さとまたwiki
🏢 ワンルーム編 — 現実主義の家庭菜園

家庭菜園サバイバル
ワンルーム編

2m幅の棚、週30分の管理、4品種だけ。
それでも毎朝フレッシュなサラダが食卓に並ぶ。

2026年2月更新 | 一人暮らし向け設計 | 2m × 40cm × 3段
2m
横幅のみ
30分/週
管理時間
4種
サラダ品種数
365日
毎日収穫
🎯

1. ワンルームの哲学

サバイバル計画との根本的な違い

サバイバル1年計画は35㎡・毎日2〜3時間の農作業を前提とした「食料自給」の設計だった。 ワンルーム編の目的はまったく違う。食料自給ではなく、毎日の食卓に生きた野菜を加えること。 コンビニのサラダを買い続けるより賢く、スーパーで時間をかけて野菜を選ぶより新鮮に。 この計画の本質は「生活の豊かさを高めるための最小投資」だ。

🛒

コンビニサラダ

¥200〜400/日

添加物・鮮度低下・選択肢少ない。毎日¥300なら年間¥109,500

🌿

ワンルーム菜園

¥20〜50/日

収穫直後の鮮度・完全無農薬・好きな品種。年間ランニング¥15,000程度

🌱

サバイバル計画

35㎡必要

毎日2〜3時間。一人暮らし・働いている人には現実的でない

この計画で目指すもの

  • 毎朝、収穫したてのサラダを食べる
  • 週1回30分の管理で維持できる
  • ワンルームの一角(2m幅)に収まる
  • ミニトマトも365日食べられる
  • 半年でコストが元を取れる
  • 自家採種で3年後は種代0
  • 植物を育てる日常的な充足感
  • 来客に「自分で育てた」と言える
🔒

2. リアル制約の整理

「10種類植えれば毎日違う野菜が楽しめる」という考え方は正しい。 しかし働きながら一人暮らしをしている現実の前では、多品種管理は確実に破綻する。 まず制約を正直に並べることから始める。

📦 スペース
2m幅 × 奥行40cm × 高さ180cm(3段シェルフ換算)
→ 実質0.8㎡×3段 = 約2.4㎡(育苗含む全面積)
時間
平日は帰宅後2時間が限界。朝は見るだけ
→ 週あたり合計30分以内に設計。毎日の作業は「目視確認2分」のみ
💰 予算
初期投資は抑えたい。ランニングコストも最小に
→ 初期¥30,000〜50,000。月¥2,000〜3,000で維持
🌡️ 環境
南向き窓があれば理想。なければLEDで補完
→ 冬の乾燥・夏の高温対策が必須。加湿器・エアコンとの共存設計
🧠 認知負荷
疲れて帰ってきたときに複雑な作業はできない
→ 毎週月曜だけ30分。それ以外は「見るだけ」で回るシステム設計
🪴 品種数
管理できる品種数には限界がある
→ 水耕サラダは4種まで。ミニトマト2株。ハーブ2鉢。合計8種が上限

💡 「多品種=良い」という誤解

サバイバル1年計画の15品種リストは、専業農家に近い時間投資を前提にしている。 ワンルーム一人暮らしで15品種を同時管理すると、 収穫タイミングがズレ、養液が合わず、害虫の特定が難しくなり、最終的に全部枯らして挫折する。 「毎日確実に収穫できる4品種」の方が「管理できずに枯れた15品種」より1000倍価値がある。

🗄️

3. 2m棚の設計図(3段スチールシェルフ)

ベース設備: スチールラック 幅200cm × 奥行45cm × 高さ180cm(3段) ——これがこの計画の全てを収める箱になる。ホームセンターで¥8,000〜15,000で入手可。 各段にLEDストリップを取り付け、タイマーで自動制御することで「ほぼ自動で動くシステム」が完成する。

【2m × 3段シェルフ 完全設計図】
━━━ 段3(上段): 育苗ゾーン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
🌱 育苗トレー
16穴×1枚
常時16粒発芽中
60cm幅
🌿 スプラウト
瓶3本ローテーション
かいわれ / もやし系
60cm幅
💧 予備・道具置き
養液ボトル・スポンジ
ハサミ・PHメーター
80cm幅
└ LED: 弱光(20W)タイマー16h/日 / 種まきから定植まで10〜14日管理
━━━ 段2(中段): トマト+ハーブゾーン ━━━━━━━━━━━━━━
🍅 ミニトマト①
DWCバケツ 5L
アイコ(赤)
45cm幅
🍅 ミニトマト②
DWCバケツ 5L
イエローアイコ
45cm幅
🌿 大葉(シソ)鉢
素焼き鉢 4号
カットハーベスト
30cm幅
🌿 細ねぎ鉢
素焼き鉢 4号
根から再生可
30cm幅
└ LED: フルスペクトル(45W)タイマー16h/日 / 支柱でトマトを縦に誘引・省スペース化
━━━ 段1(下段): NFT水耕サラダゾーン ━━━━━━━━━━━━━━
NFTレール A(100cm)
ポット6個
サニーレタス × 6株
→ 週3株収穫(1日おき)
NFTレール B(100cm)
ポット6個
水菜×3 + 小松菜×3
→ カット収穫(毎日少量)
└ LED: フルスペクトル(45W×2)タイマー16h/日 / 養液ポンプ: タイマー30分ON/30分OFF
合計: 幅200cm × 奥行45cm × 高さ180cm / LED消費電力合計: 約110W / 月電気代目安: ¥1,500〜2,000

段1(下段): NFT水耕サラダゾーン — このシステムの心臓部

塩ビ管φ75mm × 100cm を2本並べる。各6穴。合計12ポット。 片方はサニーレタス専用(週3株収穫)、もう片方は水菜+小松菜(カット収穫)。 2本で毎日160〜200gのサラダベースを供給できる。

