Toushi Lab / Column
超長期米国債ETF 179A(ヘッジあり)は買いか
ヘッジの有無と、これからどうなるか
179A(グローバルX 超長期米国債 ETF・為替ヘッジあり)を買うか迷っている人向けに、ヘッジありとなしのどちらを選ぶか、米国の金利と円相場がこの先どう動いたら何%になるかを、実際の価格と分配金から計算しました。グローバルXの債券ETFだけで比べています(NEXT FUNDSは日本株ETFにだけ使う前提)。
2026-09-16 時点(終値は2026-09-14)/ 読了約7分
結論
179Aは「株の暴落保険」として買うもの。3回に分けて、資産の1割まで
① 分配利回り4.66%は見かけ。為替ヘッジ(円高・円安の影響を消す仕組み)には年約3.11%のコストがかかり、それは分配金ではなく価格の目減りとして出ます。実質の稼ぎは年約2.13%です。
② 179Aが大きく勝つのは「米国の金利が下がるとき」だけ。景気後退やAIバブル崩壊で米金利が1pt下がれば約+19%。逆に1pt上がれば約−12%。値動きは普通の米国債(7〜10年)の約2倍です。
③ 利息を受け取るのが目的なら、ヘッジなしの180A。ヘッジコストがかからず実質約5.24%。ただし円高と金利上昇が同時に来ると二重に負けます。
4.66%
179Aの分配利回り(見かけ)
−3.11%
ヘッジコスト(年・推定)
約2.13%
179Aの実質の稼ぎ(年)
約15%
米金利1ptで動く価格(15.27年)
| 銘柄 | 判定 | 分配利回り | コストを引いた実質 | うまくいくと | 裏目に出ると | 向く人 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 179A グローバルX 超長期米国債(為替ヘッジあり) 235.8円 | △ 株の暴落保険として、3回に分けて資産の1割まで | 4.66% 年11円 | 約2.1%(30年債5.34% − ヘッジコスト約3.1% − 信託報酬0.10%) | 米金利−1pt・円高140円で +18.8% | 米金利+1ptで −11.9%(円安でも円高でも同じ) | 株を持っていて、AIバブル崩壊・景気後退の保険が欲しい人 |
| 180A グローバルX 超長期米国債(為替ヘッジなし) 268.2円 | ○ 利息目的ならこちら。ただし純資産8.5億円と小さい | 4.81% 年12.9円 | 約5.2%(ヘッジコストがかからない) | 米金利−1pt・円高140円で +10.1%(円高が半分を消す) | 米金利+1pt・円高140円で −17.5%(二重に負ける) | 円安にも備えつつ、利息を長く受け取りたい人 |
| 133A グローバルX 超短期米国債(為替ヘッジなし) 1048円 | 代替 金利の値動きを避けたいならこちら(中身はほぼドル預金) | 3.15% 年33円 | 約4.0%(米3か月金利4.11% − 信託報酬0.0975%) | 金利が動いても価格はほぼ動かない。円安165円で +10.6% | 円高140円で −6.1%。2024年8月の円急騰では −11.7% | 「国債は値動きしないもの」と思って買おうとしていた人 |
分配利回りは直近12か月の支払い実績÷2026-09-14終値(Yahoo Finance)。ヘッジコストは米国3か月金利4.11%(米財務省)−日銀の政策金利1%で出した推定。デュレーション・信託報酬はGlobal Xファクトシート(2026-08-31時点)。
ヘッジありとなし — 何が違うのか
このセクションの3点
① ヘッジあり=「米国債の値動きだけ」を買う。円高・円安は関係なくなる
② その代わり、日米の短期金利の差(今は年約3.11%)を毎年払う
③ 同じ中身なのに、この1年でヘッジありは-9.4%、なしは-1.7%。差の半分強はこのコスト
| 比べる点 | 179A(ヘッジあり) | 180A(ヘッジなし) |
|---|---|---|
| 中身 | 同じ。残り25年以上の米国債20銘柄(ICE US Treasury 25+ Year Bond Index)・修正デュレーション15.27年・信託報酬年0.1045%(税込)・分配年4回(2・5・8・11月の24日) | |
| 円高になると | 影響なし | 円高の分だけ下がる(1ドル155円→140円で約−10%) |
