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⚖️ 総則6項 — 13億8,700万円の不動産を3億3,370万円と申告した結果

相続税の財産評価には「総則6項」という例外規定がある。国税庁長官の指示があれば、通達どおりの評価額を使わず、時価で評価し直せるというものだ。この記事は、その規定が実際に発動された事案を、判決文と裁決書の原文から数値ごと記録したもの。ある相続事案では、借入で購入した13億8,700万円の不動産が通達では3億3,370万6,241円と評価され、債務控除の結果、申告時の相続税の総額は0円だった。それが更正処分で2億4,049万8,600円になり、最高裁は令和4年4月19日にこれを適法とした。ただしこの記事は、総則6項がどれくらいの確率で発動されるかを示すものではない。一次資料で数値まで確認できた事案が2件しかなく、その2件はいずれも納税者が敗れている。反対の結論が伝えられている事案もあるが、原文に到達できなかったので本文の事実には使っていない。読み終えて分かるのは、この2件で何が認定されたかであって、あなたの場合にどうなるかではない。

📋 総則6項が実際に発動された事案(一次資料で確認できた2件)

このセクションの3点

① 一次資料で数値まで確認できた発動事案は2件。通達どおりの評価額と、国税が出し直した評価額の差は事案Aで約3.8倍、事案Bで約1.9倍

② 事案Aは申告時点で相続税の総額が0円だったが、更正処分で2億4,049万8,600円の追徴になった

③ 事案Bは配当と決算期変更という2つの行為だけで会社の評価区分が変わり、申告21億3,130万96円が更正で40億6,380万7,600円になった

事案申告した評価額国税が出した評価額倍率結論と一次資料
事案A
最高裁 令和4年4月19日 第三小法廷判決
令和2年(行ヒ)第283号・相続
相続開始 平成24年6月17日/更正処分 平成28年4月27日
3億3,370万6,241円
甲2億0,004万1,474円+乙1億3,366万4,767円
通達による評価額。購入価額は合計13億8,700万円
12億7,300万円
甲7億5,400万円+乙5億1,900万円
不動産鑑定評価額
約3.8倍
国税の評価額 ÷ 申告した評価額
上告棄却(納税者敗訴)。総則6項の適用は適法とされた。相続税の総額は0円から2億4,049万8,600円になった
最高裁 判決文(PDF)
事案B
国税不服審判所 令和6年3月25日裁決
不動産賃貸業の同族会社株式・相続
相続開始 平成29年7月/更正処分 令和5年5月11日
21億3,130万96円
1株1,966,144円
評価通達179(2)の併用方式
40億6,380万7,600円
1株3,748,900円
時価純資産法
約1.9倍
更正後の評価額 ÷ 申告した評価額
審査請求棄却(納税者敗訴)。増えた税額そのものは裁決書でマスキングされており分からない
国税不服審判所 裁決

13億8,700万円

事案Aの不動産購入価額(甲・乙合計)

3億3,370万6,241円

事案Aの通達による評価額(合計・申告時)

2億4,049万8,600円

事案Aの更正処分後の相続税の総額

0円

事案Aの申告時点の相続税の総額(→更正処分で追徴)

この2件で共通していること

✓

相続や評価の直前に、評価額を下げる行為が行われている

事案Aは相続開始の3年前後に借入で不動産を購入、事案Bは相続の約2か月前に配当と決算期変更

✓

通達どおりの評価額が、国税が出し直した評価額より大幅に低い

事案Aは約3.8倍、事案Bは約1.9倍の差(いずれも国税の評価額 ÷ 申告した評価額)

✓

国税は通達とは別の方法で評価し直し、納税者側が争って敗れた

事案Aは不動産鑑定評価額、事案Bは時価純資産法

→ 次のSection 2では、この記事に出てくる言葉(路線価・総則6項・更正処分など)を用語表で説明する。

📖 この記事に出てくる言葉

このセクションの3点

① 路線価は「税金を計算するためだけに使う、道路ごとの目安の値段」で、実際に売買される値段(時価)より低くなりやすい

② 財産評価基本通達は国税庁が作った計算マニュアル、総則6項はその中にある「著しく不適切なときは別の方法で評価し直せる」という例外規定

③ 更正処分は税務署が申告税額を修正する処分。過少申告加算税はその際に上乗せされる罰金のような税金

言葉何かこの記事とどう関係するか
路線価国税庁が毎年、道路ごとに「その道路に面した土地はだいたいこれくらいの値段」と決めて公表している金額(1平方メートルあたり)。相続税・贈与税を計算するためだけに使う目安の値段で、実際の売買価格そのものではない。この記事で問題になった土地・建物の評価は、路線価をもとにした通達の計算方法で行われていた。それが実際の売買価格(時価)より大きく低かったことが、争いの出発点になっている。
財産評価基本通達国税庁が税務署の職員向けに作った、「相続税・贈与税を計算するとき、土地・建物・株式などの値段をどう決めるか」のマニュアル。法律そのものではなく、国税庁が内部の職員に「こう計算しなさい」と指示した文書。事案A・事案Bとも、まずはこの通達どおりに計算した金額で申告された。総則6項は、この通達の中にある1つの項目である。
総則6項財産評価基本通達の最初のほうにある6番目の項目。「通達どおりに計算した評価額が著しく不適切(実際の値段とかけ離れすぎている)と国税庁長官が認めたときは、通達とは別の方法で評価し直してよい」という例外規定。この記事のタイトルにもなっている中心の規定。事案Aでは鑑定評価額、事案Bでは時価純資産法という、通達とは別の方法で評価し直された。
時価その財産を今、実際に売買したらつくであろう値段。路線価や通達の評価額とは別物で、市場での取引を前提にした値段のこと。相続税法は財産を「時価」で評価すると定めており、通達の評価方法はあくまで時価を計算するための1つの手段にすぎない。最高裁は「通達評価額が時価を上回らない限り違法ではない」という判断を示している(詳しくは後の章で扱う)。
更正処分税務署が「申告した税額は間違っている、正しくはこの金額です」と決定し直す処分のこと。事案A・事案Bとも、最初の申告のあとに国税から更正処分を受け、税額が大きく増えた。事案Aは平成28年4月27日、事案Bは令和5年5月11日付。
過少申告加算税申告した税額が本来より少なかったとき、不足していた税金に上乗せして課される、罰金のような性質の税金。更正処分で税額が増えると、通常はこの加算税も一緒に課される。ただし、この記事が根拠にしている一次資料には加算税そのものの金額は記録されておらず、本文では確認できた範囲のことだけを書いている。
類似業種比準方式証券取引所に上場している、同じ業種の会社の株価をもとにして、上場していない会社の株の値段を計算する方法。事案Bでは、決算期の変更などによって会社の評価区分が変わり、この方式を一部併用できるようになった。その結果、申告時の株の評価額が下がった。
純資産価額方式会社が持っている財産(土地・建物・現金など)から負債を差し引いた「会社の正味の財産」をもとに、株の値段を計算する方法。事案Bでは、国税は総則6項を使い、通達の純資産価額方式ではなく「時価純資産法」という別の計算方法で評価し直した。
同族会社社長やその家族など、少数の関係者だけで株式の大部分を持っている会社のこと。事案BのJ社は、被相続人が代表取締役・筆頭株主(1,084株)を務める同族会社であり、配当や決算期の変更を会社側の判断だけで決めやすい立場にあった。
取引相場のない株式証券取引所に上場していないため、日々の売買価格が存在しない会社の株式のこと。上場株式であれば市場価格がそのまま時価になるが、取引相場のない株式は通達の計算方法(類似業種比準方式・純資産価額方式など)で評価額を作る必要があり、そこに総則6項が働く余地が生まれる。