ポンプ
小型水中ポンプ
¥1,500〜2,500
タイマー制御
養液タンク
10〜15Lタンク
週1回補充
養液濃度EC1.2〜1.8
LED
45W×2枚
フルスペクトル
16h/日

段2(中段): ミニトマト+ハーブゾーン — 彩りと香り

DWCバケツ(5L)×2個でミニトマト2株。1株を1本仕立て(主枝のみ)にして縦誘引することで、 2m幅に2株が収まる。大葉(シソ)と細ねぎは小さい素焼き鉢で育て、サラダのトッピングに毎日使う。

💡 1本仕立てのポイント: わき芽は全て摘む。縦に伸ばして棚上段まで誘引。これにより1株が占める横幅が30〜40cmに収まる。

段3(上段): 育苗+スプラウトゾーン — 未来の在庫

常時16粒が育苗トレーで発芽中。これが10〜14日後に段1のNFTレールに定植される。 スプラウト(かいわれ・ブロッコリースプラウト)は瓶3本ローテーション。 種まき → 7日で収穫。1本収穫したら1本新たに種まき。LED不要・水洗いだけで育つ最も簡単な食材。

スプラウトの栄養価: ブロッコリースプラウトはスルフォラファン(強力な抗酸化物質)が成体の20〜50倍。 ほぼゼロコストで毎日10〜20gをサラダに追加できる。
🌿

4. 選ぶ作物4+2の理由

水耕サラダは4種まで。ミニトマト2株。ハーブ2鉢。計8種が一人暮らしで管理できる上限。 この4種を選んだ理由は「同一条件で育つ・同一養液で育つ・管理タイミングが揃う」という3条件を満たすからだ。 異なる条件の植物を同じシステムで育てると、どちらかが必ずダメになる。

01
バターヘッドレタス
Butterhead Lettuce

サラダの骨格を作るベース葉。柔らかくて甘みがあり、食べ飽きない。1株=収穫量最大で投資効率が最も高い。

播種〜収穫
35〜40日
1ポット収量
150〜200g/株
🔄 週次管理: 週3株収穫 = 1日おきに1株
💡 外葉から順に収穫するカット法で1株から2〜3回採れる。株ごと引き抜かないこと。
02
ルッコラ(ロケット)
Arugula / Rocket

ゴマ香り・ピリ辛でバターヘッドの単調さを消す。カット収穫で1株から4〜6回採れる最強コスパ品種。

播種〜収穫
25〜30日
1ポット収量
30〜50g/回(カット収穫)
🔄 週次管理: 週1回カット、3ポットを常時維持
💡 背丈10〜15cmで収穫。それ以上伸ばすと葉が硬くなり辛味が増しすぎる。
03
ベビースピナッチ
Baby Spinach

鉄分・葉酸・ビタミンK。栄養面の最強手駒。小さい葉のまま収穫するベビーリーフ方式で柔らかく美味しい。

播種〜収穫
25〜30日
1ポット収量
30〜40g/回(カット収穫)
🔄 週次管理: ルッコラと同タイミングで週1カット
💡 ほうれん草と違い、水耕でシュウ酸が少ない。生食向け。夏は高温でとう立ちしやすいので要注意。
04
水菜(ミズナ)
Mizuna

繊細な見た目でサラダが「料理」に見える。日本の気候に完全適応しており、夏でも冬でも安定して育つ最強の保険品種。

播種〜収穫
30〜35日
1ポット収量
50〜80g/株
🔄 週次管理: 週2〜3株収穫(バターヘッドの空いたポットを活用)
💡 他の3種が暑さでへたる真夏にも比較的安定。シャキシャキ食感はバターヘッドとの対比で際立つ。

+① ミニトマト(アイコ 赤 + イエローアイコ 黄)

サラダに5〜8個のミニトマトがあるだけで、見た目と味が格段に上がる。 赤と黄の2色を1株ずつ育てることで、毎日の彩りが確保できる。 DWCバケツ1株あたり月200〜300g(通年LED環境)の収穫が見込める。 夏場(屋外移動可)は月400〜500gまで上がる。

2株合計
400〜600g/月
LED通年栽培時
1日換算
13〜20g/日
約3〜5個/日
仕立て方
1本仕立て
脇芽は全て摘む
夏場
屋外へ移動
収量2倍になる

+② バジル+細ねぎ(ハーブ2鉢)

この2種はサラダを「料理」に変える香り担当。バジルはミニトマトとの組み合わせで本格的なカプレーゼ風に。 細ねぎ(万能ねぎ)はスーパーの根付き¥100品を鉢に移植するだけで無限に再生できる最強コスパのハーブ

バジル: 種から育てるより苗から。15℃以下で枯れるので秋以降はLED段に移動。 花芽は摘むことで葉の収穫が長続きする。
細ねぎ: スーパーの¥100の根付き細ねぎを3〜4cm残してカット後、水に挿す → 1週間で再生。 鉢に植え替えれば1年以上使い続けられる。コスト実質0。
📅

5. 週次ルーティン — 月曜30分で完結

このシステムの核心は「月曜日だけ30分作業、あとは眺めるだけ」という設計にある。 平日は仕事で疲れて帰ってきても、水位を確認して2〜3分で終わる。 週末に溜め込む作業もない。月曜日だけ少し頑張ればいい。

