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Column

2040年の未来から逆算する投資 — 日本編

日本の21業界を対象。人口減という確定事項を土台に、AIが「需要を増やす側」か「利益を消す側」かで分ける

更新 2026-08-11

株を選ぶとき、多くの人は「今どれが上がっているか」から入る。この記事は逆で、2040年に何が必要とされているかを先に置き、そこから今のセクターへ矢印を引き戻す。長期投資というのは要するにこの矢印を引く作業のことで、当てるゲームではなく、外れにくい前提だけを積む作業になる。

① 2040年に確定していること/賭けになること

逆算するには、まず動かない土台を置く。人口は計算で出るが、AIと地政学は当てられない。ここを混ぜると予想が全部あやしくなる。

✔ ほぼ確定

日本の人口減と高齢化は確定している

2040年の日本の人口・年齢構成は、すでに生まれている人の数で決まっているため予測ではなく計算になる。生産年齢人口は今よりはっきり減り、65歳以上の比率は上がる。つまり「国内で人を集めて売る商売」は数量が減り、「人が足りないことを解決する商売」は需要が増える。これは景気ではなく算数なので、外れない。

✔ ほぼ確定

電力需要は増える方向にしか動かない

データセンター、EV、半導体工場はいずれも大量の電気を食う。人口が減っても電力需要が減らない、あるいは増えるという逆転が起きる。エネルギーと送配電、そこに使われるパワー半導体は、需要側の理由が複数ある。

✔ ほぼ確定

世界人口とアジアの中間層は増え続ける

日本の人口が減ることと、世界の顧客が減ることは別の話。輸出企業・インバウンド産業・海外に権益を持つ会社にとって、日本の少子化は必ずしも逆風ではない。国内需要と世界需要を混同しないことが、日本株を読むときの最大の分岐点になる。

⚠ 賭けになる

AIがどこまで人の仕事を置き換えるかは賭け

AIが「人手不足を埋める救世主」になるのか、「人月で売っていた産業の売上を消す刃」になるのかは、産業ごとに逆向きに効く。ここだけは確定事項ではないので、複数のシナリオで壊れないほうに寄せる。

⚠ 賭けになる

地政学(台湾・関税・対中規制)は読めない

半導体の強気シナリオは、台湾海峡と米中の輸出規制という一撃で前提が変わる。技術の話ではなく政治の話なので、確率を計算しても意味がない。だから「当てる」のではなく「一撃で全部消えない配分にする」ことで対処する。

② セクター需要予想 — AIの効き方で4つに分ける

AIは全部の産業に同じようには効かない。需要そのものを増やす側と、売上の単価を消す側では真逆になる。ここを分けずに「AI関連」とまとめるから読み違える。

セクター2040年の需要AIの効き方理由
半導体・電子部品↗ 増えるAIが需要を増やすAIの計算需要が、そのままチップの枚数と製造装置の台数に変換される。日本は装置と材料の位置にいるため、どの国が半導体を作っても収益が入る。
産業機械↗ 増えるAIが人手不足を埋める人手不足は世界共通で、省人化装置の需要になる。日本の少子化がむしろ追い風として効く数少ない産業。
総合商社→ 横ばいAIとほぼ無関係「儲かる事業を買い、儲からなくなったら売る」業態なので、時代が変わっても形が残る。焦点は化石燃料権益をどこまで再エネ・食料・データセンターへ入れ替えたか。
ホテル・旅館↗ 増えるAIとほぼ無関係客が世界人口なので日本の人口減が直撃しない。アジアの中間層が増える限り需要は伸びる。ボトルネックは人手。
トラック輸送・宅配→ 横ばいAIが人手不足を埋める荷物は増え、運ぶ人は減る。需給が逼迫し運賃は構造的に上がるが、利益を取るのは自動化に投資できた大手だけ。
医薬品→ 横ばいAIが人手不足を埋める高齢化で患者は増えるが、薬価は財政の都合で下げられ続ける。国内市場は伸びない。米国で売れる新薬を持つ会社だけが成長する。
銀行(主要行)→ 横ばいAIが人手不足を埋める金利上昇は一度きりのボーナス。使い切った後に残るのは人口減で縮む国内貸出市場。海外に移せた銀行だけが伸びる。
建設→ 横ばいAIが人手不足を埋める仕事は残るが造る人がいない。仕事量ではなく施工能力が売上の天井になる。省人化・工場生産化ができた会社に利益が寄る。
自動車→ 横ばいAIが単価を消す車は売れ続けるが、価値がエンジンからソフトウェアと電池へ移る。参入障壁が下がり、中国勢との価格競争に晒される。
ソフトウェア受託・SI↘ 減るAIが単価を消す需要は増えるのに、売上が「人月」で決まるためAIが単価を削る。人数を売る会社は縮み、自社プロダクトを持つ会社だけが残る。
広告代理店↘ 減るAIが単価を消す運用は自動化され、制作は生成AIが担い、企業は内製化できる。中間流通としての存在理由が薄れる。
加工食品↘ 減るAIとほぼ無関係国内で食べる人の数そのものが減る。値上げでは数量減を補いきれない。輸出と高齢者向けに振り切れた会社だけが伸びる。
総合スーパー・小売↘ 減るAIが人手不足を埋める買う人が減るという最も単純な逆風。消滅はしないが、安さか近さのどちらかに振り切らないと生き残れない。
百貨店↘ 減るAIとほぼ無関係中間層向けは既に地方から消えた。残るのは都心の数店舗で、その価値は小売ではなく土地。
鉄鋼(高炉)↘ 減るAIとほぼ無関係国内需要は自動車・建設ともに縮み、生産は海外へ移る。加えて脱炭素で電炉転換に巨額投資が要る。
石油元売り↘ 減るAIとほぼ無関係EV化と人口減でガソリン需要は毎年削られる。生き残る道は電力・再エネ・保有地の再開発であって石油ではない。
紙・パルプ↘ 減るAIが単価を消す紙を読む人も、紙で送る仕組みも減り続ける。AIとデジタル化は需要を戻さない。段ボールとバイオマスへの転換だけが道。
石油化学↘ 減るAIとほぼ無関係中国の大増設で汎用プラスチックは世界的に余剰。国内の汎用設備は閉鎖・統合が進む。伸びるのは半導体材料・電池材料といった高付加価値品で、同じ「化学」でも中身の入れ替えに成功した会社だけが残る。
外食↘ 減るAIが人手不足を埋める外食する人の総数が人口減で縮む。同時に働く人も採れない。配膳ロボットやセルフレジで人を減らせた大手チェーンと、値段で選ばれる低価格業態が残り、中価格帯が最も消える。
繊維↘ 減るAIとほぼ無関係衣料向けは人口減と低価格輸入品で構造的に縮小。一方で炭素繊維など産業用素材は航空機・EV・風力で伸びる。同じ「繊維」でも二極化し、アパレル依存の商社は生き残りが難しい。
印刷→ 横ばいAIが単価を消す印刷そのものは沈むが、大手はすでに半導体フォトマスク・電子材料の会社に変身している。分類と実態がずれているセクター。