判決文・裁決書を読むときに出てくる言葉

言葉何かこの記事とどう関係するか
国税局長全国に11ある国税局(税務署を束ねる組織)のトップ。国税庁長官の指揮を受ける立場で、税務署よりは上位だが、国税庁長官よりは下位にあたる。総則6項が発動される手続きでは、まず国税局長が「通達どおりの評価額は著しく不適当だ」と判断した事案を国税庁長官へ報告し、長官からの指示を受けて初めて動く。税務署だけの判断では発動できない(Section 5参照)。
相続税法22条相続税・贈与税で財産をどう評価するかを定めた法律の条文。「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」と定めている。最高裁判決の出発点になる条文。財産評価基本通達は法律ではなく、この22条を運用するために国税庁が作ったマニュアルにすぎない、という位置づけが判決の前提になっている(Section 4)。
上告人一審・二審の判決を不服として最高裁判所に訴えた側の当事者を指す呼び方。この記事の事案Aでは、通達どおりの評価額での申告を認めてほしい相続人側を指す。Section 4の判決文の引用にそのまま出てくる言葉。「上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせる」という一文の主語は、事案Aの相続人たちのこと。
下級行政機関ある行政機関から見て、指揮命令を受ける立場にある下位の機関のこと。ここでは国税庁長官から見た国税局・税務署を指しており、裁判所の審級(下級裁判所)とは別の意味。判決文は「評価通達は国税庁長官が下級行政機関を指揮するために出した通達にすぎない」と述べ、これが国民を直接拘束する法律ではないと判断する根拠にしている(Section 4)。
平等原則同じ条件にある人を、正当な理由なく異なって扱ってはならないという法律上の原則。特定の人にだけ通達評価額より高い評価額を当てはめることが許されるかどうかは、相続税法22条の話とは別に、この平等原則に違反しないかという観点から判断される(Section 4)。
客観的な交換価値個人の思い入れや事情を除いた、市場で実際に成立するであろう取引価格のこと。最高裁は相続税法22条の「時価」を、この客観的な交換価値だと判断した。あえて「客観的な」と付けているのは、持ち主にとっての思い入れの値段のような「主観的な価値」とは区別するためであり、相続財産は主観的な価値ではなく客観的な交換価値で評価する、という考え方を示している(Section 4)。

第6章以降で説明なしに出てくる言葉

言葉何かこの記事とどう関係するか
課税時期相続・贈与によって財産を取得した日のこと。相続なら被相続人が亡くなった日、贈与なら贈与を受けた日を指し、財産の評価額はこの日を基準に計算する。Section 6以降、「課税時期における通常の取引価額」のように説明なしで繰り返し出てくる。「相続や贈与で財産をもらった、その日」と読み替えれば意味が通る。
遺贈遺言によって、相続人以外の人も含め、特定の人に財産を渡すこと。相続人にしか認められない「相続」とは異なり、遺言があれば相続人でない人にも財産を渡せる。Section 8のマンション評価の新ルールは「相続、遺贈又は贈与により取得した財産」に適用されると書かれている。相続・遺贈・贈与のどれで財産を取得しても、評価のルールは共通して関わってくる。
帳簿価額会社の帳簿(決算書)に記載されている、その資産を取得したときの金額をもとにした価額。今売ったらいくらになるかという時価とは別物。財産評価基本通達185は、法人が直近3年以内に取得した土地・建物について、原則は時価で評価するが、帳簿価額が時価相当と認められる場合は帳簿価額で評価してよいとしている(Section 6)。
時価純資産法会社の資産・負債を時価(今売買したらつく値段)で評価し直し、その差額を会社の値段とする計算方法。もともとはM&A(会社の買収・合併)で会社の値段を決めるときに使われる一般的な評価手法。通達が定める純資産価額方式は、資産を相続税評価額(路線価等の通達の評価額)ベースで評価し、含み益に対する法人税等相当額(財産評価基本通達186-2により、評価差額に38%を乗じた金額。令和8年3月25日の改正後の割合)を差し引いて計算する。時価純資産法は資産・負債を時価で評価し直す一般的な企業価値評価の手法で、この38%の法人税等相当額の控除のような、相続税の通達独自の調整を前提にした方式ではない。事案BでJ社の時価純資産法がどの資産をどう時価評価し直したものかという計算の内訳までは、この記事が根拠にしている裁決書からは確認できていない(Section 7)。
信託受益権信託(財産を預けて管理・運用してもらう仕組み)によって、その財産から生まれる利益を受け取る権利のこと。不動産そのものではなく、その不動産を管理する信託の「受益権」という形で間接的に不動産を持つことになる。Section 9の令和8年度税制改正大綱は、信託受益権を通じて間接的に持っている貸付用不動産についても、取得時期を問わず時価で評価すると書いている。
不動産特定共同事業契約複数の出資者からお金を集め、不動産の売買・賃貸で得た収益を出資額に応じて分配する契約の仕組み。不動産特定共同事業法という法律にもとづく。信託受益権と同じく、この契約を通じて間接的に貸付用不動産を持っている場合も、Section 9の税制改正大綱で時価評価の対象にすると書かれている。
評価通達179、189-2どちらも財産評価基本通達の中の項目番号。179は取引相場のない株式を、会社の規模(大会社・中会社・小会社)に応じてどう評価するかを定めた項目。189-2は「比準要素数1の会社」という特殊な区分にあたる会社の株式の評価方法を定めた項目で、原則は純資産価額方式を使う。Section 7の表に「評価通達179(2)」「評価通達189-2」という形で番号だけが出てくる。179(2)は中会社の評価方式(類似業種比準方式との併用)、189-2は比準要素数1の会社の評価方式(原則は純資産価額方式)を指し、J社が配当と決算期変更によってどちらの区分に該当するかが変わったことが、評価額の差を生んだ。

なぜ路線価は実際の売買価格より低いのか

路線価は地価公示価格(国が毎年公表する土地の標準的な価格)の8割程度を目安に定められている、という説明が広く流通している。ただしこの8割という水準を国税庁の一次資料で確認することは、今回できなかったので、ここでは数字として断定しない。

確かなのは、事案Aで実際に起きたことのほうである。購入価額13億8,700万円に対し、通達による評価額は3億3,370万6,241円だった(約24%)。どの程度低くなるかは土地の場所・形状・利用状況・建物の使われ方によって変わり、一律に「何パーセント低い」と言えるものではない。

原則と例外 — 総則6項はどこで割り込むか

→ この図は横にスクロールできます

原則 — 通達どおりに評価する例外 — 総則6項相続・贈与で財産を取得する土地・建物・自社株など財産評価基本通達で評価する路線価・類似業種比準方式など通達評価額で申告する実勢価格より低くなることがある申告どおり確定する右へ進む割合は本記事の資料では不明著しく不適当と認められるとき国税局長が国税庁長官へ上申する税務署の判断だけでは動かない国税庁長官が指示するこれが総則6項の発動通達によらない方法で評価し直す不動産鑑定評価額・時価純資産法など更正処分・過少申告加算税事案Aでは相続税0円が2億4,049万8,600円に

左が通常の流れ。右が総則6項が発動された場合。税務署の一存では右へ進めず、国税庁長官の指示という手続きが要る。金額は最高裁 令和2年(行ヒ)第283号 判決文による。