毎週月曜日の30分作業チェックリスト

0〜5分
👀
全体確認・収穫判断
NFTレールを見渡して収穫できるレタスをチェック。根の状態・葉色・水量を目視。
5〜10分
🌿
レタス収穫(3〜4株)
バターヘッド3株 + 水菜1〜2株を外葉からカット収穫。根付きのまま残す。収穫葉をボウルに洗って冷蔵庫へ。
10〜15分
🌱
育苗スポンジ → NFT定植
先週種まきした発根済みスポンジ6個をNFTレールの空きポットへ定植。根が出ていないものは引き続き育苗トレーへ。
15〜20分
🌾
新規種まき(スポンジ6個)
ウレタンスポンジ6個に水をしみ込ませ、バターヘッド3粒・ルッコラ1粒・スピナッチ1粒・水菜1粒を種まき。育苗トレーに配置。
20〜25分
💧
養液補充・pH確認
NFTタンクの水位確認。500ml〜1L補充。ハイポネックスを規定量追加。PHメーターで6.0〜6.5を確認。
25〜30分
🍅
ミニトマト管理+スプラウト交換
トマトの脇芽を摘む(出ていれば)・誘引ひも追加。スプラウト瓶の1本を収穫し、新たに種まき。

🌙 平日(帰宅後 2〜3分)

  • NFTタンクの水量をちらっと確認
  • スプラウト瓶を水洗い(30秒 × 2回)
  • 収穫できそうなものがあれば収穫
  • 異常(黄葉・害虫・カビ)があれば写真を撮る
月〜金は「監視するだけ」で十分。LEDとポンプはタイマー自動制御なので、触らなくていい日もある。

🌞 土日(気が向いたら)

  • 収穫祭り(余分に採って料理に使う)
  • 養液の全量交換(月1回・20分)
  • システムの掃除(パイプ・タンクの洗浄)
  • 次の品種を試したい場合の試験植え
月1回の養液全量交換だけは必ずやること。根腐れ・藻の発生を防ぐ最も重要なメンテナンス。
🧽

6. スポンジ・資材の年間計算

🧽 スポンジ(育苗ポット)年間必要数

週あたり種まき数 6個
年間(52週 × 6個) 312個
ロス率(発芽失敗・廃棄) 20%込み
年間必要スポンジ数 約380個
ウレタンスポンジ 20mm角 100個入り × 4袋を年初に購入すればOK(コスト約¥1,200〜2,000)

🌱 種の年間必要量

バターヘッドレタス 約156粒/年
1袋(300〜500粒入り)で2〜3年分
ルッコラ 約52粒/年
1袋(1g≒600粒)で10年以上分
ベビースピナッチ 約52粒/年
1袋(300粒入り)で5〜6年分
水菜 約52粒/年
1袋(3ml≒500粒)で約10年分
💡 種は非常に少量しか使わない。年間種代は全品種合わせても¥500〜1,000程度。

年間消耗品・交換品リスト

品目交換頻度年間コスト目安
ウレタンスポンジ(100個×4袋)年1回まとめ買い¥1,200〜2,000
水耕養液(ハイポネックス等)月1回補充¥2,000〜3,000/年
種(4品種)年1〜2回¥500〜1,000/年
ネットポット(定植カップ)破損時のみ¥500〜1,000(予備購入)
ミニトマト苗年2回(夏株・冬株)¥300〜600(苗2株×2回)
LEDライト3〜5年に1回¥3,000〜6,000/個
ポンプ2〜3年に1回¥2,000〜3,000
💰

7. コスト分析・ROI

初期投資(一度だけ)

スチールラック(200×45×180cm) ¥8,000〜15,000
NFTレール(塩ビ管φ75 × 100cm × 2本) ¥3,000〜5,000
小型水中ポンプ + チューブ ¥2,000〜3,000
養液タンク(15L) ¥1,000〜2,000
DWCバケツ 5L × 2個 ¥1,000〜2,000
LEDライト フルスペクトル 45W × 2枚 ¥6,000〜10,000
LEDライト 育苗用 20W × 1枚 ¥2,000〜4,000
デジタルタイマー × 3個 ¥2,000〜3,000
PHメーター + ECメーター ¥3,000〜5,000
初回スポンジ・種・養液セット ¥3,000〜5,000
合計 ¥31,000〜54,000

月次ランニングコスト

電気代(110W × 16h × 30日) ¥1,600〜2,000
養液(ハイポネックス等) ¥200〜400
スポンジ(週6個 × 4週) ¥100〜200
種代(年間分の月割) ¥50〜100
ミニトマト苗(年2回の月割) ¥50〜100
月合計 ¥2,000〜2,800

月次生産価値(スーパー購入価格換算)

バターヘッドレタス 12〜15株/月 ¥200×12 = ¥2,400
ルッコラ・スピナッチ・水菜 計 300g ¥100/袋×4 = ¥400
ミニトマト 300〜500g ¥300〜500
バジル・細ねぎ(トッピング) ¥200〜400
月次生産価値 ¥3,300〜4,700

📈 ROI(投資回収)シミュレーション

¥42,000
平均初期投資
¥1,500〜2,200
月次純利益
(生産価値 − コスト)
約1.5〜2年
投資回収期間

コンビニで毎日サラダを¥250で買っていた場合、月¥7,500の削減効果。 この場合は初期投資を6ヶ月で回収できる計算になる。 「買うのをやめる節約」効果で見れば、ROIは非常に優秀。 さらに3年後に自家採種が始まれば、種代が実質¥0になりランニングコストがさらに下がる。

