必要になるのは、他人の資金を預かり、その運用の裁量を委ねられたときである。私はこの法人の定款の事業目的を「自己資金による有価証券の保有・運用」に限定し、共同出資や資金の預かりを一切行わないと決めている(第2章 決定6)。この線を越えない限り、登録業者にはならない。

課題3: 法人口座・証券口座が作れないのではないか

新設の資本金100万円の法人は、実体の薄いペーパーカンパニーと見分けがつきにくく、金融機関の審査で警戒される。ここは正直に書く。SBI・楽天・マネックスなど個別の証券会社・銀行の法人口座の開設基準そのものは、一次情報を取得できていない。だから特定の金融機関名を挙げて「ここなら通る」とは断定しない。

その代わりに、私が実際に取る行動を先に決める。

確認・準備すること理由私の対応
事業目的の説明資料一式金融機関は資金の実態と事業の実在性を確認するため、資産運用目的であることの説明を求めることが多い定款・事業計画・資金の出所(個人資金からの出資であること)を書面にまとめ、申込時にいつでも出せるようにしておく
複数行への並行申込1行に断られてから次を探すと発注までの時間が延びる法人口座・証券口座とも、最初から3〜5行に同時に申し込む
開設基準そのものの一次情報公式サイトに明文化された基準が確認できていないこの記事では特定の金融機関名や基準を断定しない。申込結果が出次第、この章に追記する

私の対応

個別の金融機関の審査基準を事前に読み切ることはできない。だから私は「当てて確認する」動き方を取る。定款・事業計画・資金の出所を書面化した状態で、複数の金融機関に同時に申し込む。1つが通ればそこで法人口座・証券口座を確定させ、通らなければ次の候補に進む。この並行申込という手順自体を、開設基準が分からない状態への私の解決とする。

課題4: 設立から最初の建玉までの手順

設立の手続きと証券口座の開設は別の手続きであり、順序を誤ると発注が遅れる。各段階の所要日数は一次情報を取得できていないため、この記事では日数を書かない。順序と、各段階で何を準備するかだけを固定する。

  1. 1

    STEP 1

    定款の作成

    合同会社の定款を作成する。事業目的は「自己資金による有価証券の保有・運用」に限定して記載する(登録業に該当しない設計を定款の時点で明示するため)。定款認証は合同会社では不要。
  2. 2

    STEP 2

    資本金の払込

    発起人(自分)個人の口座へ資本金100万円を払い込み、払込証明書を作成する。この時点ではまだ法人口座は無いため、個人口座を使う。
  3. 3

    STEP 3

    登記申請

    法務局へ設立登記を申請する。登録免許税は資本金の0.7%と6万円の高い方で、100万円の資本金なら最低額の6万円になる。
  4. 4

    STEP 4

    登記完了・法人番号の取得

    登記が完了すると法人番号が付与される。この番号と登記事項証明書・印鑑証明書が、以降の口座開設で共通して求められる書類になる。
  5. 5

    STEP 5

    法人口座の開設申込

    複数の銀行へ並行して申し込む。定款・登記事項証明書に加え、事業目的の説明資料(課題3で準備したもの)を添える。
  6. 6

    STEP 6

    証券口座の開設申込

    法人口座の開設と並行、または法人口座の確定後に複数の証券会社へ申し込む。開設基準は金融機関ごとに異なるため、法人口座と同様に複数を並行させる。
  7. 7

    STEP 7

    資本金の移動と初回発注

    個人口座に置いていた資本金を法人口座へ移し、証券口座に入金したうえで、決定7で定めた配分(2515を70%・1495を10%・現金20%)に沿って発注する。

この7段階のうち、私が現時点で確定できていないのはSTEP 5・6の所要日数だけである。順序自体は法律上・実務上動かせないため、まずこの順で進め、実際にかかった日数は取得でき次第この章に追記する。

→ 次の第6章からがB部。1億円を非属人で運用するとはどういうことかを定義する。

🧭 非属人とは何か — 3つの水準と、到達したかどうかの判定

このセクションの3点

① 非属人とは「人がいなくても増える」ことではない。「誰がやっても同じ結果になる」ことである。

② 判定は6つの問いでできる。銘柄・時期・リバランス条件・口座の在り処・不在時の継続性・記録の6つが、感覚ではなく規則になっているかを見る。

③ 判断を規則に置き換えるには、規則を数値で書くしかない。年1回・5%乖離でリバランス(決定8)が、その実例である。

第6章から先はB部の入口である。A部の100万円は「一周回ることを確かめる金額」だったが、B部の1億円は違う。金額が大きくなり、時間軸が10年単位になった時点で、代表者の頭の中に判断が残っている設計は破綻する。ここで先に「非属人」という言葉の中身を固定する。

判定チェックリスト — できているかどうかを6問で見る

「非属人にする」は目標として曖昧すぎる。次の6つの問いに、右側の列で答えられるかどうかで判定する。

問いできていない状態できている状態
銘柄と配分の決め方その都度、相場を見て考えている投資方針書に銘柄と配分(%)が明記されている
買い増しの時期相場が下がったと感じた時に買う規則で時期が決まっている(例: 決算月の翌月に一括)
リバランスの条件「そろそろ調整するか」という感覚判断配分が目標から5%以上ずれたら戻す、という数値基準がある
口座と鍵の在り処代表者の頭の中とスマートフォンにしかない代表者以外の1人が、記録を辿って口座にたどり着ける
代表者不在時の継続性代表者が3ヶ月連絡不能になれば運用が止まる誰が何をするかが事前に決まっており、止まらない
判断の記録「あの時こう思ったから」としか説明できないいつ・何を根拠に・誰が判断したかが記録に残っている