③ おすすめ — 買う順番を3層に分ける

「何を買うか」より先に「どの層に置くか」を決める。土台に伸び狙いを置くから、相場が崩れたときに耐えられなくなる。

  1. 1

    第1層

    土台に置く(外れにくい前提だけで説明できる)

    AIが普及しても、しなくても、人が減ることは確定している。だから「人手不足を解決する」「世界に売る」の2つだけで説明できるものを土台にする。ここは当てにいく枠ではなく、外さない枠。

    ETF 1624 NEXT FUNDS 機械(TOPIX-17) 最低87,020円 / 信託報酬0.352%

    省人化投資は日本の少子化でも世界の人手不足でも需要になる。個別銘柄を選ばずに産業ごと持てる。

    個別株 8058 三菱商事 4,849円 / PER 23.1 / PBR 1.84

    資源と生活消費の両方を持ち、事業を入れ替え続ける業態。人口減の影響を最も受けにくい形。

    個別株 8001 伊藤忠商事 2,090.5円 / PER 16.3 / PBR 2.16

    資源に頼らない収益で利益のブレが小さい。商社の中で「振れにくい側」を担わせる。

  2. 2

    第2層

    伸びを取りにいく(AIが需要そのものを増やす側)

    AIの計算需要は、最終的にチップの枚数・装置の台数・電力量という物理量に変換される。日本はその「作るための道具と材料」の位置にいる。ただしここは評価倍率がすでに高く、地政学の一撃も乗っている。土台の上に乗せる枠であって、ここを土台にしない。

    ETF 1625 NEXT FUNDS 電機・精密(TOPIX-17) 最低66,060円 / 信託報酬0.352%

    半導体関連を1本で。個別のPERの高さに賭けずに、産業の伸びだけを取る。

    個別株 8035 東京エレクトロン 56,750円 / PER 45.5 / PBR 12.04

    工程の複数箇所を押さえており、どのメーカーが工場を建てても売上が立つ。

    個別株 4063 信越化学工業 6,286円 / PER 24.9 / PBR 2.56

    ウエハ世界首位に加え塩ビを持つ二本柱。半導体が不調な局面でも沈みにくい。

  3. 3

    第3層

    触るなら条件付き(構造が壊れる側/回復待ちの側)

    ここは「安いから買う」を最もやってはいけない領域。市場が安く付けているのは、需要が減ることを織り込んでいるからで、割安ではなく妥当な場合が多い。買うなら「転換が成功したか」という具体的な条件を先に決めてから。

    注意 ソフトウェア受託・広告

    AIが単価を消す側。人数を売るモデルのままなら、需要が増えても利益は増えない。自社プロダクトを持てたかで判断する。

    注意 紙パルプ・石油・百貨店

    本業ではなく転換先(段ボール/電力・再エネ/都心不動産)が育っているかだけを見る。本業の回復を待つ理由はない。

    注意 ローム・SUMCO

    直近は赤字。半導体という良いテーマの中にも赤字企業はある。テーマで買わず、需要が戻った証拠を確認してから。

④ この予想が壊れる条件

予想は当たり外れより、どうなったら間違いだったと分かるかを先に書いておくほうが役に立つ。

  • 台湾海峡で有事が起きる、あるいは対中輸出規制が一段強まる → 第2層(半導体)の前提が消える。技術ではなく政治で決まるため、事前に確率は測れない。
  • AI投資が一巡して設備投資が止まる → 装置・材料の受注は数年単位で沈む。過去にも半導体は3〜4年周期で大きく上下してきた。
  • 円高に振れる → 輸出企業とインバウンドの追い風が同時に消える。日本株の上昇の一部は円安によるものなので、そこを剥がして見る必要がある。
  • 日本が移民政策を大きく変える → 「人手不足=省人化需要」という前提が弱まり、第1層の理由が一部崩れる。
  • そもそも10年以上先の予想であること → 個別企業の経営判断ひとつで結論は変わる。この記事はセクターの向きを示すもので、銘柄の推奨ではない。

⚠️ このコラムは投資助言ではありません

セクターの向きを整理するための個人の記録です。特定銘柄・特定ETFの購入を推奨するものではなく、実際の売買は自己判断で行ってください。