8. NG作物リスト — ワンルームでやってはいけないこと

以下の作物はサバイバル計画では有効だが、ワンルームの2m棚では完全にNGまたは非効率。 「育てたいという気持ち」と「現実の制約」を混同しないこと。

🚫
じゃがいも・さつまいも
根菜類は深さ30cm以上の土が必要。2m棚の奥行45cmに鉢を置いても、収穫量は年間1〜2kgが限界。コスパ最悪。スーパーで1kg¥200で買える。
→ 代替案: サバイバル計画(35㎡)でやること
🚫
大豆・枝豆(収穫目的)
スペース効率が悪い。1ポット1株で1食分しか取れない。ワンルームで育てる意味は薄い。タンパク質は卵・納豆・豆腐で補う方が現実的。
→ 代替案: サバイバル計画でやること
⚠️
きゅうり・なす(大型夏野菜)
LED光量不足で室内栽培は収量激減。なすは特に光を要求する。ミニトマト1株で代替できる。鉢のサイズも大きすぎて棚に収まらない。
→ 代替案: ベランダがあれば夏季のみ屋外でOK
⚠️
10種以上のサラダ品種
養液の最適濃度が品種ごとに違い、管理が破綻する。収穫タイミングがズレて慌てる。疲れてくると世話ができない株が出てきて全部が中途半端に。
→ 代替案: 4品種マスターしてから年2〜3種ずつ増やす
💭
いちご(長期高密度管理)
憧れはわかるが、ランナー管理・病害虫・受粉作業が必要で初心者には過負荷。1株で月30〜50gしか取れないコスパの悪さ。
→ 代替案: 2年目以降のアップグレードとして検討
💭
パセリ・セージ(乾燥系ハーブ大量栽培)
乾燥ハーブは「大量に育てて乾燥保存」が正しい使い方だが、ワンルームの乾燥条件と量を確保する面積が両立しにくい。
→ 代替案: 細ねぎ・バジルの2種に絞ること
🚀

9. 1年後・3年後のアップグレードパス

最初の1年は「4品種マスター」だけでいい。慣れてきたら少しずつ発展させる。 アップグレードは1ステップずつ。一気に拡張すると管理が破綻する。

1年目 基礎固め — システムを習慣化する
  • 4品種 × NFT12ポットを毎週回すループを完成させる
  • 月曜30分の作業を「当たり前の習慣」にする
  • トラブル(根腐れ・害虫・pH崩れ)の対処法を体得する
  • ルッコラ・水菜の自家採種に挑戦(秋に花を咲かせて種取り)
2年目 品種拡張 — マーシュとフリゼを追加
  • NFTポットを12 → 18に増設(レール1本追加)
  • マーシュ(コーンサラダ)を追加 → 冬場のフレンチ感が一気に上がる
  • フリゼ(チコリ)を試験栽培 → サラダに「大人の苦み」が加わる
  • 養液の自作(カリウム・カルシウム・微量元素の個別管理)に挑戦
3年目 完全自立 — 種代0・システム最適化
  • 主要4品種の自家採種が安定し、種代が実質¥0に
  • ミニトマトの冬越し株管理が上手くなり、年間収量が安定
  • 余剰分を友人・家族に配る「野菜を贈れる人」になる
  • 次のステップ: ベランダ活用 or 引越し先で庭付き物件への関心が生まれるかも
💡 3年目で「2m棚」という制約を超えたくなってきたら、それがサバイバル1年計画への自然な移行のタイミング。

🏢 ワンルーム編 最終評価

2m
棚幅のみ
週30分
月曜だけ
4品種
シンプルに保つ
1.5〜2年
投資回収期間

複雑さを徹底的に排除したこのシステムは、働きながら一人暮らしする人が「挫折せずに続けられる」 ことを最優先に設計している。毎朝5秒で収穫したレタスとミニトマトが食卓に並ぶ日常は、 スーパーやコンビニでは絶対に手に入らない体験だ。 まずは2m棚1本から。それが将来の35㎡のサバイバル計画への入口になる。

📖

10. 小説:29歳、棚ひとつから始めた話

— 一人称フィクション。12ヶ月の記録と、そこで学んだ知識 —

プロローグ1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月翌年1月

◆ プロローグ:299円のサラダ

コンビニのレジ前で、わたしはまた同じことを考えていた。

プラスチックのパックに入ったカット野菜。299円。農薬を落とすために洗浄液に漬けられ、 袋詰めされ、トラックで運ばれてきた何かを、わたしは毎朝買い続けていた。 別に不満があったわけじゃない。ただその日は、なぜかレジの前で立ち止まった。

「これ、自分で作れないのか」

29歳、営業職、ワンルーム8畳。ベランダもない。仕事は忙しい。 でもその瞬間、スマートフォンで「水耕栽培 ワンルーム」と検索していた。 それが1月の、底冷えのする朝のことだった。

1月

棚を立てた日

2週間、検索だけしていた。NFTパイプ、DWCバケツ、液肥のA液B液、pH計、ECメーター。 覚えることが多すぎる。初心者向けと書いてある記事でも、読み終わると何も分からなかった。 結局、思い切って棚とLEDと水耕栽培トレーとウレタンスポンジだけ買った。

品種で一番悩んだ。調べると「水耕栽培に向く野菜」の候補はいくらでも出てくる。 でも1年間栽培し続けることを考えると、条件は3つに絞られる。 ①スーパーで種が買えること、②収穫が速いこと、③できれば年中育てられること。

まず「葉もの」の主役を決めた。調べると、水耕栽培でいちばん育てやすいのは サニーレタスだと出てきた。 種まきからわずか25〜35日で収穫できて、外側の葉から切り取る 「カット&カム」という方法をとれば、1株から3〜4ヶ月連続して収穫できるらしい。 しかもスーパーで必ず売っている馴染みのある野菜だ。これをメインにする。

次に「シャキシャキ感」を担当させる野菜として水菜(みずな)を選んだ。 京都の伝統野菜で、スーパーの袋サラダに必ず入っているあれだ。 種まきから20〜30日で収穫できて、病気にも強い。 サニーレタスと同じ液肥濃度・同じ温度で育つので、同じトレーで管理できる。

3品目は「栄養価」担当として小松菜。 調べると、カルシウムの含有量はほうれん草の約2倍。 しかも暑さにも寒さにも強く、一年中途切れずに育てられる数少ない野菜だった。 夏にサニーレタスがへたったとき、小松菜だけは生き残る。 これが年間計画上、とても重要な役割を持つことになると後で気づいた。