→ 次のSection 3では、事案Aの数字を使って、13億8,700万円の購入価額がどのように3億3,370万6,241円まで圧縮されたのかを段階で見ていく。

🗜️ 13億8,700万円が3億3,370万円になる仕組み

このセクションの3点

① 甲乙合わせて購入価額13億8,700万円は、通達による評価額では3億3,370万6,241円になった(購入価額の約24%)

② この評価額を含む相続財産全体から、借入金10億5,500万円を含む債務が差し引かれ、申告時の課税価格の合計額は2,826万1,000円、相続税の総額は0円になった

③ これは事案Aという1件の実額であり、一般的な圧縮率として使える数字ではない

13億8,700万円

購入価額(甲不動産+乙不動産の合計)

3億3,370万6,241円

通達による評価額(合計・購入価額の約24%)

10億5,500万円

借入金(債務として控除)

2,826万1,000円

申告時の課税価格の合計額(相続税の総額0円)

事案Aで何が起きたかを、金額の流れだけで追う。甲不動産・乙不動産をあわせた購入価額13億8,700万円が、相続税の申告ではどこまで小さくなったのかを、通達による評価額と、借入金の債務控除という2つの段階に分けて見る。

購入価額 → 通達評価額 → 申告時の課税価格の合計額
購入価額(甲+乙合計)
138700万円

8億3,700万円+5億5,000万円

通達による評価額(甲+乙合計)
33370.6万円

正確には3億3,370万6,241円。購入価額の約24%

申告時の課税価格の合計額
2826.1万円

借入金10億5,500万円を含む債務を差し引いた後の申告額。相続税の総額は0円

出典: 最高裁 令和4年4月19日 第三小法廷判決(令和2年(行ヒ)第283号)。これは事案Aという1件の実額であり、一般的な圧縮率として使える数字ではない。

項目甲不動産乙不動産合計
購入価額8億3,700万円5億5,000万円13億8,700万円
借入金6億3,000万円(信託銀行)3億7,800万円(信託銀行)+4,700万円(共同相続人の1名から)10億5,500万円
通達による評価額2億0,004万1,474円1億3,366万4,767円3億3,370万6,241円
国税の鑑定評価額7億5,400万円5億1,900万円12億7,300万円

通達による評価額(3億3,370万6,241円)は、甲不動産・乙不動産という2つの不動産だけの評価額であり、申告時の課税価格の合計額とイコールではない。申告では、この評価額を含む相続財産全体から、甲乙の購入のために借り入れた合計10億5,500万円を含む債務が差し引かれ(相続税の計算では、借入金などの債務は遺産の価額から差し引くことができる)、その結果、申告時の課税価格の合計額は2,826万1,000円、相続税の総額は0円になった。

一般論として、路線価(国税庁が道路ごとに定める、宅地の相続税評価額を計算するための1平方メートルあたりの価格)は公示地価等を基準に年1回改定される評価であり、実際の売買価格は個別の立地・需給・取引時期の市況によって決まる。このため、不動産を購入した直後に相続税評価を行うと、購入価額(あるいは市場での時価)と路線価等にもとづく通達評価額との間に差が生じることがある、と一般に説明される。

判決文に書かれていない内訳

判決文には、甲不動産・乙不動産の通達評価額(合計3億3,370万6,241円)が、具体的にどの路線価・借地権割合・建物の固定資産税評価額をもとに算出されたのかという内訳は記載されていない。国税の鑑定評価額(合計12億7,300万円)がどのような鑑定手法(取引事例比較法・収益還元法など)で算出されたかも判決文からは分からない。この記事では、判決文に書かれている数字だけを使い、書かれていない内訳は推測しない。

→ 次のSection 4では「最高裁は何を決め手にしたか」を解説する。

⚖️ 最高裁は何を決め手にしたか

このセクションの3点

① 相続税法22条の「時価」とは客観的な交換価値のことであり、評価通達は国税庁長官が下級行政機関を指揮するために出した通達にすぎず、国民に対して直接の法的効力を持つ根拠は見当たらない、と判決文は述べている

② 課税価格に算入される価額は、客観的な交換価値としての時価を上回らない限り相続税法22条に違反しない。通達評価額を上回ることだけでは22条違反にならない。ただし、特定の人についてだけ通達評価額を上回る価額にすることには、平等原則との関係で合理的な理由が別に問われる

③ 判決の決め手は、租税負担の軽減を知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行したという事情が認定されたことだった。評価額が離れているだけでは足りない

最高裁は何を根拠に、通達による評価額(3億3,370万6,241円)ではなく、それを大きく上回る評価を認めたのか。判決文の論理を3段階に分けて見る。

判決文の論理の骨格

前提

相続税法22条の「時価」とは客観的な交換価値のこと

評価通達は、国税庁長官が下級行政機関(国税局・税務署)を指揮するために出した通達にすぎず、国民に対して直接の法的効力を持つ根拠は見当たらない、と判決文は述べている

▶

だから

通達評価額を上回ることだけでは、相続税法22条には違反しない

課税価格に算入される価額は、取得の時における客観的な交換価値としての時価を上回らない限り、相続税法22条に違反しない。ただしこれは22条の話であって、特定の人だけ通達と違う扱いをしてよいかは、次の平等原則の問題として別に判断される

▶

ただし

租税負担の軽減を知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行した

判決文はまず、課税庁が特定の者についてだけ通達評価額を上回る価額にすることは、合理的な理由がない限り平等原則に違反して違法だとする。そのうえで、通達どおりの画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には合理的な理由があるとした

判決文の引用(1)— 意図の認定

「本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行した」

出典: 最高裁 令和4年4月19日 第三小法廷判決(令和2年(行ヒ)第283号)

判決文の引用(2)— 通達評価額によらなかった場合の試算

「本件購入・借入れがなかったとすれば、本件相続に係る相続税の課税価格の合計額は6億円を超えるものであった」

出典: 同判決

それでも、差が大きいことだけでは理由にならない

判決文の引用(3)— 差が大きいだけでは理由にならない

「本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない」

ここでいう「上記事情」とは、通達どおりの画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情のこと。つまり最高裁は、評価額の差が大きいという事実だけでは総則6項を使う理由にならないと、はっきり述べている。

出典: 同判決

評価額が離れているだけでは足りない

・申告した評価額(通達評価額)が、国税の鑑定評価額よりも大幅に低いという事実だけでは、総則6項の適用理由にならない

・判決文が示したのは、通達評価額を時価が上回るかどうかではなく、租税負担の軽減を知り、期待して、あえて企画して実行したという事情の有無だった

・本事案では、購入・借入れの時期が相続開始の直前であったことなど、行為の意図を推認させる事情が積み重なっていた

つまり判決は、通達評価額と時価(あるいは国税の鑑定評価額)がどれだけ離れているかという「結果の乖離」だけを問題にしたのではない。通達評価額が時価を上回らない限り相続税法22条には違反しないという原則を確認したうえで、それでもなお総則6項を適用できるのは、租税負担の軽減を狙って行為を企画・実行したという「事情」が認められる場合に限られる、という枠組みを示した。

→ 次のSection 5では、総則6項がどのような手続きで発動されたか(国税庁長官の指示から更正処分までの時系列)を見る。

⏱️ 発動の手続きと、かかった時間

このセクションの3点

① 総則6項は税務署が単独で発動できるものではなく、国税庁長官の指示という手続きを経る

② 事案Aでは、国税庁長官の指示(平成28年3月10日)から更正処分(平成28年4月27日)まで48日だった

③ 一方で、相続開始(平成24年6月17日)から更正処分までは3年10か月かかっている

財産評価基本通達の総則6項は「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と定めている。つまり、申告を受け取った現場の税務署長が、その場の判断だけで通達評価を覆すことはできない。窓口の税務署ではなく、全国の国税組織のトップである国税庁長官の指示という手続きを経る必要がある。

