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Toushi Lab / Famous Portfolios

著名ポートフォリオ図鑑と、2040年から逆算した配分

年金基金・大学基金・著名投資家の配分を、運用主体の公式資料から集めて円グラフで並べます。 そのうえで 2040年の世界編 を踏まえ、 ClaudeとCodexが互いの案を見ずに1つずつ配分を提案します。

更新 2026-08-12

この記事の結論

配分は資産の側では決まらない。負債の側で決まる

年金基金がなぜ債券を厚く持ち、大学基金がなぜ売れない資産を半分以上持てるのか。答えはどちらも運用の巧拙ではなく「いつ、いくら払う義務があるか」です。GPIFには年金の支払日があるので、値動きの小さい資産を一定量持たなければなりません。イェール大学基金には支払日が無く永続を前提にできるので、10年売れない資産と引き換えに高い期待収益を取れます。バフェットが妻に残す信託を90/10にしたのは、その配分が最適だからではなく、遺された人に判断させないためです。つまりどの配分表も、それ単体では正解にも不正解にもなりません。

だからこの記事は、16本の配分を並べたあとで「あなたの負債はどういう形か」に戻ります。本業のキャッシュフローが太く、金融資産に支払日が無く、取り崩しの予定が14年先にも無い人にとって、最も近いのは年金基金ではありません。

🎯 答え 2040年から逆算した配分

2案を突き合わせて、割れた3点に決着をつけたものです。Codexの指摘のうち2つ(待機資金を短期国債にする・AIの出口として電力を採る)は私の案に無かったもので、そのまま取り込みました。日本については折り合いをつけています。 導出の過程は下の提案①(Claude)提案②(Codex)にあります。

全世界株45/米国株10/電力5/金10/賭け枠15/待機15

最終案
全世界株(VT) 45.0%
米国株の上乗せ(VOO) 10.0%
米国電力(VPU) 5.0%
金(GLDM) 10.0%
半導体・AIの賭け枠 15.0%
待機(SGOV・引き金つき) 15.0%

割れた3点をどう決着させたか

Q. 待機資金は現金か、短期国債か

→ 短期国債(SGOV)

Codexの案を採ります。すぐ売れる性質は同じで、待っている間に金利がつく。ドル建てなので円高では目減りしますが、そもそも買う対象(SOXL・TQQQ)がドル建てなので、通貨は揃えたほうが実行時に為替を挟まずに済みます。

Q. 米国電力を入れるか

→ 入れる。ただし10%ではなく5%

AIの計算需要は必ず電力を通ります。ここは私の案に抜けていました。ただし公益企業は規制で料金を自由に決められず、需要が増えても株主の取り分が同じだけ増える保証はありません。だからCodexの10%は取りすぎだと判断し、米国株の上乗せ15%のうち5%を振り替える形にしました。

Q. 日本半導体(200A)を持つか

→ 新規には足さない。既に持っている分は賭け枠15%の内数として残す

Codexの「日本の装置・材料は代替が効かない」は正しい。しかし本人の最大の資産は金融資産286万円ではなく、日本円建ての事業キャッシュフローです。日本に賭ける枠はすでに人生の側で埋まっています。両方を立てる形として、既存の200Aは売らず、賭け枠の内側に置いて上限を管理します。

それでも先に言っておくこと

この配分をどういじっても、いま動く金額は286万円です。本業が年に生む利益に対して1割強にすぎません。配分の議論で得られる差より、毎月いくら入れるかで決まる差のほうが、2040年までの14年では確実に大きくなります。配分表は入金の代わりにはなりません。

📋 著名ポートフォリオ16本 横並び

公式の区分はバラバラなので、比較のために株式/債券/実物・オルタナ/現金の4つへ寄せています。寄せ方の判断は各カードに書きました。 寄せられなかった3本は、その理由をセルに書いています。株式比率の高い順。