4品目は「達成感」担当として二十日大根(はつかだいこん)。 名前の通り20日前後で収穫できる最速野菜だ。 水耕栽培では根が球状に太りにくいこともあるらしいが、葉も食べられる。 何より「20日で何か収穫できる」という事実が、始めたばかりの時期に精神的な支えになると思った。

棚を買う前の週末、わたしはスプレッドシートを開いて1年間の栽培計画を立てた。 何月に何を植えて、何月に収穫できるのか。夏は何が耐えられて、冬は何が苦手なのか。 調べながら埋めていくと、こんな表になった。

📅 年間栽培スケジュール(1月の計画メモより)
作物1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
🥬 サニーレタス
🌿 水菜
🍃 小松菜
🔴 二十日大根
🌱 ニラ
🍅 ミニトマト
🌿 大葉(シソ)
種まき 育苗・成長中 収穫可能 最盛期 挿し木 乾燥保存

表を眺めて気づいた。「夏はほぼ全滅するが、ニラと小松菜だけは生き残る」。 秋が一番豊かになる。1年を通じて完全に途切れることはない。 計画を立てると、不安が少し小さくなった。

日曜の午後4時間かけて棚を組んだ。8畳の部屋に2mの棚が出現した。 LEDを初めて点けたとき、青白い光が部屋を満たした。 空っぽのトレーが3段並んでいる。 なんとなく、「これはいける」と思った。

スポンジに種をまいた。1月の室温は17度。発芽適温(20〜25度)より低く、 発芽に10日かかった。サニーレタスと水菜は出た。二十日大根は半分。 小松菜は2週間かかった。冬は発芽が遅れる、と後で知った。 事前に調べた「20日で収穫」という話はあくまで適温時の話で、 冬は全部1.5〜2倍の時間がかかると覚えておく必要があった。

🥬 リーフレタス1年ローテーションのコツ
  • 冬(1〜2月):発芽に10〜14日。室温20度を確保(スポンジをタッパーでラップ保温)
  • 春(3〜5月):3週間で収穫。週1交代のローリングで連続収穫が可能
  • 夏(6〜8月):28度超でとう立ち。早め収穫→リセット→9月まで休眠
  • 秋(9〜11月):最良シーズン。発芽6日、3週間で収穫可能
  • 年間継続のカギ:夏に無理せず一時撤退し、9月に全リセットすること
📌 冬の種まきのコツ:スポンジをタッパーに入れてラップをかけ、暖かい場所に置く。目標室温は20〜25度。温度が低いだけで発芽日数は倍になる。
2月

最初の収穫と、液肥の謎

種まきから26日後、サニーレタスが収穫できる大きさになった。 予定より少し遅い。冬の低温のせいだ、と計画表を見て納得した。

外側の葉を根元2cmほど残してハサミで切る。皿に盛って、オリーブオイルと塩だけ。 食べた。みずみずしかった。切ってから3分で食べた、という事実が口の中にあった。 スーパーのカット野菜とは何かが根本的に違った。 「そうか、あっちは収穫から店頭まで数日かかっている。こっちは3分だ。」

注文を忘れていたECメーターが届いた。 液肥の濃度を測ると、EC値が1.8まで上がっていた。 適正値を調べると、サニーレタスはEC 0.8〜1.5 が目安だとある。超えている。

「なぜ濃くなったのか」、最初は植物が液肥を吸い取ったせいだと思っていた。 でも違った。答えは単純だ。水だけが蒸発して、溶けている肥料の量は変わらない。 コップの塩水が干上がっても、塩は消えないのと同じ原理だ。 だから水位が下がったとき、液肥を足すのは間違いで、 水道水だけを補充するのが正解だった。 液肥を足し続けると、EC値がどんどん上がって根が「塩漬け」になる。 以来、水位が下がったら「水だけ補充」、2週間経ったら「全量交換」がルールになった。

pH計も届いた。測ると6.8。適正は5.5〜6.5で、少し高い。 なぜpHが高いと悪いのか調べると、pHが7に近づくと鉄やマンガンが水に溶けなくなり、 植物が吸収できなくなると書いてあった。 葉が黄色くなるのはそのせいらしい。 クエン酸を少量溶かしてpH 6.2に調整した。 翌週、葉の緑が少し濃くなった気がした。気のせいかもしれないが、悪くはなかった。

📌 液肥管理の基本ルール:①水位が下がったら水だけ補充(EC上昇を防ぐ)②2週間に1回は全量交換してリセット ③pH 5.5〜6.5が適正範囲。これを守るだけで大半の問題は防げる。
3月

ニラと、コンビニのネギ

スーパーでニラの種を見つけた。1袋98円。 「一度植えると何年でも収穫できる多年草」と書いてある。

「多年草とはどういう意味か」と調べた。 一年草は毎年根が死んで、翌春また種からやり直す。 多年草は根が死なず、地上部だけが枯れても根は生き続ける。 つまり、ニラは一度育ててしまえば、理論上ずっと収穫できるということだ。 しかも刈り取るほど根が強くなって、回復が速くなる。 1回目の再生には3週間かかるが、3回目以降は10〜14日で戻ってくるらしい。 「ランニングコストがほぼゼロの植物」という言い方をしている記事があって、 その表現がしっくりきた。 種まきから初収穫まで3〜4ヶ月かかるのが唯一の難点だが、 仕込んでおくだけで勝手に育つなら安いものだ、と思い、小さな容器に液肥を入れて種をまいた。

