Column / USA
2040年の未来から逆算する投資 — 米国編
人口が増える国では、日本と同じ業界でも結論が変わる。どのETFで取りにいくかまで決める
更新 2026-08-11
日本編では「人口が減る」という確定事項を土台に置いた。米国はここが逆で、先進国では例外的に人口が増え続ける。同じ産業でも前提が違えば結論が変わるので、日本の判断をそのまま持ち込むと必ず間違える。この記事では米国の36業種を需要とAIの効き方で並べ直し、最後に「では実際どのETFを買うのか」まで決める。
① 米国の前提は日本と違う
✔ ほぼ確定
人口が増える。これが日本との最大の差
米国の人口は移民を含めて増え続ける見通し。つまり「国内で人を相手に商売する」業種が、日本のように数量減で沈まない。日本編で「人口減が直撃」として曇り以下にした小売・外食・銀行・住宅関連が、米国では同じ結論にならない。日本株と米国株を同じ物差しで語れない理由がここにある。
✔ ほぼ確定
AIの計算需要は、最後は電力になる
AIの計算は半導体で行われ、その半導体は電気で動く。だから需要は「半導体 → 製造装置・材料 → 発電・送配電設備 → 電力会社」という順に物理量へ変換されていく。米国はこの連鎖のほぼ全段に上場企業がいる。半導体だけを見て電力を見落とすのは、川上だけ見て川下を見ないのと同じ。
✔ ほぼ確定
医療費は減らせない
米国は医療費が世界で突出して高く、しかも高齢化で増え続ける。政治的に叩かれ続けるが、支出そのものは減らない。製薬・医療機器は需要の土台が最も固い部類にある。
⚠ 賭けになる
AI検索が広告の仕組みを壊すかどうか
AIが答えを直接返すようになると、「リンクをクリックさせて広告を見せる」という現在の収益構造が揺らぐ。当事者自身がその移行を進めているのが難しいところで、これは確定事項ではなく賭け。
⚠ 賭けになる
台湾と輸出規制
半導体の強気シナリオは、製造の大半が台湾に集中しているという一点で崩れうる。技術ではなく政治で決まるので確率は測れない。当てにいくのではなく、一撃で全部消えない配分にすることで対処する。
② 36業種を並べ直した結論
各業種の天気(事業環境)と、いまの株価水準を並べています。良い業種でも株価が高ければ、そこから先は期待を上回る必要があるという点に注意。
追い風が続くと見ている業種
AIの計算需要が最後に行き着く先。人口が減っても増える数少ない需要。地味だが最も確実性が高い受益者。
データセンターを建てるには受変電設備が要る。半導体ほど注目されないのに、需要の根っこは同じ。納期が長期化するほど価格交渉力が上がる。
微細化が難しくなるほど工程数と装置台数が増える。「難しくなること」が売上になる希少な構造。
AI需要そのもの。ただし台湾集中という一点のリスクを常に抱える。
世界中が高齢化する。需要の土台が最も固い。AI創薬が進めば資本力のある大手に利益が集中する。
分類は不動産だが実態はデジタルインフラ。AIが動く物理的な場所を持っている。
構造が壊れると見ている業種
AIエージェントが画面を操作するようになると「席数課金」の前提が消える。需要は増えるのに単価が下がる。
日本のSIerと同じ構造問題。売上の単位である「人の時間」をAIが削る。
AIが直接答えると、検索結果の広告枠という発明が古くなる。今の高収益がそのまま続く前提を置かない。
エンジンという参入障壁が消え、価値がソフトと電池へ移る。自動運転が実用になれば所有台数自体が減りうる。
③ ではどのETFを買うのか
数値は実測値(2026-08-11 時点)。東証上場は円で買えて確定申告が不要、米国上場は経費率が安い代わりに両替と申告が要る、という違いで選びます。
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土台 — 米国そのものを持つ
業種を当てにいく前に、まず米国という市場そのものを持つ。ここは「どれを選ぶか」より「コストと手間」で決めてよい部分。
東証・円 2633 NEXT FUNDS S&P500(為替ヘッジなし)円で買うならこれ
信託報酬0.066%は国内上場ETFで最安水準。円のまま買えて特定口座で完結するので確定申告が要らない。米国上場VOO(0.03%)との差は年0.036%=100万円で年360円。この差より、両替と確定申告の手間のほうが大きいと感じるなら、迷わずこちら。
米国・ドル VOO Vanguard S&P 500 ETF$710.65 / 経費率0.03% / 純資産$1686.9B / PER 27.8
金額が大きいならこちら
経費率0.03%は世界最安水準。純資産1.69兆ドルで流動性も最高。ただしドルへの両替と、分配金に米国で10%源泉徴収される点、それを取り戻すための外国税額控除の確定申告が必要。資産額が大きくなるほどコスト差が手間を上回る。
東証・円 1545 NEXT FUNDS NASDAQ-100(為替ヘッジなし)最低2,387円(10口) / 信託報酬0.22% / 純資産1,179.0 億円
上乗せ用。土台にはしない