| 毎年のコスト | 年約3.11%(米3か月金利4.11% − 日銀1%)。FRBが利上げすると増え、日銀が利上げすると減る | なし |
| 株が暴落した日 | 2024年8月の円急騰・株暴落で +8.4%(保険として働いた) | 同じ期間に -4.6%(円高が米国債の値上がりを打ち消した) |
| 純資産・売買代金 | 213.29億円・約805万円/日 | 8.53億円・約571万円/日(小さい。売りたい時に値が飛びやすい) |
ポイントは、ヘッジありは「日本の株が暴落する日」に強いことです。株が暴落する日は円が買われやすく、ヘッジなしの米国債は円高で値上がりを消されます。株をたくさん持っている人が保険として持つならヘッジあり、保険が要らず利息が欲しい人ならヘッジなし、と目的で決まります。
→ 次は「これからどうなるか」を6つのシナリオで計算します。
これからどうなるか — 1年後の損益(6シナリオ)
このセクションの3点
① 179Aが大勝ちするのはA(利下げ)だけ。何も起きなければ年+2%程度
② 180AはB・D(円安が続く)で勝ち、C・E'(円高)で負ける
③ どちらも「米金利+1pt」が来ると大きく負ける。いまは利上げ観測が強い
| シナリオ | 米30年債利回り | ドル円 | 179A ヘッジあり | 180A ヘッジなし | 半々 179A+180A | 133A 超短期 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A 景気後退・AIバブル崩壊で利下げ 米利下げ+リスクオフで円高 | −1.0pt(4.34%) | 140円 | +18.8% | +10.1% | +14.4% | -6.1% |
| B 横ばい(今の水準が1年続く) 変わらず | ±0(5.34%) | 155円 | +2.1% | +5.2% | +3.7% | +3.9% |
| C 日銀だけ利上げで円高 日米金利差の縮小 | ±0(5.34%) | 145円 | +2.4% | -1.6% | +0.4% | -2.8% |
| D インフレ再燃・FRB追加利上げ 金利差拡大で円安 | +0.5pt(5.84%) | 165円 | -5.4% | +4.2% | -0.6% | +10.6% |
| E 最悪:米財政不安で超長期だけ売られる 円安(ただし円高もあり得る) | +1.0pt(6.34%) | 165円 | -11.9% | -2.7% | -7.3% | +10.6% |
| E' 最悪+円高:米国売り(ドル離れ) 米国資産からの逃避で円高 | +1.0pt(6.34%) | 140円 | -11.7% | -17.5% | -14.6% | -6.1% |
計算の前提: 出発点は米30年債5.34%・1ドル155.1円。金利は一度に動いてそのまま1年続くと仮定。価格変化は 価格変化% = −15.27×Δy + 1.45×Δy²(凸性の近似。Δyは%pt)。179Aは+実質2.13%(Cは日銀利上げでヘッジコスト−0.25pt、D・Eは米利上げで+0.25pt)、180Aは+5.24%に為替を掛け、133Aは米3か月金利−信託報酬の4.01%に為替を掛けた。分配金は再投資しない。データは data/toushi/us-long-bond/2026-09-16/scenarios.json。
いま一番起きそうなのはどれか
足元はD(インフレ再燃・利上げ)寄りです。米8月CPI 前年比+3.4%・コア+2.4%・エネルギー+16.3%(BLS 9/11公表)。9月15〜16日(結果は日本時間9月17日午前3時)。CME FedWatchの利上げ確率は84.1%(9/14時点・報道)。FF金利は3.50〜3.75%。米30年債 5.34%(9/14・米財務省)。取得した10年分のデータで最高。ただし、30年債が5%を超えた2023年10月は、その後2か月でTLT(同じ超長期の米国ETF)が+22.5%反発しました。「金利が高いところで少しずつ拾う」のは筋が通りますが、底を一度で当てにいくと、Eの−12%を最初に食らう可能性があります。だから3回に分けます。
→ 次は、50万円・100万円での買い方です。
買い方 — 50万円・100万円を3回に分ける