同じ週、スーパーで買ったネギを使い終わった後、 白い根の部分(3〜4cm)を残してコップに水を入れて置いてみた。 「これ、もしかして育つんじゃないか」と思ったのは、 以前YouTubeで「スーパーの野菜を再生させる」という動画を見たからだ。 1週間で葉が5〜8cm伸びた。また切って、また浸ける。 調べると「小ねぎ再生栽培」と呼ばれていて、同じ根で4〜5回繰り返せるらしい。 費用はゼロ。追加作業も1分。液肥も要らない。 「これが一番コスパのいい水耕栽培じゃないか」と思った。

気づけば棚の周りに小瓶が3本並ぶようになった。 水耕トレーのレタス、コップのネギ、ニラの苗床。 8畳の部屋が少しずつ農場になっていった。

🌱 ニラ多年草サイクルの使い方
  • 1月種まき→5月初収穫:発芽2週間、収穫まで3〜4ヶ月。焦らず育てる
  • 刈り取り方:地上部を5cm残してハサミで刈る。根を傷めないこと
  • 再生サイクル:1回目は3週間、2回目以降は10〜14日で再生(根が充実するほど速くなる)
  • 夏も冬も枯れない:32度でも、15度でも生き続ける。水耕最強の多年草
  • 引越し時:根株を鉢土に移植すれば新居でも継続可能
🧅 小ねぎ再生栽培(費用ゼロ)
  • 用意するもの:スーパーで買ったネギの根元3〜4cm + コップに水
  • 管理:水を2〜3日に1回交換するだけ。液肥不要
  • 収穫:1週間で5〜8cm伸びる。根元3cmを残して切ると4〜5回繰り返せる
  • 注意:水が汚れたら即交換。同じ根は5回ほどで勢いが落ちてきたら新しい根に交換
📌 小ねぎ再生&ニラの特性:小ねぎはスーパーの根元を水に差すだけで1週間で収穫可。4〜5回繰り返せる。ニラは多年草で、地上部を5cm残して刈り取ると2〜3週間で再生する。根が張るほど回復が速くなる。
4月

春爆発と、ローリングハーベスト

4月に入ると、植物の育ちが明らかに変わった。 室温が20度を超えると代謝が上がる。 先週まで小さかった水菜が、1週間でLEDパネルに触れるほど伸びた。 サニーレタスは1トレーで週3〜4回収穫できるほどになった。

そこで気づいたことがある。 「サニーレタスは種まきから3週間で収穫できる。 ならばトレーが3段あれば、1週間ずつずらして種をまけば、毎週どこかのトレーが収穫期になる。」 当たり前のことかもしれないが、実際に3段の棚を前にして計算したとき、 ちょっとした発見をした気分だった。

このころ、「ローリングハーベスト」という言葉を知った。 まさにわたしが考えていたことに名前がついていた。 上段:収穫期(3週目)、中段:成長中(2週目)、下段:発芽〜育苗(1週目)。 毎週月曜に上段を収穫→洗ってリセット→新しい種をまく→中段と下段を1段ずつ上へスライド。 これで毎週収穫が絶えなくなった。 考えてみれば、3週間で1サイクルを3段で回すだけの話だ。シンプルだった。

ある朝、水菜の中心から細長い茎が伸びているのに気づいた。 とう立ち(ボルティング)だ。昼間の室温が24度を超えた日に起きた。 調べると、とう立ちとは植物が「子孫を残そう」と花を咲かせようとする現象で、 一度始まると葉が硬く苦くなり、食用には向かなくなる。 気温が高くなると植物が「今季は終わりだ」と判断してしまうらしい。 その日は仕事があった。帰宅後に収穫したが、確かに少し苦かった。 植物は待ってくれない、と学んだ朝だった。

📐 3段ローリングハーベスト
🌿
上段
収穫週(3週目)
↓ 月曜に収穫→洗浄→種まき
🌱
中段
成長週(2週目)
↓ 上段へスライド
🫘
下段
発芽週(1週目)
↑ 中段へスライド
毎週月曜15分でこのサイクルを回す
📌 とう立ち対策:室温25度超えが続いたら収穫を早める。LEDを16時間→14時間に短縮すると少し遅らせられる。気づいたらすぐ全収穫してトレーリセット。
5月

食べきれない問題と、スプラウト

5月は、生まれて初めて「野菜が余った」経験をした。

バターヘッドレタス・ルッコラ・スイスチャードが3段フル稼働して、 毎週収穫できる量がひとりでは食べきれなくなった。 隣室の先輩に「よかったら使ってください」と袋に入れて渡したら、 「自分で育てたの!?」と驚かれた。それが妙に嬉しかった。

同じころ、スプラウトを試した。 カイワレ大根の種をビンに入れ、1日2回水で洗って、5日で収穫できた。 土も電気も液肥も不要。棚も要らない。 スープのトッピングにもサラダにも使える。 ブロッコリースプラウト・マスタードスプラウトも試した。 今はキッチン台に常時2〜3瓶のスプラウトが育っている。

ニラが5月末に初収穫の大きさになった。 刈り取ると部屋にニラの匂いが広がった。 炒め物に使った。レタスとは違う「もっと料理らしい」収穫だった。

🌾 スプラウト栽培(土も電気も不要)
  • 用意するもの:広口ビン・メッシュ蓋(またはガーゼ)・スプラウト用種(カイワレ・ブロッコリー・マスタード等)
  • 手順:①種をビン底1cmほど入れて一晩水浸け ②翌朝水を捨て逆さに斜めに立てかける ③1日2回水でゆすいで流す ④5〜7日で収穫
  • 保管:収穫後は密封して冷蔵庫へ。3〜4日で食べ切る
  • おすすめ品種:ブロッコリースプラウト(スルフォラファン豊富)、マスタード(辛みがアクセントに)
  • コスト:種1袋(¥200〜400)で10〜20回分。1回あたり¥20〜40
📌 スプラウト栽培(最も簡単な水耕):①種をビン底1cmほど入れ一晩水に浸ける ②翌朝水を捨てメッシュ蓋をして逆さに立てかける ③1日2回水洗い ④5〜7日で収穫。電気代ゼロ・場所ゼロ。
6月