10口2,387円から買えるので積み上げやすいが、中身は上位数社への集中度が非常に高い。S&P500と別物として持つのではなく、S&P500の上に「ハイテクを厚くする」目的で足す枠。これを土台にすると、AI相場が終わったときに逃げ場が無い。
- 2
上乗せ — AIの物理的な受け皿を厚くする
第1層の上に、需要の連鎖(半導体 → 装置 → 電力)を取りにいく枠を乗せる。ここは当てにいく部分なので、土台より小さくする。
米国・ドル XLU Utilities Select Sector SPDR(公益)$43.13 / 経費率0.08% / 純資産$23.1B / PER 19.6
AI関連で最も見落とされている
経費率0.08%。データセンター向け電力需要で、長年横ばいだった電力販売量が伸びに転じた。半導体と違って評価倍率が低く、値動きも穏やか。「AIに乗りたいが半導体のPERは高すぎる」と感じるなら、ここが答えになる。
米国・ドル XLI Industrial Select Sector SPDR(資本財)$184.6 / 経費率0.08% / 純資産$32.9B / PER 30.6
電力設備と防衛をまとめて
経費率0.08%。データセンター向けの受変電設備、航空機エンジンの整備、防衛が同居する。受注残が数年分積み上がっており、当面の売上が見えている点が強い。
東証・円 346A NEXT FUNDS S&P500 半導体・半導体製造装置35%キャップ円で半導体を取りにいく唯一の選択肢
NEXT FUNDSで唯一「米国の業種を切り出した」ETF。1銘柄が35%を超えないようキャップがかかるので、エヌビディア1社に偏りすぎない設計になっている。ただし純資産は40.9億円とまだ小さく、売買のしやすさでは米国上場に劣る。
米国・ドル XLK Technology Select Sector SPDR(情報技術)$186.32 / 経費率0.08% / 純資産$115.4B / PER 35.8
中身をよく見てから
経費率0.08%だが、GICSの情報技術には半導体と業務アプリが同居している。このコラムの見立てでは半導体は晴れ、業務アプリは曇り。つまりXLKは追い風と逆風を同時に買うことになる。半導体だけを取りたいなら346AやSOXX系のほうが目的に合う。
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触るなら条件付き
安いから買う、をやってはいけない領域。市場が安く付けているのは、需要が減ることを織り込んでいるから。
米国・ドル XLC Communication Services Select Sector SPDR(通信サービス)$111.83 / 経費率0.08% / 純資産$21.7B / PER 16.2
AI検索の結論が出るまで様子見
PERは16.2倍と11セクター中で最も低い部類。数字だけ見れば割安だが、それは「AI検索で広告の仕組みが変わるかもしれない」という不確実性を市場が織り込んでいるから。安さの理由が解消したかを確認してから。
米国・ドル XLE Energy Select Sector SPDR(エネルギー)$60.18 / 経費率0.08% / 純資産$39.2B / PER 20.3
成長ではなく配当を取る枠
脱炭素で長期需要は減る方向。ただし米国のエネルギー企業は輸出できる資源を持ち、増産より株主還元を優先している。「衰退しながら現金を返す」性格の資産として、配当目的でなら成立する。
④ 組み方の例
手間をかけたくない
2633(S&P500)100%
円で買えて特定口座で完結。これ以上考えなくていい。米国の業種を当てにいかず、市場全体の成長だけを取る。
AIの連鎖を取りにいく
2633 70% / XLU 15% / XLI 15%
土台はS&P500のまま、AI需要が最後に行き着く電力と設備を厚くする。半導体を直接買うより評価倍率が低く、下げ局面での落ち方が穏やか。
半導体に振り切る
2633 60% / 346A 25% / XLU 15%
半導体を名指しで持つ形。ただし台湾リスクが一撃で来る配分なので、これを全部にしない。電力を混ぜてあるのは、同じAI需要でも別の経路で受けるため。
比率は考え方を示すための例であり、推奨する配分ではありません。実際の配分は年齢・収入・他の資産で変わります。
⑤ この見立てが壊れる条件
- 台湾海峡で有事が起きる、あるいは対中輸出規制が一段強まる → 第2層の半導体関連の前提が消える
- AI投資が一巡して設備投資が止まる → 装置・材料・電力設備の受注が数年単位で沈む。過去にも半導体は3〜4年周期で大きく上下してきた
- 円高に振れる → 為替ヘッジなしのETFは、米国株が上がっても円換算では増えない
- 米国の移民政策が大きく変わる → 「人口が増える」という最大の前提が弱まり、内需の業種が日本と同じ問題を抱え始める
⚠️ このコラムは投資助言ではありません
セクターの向きと商品性を整理するための個人の記録です。特定のETF・銘柄の購入を推奨するものではありません。