この6問のうち1つでも「できていない状態」なら、投資対象が上場REITやETFのように非属人的なものであっても、法人の運営そのものは属人的である。証券口座のパスワードと投資判断を代表者だけが握っているなら、それは非属人な会社ではない。

非属人の3段階

非属人には段階がある。資本金100万円から立ち上げる段階でいきなり最終段階には届かない。B部で狙うのは、3段階のうちの真ん中である。

  1. 1

    第1段階

    創業者依存

    投資判断・口座操作・資金移動のすべてを代表者本人が行う。投資対象が非属人的でも、法人の運営は代表者一人に依存している。立ち上げ期は必ずこの段階から始まる。
  2. 2

    第2段階

    運用非属人

    投資方針・取引ルール・損失許容額をあらかじめ文書化し、定常業務は規則で回る。代表者が動くのは例外的な判断のときだけになる。B部で実際に到達させるのはこの段階である。
  3. 3

    第3段階

    所有非属人

    運用だけでなく、法人の所有・承継そのものが代表者個人に紐づかない。株式の分散保有、後継者への権限移譲までを含む。資産規模と関係者が増えてから届く段階であり、本記事の設計の射程には入らない。

非属人の実体は「判断を規則に置き換える」こと

非属人とは、判断そのものを減らすことではない。判断を規則に置き換えることである。規則は感覚では書けない。数値でしか書けない。第7章以降で確定させる入金・配分・リバランスの決定は、すべてこの規則を数値で固定する作業になる。リバランスは「年1回・配分が5%ずれたら戻す」(決定8)。この一文自体が、非属人の実例である。

→ 次の第7章では、その器に1億円をどう入れるかを扱う。運用収益では到達しない。

💴 1億円はどこから来るのか — 入金の設計

このセクションの3点

① 100万円から1億円は100倍。運用収益だけでは届かない。利回り4%なら117年かかる。

② 本体は入金であって運用ではない。年300万〜700万円を10〜24年入れ続けて初めて1億円に届く。

③ 入金の経路は貸付にする。資本金は100万円のまま動かさない。理由は均等割・登記・戻し方の3点。

運用収益では到達しない — 先に計算する

100万円を運用益だけで1億円にする場合、100倍にする必要がある。年利4%の複利で100倍になるまでの年数は、年数 = log(100) ÷ log(1.04) ≒ 117年で求まる。117年である。依頼者が生きている間には届かない。1億円という金額の本体は、運用によって増えた分ではなく、入れた元本そのものである。ここから先の設計は「いくら、何年、入れ続けるか」を確定させる作業になる。

この章の結論

1億円は運用では作れない。入金で作る。運用(利回り3〜4%)は入金を後押しする係数でしかなく、主役ではない。

年次入金計画表 — 毎年いくら入れれば何年で届くか

毎年年末に一定額を入金し続けた場合の到達年数を、複利の年金終価の式 FV = P × ((1+r)^n − 1) ÷ r を n について解いて算出した(Pは年間入金額、rは想定利回り、nは年数、FVが1億円に達する最初の整数年)。

毎年の入金額想定利回り1億円に届く年数入金の累計(元本のみ)
年300万円3%24年7,200万円
年300万円4%22年6,600万円
年500万円3%16年8,000万円
年500万円4%15年7,500万円
年700万円3%13年9,100万円
年700万円4%12年8,400万円

「入金の累計」が1億円より少ないのは、運用収益が差額を埋めているためである(例: 年700万円・利回り4%・12年なら、入金累計8,400万円に対し運用収益が約1,580万円上乗せされて1億円を超える)。それでも主役は入金額の方で、運用収益は補助でしかない。利回りを1%上げるより、年間入金額を100万円上げる方が到達年数への影響が大きい。

入金の入れ方 — 増資・貸付・贈与の3つ

個人から法人へ資金を移す方法は3つある。私はこの3つのうち貸付を使う。理由は次の表と、その後の決定に書く。

入れ方仕組み登記・税務への影響私の評価
増資既存の合同会社に代表社員が追加出資し、資本金を増やす資本金が1,000万円を超えると均等割が年70,000円から180,000円に上がる(決定2)。資本金の変更登記が必要採らない。均等割を上げてまで資本金に固定する理由がない
貸付代表社員個人から法人へ金銭を貸し付ける(金銭消費貸借)資本金は増えない。均等割は年70,000円のまま。登記は発生しない。返済という形で元本を個人へ戻す経路が残る採る。主たる入金経路にする
贈与代表社員個人から法人へ無償で資金を渡す法人側で受贈益として法人税の課税対象になる。入金した時点で課税が発生する採らない。入れた瞬間に目減りする

私の決定 — 主たる経路は貸付にする

1億円までの入金は、代表社員から法人への貸付を主たる経路にする。資本金は100万円のまま動かさない。理由は3つ。①資本金を1,000万円以下に保てるので均等割が年70,000円のまま上がらない ②返済という形で元本を個人へ無税で戻す経路が残る ③資本金の変更登記が発生しない。増資は均等割を上げるだけの選択肢であり、贈与は入金の時点で課税されるので、どちらも採らない。

現物不動産を避ける根拠 — 東京都の人口ピークは2035年ではなく2030年

依頼者は「東京でも2035年から人口が減る」という認識を持っていた。国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」で確認すると、実際のピークはこれより早い。

東京都の推計人口備考
2030年(令和12年)14,236,333人東京都の総人口のピーク
2035年14,169,123人2030年比 −67,210人。すでに減少局面に入っている

出典: 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」 https://www.ipss.go.jp/(取得日2026年8月9日)。東京都の総人口のピークは2030年であり、2035年ではない。この記事が現物不動産を運用対象に含めず、上場REIT ETFに絞る(第8章)根拠のひとつはここにある。なお、東京都の世帯数のピーク年、および建設工事費デフレーターの推移は取得できず。数値が入り次第この章に追記する。