事案Aでは、この手続きが実際にどう動いたかが判決文から追える。

  1. 1

    平成21年1月30日

    甲不動産を購入

    8億3,700万円で購入。6億3,000万円を信託銀行から借り入れた。
  2. 2

    平成21年12月25日

    乙不動産を購入

    5億5,000万円で購入。
  3. 3

    平成24年6月17日

    相続開始

    被相続人が94歳で死亡した。
  4. 4

    平成25年3月7日

    乙不動産を売却

    5億1,500万円で第三者に売却した。相続開始から約9か月後。
  5. 5

    平成25年3月11日

    相続税を申告

    札幌南税務署長へ提出。課税価格の合計額2,826万1,000円、相続税の総額0円。
  6. 6

    平成28年3月10日

    国税庁長官が指示

    国税庁長官が札幌国税局長へ指示した。
  7. 7

    平成28年4月27日

    更正処分

    課税価格の合計額8億8,874万9,000円、相続税の総額2億4,049万8,600円。

48日

国税庁長官の指示 → 更正処分

3年10か月

相続開始 → 更正処分

相続税の申告期限は、相続開始から10か月以内である。事案Aの申告は平成25年3月11日で、この期限どおりに出されている。ところが更正処分が出たのは平成28年4月27日で、申告からさらに3年1か月あまりが経っていた。

長官の指示から更正処分までの48日だけを見ると短いが、そこに至るまでの調査・検討には、申告から3年近くの時間がかかっている。相続税の申告を終えた時点で手続きが完結したわけではなかった、というのが事案Aの時間軸である。

→ 次のSection 6では、法人を使う場合に評価の道筋がどう変わるか、そして「3年経てば路線価で評価できる」という理解がなぜ成り立たないかを確認する。

🏢 法人を使う道と「3年ルール」の正体

このセクションの3点

① 財産評価基本通達185の「3年」は、法人(評価会社)が持つ土地・家屋を株式の純資産価額方式で評価するときの規定である

② 個人が直接相続した不動産そのものに、この3年ルールが適用されるわけではない。総則6項とも別の条文

③ 事案Aでは購入から相続開始まで3年以上経っていたが、それでも総則6項が適用された

財産評価基本通達185(純資産価額)の該当部分:

「この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。」

出典: 国税庁 財産評価基本通達185

よくある誤解

・誤解: 取得から3年経った不動産は、路線価で評価できる

・事実: 通達185の3年の定めは、取引相場のない株式を純資産価額方式で評価するときに、評価会社(その法人)が持っている土地・建物を通常の取引価額で評価するという規定である

・事実: 個人が直接相続した不動産そのものに適用される規定ではない。総則6項とも別の条文である

個人が直接持つ場合 ⇄ 法人が持ち、その株式を相続・贈与する場合

個人が不動産を直接持つ場合

  • ・相続財産は不動産そのもの
  • ・評価は財産評価基本通達の土地・家屋の定め(路線価方式・倍率方式等)による
  • ・通達評価額が時価と大きく乖離し、租税負担の軽減を意図した行為と認定されれば、総則6項によって時価で評価し直されることがある(事案A)

法人が不動産を持ち、その株式を相続・贈与する場合

  • ・相続財産は不動産ではなく、その法人の株式
  • ・株式の評価方法(類似業種比準方式・純資産価額方式等)が新たに関わる
  • ・純資産価額方式で評価する場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地・家屋は、通達185により通常の取引価額で評価される

ここまでで確認できるのは、不動産を個人で直接持つか、法人に持たせてその株式を相続・贈与するかで、評価の道筋そのものが変わるという事実である。どちらが有利かはこの記事では判断しない。

事案Aの甲不動産は、平成21年1月30日に購入されている。相続開始は平成24年6月17日で、購入から3年以上が経過していた。それでもこの不動産は、通達どおりの評価額ではなく、国税の鑑定評価額によって評価し直された(Section 4)。

通達185の「3年」は、法人が持つ土地・家屋を株式の純資産価額方式で評価するときの規定であり、総則6項とは別の条文である。「取得から3年経過した」という事実だけをもって、総則6項が適用されるかどうかを判断することはできない。

→ 次のSection 7では、事案B(不動産賃貸業の同族会社株式)を詳しく見る。

📑 配当と決算期変更で税額を半分にした事案

このセクションの3点

① 平成29年5月1日の配当と5月22日の決算期変更、この2つの行為だけでJ社の評価区分が「比準要素数1の会社」から「中会社」に変わった

② 申告額は1株1,966,144円・総額21億3,130万96円。国税は総則6項を使い1株3,748,900円・総額40億6,380万7,600円とする更正処分を行い、令和6年3月25日に納税者敗訴が確定した

③ 審判所は、この2つの行為が無ければ評価額は34億1,966万8,784円だったはずで、行為により納付税額が約50%減少していたと認定した

被相続人はJ社(不動産賃貸業を中心とする同族会社)の代表取締役・筆頭株主で、1,084株を保有していた。事案Aの不動産購入・借入れとは異なり、事案Bで問題になったのは株式の評価額そのものを動かした2つの行為である。

たった2つの行為で変わった会社の区分

取引相場のない株式(証券取引所に上場していないため市場価格が存在しない会社の株式)は、会社の規模や実態に応じて複数の区分に分けられ、区分ごとに使える評価方式が決まる。比準要素数1の会社は、配当・利益・純資産という3つの比準要素(類似業種比準方式で使う指標)のうち2つ以上が乏しい会社を指し、原則として純資産価額方式(会社の正味の財産をもとに評価する方式)だけで評価される。これに対して中会社は、類似業種比準方式(同業種の上場会社の株価をもとに評価する方式)を一部併用できる区分であり、一般に評価額が下がりやすい。

J社は、平成29年5月1日の配当と5月22日の決算期変更という2つの行為によって、比準要素数1の会社から中会社へと区分が変わった。

  1. 1

    平成29年4月18日

    入院

    被相続人が入院した。
  2. 2

    平成29年5月1日

    配当を実施

    1株1,000円の配当を行った。
  3. 3

    平成29年5月12日

    遺言公正証書を作成

    入院からおよそ1か月後に遺言公正証書を作成した。
  4. 4

    平成29年5月22日

    決算期を変更

    決算期を12月31日から5月31日へ変更した。この配当と決算期変更の2つによって、J社は「比準要素数1の会社」から「中会社」になった。
  5. 5

    平成29年7月

    被相続人が死亡

    相続開始。入院からおよそ3か月後だった。
  6. 6

    令和5年5月11日

    更正処分

    国税は総則6項を適用し、時価純資産法で1株3,748,900円・総額40億6,380万7,600円とする更正処分を行った。
  7. 7

    令和6年3月25日

    審査請求を棄却

    国税不服審判所が審査請求を棄却し、更正処分を維持した。納税者敗訴。
項目申告額更正処分(総則6項)行為が無かった場合
評価方式評価通達179(2)の併用方式(比準要素数1の会社→中会社として類似業種比準方式を一部併用)時価純資産法評価通達189-2(純資産価額方式)
1株あたり評価額1,966,144円3,748,900円取得できず(総額のみ判明)
総額21億3,130万96円40億6,380万7,600円34億1,966万8,784円