ポートフォリオ誰の金か株式債券実物・オルタナ現金基準日個人が真似
🧓 バフェットの90/10 —(配分の考え方)バフェットが遺言で、妻のための信託に指示した配分90% 10% 0% 0%2013年度 株主への手紙(2014年2月28日付)真似できる
🇳🇴 ノルウェー政府年金基金グローバル(GPFG) 21,268億ノルウェークローネ石油収入を将来世代のために積んだ国の基金71.3% 26.5% 2.1% 0%2025年12月31日真似できる
🇰🇷 国民年金公団 NPS(韓国) 1,848.7兆ウォン韓国の公的年金。世界第3位の規模64.6% 21.5% 13.8% 2026年5月末一部だけ
⚖️ 伝統的な60/40 —(配分の考え方)誰のものでもない、機関投資家の業界慣行60% 40% 0% 0%起源特定できず(近縁の一次情報は1949年)真似できる
🇨🇦 CPP Investments(カナダ年金制度投資委員会) 7,144億カナダドルカナダの公的年金58% 26% 16% 0%2025年3月31日(F2025年度末)真似できない
🇸🇬 GIC(シンガポール政府投資公社) 非公表(年次報告書2期分を全文検索したが記載なし)シンガポール政府の外貨準備を運用する器56% 22% 22% 0%2026年3月31日(FY2025/26)真似できる
🏛️ ハーバード大学基金(HMC) 569億ドル世界最大の大学基金55% 4% 39% 3%2025年6月30日(FY2025期末)真似できない
🇺🇸 CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金) 5,562億ドル米国最大の公的年金54% 36% 15% -5%2025年6月30日(配分は2024年3月採択の目標)真似できない
📗 スウェンセンの個人向け配分 —(配分の考え方)イェール基金を作った本人が、個人に薦めた形50% 30% 20% 0%2005年(『Unconventional Success』)真似できる
🇯🇵 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) 約320.4兆円日本の公的年金の積立金49.81% 50.19% 0% 0%2026年6月末(2026年度第1四半期末)一部だけ
🇳🇱 ABP(オランダ公務員年金) 5,320億ユーロオランダの公務員・教職員の年金30.9% 39.6% 28.4% 1.1%2025年9月末(第3四半期)一部だけ
🌦️ オールウェザー(トニー・ロビンズ版) —(配分の考え方)レイ・ダリオが語ったとされる、個人向けの簡略版30% 55% 15% 0%2014年(Tony Robbins『MONEY: Master the Game』)真似できる
🧭 パーマネント・ポートフォリオ —(配分の考え方)ハリー・ブラウンが個人向けに設計した4分割25% 25% 25% 25%1999年(『Fail-Safe Investing』)真似できる
🎓 イェール大学基金 441億ドル大学の永続的な運営費を生む器。いわゆる「イェール・モデル」の本家公式が資産クラス別の比率を出していないため、4分類を作れません2025年6月30日(FY2025期末)真似できない
💊 ゲイツ財団信託 316.7億ドル(13Fで開示された公開株のみ)世界最大級の慈善財団の運用資産13Fは公開株だけの開示です。財団全体の配分ではないので、4分類は作りません2026年3月31日(2026年5月15日提出の13F-HR)一部だけ
🏦 バークシャー・ハサウェイの実際 株式 3,238億ドル/現金・短期国債 3,655億ドルバフェットが自分で運用している本体4分類にしていません。53.03%は現金・現金同等物と短期米国債の合算で、10-Qでは内訳が分かれておらず、現金と債券に割れないためです2026年6月30日(2026年8月10日提出の10-Q)真似できない

※ CalPERSの現金が −5% なのは、資産配分表にレバレッジ(借入)をマイナスで組み込んでいるためです。ハーバードは公式資料の注記どおり四捨五入で合計101%になります。 韓国NPSの現金が「—」なのは、公式の5区分の合計が99.9%で、残りが独立項目として開示されていないためです(ゼロという意味ではありません)。 イェール・ゲイツ財団・バークシャーは4分類を作っていません。理由はそれぞれのセルに書いています。

🧠 提案① Claude の配分

Claude(Opus 5)

2040年から逆算し、本人の状況(36歳・経営者・借入金0・本業のキャッシュフローが太い・金融資産に支払日が無い・生活も収入も円建て)に合わせて組んだ配分です。一般論として万人に薦めるものではありません。

債券を持たない。守りは金と、期限を切った現金で持つ

全世界株(時価総額どおり)45/米国株の上乗せ15/金12/半導体・AIへの賭け枠13/引き金つきの待機現金15

Claude案
全世界株(時価総額どおり) 45.0%
米国株の上乗せ 15.0%
12.0%
半導体・AIへの賭け枠 13.0%
引き金つきの待機現金 15.0%