→ 次の第8章では、その1億円を実際にどの銘柄へ、何%ずつ入れるかを確定させる。

📊 何に入れるか — 海外REIT ETF 5本から選ぶ

このセクションの3点

① 東証に上場する「海外REIT」に連動するETFは、調べた限り5本しかない。選択肢が狭いのは悪い話ではない。迷う余地が小さいということでもある

② 確定配分は、2515(先進国REIT・除く日本)70%/1495(アジアREIT・除く日本)10%/現金(待機資金)20%。為替ヘッジは掛けない

③ リバランスは年1回・配分が5%ずれたら戻す。「相場を見て判断する」を排除するために、規則を数値で固定する。これが非属人の実体である

JPXが公開するETF銘柄一覧のうち「不動産(REIT)」カテゴリには数十本が並んでいるが、そのほとんどは東証REIT指数、つまり日本国内のJ-REITに連動するものである。海外の不動産に連動するETFだけを抜き出すと、次の5本しか残らない。

東証上場の海外REIT ETF 全5本

コード名称・連動指数運用会社信託報酬純資産総額分配金利回り
2515NEXT FUNDS 外国REIT・S&P先進国REIT指数(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信 / S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み)野村アセットマネジメント0.17%以内360億円3.12%
1659iシェアーズ 米国リート ETF / FTSE Nareit Equity REITs インデックス(配当込み、円建て)ブラックロック・ジャパン0.22%(税込)121億円2.23%
2018グローバルX US REIT・トップ20 ETF / Solactive GPR US REITs Top 20 Index(配当込み、円換算)Global X Japan0.375%以内取得できず取得できず
1555上場インデックスファンド豪州リート / S&P/ASX200 A-REIT指数アモーヴァ・アセットマネジメント0.45%程度取得できず取得できず
1495上場インデックスファンドアジアリート / FTSE EPRA/Nareit アジア(除く日本)リート10%キャップ指数アモーヴァ・アセットマネジメント0.65%程度取得できず取得できず

海外REIT ETFは東証に5本しか無い。これはJ-REIT連動の数十本と比べて極端に少ない。裏を返せば、この設計で悩むべき点は「どの1本を選ぶか」ではなく「何本を、どういう比率で組み合わせるか」だけである。純資産総額・分配金利回りは2515と1659しか一次情報で確認できていないため、2018・1555・1495は信託報酬までを断定し、それ以上は「取得できず」のまま書く。

確定配分 — 2515を中核にする

この5本のうち3本を組み合わせて使う。私の決定は次の配分である。

銘柄配分そう決めた理由
2515(先進国REIT・除く日本・為替ヘッジなし)70%5本の中で最も広く分散し、信託報酬が最安(0.17%以内)。円建てで法人口座から買える
1495(アジアREIT・除く日本)10%先進国REIT指数が薄いシンガポール・香港を補う。信託報酬0.65%は高いので比率は上げない
現金(待機資金)20%NAV倍率が高い局面で買わずに済ませるための枠。ゼロにすると「高くても買う」しかなくなる
確定配分の内訳
2515(先進国REIT・除く日本)
70%
1495(アジアREIT・除く日本)
10%
現金(待機資金)
20%

私の決定(決定7)。相場動向によって事後的に変える数値ではない

採らない4本の理由

銘柄採らない・比率を上げない理由配分
1659(米国リートETF)米国1国のみに連動しており、地域が集中している0%
2018(グローバルX US REIT・トップ20)米国REITの中でもさらに上位20銘柄に絞られており、集中度が最も高い0%
1555(豪州リート)豪州1国のみに連動しており、地域が集中している0%
1495(アジアリート)信託報酬が0.65%と5本中最高。補完目的にとどめ、比率は上げない10%

為替ヘッジは掛けない

2515・1495はいずれも為替ヘッジなしで組む。理由は2つ。第一に、為替ヘッジには内外金利差の分だけ恒常的にコストがかかる。ヘッジ後リターンは、金利差が開くほど無ヘッジより悪化する構造になっている。第二に、この法人の収入(本業からの入金)も支出(法人住民税・将来の生活費)もすべて円建てである以上、円以外の資産を持つこと自体が、この法人にとっての分散の目的に含まれる。ヘッジで為替変動を消してしまうと、その目的が半分失われる。

リバランスは年1回・5%ずれたら戻す

規則(決定8)

年に1回、決算月に配分を確認し、目標配分(70% / 10% / 20%)から5%以上ずれた区分があれば、目標配分に戻す。それ以外のタイミングでは売買しない。「相場が良さそうだから買い増す」「下がったから様子を見る」という裁量を排除するために、いつ・何%ずれたら・どう動くかを事前に数値で固定する。これは単なる運用ルールではなく、B部の目的である「自分が抜けても回る非属人の設計」の実体そのものである。相場観に基づく判断が必要な瞬間を、あらかじめゼロにしておく。

1口価格・売買単位

5本とも売買単位は1口単位で、数千円台から買える銘柄がある(1659は3,634円、2026年2月27日時点のJPX公式ファクトシートによる終値)。2515の市場価格は一次情報で確認できていないため、ここでは断定しない。第2章で確定させた最初の建玉59万円が、2515を70%・1495を10%の比率でおよそ何口になるかは、購入時点の市場価格を確認してから決める。

出典: JPX ETFファクトシート(各コードのPDF、データ基準日2026年2月27日) https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/issues/files/2515-j.pdf、同 1659-j.pdf、同 2018-j.pdf、同 1555-j.pdf、同 1495-j.pdf。銘柄一覧: JPX 銘柄一覧(ETF)不動産(REIT)カテゴリ https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/issues/01-07.html(取得日2026-08-09)。