審判所の認定

国税不服審判所は、平成29年5月1日の配当と5月22日の決算期変更が無かった場合、評価通達189-2(純資産価額方式)による評価額は34億1,966万8,784円になっていたはずだとし、この2つの行為により納付税額が約50%減少していたと認定した。令和6年3月25日、審査請求は棄却され、更正処分は維持された(納税者敗訴)。

更正処分によって実際にいくらの税額が追徴されたかは、裁決書の中でマスキングされており、本記事が根拠にしている一次資料からは取得できず。評価額そのものの差(更正処分40億6,380万7,600円-申告21億3,130万96円)は判明しているが、追徴税額そのものの金額は裁決書に記載がない。

事案Aは不動産の購入と借入れ、事案Bは株式の配当と決算期変更と、動かした財産の種類も行為の性質もまったく異なる。それでも共通しているのは、相続が近いことを前提に、評価額を下げる行為が行われたと国税・審判所の双方に認定されている点である。事案Aは相続開始(平成24年6月17日)の3年前後に不動産を購入・借入れし、事案Bは被相続人の入院(平成29年4月18日)から死亡(平成29年7月)までの間に配当と決算期変更を行っている。

→ 次のSection 8では、2024年1月から適用が始まった、居住用の区分所有財産(マンション)の新しい評価方法を扱う。

🏬 2024年1月から変わったマンションの評価

このセクションの3点

① 2024年1月から変わったマンションの評価は、令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した財産から適用される

② 評価乖離率=A+B+C+D+3.220という式で、築年数・総階数指数・所在階・敷地持分狭小度の4つの要素から計算する

③ 評価水準(1÷評価乖離率)が0.6未満なら評価乖離率に0.6を掛け、1を超えるなら評価乖離率をそのまま使う。0.6以上1以下なら補正しない

令和5年9月28日付(課評2-74・課資2-16)の通達で、居住用の区分所有財産(分譲マンションの一室)の評価方法が変わった。適用対象は令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産である。従来の路線価・固定資産税評価額をもとにした評価額に、新たに「区分所有補正率」という係数を掛けて補正する仕組みが加わった。

評価乖離率:4つの要素はどちらへ効くか

→ この図は横にスクロールできます

評価乖離率:4つの要素はどちらへ効くか↓ 築年数が長いA(係数△0.033)がよりマイナス方向に大きくなり、評価乖離率を押し下げる↑ 総階数が多い(高層)B(係数0.239)が大きくなり、評価乖離率を押し上げる↑ 所在階が高いC(係数0.018)が大きくなり、評価乖離率を押し上げる↓ 敷地持分狭小度が大きい(土地の持分が専有部分より小さい)D(係数△1.195)がよりマイナス方向に大きくなり、評価乖離率を押し下げる評価乖離率(A+B+C+D+3.220)が大きいほど→ 評価額を上げる方向の補正がかかる(区分所有補正率が大きくなる)

係数がプラスの要素は評価乖離率を押し上げ、マイナスの要素は押し下げる。具体的な数値の計算は、このあとの式と表で確認する。

評価乖離率の式

記号内容係数丸め方
A築年数 × 係数△0.033(指定なし)
B総階数指数 × 係数0.239小数点以下第4位切捨て
C所在階 × 係数0.018(指定なし)
D敷地持分狭小度 × 係数△1.195小数点以下第4位切上げ

評価乖離率=A+B+C+D+3.220(A・B・C・Dを足し、さらに3.220を足す)。評価乖離率が零または負数になったものは評価しない。

総階数指数と敷地持分狭小度の出し方

総階数指数=総階数 ÷ 33(小数点以下第4位切捨て、1を超える場合は1とする、地階を含まない)。なぜ33で割るのかについて、通達にはその理由が書かれていない。
敷地持分狭小度=敷地利用権の面積 ÷ 専有部分の面積(小数点以下第4位切上げ)。専有部分の広さに対して、自分が持つ土地の権利がどれだけ小さいかを表す値で、値が大きいほど「部屋の広さの割に、自分の持ち分の土地は少ない」ことを意味する。
評価水準=1 ÷ 評価乖離率。

係数の符号から読めること

A(築年数)は係数が△0.033というマイナスなので、築年数が多いほどAの値は小さく(マイナス方向に大きく)なり、評価乖離率を押し下げる。逆に言えば、築年数が浅いほど評価乖離率は上がる方向に働く。

B(総階数指数)は係数が0.239というプラスなので、総階数指数が大きい、つまり総階数が多い(高層の)建物ほどBの値は大きくなり、評価乖離率を押し上げる。総階数が多い高層の建物ほど評価乖離率は上がる方向に働く。

C(所在階)も係数が0.018というプラスなので、所在階が高いほどCの値は大きくなり、評価乖離率を押し上げる。所在階が高い部屋ほど評価乖離率は上がる方向に働く。

D(敷地持分狭小度)は係数が△1.195というマイナスなので、敷地持分狭小度(敷地利用権の面積を専有部分の面積で割った値)が大きいほどDの値は小さくなり、評価乖離率を押し下げる。逆に、敷地持分狭小度が小さい、つまり専有部分の面積に対して敷地の持分が小さいほど評価乖離率は上がる方向に働く。

評価水準による区分所有補正率の分岐

評価水準区分所有補正率
1を超える場合評価乖離率をそのまま区分所有補正率とする
0.6以上1以下の場合補正しない
0.6未満の場合評価乖離率 × 0.6 を区分所有補正率とする

評価水準は「1 ÷ 評価乖離率」であり、評価乖離率が高いほど評価水準は低くなる。評価水準が0.6を下回るということは、評価乖離率がそれだけ高い、つまり通達どおりの評価額と実際の時価との開きが大きいと見なされる状態である。この場合に評価乖離率へ0.6を掛けて評価額を引き上げることで、評価額を実際の時価に近づける方向へ補正する。反対に、評価水準が0.6以上1以下であれば、通達どおりの評価額と時価の開きはすでに小さいとみなされ、補正は行われない。

敷地利用権の価額=自用地としての価額 × 区分所有補正率。区分所有権の価額=自用家屋としての価額 × 区分所有補正率。

仮の数字で式に当てはめてみる

以下は仮の数字による式の当てはめであり、実在するマンションの評価額ではない。計算の仕組みを確認するためだけの例である。

項目(仮の数字)値
築年数10年
総階数20階
所在階15階
敷地持分狭小度0.1000
要素仮の数値係数計算結果効き方
総階数指数(Bの元になる中間値)20 ÷ 33(33で割った値)0.6060—
A(築年数)10年△0.033△0.330押し下げ
B(総階数指数)0.60600.2390.1448押し上げ
C(所在階)15階0.0180.270押し上げ
D(敷地持分狭小度)0.1000△1.195△0.1195押し下げ
評価乖離率(合計)A+B+C+D+3.220—3.1853合計

評価水準=1 ÷ 3.1853=約0.314。0.6未満なので、区分所有補正率=3.1853 × 0.6=1.91118となる。

区分所有補正率が出るまでの順番

1

4つの数を出す

築年数・総階数指数・所在階・敷地持分狭小度

▶

2

評価乖離率

A+B+C+D+3.220 を計算する

▶

3

評価水準

1 ÷ 評価乖離率

▶

4

区分所有補正率

0.6未満なら評価乖離率×0.6、1超なら評価乖離率、その間は補正なし

▶

5

評価額に掛ける

自用地としての価額・自用家屋としての価額に掛ける

→ 次のSection 9では、令和8年度税制改正大綱が貸付用不動産の評価についてどう書いているかを、大綱の原文から確認する。

📅 令和8年度税制改正大綱に書かれた、貸付用不動産の評価

このセクションの3点

① 令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日決定)に「相続税等の財産評価の適正化」という項目があり、貸付用不動産の評価方法を見直すと書かれている