179Aだけを買う場合の例です(1口≒235.8円で計算、口数は目安)。180Aと半々にするなら、各回の金額を2つに割ります。「資産の1割まで」は、株や預金を合わせた全体の1割という意味です。
| 回 | いつ | 50万円の場合 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| 1回目(3分の1) | 9月18日(日銀会合の結果が出たあと) | 166,000円 約703口 | 333,000円 約1,412口 |
| 2回目(3分の1) | 10月中旬(9月分CPIのあと) | 166,000円 約703口 | 333,000円 約1,412口 |
| 3回目(残り) | 11月上旬(次のFOMC 10/27〜28のあと) | 168,000円 約712口 | 334,000円 約1,416口 |
年の分配金(目安)
50万円で約23,320円、100万円で約46,640円(直近12か月の実績11円/口で計算・NISAなら非課税)
途中でやめる条件
米30年債が6%を超えたら2回目・3回目は止めて様子を見る(シナリオEの入口)。
売る目安
保険として持つので、株が暴落して179Aが上がった時に一部を売り、下がった株を買う資金にする。
実測 — これまでの成績と、過去の局面
| 期間 | 179A | 180A | ドル円 | 米30年債 |
|---|---|---|---|---|
| 3か月 | -5.8% | -8.7% | -4.3% | 4.97→5.33% |
| 6か月 | -6.7% | -7.8% | -3.9% | 4.86→5.33% |
| 1年 | -9.4% | -1.7% | +4.2% | 4.68→5.33% |
| 2年 | -20.4% | -5.0% | +8.4% | 3.98→5.33% |
| 上場来(2024-04-08〜) | -13.3% | -1.5% | +1.0% | 4.55→5.33% |
| 局面 | TLT ドル/円 | 179A | 180A | 133A |
|---|---|---|---|---|
| コロナ暴落 2020/2/19〜3/9・30年債2.02→0.94% | +17.9% +11.5% | — | — | — |
| 2022年の利上げ 2021/12/31〜2022/10/24・30年債1.90→4.36% | -36.4% -17.7% | — | — | — |
| 2023年 金利5% 2023/7/31〜10/19・30年債4.02→5.10% | -16.4% -12.0% | — | — | — |
| 2023年末の反発 2023/10/19〜12/27・30年債5.10→3.94% | +22.5% +16.5% | — | — | — |
| 2024年8月 円急騰・株暴落 2024/7/10〜8/5・30年債4.47→4.07% | +7.0% -3.5% | +8.4% | -4.6% | -11.7% |
| 2025年4月 関税ショック 2025/4/2〜4/9・30年債4.55→4.79% | -2.8% -3.1% | -5.8% | -7.8% | -3.1% |
超長期米国債は「安全資産」の名前に反して、TLTは2020年8月の171.57ドル → 80.74ドル(−53%)まで下がったことがあります。2022年の利上げではドル建て-36.4%。179Aはその下がりきった後の2024年に上場しましたが、それでも上場来-13.3%です。
ルール外(グローバルX以外)で良いもの
「債券ETFはグローバルXだけ」のルールを外した場合の候補です。結論は、米国債を持つこと自体が目的なら、超長期より7〜10年のヘッジなし(2647)が失敗しにくい。超長期で他社に乗り換える理由は見つかりませんでした。
| 銘柄 | 判定 | 信託報酬 | 分配利回り | 1年/2年 | 売買代金 | 理由 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2647 NEXT FUNDS 米国国債7-10年(ヘッジなし) | ◎ ルール外で一番の推し | 0.143% | 3.92% | +1.9%/+8.5% | 約496万円/日 | 残りが7〜10年なので、金利1ptでの値動きは179A/180Aの約半分。2021年上場で2022年の利上げ局面も経験済み。「米国債を持つ」目的なら、超長期より失敗しにくい。 |