→ 次の第9章では、その銘柄をいつ買うか——分配金利回りではなくNAV倍率で判断する理由を書く。

🧭 選び方 — NAV倍率で決める。分配金利回りで選ばない

このセクションの3点

① 銘柄は第8章で確定済み。ここで決めるのは「いつ買うか」。判断基準はNAV倍率(投資口価格 ÷ 1口当たり純資産価値)であって、分配金利回りではない

② 分配金利回りは価格が下がるほど自動的に上がる。高利回りを「お買い得」と見て買うと、最も危険な銘柄から順に買うことになる

③ ETFは指数連動のため個別銘柄のNAV倍率を選べない。だから「どの銘柄を選ぶか」ではなく「いつ・いくら買うか」にNAV倍率を使う

NAV倍率 = 投資口価格 ÷ 1口当たり純資産価値(NAV, Net Asset Value)。1倍を割っている状態は、保有している不動産の純資産価値よりも安い価格で市場に投資口が出回っているということを意味する。逆に1倍を大きく超えている状態は、市場が保有資産の純資産価値以上の値段を払ってでも欲しがっているということになる。

判断基準 — 私の決定

NAV倍率の水準ごとに、行動をあらかじめ固定する。判断基準は一点だけ——純資産価値より安く買えているかどうか

NAV倍率の水準意味私の行動
0.9倍以下(1倍を大きく割る)保有不動産の純資産価値より明確に安い価格で買える状態規定額を超えて買い増す。現金(待機資金20%)からも投入する
0.95〜1.05倍(1倍前後)市場価格と保有不動産の純資産価値がほぼ一致している状態決定8の配分どおり、規定額だけを淡々と買う
1.1倍以上(1倍を大きく超える)市場が将来の含み益・成長を織り込み、純資産価値以上の値段が付いている状態新規の買い増しを止め、現金(待機資金)に積み増す

この基準の位置づけ

この閾値(0.9倍・1.05倍・1.1倍)は、外部の基準ではなく私が定めた行動規則である。「純資産価値より安く買えるかどうか」という一点だけを判断材料にすることで、決算や決定8のリバランスと同じく、相場観による裁量を排除することを目的にしている。

なぜ分配金利回りで選んではいけないか

分配金利回りは「分配金 ÷ 価格」で計算される。この式には価格が分母に入っている。つまり価格が下がれば、分配金の額を一切変えなくても、利回りは自動的に上がる。これは「お買い得になった」ことの証明ではない。市場が「この銘柄は将来、分配金が減るか、保有資産の価値が下がる」と織り込んで価格を下げた結果として、表面上の利回りだけが跳ね上がっているケースが混ざる。

価格(仮定)分配金(仮定・年50円で固定)利回り(分配金 ÷ 価格)
1,000円50円5.0%
800円50円6.25%
600円50円8.3%

この表は説明のための自作の計算例であり、実在の銘柄の数値ではない。分配金の額を一切変えていないのに、価格が下がるだけで利回りは5.0%→6.25%→8.3%へ上がる。利回りだけを見て「高いから買う」という判断をすると、価格が下がり続けている、つまり最も危険な銘柄から順に買うことになる。これが、この記事が分配金利回りを判断基準に使わない理由である。

J-REIT全体のNAV倍率の現在値

J-REIT全体のNAV倍率の現在値は、本記事の調査では取得できていない。推測値は書かない。確認する場合は次の一次情報を見ること。

確認先URL掲載内容
不動産証券化協会(ARES)https://www.ares.or.jp/J-REIT市場の統計・指標(NAV倍率を含む月次データを公表)
日本取引所グループ(JPX)https://www.jpx.co.jp/個別REIT銘柄の投資口価格・分配金実績等の公表資料

ETFを買う場合の注意 — 個別銘柄のNAV倍率は選べない

2515・1495はいずれもETF、つまり指数に連動する形で複数のREIT銘柄をまとめて保有する仕組みである。ETFを買う投資家は、指数を構成する個々の銘柄のNAV倍率を選ぶことができない。「このREITだけ割安だから買う」という選び方は、個別銘柄への直接投資でなければ成立しない。

だからNAV倍率の使い道を変える

ETFではNAV倍率を「どの銘柄を選ぶか」には使えない。銘柄は第8章で2515・1495に確定済みだからだ。その代わり、NAV倍率は「いつ、いくら買うか」を決めるために使う。ETFの市場価格そのものが、組入銘柄群のNAV倍率の平均的な水準を映すため、ETFの市場価格が下がって割安に見える局面と、組入REIT全体のNAV倍率が下がっている局面はおおむね連動する。第8章の配分(銘柄・比率)と、この章の基準(いつ買うか)は別の判断であり、混ぜて決めない。

毎月分配型・高分配型は避ける

本記事で選んだ2515・1495はいずれも年4回決算であり、毎月分配型ではない。毎月分配型や、市場平均を大きく超える高分配型のREIT・ファンドは避ける。分配金の一部が、運用の実績(賃料収入や売却益)ではなく、投資家自身が拠出した元本の払い戻しに当たる場合があるためである。ただし、この「元本払い戻しの構造」については個々の商品の分配方針を一次情報で確認できておらず、本記事では一般的な注意点として書くにとどめ、特定の銘柄について断定はしない。