② 柱は2つ。①相続開始前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産は、通達(路線価等)ではなく通常の取引価額(時価)で評価する②不動産特定共同事業契約や信託受益権を通じて保有する貸付用不動産は、取得時期を問わず時価で評価する

③ 適用は令和9年1月1日以後の相続等から。令和8年度税制改正の法律そのものは令和8年3月31日に成立・公布され4月1日に施行されているが、財産の評価方法は法律ではなく国税庁の通達で定められるため、この見直しを実施する通達が出されたかどうかは、この記事では確認できていない

5年以内

①の対象になる取得・新築の期間

100分の80

取得価額から計算する評価額の目安(課税上の弊害がない場合)

令和9年1月1日

適用開始(予定・相続等による取得分から)

令和8年度税制改正大綱のPDF(財務省・全121ページ)を「貸付」「評価」「相続税」「贈与税」で検索したところ、35ページ目の「二 資産課税」以降と、52ページ目の「(4)相続税等の財産評価の適正化」に該当する記載があった。この章は、そこに実際に書かれている文言だけを引用する。

見つかった記載: 貸付用不動産の評価の適正化(大綱52ページ)

大綱本文からの引用(52ページ「三 その他」(国税)(4))

「相続税法の時価主義の下、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離の実態を踏まえ、その取引実態等を考慮し、次の見直しを行う。」

① 相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産

大綱の原文は次のとおり。

「① 被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。」

続けて、注として次の記載がある。

「(注)上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができることとする。」

つまり、相続が起きる(課税時期=相続開始日)前の5年以内に、お金を払って買った、または新築した貸付用不動産は、これまでのように路線価などの通達評価額ではなく、時価(通常の取引価額)で評価することになる。ただし課税上の弊害がなければ、買ったときの金額に地価の変動を反映させて計算した額の80%相当額で評価してよい、という緩和も同時に書かれている。

② 不動産特定共同事業契約・信託受益権型の貸付用不動産

大綱の原文は次のとおり。

「② 不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。」

注として、評価額の求め方も書かれている。

「(注)上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額によって評価することができることとする。ただし、これらに該当するものがないと認められる場合には、上記①に準じて評価(取得時期や評価の安全性を考慮)する。」

①が「個人が直接持っている不動産」の話であるのに対し、②は不動産特定共同事業契約や信託受益権を通じて間接的に貸付用不動産を持っている場合の話である。こちらは取得時期を問わず(5年より前に取得したものでも)時価評価の対象になる、という違いがある。

施行時期と経過措置(大綱の原文)

大綱には適用時期についても注が付いている。

「(注)上記の改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用する。ただし、上記①の改正については、当該改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用しない。」

つまり原則は令和9年1月1日以後の相続等から適用される。ただし①については、通達(具体的な運用ルール)が定められる日までに、5年より前から持っていた土地に新築した家屋には適用しない、という経過措置が付いている。

Section 1・3・4・5で見た事案Aとの時期の関係(本記事による整理・断定ではない)

①の対象は「課税時期(相続開始日)前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産」である。事案Aの甲不動産(平成21年1月30日購入)は、相続開始(平成24年6月17日)の約3年5か月前、乙不動産(平成21年12月25日購入)は約2年6か月前の取得であり、いずれも「5年以内」の枠に入る時期の取得にあたる。ただし、①はあくまで「貸付用不動産」(賃貸の用に供する不動産)を対象とする規定であり、甲・乙不動産が貸付用に該当するかどうかは、本記事がSection 1で参照した判決文の抜粋だけでは確認できない。ここでは取得時期だけが5年以内の枠と重なるという事実を指摘するにとどめる。

大綱で見つかった、その他の相続税・贈与税まわりの改正項目

ここから下は、この記事の本筋(総則6項)とは直接の関係がない参考である。同じ大綱の「二 資産課税」(35〜36ページ)には、貸付用不動産の評価とは別に、相続税・贈与税の納税猶予や非課税措置に関する記載もあった。本筋ではないが、大綱のどこまでを読んだかを示す記録として、書かれている範囲でそのまま表にして残す。相続税・贈与税に関わる人以外は読み飛ばしてよい。

項目何が変わるかいつから誰に効くか
貸付用不動産の評価の適正化①(前掲)相続開始前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産を、通達評価ではなく通常の取引価額(時価。課税上の弊害がなければ取得価額基準の80%相当額も可)で評価する令和9年1月1日以後に相続等で取得する財産の評価に適用(①は通達に定める日までの経過措置あり)相続開始の直前に貸付用不動産を取得・新築した被相続人と、その相続人
貸付用不動産の評価の適正化②(前掲)不動産特定共同事業契約・信託受益権を通じて保有する一定の貸付用不動産を、取得時期を問わず通常の取引価額で評価する令和9年1月1日以後に相続等で取得する財産の評価に適用不動産特定共同事業や不動産信託受益権を通じて貸付用不動産を保有する人
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置教育資金管理契約に基づく信託等可能期間(令和8年3月31日まで)を延長せず終了する。同日までに拠出された金銭等には、引き続き非課税措置を適用できる令和8年3月31日で新規の信託等(拠出)の受付を終了教育資金の一括贈与を検討している直系尊属・その子や孫
個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度個人事業承継計画の提出期限を2年6月延長する提出期限を2年6月延長(新しい期限の日付は大綱に記載なし)個人事業の後継者
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度特例承継計画の提出期限を1年6月延長する提出期限を1年6月延長(新しい期限の日付は大綱に記載なし)非上場株式の後継者(事業承継税制の対象法人)
医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等適用期限を3年延長。あわせて、認定医療法人の移行計画の認定要件のうち、特定外国人患者への請求基準を見直す適用期限を3年延長(起算日は大綱に記載なし)医療法人の後継者・移行計画の認定を受けた医療法人
農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度農地等を収用交換等により譲渡した場合に利子税の全額を免除する措置の適用期限を5年延長する適用期限を5年延長(起算日は大綱に記載なし)農地の相続人・受贈者

この章の限界

・この章が引用しているのは「令和8年度税制改正大綱」(令和7年12月26日決定)であって、条文そのものではない。所得税法等の一部を改正する法律は令和8年3月31日に成立・公布され令和8年4月1日に施行されている(財務省の公表による)が、財産の評価方法は法律ではなく財産評価基本通達で定められるため、大綱に書かれた貸付用不動産の評価の見直しを実施する通達が発遣されたかどうかは、私が探した範囲では確認できなかった

・「個人事業用資産」「非上場株式」「医業継続」「農地」の各納税猶予制度は、延長される期限の具体的な日付が大綱本文には書かれていなかった(「○年○月延長する」という記載のみ)ため、この記事でも日付を補って書いていない

・大綱を「貸付」「評価」「相続税」「贈与税」で検索した範囲での確認であり、大綱121ページ全文を隅から隅まで読んだわけではない。他の箇所に相続税・贈与税関連の記載が残っている可能性はある