何を買うか

資産比率銘柄コスト口座なぜ
全世界株45%VT
Vanguard Total World Stock ETF
経費率 0.06%特定口座(米国上場)約9,000銘柄。世界の時価総額どおりに持ち、勝者の入れ替えを自動で拾う。円で完結させたいなら東証の2559(MAXIS全世界株式)で代替できる。
米国株の上乗せ15%VOO / 2633
Vanguard S&P 500 ETF / NEXT FUNDS S&P500
0.03% / 0.066%NISA成長投資枠を優先VTの中身の約6割は既に米国。ここを足す行為は「米国比率を6割から7割に上げる」という意思表示にあたる。上げる理由は人口が増える先進国が他に無いこと。
12%GLDM
SPDR Gold MiniShares
経費率 0.10%特定口座いま金関連を4本(GLDM・GDX・GDXJ・SIL)持っているが、鉱山株は金価格ではなく鉱山会社の株。暴落時に金地金と逆に動くこともある。守りとして持つなら地金連動1本に集約する。
半導体・AIへの賭け枠13%SMH / SOXL
VanEck半導体 / Direxion半導体3倍
0.35% / 0.75%特定口座あなたが張りたいのは半導体。ただし引き金は指数(QQQ)ではなく半導体(SMH)で持つ。SMHは既に高値から約15%下げているが、QQQは3%しか下げていない。
引き金つきの待機現金15%
円・ドルMMF
証券口座価格の引き金と金額を先に決めた分だけを残す。決めていない現金は待機資金ではなく、ただの未投資。

なぜこの配分になるか — 2040年からの逆算

  1. 1

    確定していること

    2040年に、いまのトップ企業のいくつかは残っていない

    1989年末の世界時価総額トップ10には日本企業が7社入っていましたが、いま1社も残っていません。2000年のトップ10(GE、シスコ、エクソンモービルなど)も同様です。14年という時間は、勝者を入れ替えるのに十分な長さです。ここから出る結論は「どの企業が伸びるか当てる」ではなく「勝手に入れ替わる仕組みを持つ」。指数連動のETFが持つ重要な機能の1つがこれで、テーマ型ETFや個別株にはありません(分散や低コストも同じくらい重要な機能です)。

  2. 2

    確定していること

    2040年に働いている人は、もう全員生まれている

    人口動態は、長期の見通しの中では比較的立てやすい部類に入ります。日本の生産年齢人口は減り、米国・インド・東南アジアは増えます。ただし「人口が増える国の株が上がる」は成り立ちません。経済が成長しても、統治と企業の質が伴わなければ株主の取り分は増えないからです。だから人口を理由に新興国を厚くはしません。時価総額どおりに持てば自動的に入ってくる比率で足ります。

  3. 3

    あなた固有の条件

    支払日が無いなら、年金基金の真似をしてはいけない

    GPIFが債券を25%持つのは、来月も再来月も年金を払う義務があるからです。値動きの小さい資産を持たないと、下げた年に払うために安値で売ることになります。あなたにはその義務がありません。生活費は本業のキャッシュフローで賄え、この金融資産には14年後にも取り崩しの予定がない。この前提のもとでは、値動きを抑えるための長期債を大きく持つ必要性は低いと判断しました。

    ただしこれは「債券は要らない」という一般論ではありません。反論としてこう言えます。債券にはリバランスの原資になる、急な資金需要に応えられる、株式と違う理由で動く、本業のキャッシュフローが止まったときの支えになる、という機能があります。2040年という目標を掲げている以上、その時点の用途は実質的に将来の支払い義務でもあります。この提案が債券をゼロにしているのは、その役割を金と待機枠に肩代わりさせているからで、役割自体を否定しているのではありません。

  4. 4

    あなた固有の条件

    収入も生活も事業も円建て。だから金融資産は外に置く

    あなたの最大の資産は金融資産286万円ではなく、本業が生み続けるキャッシュフローです。それは日本円建てで、日本の景気と法制度に直結しています。すでに巨大な「日本円ロングポジション」を持っている状態なので、金融資産で日本株や円建て資産を厚くすると同じ賭けを二重に張ることになります。この提案で日本を名指しで足していないのは、日本が悪いからではなく、すでに人生の側で日本に賭けているからです。

    ただし正直に書いておくと、その賭けの大きさを私は測れていません。事業の価値も、顧客がどの国にいるかも、円高になったときに本業がどう効くかも分かっていません。だからこれは「日本株を持つな」ではなく「日本株を新規に上乗せしない」という保守側の判断です。

いまの保有から何を動かすか

減らす 現金 46% → 15%

待機資金132万円は1年動いていません。その1年で全世界株は16.8%、S&P500は16.0%上がりました。待つこと自体にコストがあり、それは調整が来なかった年数ぶん確実に発生します。引き金と金額が決まっている分だけを残し、残りは中核に回します。