→ 次の第10章では、この配分で実際に税がいくら取られるかを条文で確認する。

📐 税は実際いくら取られるのか — 益金不算入は効かない。含み益は課税されない

このセクションの3点

① 海外REIT ETF(2515等)の分配金は、法人が受け取っても全額が益金になる。J-REIT現物のような益金不算入は使えない。条文上の理由がある

② 含み益には課税されない。帳簿に「短期売買目的」と記載しなければ自動的に原価法で処理され、課税は売却時まで繰り延べられる。これは何もしないという決定である

③ 税だけを見れば、法人にする理由はない。個人の申告分離20.315%のほうが軽い。それでも法人にする理由は第11章以降で税以外の4点に一本化する

① 受取配当等の益金不算入 — 対象になるのはJ-REIT現物だけ

法人が受け取る配当・分配金は、法人税法23条によって一定割合が益金に算入されない(受取配当等の益金不算入)。だが、この規定が効くかどうかは、何を保有しているかで分かれる。

保有するもの益金不算入の対象か条文上の根拠
J-REITの投資口(現物)対象になる(非支配目的株式等=保有割合が小さければ、益金不算入は配当額の20%相当額のみ)法人税法23条1項2号が「投資信託及び投資法人に関する法律137条の金銭の分配」を配当等の額に含めている
海外REIT ETF(2515等・契約型投資信託の受益証券)対象にならない。全額が益金(課税対象)23条1項の各号(1号=剰余金の配当等、2号=投資法人の金銭の分配、3号=資産流動化法の中間配当)のいずれにも該当しない
株式ETF(TOPIX・日経225連動等)対象になる措置法67条の6が「特定株式投資信託」の収益分配を23条の対象に含めている

なぜREIT ETFだけ救われないのか。措置法67条の6が23条の対象に含めているのは「特定株式投資信託」の分配だけである。その定義(措置法3条の2)は、信託財産を「株式のみ」に対する投資として運用することを要件にしている。REIT ETFはREIT投資口を組み入れるファンドであり、この「株式のみ」に当たらない。だから株式ETFは救われ、REIT ETFは救われない。
出典: e-Gov法令検索 法人税法23条・租税特別措置法3条の2・67条の6 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034 (取得日2026年8月9日)

結論①

依頼者の設計(2515を中核とした海外REIT ETF)では、分配金は全額が法人の益金になる。法人にしたからといって配当課税が軽くなることはない。もし益金不算入を取りに行くなら、REIT ETFではなくJ-REIT現物に切り替える必要があるが、それは第8章で決めたポートフォリオ(分散・信託報酬の低さ)と引き換えになる。本記事はその交換を採らない。

② 含み益に課税されるか — この章の山場

法人には期末に保有有価証券を評価し直す規定がある。だが評価方法は2種類あり、どちらに区分されるかで結果がまったく変わる。

法人税法61条の3第1項(有価証券の期末評価)
一 売買目的有価証券(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券として政令で定めるものをいう。) 当該売買目的有価証券を時価法により評価した金額
二 売買目的外有価証券(売買目的有価証券以外の有価証券をいう。) 当該売買目的外有価証券を原価法により評価した金額
出典: e-Gov法令検索 法人税法61条の3 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034 (取得日2026年8月9日)

売買目的有価証券は時価法で、評価益・評価損がそのまま毎期の益金・損金になる。つまり含み益に毎期課税される。売買目的外有価証券は原価法で、期末に時価評価をしない。含み益には課税されず、課税は売却した時まで繰り延べられる。問題は、どちらに区分されるかを何が決めるかである。

法人税法施行令119条の12第1項1号(売買目的有価証券の範囲)
内国法人が取得した有価証券のうち、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的(「短期売買目的」)で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行つたもの及びその取得の日において短期売買目的で取得したものである旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもの
出典: e-Gov法令検索 法人税法施行令119条の12 https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097 (取得日2026年8月9日)

「売買目的有価証券」になるのは、①専業のディーラーが短期売買目的で取得した場合と、②取得日に「短期売買目的で取得した」と帳簿書類に記載した場合の2つだけである。この2つのどちらでもなければ、自動的に「売買目的外有価証券」=原価法になる。期末の時価評価をしないので、含み益に課税されず、課税は売却時まで繰り延べられる。

決定10:帳簿に「短期売買目的」と記載しない

これは何かをする決定ではない。「書かない」という決定である。取得日の帳簿書類に「短期売買目的で取得した」と一言書かなければ、それだけでこの法人の保有ETFは売買目的外有価証券=原価法に区分される。含み益は毎期の申告に一切出てこない。逆に言えば、うっかりこの一文を書けば、次の決算からいきなり含み益への課税が始まる。この法人でREIT ETFを長期保有する限り、帳簿に短期売買目的と書く理由は無い。

③ 個人と法人、どちらが軽いか

論点個人(特定口座)法人(合同会社)
分配金への課税申告分離課税 20.315%(一律)法人税15%(年800万円以下)/23.2% + 住民税・事業税。実効税率はおおむね20〜30%台
益金不算入の適用該当なし海外REIT ETFは対象外(全額益金)。J-REIT現物なら一部対象
損失の繰越上場株式等の範囲内で3年欠損金を10年繰越(中小法人)
赤字でも出ていく固定費0円均等割 年70,000円(第2章・第4章)
含み益への課税売却時まで繰延(同じ)帳簿に短期売買目的と書かない限り、売却時まで繰延(同じ)

源泉徴収・所得税額控除・外国税額控除については、条文の裏取りが完了していない。数値を作らずここでは取得できずと明記する。実務上は分配金支払時に源泉徴収された税額を法人税の申告で税額控除する手続きが必要になる見込みだが、本記事では税率・還付額を断定しない。

法人にすると税が軽くなるということはない。むしろ重い。依頼者自身の指摘「トレードは金融所得課税が一律だから、マイクロ法人でやる理由がない」は税務上そのとおりである。個人の申告分離20.315%に対し、法人はどう転んでも実効税率でこれを上回る。この記事はこの事実を否定しない。