→ 次のSection 10では、ここまでの事案と改正を踏まえて、何が適法で何が問題になったのかの線引きを整理する。

🚧 2件で、何が認定されたか

このセクションの3点

① 通達どおりに評価すること自体は違法ではない。最高裁も、評価額が時価を上回らない限り相続税法22条に違反しないと述べている

② 問題になったのは、租税負担の軽減を知り、これを期待して、あえて企画して実行したと認定されたとき

③ 2件に共通するのは、相続が近いことを前提にした一連の行為があったと認定された点。ただし行為から相続までの期間は2か月から3年5か月まで開きがあり、期間の長短だけで線を引くことはできない

通達(国税庁が実務上の取り扱いとして定めている評価の基準)どおりに財産を評価すること自体は、違法ではない。最高裁は令和4年4月19日の判決で、次のように述べている。

「課税価格に算入される財産の価額は、取得の時における客観的な交換価値としての時価を上回らない限り相続税法22条に違反しない」

つまり、通達で計算した評価額が実際の取引価格(時価)よりずっと低くても、その差があること自体は違法にならない。事案Aでは、通達による評価額(3億3,370万6,241円)が国税の鑑定評価額(12億7,300万円)の約3.8分の1しかなかったが、この差の大きさそのものが問題視されたわけではない。

問題になったのは、評価額の低さそのものではなく、その評価額に至った行為の目的だった。最高裁は事案Aについて、次のように認定している。

「本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行した」

ただしこれは、最高裁がこの事案について、通達どおりの画一的な評価が実質的な租税負担の公平に反すると言える事情を基礎づけるものとして認定した事実である。判決が総則6項の発動要件を一般的に列挙したものではない。「この3つが揃わなければ絶対に適用されない」と読むことはできない。

2件に共通していたのは、相続を前提にした一連の行為だった

2件に共通するのは、相続が近いことを前提とした一連の行為が認定されたという点である。ただし、時間の近さは共通していない。事案Bは2か月だが、事案Aは3年5か月前と2年6か月前で、いずれも「直前」とは言いにくい。期間の長短だけを判断の物差しにはできない。

事案Aでは、甲不動産の購入・借入れは相続開始(平成24年6月17日)の3年5か月前(平成21年1月30日)、乙不動産は2年6か月前(平成21年12月25日)に行われた。乙不動産は相続の約9か月後(平成25年3月7日)に第三者へ売却されている。

事案Bでは、被相続人の入院(平成29年4月18日)からわずか13日後に配当が実施され(5月1日)、その3週間後に決算期が変更され(5月22日)、その2か月後に被相続人が死亡している(7月)。

認定に効いた事情/それだけでは効かなかった事情

認定に効いた事情

事案A・事案Bで指摘された

  • ・借入れと購入が一体の計画になっていたこと(事案A)
  • ・相続が近いことを前提にした行為であったこと
  • ・その行為がなければ課税価格が6億円を超えていたこと(事案A)
  • ・その行為がなければ評価額が34億1,966万8,784円になり、納付税額が約50%減少していたこと(事案B)

それだけでは効かない事情

評価額と実勢価格の差だけでは

  • ・通達評価額が時価より低いこと自体
  • ・鑑定評価額が通達評価額の約3.8倍あったこと自体(事案A)

「こうすれば安全」ではない

ここまでの整理は、2件の事案でこう認定されたという事実の記録であり、「この行為を避ければ総則6項は適用されない」という保証ではない。総則6項の適用は個別の事実関係に対する判断であり、似た形の行為でも事実関係が異なれば結論は変わりうる。

→ 次のSection 11では、私が確認できなかったことを書く。

🔍 私が確認できなかったこと

このセクションの3点

① 仙台薬局事件と資産管理会社事件は、判決文・裁決書の原文に到達できなかったため、数値を本文の事実として扱っていない

② 贈与税で総則6項が発動された事案は、探した範囲では見つけられなかった。今回確認できた2件はいずれも相続税

③ 事案Aは相続税の総額が0円から2億4,049万8,600円になったことが判決文から分かるが、加算税を含めた最終的な負担額は確認できていない。事案Bは裁決書がマスキングされており増えた税額そのものが分からない

ここまでの10章は、判決文と裁決書の原文に一次資料として到達できたものだけを事実として書いてきた。ここでは、その線の外側にあるもの、つまり調べたが確認できなかったことを並べる。

事案伝えられている経緯確認できなかったこと
仙台薬局事件東京地裁 令和6年1月18日 → 東京高裁 令和6年8月28日(令和6年(行コ)第36号)。納税者勝訴と伝えられている判決文の原文に到達できず、金額・経緯を本文の事実として扱っていない。更正処分の日付が資料により平成27年8月7日と平成30年8月7日の2通りに割れており、どちらが正しいか確定できなかった
資産管理会社事件審判所 令和3年8月27日裁決 → 東京地裁 令和7年1月17日 → 東京高裁 令和7年6月19日。結論が二転したと伝えられている裁決書・判決文の原文に到達できず、金額・経緯を本文の事実として扱っていない

本文の事実として使っていないもの

・仙台薬局事件の金額・経緯(判決文原文に未到達)

・資産管理会社事件の金額・経緯(裁決書・判決文原文に未到達)

・贈与税で総則6項が発動された事案(探した範囲では見つからなかった)

・事案A・事案Bの追徴税額そのもの(非公表またはマスキング)

税理士法人や会計事務所の解説記事には、これらの事案の金額が具体的に載っているものもある。しかし、原文を読んでいない数字を事実として書かない、というのがこの記事の方針である。そのため、ここでは解説記事のURLも出典として本文には貼っていない。

贈与税についても同じ調べ方をしたが、総則6項が発動された事案を見つけることはできなかった。今回確認できた事案A・事案Bは、いずれも相続税である。総則6項が贈与税に適用され得ないという意味ではなく、あくまで今回の調査で見つけられなかった、という事実にとどまる。

一次資料に当たれたかどうか

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最高裁 令和2年(行ヒ)第283号 判決文

判決文PDFを全文読み、金額・日付をすべてそこから取った

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国税不服審判所 令和6年3月25日裁決

裁決書の全文を読んだ。ただし追徴税額はマスキングされている

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財産評価基本通達185

国税庁サイトの通達原文を読んだ

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居住用の区分所有財産の評価(令和5年9月28日付)

通達原文の計算式をそのまま写した

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令和8年度税制改正大綱

財務省のPDF全121ページから該当箇所を読んだ

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仙台薬局事件の判決文

原文に到達できず。金額も経緯も本文の事実として使っていない

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資産管理会社事件の裁決書・判決文

同じく原文に到達できず

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贈与税で総則6項が発動された事案

探した範囲では見つけられなかった

→ 次のSection 12では、この記事の限界をまとめる。

📎 この記事の限界

このセクションの3点

① 一次資料で数値まで確認できた事案は2件のみで、総則6項の全体像を示すものではない

② これは税務の助言ではなく記録である。判決も裁決も個別の事実関係に対する判断であり、似た形でも結論は変わりうる

③ 私が読んだのは判決文・裁決書・通達・大綱の原文だけで、判例集の解説や実務書は読んでおらず、専門家の評価は反映されていない

ここまで書いてきたことには、いくつかの限界がある。

①一次資料で数値まで確認できた事案は、事案A(最高裁 令和4年4月19日判決)と事案B(国税不服審判所 令和6年3月25日裁決)の2件だけである。総則6項が発動された事案はこの2件に限られるわけではなく、この記事は総則6項の全体像を示すものではない。