夏の予兆と、バジルの挿し木

6月に入ると、液肥の水位が下がるのが目に見えて速くなった。 以前は3〜4日で1cmほど下がっていたのが、2日で1cm下がるようになった。 補水(水道水のみ)を怠ると液肥が濃縮しすぎて根が傷む。 毎日の「水位確認」がルーティンに加わった。

ミニトマトのDWCバケツを設置した。2Lバケツにエアストーンと液肥。 ミニトマトは発芽10日、定植まで3週間。初収穫は8月の見込みだ。

スーパーでバジルの苗を買い、茎を10cmほど水差しにした。 2週間後に根が出た。NFTトレーの空きスペースに定植した。 バジルは挿し木で無限に増やせる。 今のトレーのバジルも、葉を使いながら茎を水に差し、また根付かせる。 この循環をやっと理解した。

🌿 バジル挿し木無限増殖サイクル
  • 挿し木の始め方:スーパーのバジル苗(¥150〜200)を購入→茎を10cmほど切って下葉を取り除く→水差しに挿す
  • 発根:2週間ほどで白い根が出てくる→液肥入りトレーに定植
  • 収穫しながら増殖:葉を摘みながら、同時に茎を水に差して次の株を準備する
  • 夏の管理:日照が必要。LEDだけでも育つが、窓際に置くとさらに旺盛になる
  • 冬の撤収前:10月末に多めに収穫して乾燥保存(電子レンジで2分→密封容器)
  • 翌年3月:新しいスーパー苗を買って挿し木から再スタート
📌 夏の水管理:気温が上がると蒸発が加速。水位が下がったら水道水だけで補充(液肥を足すとEC過多になる)。EC値が1.5を超えたら水で希釈するか全量交換。
7月

根腐れ寸前の朝

7月中旬の月曜朝、液肥の匂いがいつもと違った。

酸っぱいような、生ゴミのような匂い。 トレーをのぞくと、根の先が茶色くぬるっとしていた。 根腐れの初期症状だった。 液肥の温度を測ったら29度あった。

「なぜ水温が高いと根が腐るのか」が気になって調べた。 仕組みはこうだ。 水温が上がると、水に溶ける酸素の量が減る(溶存酸素量の低下)。 酸素が少ない環境では「嫌気性細菌」が増殖する。 この細菌が根を分解し始めるのが根腐れの正体だ。 金魚鉢の水が夏に臭くなるのと、まったく同じメカニズムだった。 だから対策は「水に酸素を溶かし続けること」になる。 それがエアストーンを使う理由だ。 「原理が分かると、対策も当然の答えに見える」と思った。

応急処置として液肥を全量交換し、 ドラッグストアの消毒用オキシドール(3%過酸化水素水)を30倍に薄めて加えた。 オキシドールが分解されると酸素が発生する。根を軽く洗い、新しい液肥に移した。 翌週には根の色が回復した。以来、エアストーンを常時稼働させるようにした。

ニラと小松菜は暑さに強く、この夏も元気だった。 ニラは室温32度でもまったく動じない。 「ニラは裏切らない」と思い始めた。

🍅 ミニトマトDWCの年間サイクル
  • 3月種まき:発芽7〜10日。室温20度以上を確保
  • 4〜5月定植:本葉4〜5枚で2Lバケツ(DWC)に定植。EC 1.5〜2.0、pH 5.8〜6.3
  • 6〜7月管理:夏の水温上昇に注意。エアストーン常時稼働。水温25度以下を維持
  • 7〜10月収穫:8月に最盛期。初収穫から週10〜20個ペース
  • 11月撤収:花が咲かなくなったら終了。バケツを洗って冬はほうれん草等に転用
  • 支柱と誘引:1.2m以上の支柱を用意。週1回誘引しないと倒れる
📌 根腐れ対処法:①液肥全量交換 ②消毒用オキシドール(3%)を30倍希釈して添加 ③エアストーンで常時曝気 ④液肥温度を25度以下に保つ(保冷剤も有効)。予防が最善。
8月

夏に強い作物だけ残す

8月は、正直しんどかった。

レタスとルッコラはとう立ちが続いた。収穫してもすぐ花芽が出る。 維持コストの割に収穫量が減った。 一旦レタス2トレーをニラとバジルに切り替えた。 夏はサラダ重視をやめて「料理に使うハーブ中心」に切り替える方がいい、 と身をもって学んだ。

ミニトマトが初めて赤くなった。8月7日。 DWCバケツの脇に立てた支柱に、赤い実がひとつ。 そのまま食べた。甘かった。種まきから110日目だった。 同僚に写真を送った。「すごいじゃないですか」と返ってきたが、 この「すごさ」の感覚は育てた人にしか分からないと思う。

棚の構成:上段=ニラ(放置でも育つ)、中段=バジル+スイスチャード、 下段=DWCバケツ隣接。レタスとルッコラは9月まで休眠。 サラダはスプラウトで補った。

📌 真夏の作物選択:レタス・ルッコラは28度超で急速に劣化。夏向きはバジル・スイスチャード・ニラ・ミニトマト。無理に続けるより一時撤退して秋に再スタートする方が総収量が多くなる。
9月

秋のリセット、黄金シーズン

9月の連休に、棚を全部リセットした。

夏の間にトレーに溜まった液肥の汚れ(白い結晶状のカルシウム・マグネシウム)を クエン酸水で洗い落とした。 10倍希釈の次亜塩素酸水でトレー内部を消毒してよく乾燥させた。 この「全体リセット」を、春と秋の年2回やることにした。