決定11:税務上のメリットを法人化の理由にしない

それでもこの法人を作るのは、税とは無関係な4つの理由による。①本業の会社が無くなったときの社会的信用の受け皿になること ②個人名義で数億円を持つことで生じる親族からの要求を遮断すること ③資産をいくら持っているかを外から見られないようにすること ④器を作ること自体が目的として成立していること。均等割の年70,000円は、この4つを買うための年会費である。節税のための法人ではなく、非税務的な目的のために税を余分に払う法人だと理解した上で作る。

→ 次の第11章では、この設計を自分が動けなくなっても続けられる形にする。

🔑 私が動けなくなっても続く形にする — 統治の設計

このセクションの3点

① 統治とは、信頼できる後継者を探すことではない。判断しなくても実行できる状態を、文書で作ることである

② 投資方針書・口座と鍵の所在一覧・年次の運用記録・業務執行社員の権限と後任の定め、この4つの文書を作る。何を書くかはこの章で確定する

③ 合同会社は社員に任期がないため重任登記が発生しない。手続きの属人性が最初から1つ少ない

第9章までで投資対象と買い方を非属人にし、第10章で税務上の扱いを確定した。残るのは、私が事故や病気で動けなくなったときに、この法人がどうなるかである。ここで求めるのは信頼できる人を探すことではない。相場をどう見るかという判断を、後任がしなくても実行できる状態を作ることである。規則が数値で書かれていれば、後任は判断する必要がない。判断が要らないなら、後任は投資の専門家でなくてよい。

作る文書は4つ。何を書くかを先に決める

作る文書何を書くか誰が読むか更新の頻度
投資方針書銘柄(2515・1495・現金の配分70/10/20%)、リバランス規則(年1回・5%乖離で戻す)、買い増しの規則(分配金は自動再投資に回す)、売らない条件(相場下落を理由に売却しない)業務執行社員・後任・顧問税理士配分方針を変えたときのみ。年次では更新しない
口座と鍵の所在一覧証券口座(開設先・口座番号)、銀行口座、法人の実印・印鑑証明書の保管場所、各種パスワードの管理方法(保管先の場所のみを記載し、パスワード自体は書かない)業務執行社員のみ。第三者に渡す場合は開封条件を定めるパスワード変更・口座追加のたびに更新
年次の運用記録その年の分配金受取額、リバランスの実行有無と実行日、期末時点の配分比率、均等割の納付記録業務執行社員・税理士・(承継時は後任)年1回、決算後1ヶ月以内
業務執行社員の権限と後任の定め発注・入出金・契約締結の権限範囲、代表社員が3ヶ月連絡不能になった場合の後任の指定と、後任が取れる行動の範囲(投資方針書の規則に従うことのみ許可し、方針変更は許可しない)業務執行社員・後任・家族後任を変更したときのみ

結論

統治とは、信頼できる人を探すことではない。判断しなくても実行できる状態を文書で作ることである。上記4文書が揃っていれば、後任は「相場をどう見るか」を一度も考えずに、投資方針書に書かれた規則をそのまま実行するだけで法人を維持できる。逆に、この4文書のどれか1つでも欠けると、後任は判断を迫られ、その瞬間に法人はまた属人的に戻る。

代表社員が連絡不能になった場合に誰が何を見るか

「業務執行社員の権限と後任の定め」に、連絡不能になってからの手順を数値と行動で書く。私の決定は次のとおりである。

経過期間誰が動くか何をするか
連絡不能から1ヶ月後任に指定した者「口座と鍵の所在一覧」で口座の存在と残高のみを確認する。取引はしない
連絡不能から3ヶ月後任に指定した者「投資方針書」に基づき、年1回のリバランスの期日が到来していれば、規則どおりに実行する。方針そのものは変更しない
連絡不能から1年後任および顧問税理士法人の継続可否(清算するか、後任が正式に業務執行社員に就任するか)を判断する。この判断だけは規則で自動化できないため、人が行う

この設計の要点は、3ヶ月までは「判断」を一切要求しないことにある。後任がすることは、あらかじめ決まった規則(年1回・5%乖離でリバランス)を、決まったとおりに実行するだけである。判断が必要になるのは1年経過後の継続可否だけであり、それは非属人化の対象から意図的に外している。

年次の運用記録をどこに残すか

年1回のリバランスの実行記録は、「年次の運用記録」という1つの文書に、決算のたびに1行ずつ追記する形で残す。証券会社の取引履歴だけでは、なぜその取引をしたか(規則に従った結果か、例外対応か)が後から読み取れない。record自体は簡潔でよい。年・分配金受取額・リバランス実行日・実行後の配分比率・均等割納付日の5項目を1行に収める。この記録が、税務調査でも承継でも「代表者の記憶」に頼らずに経緯を説明できる唯一の資料になる。

合同会社は重任登記が発生しない

株式会社の取締役には任期があり(原則2年、非公開会社は定款で最長10年)、任期満了のたびに重任登記が必要になる。登記を怠れば過料の対象になり得るうえ、「登記を忘れない」という管理業務そのものが代表者に依存する。合同会社の社員には条文上の任期の定めが無く、重任登記という手続きそのものが発生しない。統治の設計において、これは「やることが1つ減る」以上の意味を持つ。手続きの属人性が、制度の側からあらかじめ1つ取り除かれている。第2章で会社形態を合同会社に決めた判断は、統治の観点からも一貫している。

合同会社の社員の任期について、条文上の期間制限規定が無いことは確認できたが、これを明記する条文の直接的な原文引用は本記事の調査範囲では取得できていない。断定は「任期の定めが無い=重任登記が発生しない」という構造的な帰結にとどめ、個別の登記実務における例外の有無までは踏み込まない。