②これは税務の助言ではない。記録である。何をすべきか、何を避けるべきかを勧める記事ではない。

③判決も裁決も、個別の事実関係に対する判断である。似た形の行為であっても、事実関係が違えば結論は変わる。

④通達も税制も毎年変わる。居住用の区分所有財産(マンション)の評価は令和6年1月1日に変わったばかりで、令和8年度の税制改正大綱にも貸付用不動産の評価に関する記載が続いている。

⑤私が読んだのは、判決文・裁決書・通達・税制改正大綱の原文だけである。判例集の解説や実務書は読んでいない。税理士・弁護士など専門家の評価は、この記事には反映されていない。

資料何が書いてあるかURL
最高裁 令和4年4月19日 第三小法廷判決(令和2年(行ヒ)第283号)事案Aの認定事実と判示courts.go.jp(PDF)
国税不服審判所 令和6年3月25日裁決事案Bの認定事実kfs.go.jp
財産評価基本通達185いわゆる「3年ルール」の原文(法人が持つ土地・家屋の評価)nta.go.jp
居住用の区分所有財産の評価(令和5年9月28日付 課評2-74・課資2-16)マンション評価の計算式。令和6年1月1日以後の取得財産に適用nta.go.jp
令和8年度税制改正大綱貸付用不動産の評価に関する記載mof.go.jp(PDF)

2件

数値まで一次資料で確認できた事案

2件

原文に到達できなかった事案

0件

見つけられた贈与税の事案

5本

実際に読んだ一次資料

→ 最後のSection 13では、この記事を公開する前に受けた2つのレビューで、私のどの主張が崩れたかを書く。

🔍 公開前に、私の書き方が2つのレビューで崩れた

このセクションの3点

① 公開前に、別のモデル(GPT)へ「この記事は国税が正しい側に寄りすぎていないか」を問う形でレビューさせ、指摘6件のうち6件すべてを反映した

② 最も重かったのは、私が第10章で「2件に共通するのは時間の近さ」と書きながら、第6章では「3年以上経っていても適用された」と書いていた自己矛盾

③ 別に、税金を習っていない高校生としてこの記事を読ませたところ、内容58点・見た目41点だった。第8章の計算で読むのをやめたと言われた

この記事は、公開前に2種類のレビューを通している。1つは別のモデルによるクロスレビューで、あえて「この記事は国税が正しい側に寄りすぎていないか」という、私にとって都合の悪い問いを立てて読ませた。もう1つは、税金も会計も習っていない高校生として読ませ、点数をつけさせるレビューである。

どちらも、自分では見えていなかったものを持ち帰ってきた。以下は、そこで崩れた私の主張と、直した内容である。崩れた主張を消して書き直すのではなく、何が崩れたかを残す。

別モデルのレビューで崩れた6点

私が書いていたこと何が問題だったかどう直したか
(第10章)2件に共通するのは時間の近さ。相続や入院からの日数の短さが認定の決め手のひとつ同じ記事の第6章で「甲不動産は購入から相続まで3年以上経っていたが適用された」と書いている。事案Aは3年5か月前と2年6か月前で、これを「直前」とまとめるのは自分の記述と矛盾する共通点を「相続が近いことを前提にした一連の行為が認定された点」に改め、期間は2か月から3年5か月まで開きがあり、期間の長短だけで線は引けないと明記した
(第4章・第10章)知り、期待し、あえて企画して実行したという3つの要素が揃って初めて認定に至る最高裁が総則6項の発動要件を一般的に列挙したわけではない。当該事案の事情を総合して合理的理由を認めたもので、「揃わなければ絶対に適用されない」とは読めない「この事案について認定した事実であり、判決が一般的な要件を列挙したものではない」と書き添えた
(第4章)通達評価額を上回るかどうかは関係ない判決は、時価を上限とする相続税法22条の問題と、特定の人だけ通達から離れて課税してよいかという平等原則の問題を、分けて論じている。「関係ない」では国税に制約がないように読める「上回ることだけでは22条違反にならない。ただし平等原則との関係で合理的な理由が別に問われる」に直した
(第1章)総則6項が発動された事案は2件正しくは「一次資料で数値まで確認できた事案が2件」。しかも2件とも納税者敗訴なので、読者が「発動されればほぼ国税が勝つ」と受け取りかねない見出しと本文を「一次資料で確認できた2件」に改め、リードにも発動率や勝敗率を示す記事ではないと書いた
(第2章の図)大半はここで終わる通達どおりで終わる件数の割合を示す統計を、私は1つも持っていない。国税寄りを打ち消そうとして、逆に裏付けのない一般論を足していた図の文言を「右へ進む割合は本記事の資料では不明」に変えた
(第9章)大綱はまだ法律ではなく、法案が国会を通って初めて確定する時点が古かった。所得税法等の一部を改正する法律は令和8年3月31日に成立・公布され、令和8年4月1日に施行されている(財務省の公表で確認した)成立済みであることを書いたうえで、財産の評価方法は法律ではなく通達で定まるため、貸付用不動産の評価を実施する通達が出たかどうかは確認できていない、と正確に書き分けた

あわせて直した事実の誤り

第6章で財産評価基本通達185の見出しを「取引相場のない株式の評価上のしんしゃく額」と書いていたが、185の見出しは「純資産価額」である。指摘を受けて修正した。

また、一覧カードの説明文で「国税庁長官の指示から更正処分まで47日」と書いていたが、平成28年3月10日から4月27日は48日である。本文は48日と書いており、カードだけが食い違っていた。

さらに、第2章の用語表に「純資産価額方式では含み益に対する37%相当の法人税等相当額を差し引く」と書きかけていた。これは税理士法人などの解説記事に載っている数字で、国税庁の通達原文(財産評価基本通達186-2)を読むと38%だった。令和8年3月25日の改正で、防衛特別法人税や特別法人事業税を含む税率の合計に合わせて改められている。一次資料に当たらなければ、古い数字をそのまま載せていた。

高校生に読ませたら、内容58点・見た目41点だった

58点

内容(100点満点)

41点

見た目・読みやすさ(100点満点)

13語

説明なしで出てきて分からなかった言葉

言われたこと本人の言葉どうしたか
第8章のマンションの計算で読むのをやめた「△0.330、0.6060、0.1448…と数字が連続して、計算を追うのをやめて読み飛ばしました。この記事で一番きつかったのはここです」式の前に、どの要素が評価額を上げ下げするのかを図で先に見せるようにした
説明なしの言葉が多い国税局長/相続税法22条/上告人/下級行政機関/平等原則/課税時期/遺贈/信託受益権/帳簿価額/時価純資産法/客観的な交換価値 など13語第2章の用語表に追加した
誰向けの記事か分からないまま最後まで読んだ「ニュース記事なのか、税理士向けの資料なのか、相続を控えた家族向けの注意喚起なのか、読み始めた時点で分からなかった」リードの冒頭で、この記事が何を記録したもので、何を示すものではないかを先に書いた
第9章のその他の改正項目の表は本筋と関係なく感じた「令和8年度税制改正大綱に書いてあったからついでに載せました、という感じがした」本筋ではない参考であることを章内で明示した。表そのものは、探した範囲を示す記録として残した

直さなかった指摘

高校生から「普通の人が何に気をつければいいのか、一言もヒントがない」という指摘があった。これは直していない。

一次資料で数値まで確認できた事案が2件しかない状態で「こうすれば安全」に近いことを書けば、それはこの記事が最初に捨てたはずのもの(助言)になる。第10章に書いたとおり、2件で何が認定されたかは書けるが、そこから線を引くことはできない。読み物として物足りないのは、その通りだと思う。

ここまでが、この記事で確認できたことと、確認できなかったことのすべてである。