減らす 金関連4本 → 1本

GLDM・GDX・GDXJ・SILは4種類に分散されているように見えて、同じ鉱業サイクルに反応します。守りが目的なら地金連動のGLDMだけでよく、鉱山株を持つならそれは守りではなく資源セクターへの賭けだと分けて考えます。

増やす 中核の指数 9% → 60%

VTとSPYMを合わせた中核はいま全体の約9%しかありません。2040年まで持ち続けて意味があるのはここです。テーマ型は当たれば大きいが、外れたときに指数のような自動回復の仕組みがありません。

持たない 債券 0%

年金基金と正反対の判断です。理由は支払日が無いこと。加えて2022年に株と債券が同時に下がり、分散の前提が崩れた実例があります。下落局面の緩和は金と現金で持ちます。

⏳ 待機現金には期限を付ける

待機現金15%には期限を付けます。2027年12月末までに引き金(SMH −15%、QQQ −20%/−30%、SMH −40%)のいずれにも触れなければ、残額の半分を全世界株に回す。期限のない待機は、意図がいつのまにか放置に変わります。

この提案が壊れる条件

  • 米国一極が崩れる — 全世界株を持っていても中身の6割は米国。「分散したから無関係」にはならない
  • 円高に大きく振れる — 外貨建てに寄せた分だけ、現地で上がっても円換算で目減りする
  • インフレが再燃して金が効かない — 1980年代の金は20年かけて価値を戻せなかった。守りを金に寄せた形はこの局面で最も痛い
  • 調整が来ないまま2年が過ぎる — 待機現金15%は機会損失に変わる。だから期限を切っている
  • 本業のキャッシュフローが止まる — この提案の前提が全部崩れる。債券ゼロも現金15%も、本業が生活費を賄える前提の上に立っている

🤖 提案② Codex の配分(独立)

Codex(GPT-5.6)

Claude側の提案は参照せず、本人が記録した現在資産・AI調整待ちの相場観・日本/米国/世界の2040年観だけから、投資可能資産全体の目標配分を独立に作成した。比率は予測値ではなくCodexの判断である。 原文のまま載せています(編集していません)。

待つ権利は15%残すが、資産全体をAIバブル崩壊という一つの予想の人質にはしない「中核65・保険25・投機10」のバーベル。

全世界株45/米国電力10/日本半導体10/金地金10/米国短期国債15/NASDAQ100 3倍5/半導体3倍5

Codex案
全世界株 45.0%
米国電力 10.0%
日本半導体 10.0%
金地金 10.0%
米国短期国債 15.0%
NASDAQ100 3倍 5.0%
半導体3倍 5.0%

2案はどこで割れたか

互いの案を見せずに書かせたので、一致した部分は2つの独立した判断が同じ結論に着いたことを意味します。割れた部分のほうが読む価値があります。

論点ClaudeCodex判定
中核をどこに置くか全世界株45%(VT)全世界株45%(VT)一致 互いを見ずに同じ数字に着いた。理由も同じで「勝者を当てるのではなく入れ替わる仕組みを持つ」。
現金46%を維持するか否定。1年動かず、その間に全世界株は16.8%上がった否定。「投資可能資産の約半分を、期限なく無利息で待たせる形は否定する」一致 2つとも同じ結論。ただし待つこと自体は両方とも肯定していて、否定しているのは金額と無期限であること。
待機資金を何で持つか現金(円・ドルMMF)15%米国短期国債ETF(SGOV)15%割れた 一長一短。同じ「すぐ売れる」性質のまま金利を取れるのがSGOVの利点。ただし円で生活する人にとって短期米国債ETFは現金同等物ではなく為替ポジションで、株安と円高が重なると弾としては目減りする。
債券を持つか0%。支払日が無い人に長期債は要らない長期債は持たず、短期国債15%のみ一致 表現は違うが実質同じ。2案とも「値動きを抑えるための長期債」を採用しなかった。年金基金16本中の多くと正反対の判断。
金をどう持つか地金連動1本(GLDM)12%。鉱山株3本は売る現物とGLDMで10%。「4本に分けても危機保険は増えない」一致 完全に一致。GDX・GDXJ・SILは金ではなく鉱山会社の株で、同じ鉱業サイクルに反応する。
日本を名指しで持つか持たない。本業の収入が円建てで、すでに日本に賭けている日本半導体10%(200A)。「日本固有の供給網だけを選ぶ」割れた 最も割れた点。人的資本の集中を重く見るか、供給網の代替不可能性を重く見るかの違い。決着は下の最終案で。
AIの取り方半導体(SMH/SOXL)13%半導体に加えて米国電力(VPU)10%割れた Codexの勝ち。私の案に電力が無かった。計算需要は必ず電力を通る一方、電力会社は規制で価格を自由に決められないので、比率は下げて採る。
3倍ETFの上限半導体賭け枠13%の内数。引き金はQQQではなくSMHで持つTQQQ5%+SOXL5%=合計10%を絶対上限一致 ほぼ一致。Codexのほうが上限の書き方が厳格で、実行しやすい。