→ 次の第12章では、会社に貯まった1億円を自分がどう受け取るかを扱う。ここが最も税が重い。

🚪 会社の1億円は、自分の1億円ではない — 取り出し方4経路

このセクションの3点

① 取り出し方は役員報酬・配当・退職金・清算の4経路しかない。決定4で役員報酬をゼロにしているため、このうち1経路は事実上閉じている

② 配当は法人税を払った後の利益から出て、受け取る個人にもさらに課税される。二重に課税される。退職金は税制上有利とされるが、役員報酬ゼロだと算定の基礎になる最終報酬月額が存在しない

③ 私の決定は「取り出さないこと」を主にする。取り出すのは本業が無くなったときか、清算するときに限る

経路仕組み課税のされ方私の評価
役員報酬定期同額給与として毎月受け取る個人側は給与所得として課税される(法人側は損金算入できる)決定4で役員報酬をゼロにしているため、この経路は事実上閉じている。年間固定費を7万円にした代償がここに出る
配当(利益の分配)法人税を払った後の利益剰余金から株主へ分配する法人段階で法人税、個人段階でも配当課税=二重に課税される使うとしても最小限にとどめる。二重課税の分だけ目減りする経路だと理解したうえで使う
退職金(役員退職慰労金)退任時に一括で受け取る。退職所得は税制上有利とされる退職所得控除等の具体的な税率・計算式は取得できず算定の基礎(最終報酬月額)が役員報酬ゼロでは存在しない。このままでは使えない経路だと認識しておく
清算(会社をたたむ)会社を解散し、残余財産を株主へ分配する具体的な課税関係は取得できず本業を続けている間は使わない。最後の手段として位置づける

役員報酬ゼロの代償はここに出る

決定4(役員報酬ゼロ)は、年間固定費を7万円にして100万円を13年もたせるための決定だった。だがこの決定は同時に、法人から個人へ日常的に金を取り出す経路を閉じる決定でもある。A部(100万円・数年単位)ではこの代償はほとんど意識されない。金額が小さく、そもそも取り出す必要がないからだ。だがB部で1億円まで積み上がったとき、この代償は無視できない大きさになる。だから出口は、資産が増えてから考えるのではなく、最初から設計しておく。

私の決定 — 主たる出口は「取り出さないこと」

私はこう決める

主たる出口は「取り出さないこと」にする。理由は、この法人の目的(本業が無くなった時の受け皿・親族からの要求の遮断・資産規模の非公開)が、資産が法人の中にあることによって初めて達成されるからだ。配当や役員報酬で取り出した瞬間、それは個人の資産になり、法人を作った目的そのものが消える。取り出すのは、本業が無くなったとき、または会社を清算するときの2つに限る。それまでは、法人の中に置いたままにする。

本業が無くなったときは、役員報酬を出す設計に切り替える(決定4の前提が崩れるので、社会保険料の発生と均等割の上昇を含めて再設計する)。清算するときは、残余財産の分配という経路になる。どちらも「今すぐには使わない」ことを前提にした経路であり、日常的な生活費の取り出し口としては最初から想定していない。

各経路の具体的な税率・退職所得控除の計算式・清算時の課税関係は、一次情報を取得できていない。推測値は書かない。本記事が断定するのは「4経路の存在」「役員報酬ゼロによって1経路が閉じていること」「退職金は算定基礎が無いという問題を抱えること」までであり、取り出す際の税額計算は実際にその局面が来た時点で改めて確定させる。

→ 次の第13章では、B部で必ず起きる5つの問題と、その解決を並べる。

🧩 B部の課題と解決 — 1億円で必ず起きる5つの問題

このセクションの3点

① B部で必ず起きる問題は5つある。属人性・出口での課税・為替・REIT特有のリスク・資本金1,000万円の壁

② どの問題も「そのつど判断する」のではなく「あらかじめ規則で固定する」ことで解決している。相場を見て決める余地を最初から残さない

③ このうち3つ(属人性・出口・資本金)は決定1〜11の中にすでに解決策が入っている。残り2つ(為替・REITリスク)は消せない前提として受け入れる設計にしている

課題なぜ起きるか私の解決
① 属人性が抜けない運用の判断を自分の相場観に頼ると、自分が抜けた時点で誰も配分を管理できなくなる判断を規則(数値)に置き換える。年1回・配分が5%ずれたらリバランスする(決定8)
② 出口で課税される会社の1億円は個人の1億円ではない。取り出す経路(配当・退職金)はいずれも課税や算定上の問題を伴う(第12章)取り出さない設計にする。取り出すのは本業を失ったときか、清算するときに限る
③ 為替海外REIT ETFは円建てで売買できるが、投資対象は外貨建て資産であり、円高になれば円換算の評価額は下がるヘッジを掛けない(決定7)。円建ての本業・生活費に対する分散が目的なので、為替のエクスポージャーは意図的に持つ
④ REIT特有のリスク(金利上昇・NAV下落)金利が上がるとREITの評価は下がりやすく、NAV倍率が高い局面でまとめて買うと高値掴みになる現金20%の待機枠(決定7)を持ち、NAV倍率を見て買い付けるかどうかを判断する(第9章)
⑤ 資本金1,000万円・1億円の閾値を超える資本金が1,000万円を超えると、均等割が年70,000円から年180,000円へ上がる入金は増資でなく貸付で行う。資本金は100万円のまま動かさない

① 属人性 — 規則で固定する

非属人とは「誰が見ても同じ判断になる」状態のことである。相場観や好みに頼る限り、判断者が抜ければ運用は止まる。年1回・配分が5%ずれたら2515・1495・現金の比率を元に戻すという規則(決定8)だけを残せば、判断者が誰であっても同じ操作になる。これが非属人の実体であり、それ以上の複雑な戦略は持たない。