新しいスポンジにバターヘッドレタス・ルッコラ・ほうれん草の種をまいた。 室温23度。発芽は6日で揃った。1月の倍速い。 秋は水耕栽培の黄金シーズンだと実感した。 昼夜の温度差が少なく、室温が安定している。根腐れのリスクも低い。

ニラは刈り取って2回目の収穫。 1回目より根が太くなっていて、葉の勢いが増した。 多年草は育てるほど強くなる。

📌 年2回のシステムリセット(春4月・秋9月):クエン酸洗浄→消毒→乾燥。塩類の蓄積がリセットされ、次シーズンの成長が格段によくなる。
10月

完成形と、3週間ローテーション

10月は、このシステムが完全に機能した最初の月だった。

3段トレーで3週間のローリングハーベストが安定して回っていた。 上段(収穫)→中段(成長)→下段(発芽)という流れが自然になった。 毎週月曜15分で全部完了する。

ニラは10月に3回目の収穫。根が完全に充実していて、刈り取りから10日で再生した。 根は1月に植えてからずっとトレーの中にある。 水を補充して液肥を交換するだけで、毎年勝手に育ち続ける植物がいる、 という事実がなんとなく心強かった。

10月中旬、スーパーでバジルを買った。 自分で育てたバジルではなく。 夏に乾燥保存したのを使いきってしまったから。 レジの前で少し悔しかった。次の夏は乾燥保存のタイミングを逃さない、と思った。

📌 ローリングハーベストの設定:3段棚×3週間サイクル。週1回(月曜)に「上段収穫→洗ってリセット→種まき→中・下段を1段上へ」でローテーション。慣れると10〜15分で完了する。
11月

成長が静かになる季節

11月に入ると、植物の育ちがゆっくりになった。 室温が18度を下回る日が出てきた。 バターヘッドレタスのローテーションが3週間から4週間になった。 LEDを16時間に戻したが、それでも成長は1月に似ていた。

ミニトマトのDWCバケツは11月で終了した。 葉が黄色くなり、花も咲かなくなった。 最後の収穫は11月3日。初収穫から88日、合計収穫量は小粒換算で約180個だった。 バケツを洗って、空いたスペースにほうれん草のトレーを置いた。

夜中に暖房を切ると15度を下回る日が出てきた。 念のため小型のセラミックヒーターをタイマーで夜間稼働させた。 18度以上を維持すれば、冬でも水耕栽培は動き続ける。 遅くなるだけで、止まらない。

📌 冬の管理:室温18度以上を目安に維持。LEDを16時間に延長して光量で補う。ミニトマトは10月末撤収→翌年3月再スタートが現実的。冬でもニラは生きている。
12月

1年が経った

12月31日の夜、棚を眺めながら計算した。

この1年でスポンジに種をまいた回数:52回。 液肥を交換した回数:26回。トレーを全洗いした回数:6回。 ニラの収穫:3回。ミニトマトの収穫:延べ約180個。 スプラウトのビン:常時稼働。小ねぎ再生:随時。 節約したコンビニサラダ代(概算):月1,800円×12ヶ月=21,600円。 初期投資42,000円の回収率:51%。来年中には回収できる計算だ。

でも数字より、毎朝の収穫が楽しみになっている事実の方が大きかった。 仕事がどんなに重くても、月曜の朝だけは起きるのが楽しかった。 棚の前に立つと、世界が少し丁寧な速度で回り始める気がした。

LEDが部屋の奥で青白く光っている。 冬の夜の8畳に、それがある。それだけで、十分な気がした。

翌年1月

転居の日:全部、刈り取った

1月末、転職に伴って引っ越すことになった。

引越し前日の夜、棚と向き合った。 どうするか、少し迷った。 レタスはそのまま廃棄するしかない。 でもニラは根が太くなっていて、鉢に移せば土でも育つ。 隣室の先輩に声をかけたら、「もらう」と言ってくれた。

ニラの根株を小さな植木鉢に移して、「育て方のメモ」を添えて渡した。 「5cmほど残して刈り取ると2〜3週間で再生する」 「液肥じゃなくてもハイポネックスで十分」 「多年草だから枯れない限り何年でも使える」

レタスはすべて収穫して、サラダにして食べた。 スポンジは燃えるゴミに出した。 液肥の残液は十分に薄めて流した。 トレーとバケツは洗って段ボールに詰めた。 棚は解体して、その場所が「ただの壁の前の床」になった。

部屋がすっきりした。すっきりしすぎて、少し寂しかった。 最後にLEDを消すとき、少し躊躇した。

📌 撤収時の処理まとめ:①レタス等は全収穫→スポンジごと燃えるゴミ ②ニラ・ミント等の多年草は根株を鉢に移して継続栽培が可能 ③液肥残液は十分希釈して排水 ④トレーはクエン酸洗浄→乾燥で次の住居でも再利用できる。

◆ エピローグ:新しい部屋で、まず棚を立てた

新しいアパートは9畳だった。

引越し荷物を運び込んで、最初に組み立てたのは棚だった。 ベッドでも、テレビでも、冷蔵庫でもなく、2mのスチールシェルフ。 それを先に組んで、LEDを取り付けて、液肥を混ぜて、スポンジに種をまいた。 引越しの段ボールが半分残っている部屋の奥で、LEDが青白く光り始めた。 また1月。また発芽を待つところから。

去年の自分に何かひとつ伝えるとしたら、こうだ。

「棚を立てろ。品種は4つ。ニラを1株植えておけ。スプラウトのビンをキッチンに置け。あとは月曜だけ30分、それだけでいい。」

1年で学んだことは多かった。根腐れも、とう立ちも、スプラウトも、小ねぎの再生も、液肥の交換サイクルも、ニラは裏切らないことも。 でもいちばん学んだのは、「続けていれば、植物は育つ」ということだ。 失敗しても、夏に弱っても、引越しで全部片付けることになっても、 また種をまけば始まる。それだけのことだった。