| 2648 NEXT FUNDS 米国国債7-10年(ヘッジあり) | △ 179Aの値動きを半分にした版 | 0.18%(実質) | 4.33% | -5.5%/-8.0% | 約224万円/日 | ヘッジコストは179Aと同じだけかかる。値動きが小さいぶん、利下げ局面で取れる上昇も半分。 |
| 376A NEXT FUNDS 米国国債7-10年(75%ヘッジ) | ✕ 考え方は良いが売買がほぼ無い | 未確認 | 4.48% | -3.5%/— | 約5千円/日 | 「ヘッジありとなしの中間」を1本で持てる珍しいETF。ただし売買代金が1日数千円で、買った値段で売れない恐れがある。179Aと180Aを3対1で持てば同じことができる。 |
| 237A / 238A iシェアーズ 米国債25年超 ロングデュレーション(なし/あり) | ? 保留(中身を確認できていない) | 未確認 | 10.46% | -7.3%/-18.1% | 約7,065万円/5,058万円/日 | 売買代金は179Aの約9倍と最大。ただ分配利回り10%台は米30年債5.34%では説明できず、ヘッジなしの237Aの1年成績(−7.3%)も同じ25年超の180A(−1.7%)より悪い。オプション取引や元本の取り崩しが入っている可能性があり、目論見書を確認するまで推さない(数値は237A。238Aは1年−14.3%)。 |
| 182A / 183A MAXIS 米国国債20年超(なし/あり) | ✕ 179A/180Aを選ばない理由がない | 未確認 | 4.39% | -1.9%/-4.8% | 約122万円/約6万円/日 | 中身はほぼ同じ超長期米国債。売買代金はグローバルXより小さく、ヘッジありの183Aは1日約6万円しか売買されていない(数値は182A。183Aは1年−9.1%)。 |
成績・分配利回り・売買代金(直近3か月の中央値)はYahoo Financeの日足から自前計算。2647/2648の信託報酬は既存の投資ラボ記事の取得値(nextfunds.jp)。「未確認」は今回取得していない。
今週の材料 — 買う前に確認する4つ
米国の金融政策(FOMC)
9月15〜16日(結果は日本時間9月17日午前3時)。CME FedWatchの利上げ確率は84.1%(9/14時点・報道)。FF金利は3.50〜3.75%。利上げなら短期金利が上がり、179Aのヘッジコストも増える。
米国の物価
米8月CPI 前年比+3.4%・コア+2.4%・エネルギー+16.3%(BLS 9/11公表)。総合を押し上げているのはガソリンなどエネルギー。
日本銀行
日銀会合 9月17〜18日。無担保コールO/Nは1.0%程度(6月に引き上げ)。日銀が利上げすると179Aのヘッジコストは減り、180Aは円高で下がりやすい。
米国の長期金利
米30年債 5.34%(9/14・米財務省)。取得した10年分のデータで最高。高いほど179A/180Aの価格は安く、これから受け取る利回りは高い。
このコラムの弱点
弱点 1
シナリオは「金利が一度に動いてそのまま1年」という単純化。途中で上下すると、分割で買う人の結果は表と変わる。
弱点 2
ヘッジコスト3.11%は「米3か月金利−日銀の政策金利」で出した推定で、公表値ではない。1年の179Aと180Aの差(7.7pt)から円安分4.2ptを引いた残り約3.5ptとは近いが一致はしない。
弱点 3
FOMCの結果は日本時間9月17日の未明に出る。このコラムはその前に書いているので、利上げ見送りなら金利は下がり、179Aは上がって始まる可能性がある。
弱点 4
179Aは2024年4月上場で、暴落を経験したのは2回だけ。2020年や2022年はTLT(米国の同種ETF)での代用。
投資助言ではなく、この日の判定の記録です。
価格・分配金はYahoo Finance(終値2026-09-14)、金利は米財務省、政策金利は日本銀行、物価は米労働統計局(BLS)、信託報酬・デュレーション・純資産はGlobal Xのファクトシート(2026-08-31)。FOMCの利上げ確率は報道(CME FedWatch、9/14時点)。データの正本は data/toushi/us-long-bond/2026-09-16/。