② 出口 — 取り出さない設計で吸収する

第12章で見た通り、配当は二重課税、退職金は役員報酬ゼロだと算定の基礎が無い。この問題自体を解決するのではなく、問題が発生する場面(取り出すこと)自体を発生させないのがここでの解決である。取り出すのは本業を失ったときか清算するときに限定し、それ以外の期間は課税を発生させない。

③ 為替 — 消さずに受け入れる

為替は、ヘッジを掛ければ消せる。だが本記事はヘッジを掛けない(決定7)。理由は、ヘッジコストが内外金利差の分だけ恒常的にかかることと、本業・生活費がすべて円建てである以上、円以外の資産を持つこと自体がこの法人の分散の目的に含まれるためである。円高局面で評価額が減ることは受け入れる。これは解決すべき問題ではなく、意図して持つリスクである。

④ REIT特有のリスク — 現金枠とNAV倍率で吸収する

REITは金利上昇に弱く、割高な局面でまとめて買えば取得コストが上がったまま戻らないことがある。現金20%の待機枠は、この局面で「買わない」という選択肢を持つための枠である(決定7)。買い付けの判断はNAV倍率を基準にする(第9章)。ゼロ現金の設計であれば「高くても買う」しかなくなるが、この設計ではそれを避けられる。

⑤ 資本金の壁 — 資本金を動かさない

1億円を法人に積む過程では、増資で資本金を増やしたくなる場面がある。だが資本金が1,000万円を超えると均等割が年70,000円から年180,000円に上がる。入金は増資でなく貸付(役員借入金)で行い、資本金は100万円のまま動かさない。これで1億円の規模になっても均等割は年70,000円のまま変わらない。

→ 最後の第14章に、この記事で決めたことを全部並べる。

私ならこうする — 全決定の一覧

このセクションの3点

① この章だけを読めば実行できる。決定1〜11の全部と、A部の実行順を1つの表とタイムラインにまとめる

② 迷いが残る箇所は無い。個別性が残る論点にも、すべて「私はこうする」という結論を先に出している

③ 一次情報を取得できなかった項目は隠さず列挙する。それ以外の全ての決定は、この記事の中ですでに確定している

#決めること私の決定そう決めた理由(1行)いつやるか
1会社形態合同会社決算公告が不要で、財務内容が外から見えない方を優先した設立時
2資本金100万円均等割の最低区分(年70,000円)を維持するため設立時
3所有者個人が100%本業が無くなった時の受け皿という目的と矛盾しないようにするため設立時
4役員報酬ゼロ(設立時から恒常的に)年間固定費を7万円にし、100万円を約13年もたせるため設立時〜継続
5決算期本業法人と別の月にする申告作業が重ならないようにするため設立時
6事業目的自己資金による有価証券の保有・運用に限る他人から資金を集めず、金融商品取引法の登録対象に入らないため定款作成時
7ポートフォリオ配分2515を70%・1495を10%・現金20%信託報酬が最安で分散も最大の銘柄を中核にし、高値掴みを避ける待機枠を持つため最初の建玉時
8リバランス年1回・配分が5%ずれたら戻す相場を見て判断する余地を排除し、非属人を規則で担保するため毎年(決算前後)
9税の扱い個人が有利であることを認める事実として正しい指摘であり、法人化の理由を税から切り離すため記事全体の前提
10帳簿の記載「短期売買目的」と書かない売買目的外有価証券(原価法)に区分し、含み益への課税を売却時まで繰り延べるため取得の都度
11法人化の理由税務メリットを理由にしない益金不算入が使えず、法人の方が税負担は重い。理由は信用の受け皿・親族要求の遮断・非公開・器そのものの4点に一本化する記事全体の前提

A部の実行順 — 2027年、何から着手するか

  1. 1

    Step 1

    定款作成

    事業目的は「自己資金による有価証券の保有・運用」に限定して書く(決定6)。定款認証は合同会社なので不要。
  2. 2

    Step 2

    資本金払込

    100万円を払い込む。1,000万円を超えない金額であることを確認する(決定2)。
  3. 3

    Step 3

    登記申請

    登録免許税は資本金×0.7%と6万円の高い方=6万円。代表社員の住所が登記に出ることを了承したうえで申請する(決定1)。
  4. 4

    Step 4

    法人口座

    本業法人とは別の決算期を設定する(決定5)。役員報酬をゼロで運用する前提を、口座開設の段階から崩さない。
  5. 5

    Step 5

    証券口座

    法人名義で証券口座を開設する。ここで扱うのは自己資金の運用のみで、他人から資金を募る性質のものではないことを確認する(決定6)。
  6. 6

    Step 6

    2515を発注

    資本金の残額(登録免許税6万円と維持費バッファを除いた分)で2515を中核に発注する。帳簿には「短期売買目的」と書かない(決定10)。
  7. 7

    Step 7

    1期目の決算を自分で締める

    均等割年70,000円の納付を含め、1期目の申告を自分で完了させる。ここまで一通り回ることが、A部の成功の判定になる。

この記事が答えたこと・答えていないこと

答えたこと: 会社形態・資本金・所有者・役員報酬・決算期・事業目的・ポートフォリオ配分・リバランスの規則・税の扱い・帳簿の書き方・法人化の理由、そして出口の設計(取り出さない)まで、11の決定はすべてこの記事の中で確定している。

答えていないこと(一次情報を取得できなかったもの): 2515の1口価格、純資産以外のETF詳細、J-REIT全体のNAV倍率の現在値、法人口座の開設要件、東京都の世帯数のピーク年、建設工事費デフレーターの推移、税理士報酬の相場、登記関連の実費(印鑑・証明書の取得手数料)。これらは断定できる一次情報が無かったため、推測値を書かずに空欄のままにしてある。

決めた。あとは登記するだけである。