Codex の理由(原文)

2040年までにかなり確度高く置けるのは、日本の生産年齢人口が減って人手不足が深まること、高齢者比率が上がること、デジタル処理が電力と半導体という物理需要を伴うことだ。一方、AI投資の採算、米国巨大テックの現在の評価、台湾有事、米中規制、為替は賭けである。この区別から、世界企業の新陳代謝を取るVTを45%、需要の出口である米国電力を10%、省人化と計算需要の供給網にいる日本半導体を10%とする。比率はすべて公式予測ではなくCodexの判断である。

本人の「調整時にTQQQ・SOXLを買うため現金を持つ」という発想は、買値を選べる点では肯定する。しかし投資可能資産の約半分を、期限なく無利息で待たせる現在の形は否定する。調整の発生と買える価格は別であり、利益成長によって割高感だけが解消する場合もある。待機枠は15%に固定してSGOVへ置き、3倍ETFは合計10%を絶対上限とする。既存資料にある過去局面の下落率は実測だが、将来も同じ軌道を通る保証はない。

金は10%を明確な上限にする。現物6.22gとGLDMは同じ金地金枠として合算し、先に10%へ充当する。GDX、GDXJ、SILは金そのものではなく鉱山会社の株で、採掘費、経営、増資、資源国政策を負う。4本に分けても危機保険は増えないため、保険は現物とGLDMだけに集約する。10%という値は危機時の損失相殺を保証する統計値ではなく、成長を圧迫しすぎず再均衡の原資にできると判断した政策比率である。

36歳、無借金、年2000万円規模の純利益を10年以上続けたという本人情報からは、生活防衛資金とは別の投資資産で価格変動を負える余力が大きい。ただし最大の人的資本は日本の事業と円収入に集中している。だから日本株全体を厚くせず、日本固有の供給網10%だけを選び、残りの生産資産は世界へ逃がす。年間純利益は本人申告であって将来利益の推定ではなく、事業運転資金と自宅はこの100%の分母に含めない。

Codex が買うと言った銘柄

資産比率銘柄コストなぜ
全世界株45%VT
バンガード・トータル・ワールド・ストックETF
経費率0.06%(Vanguard公式資料)国・企業の勝者を固定せず、指数の入替えで2040年まで利益成長を取り込む恒久中核。既存分は維持し、最優先で目標比率まで増やす。
米国電力10%VPU
バンガード・米国公益事業セクターETF
経費率0.09%(Vanguard公式資料)AIの勝者ではなく、計算需要・電化・送配電投資の出口を持つ。規制料金、金利、設備投資負担があるため10%に留める。
日本半導体10%200A
NEXT FUNDS 日経半導体株指数連動型上場投信
信託報酬年0.165%、直近総経費率0.25%(野村アセットマネジメント公式資料)装置・材料を含む日本の供給網をまとめて持つ。既存保有を生かすが、評価倍率と地政学リスクがあるため上限10%とする。
金地金10%GLDM
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
経費率0.10%(State Street公式資料)現物金と合算して10%。現物で既に目標の一部を持つため、GLDMは不足分だけ買い、金鉱株は代用しない。
米国短期国債15%SGOV
iシェアーズ 米国国債0-3カ月ETF
経費率0.09%(BlackRock公式資料)調整待ちの役割を維持しつつ、無利息の放置をやめる。ドル円変動はあるので、円で使う生活防衛資金とは分離する。
NASDAQ100 3倍5%TQQQ
ProShares UltraPro QQQ
経費率0.82%(ProShares公式資料)調整待ち仮説を小さく実行する投機枠。長期中核ではなく、事前の価格条件でのみ買い、買値にかかわらず資産全体の5%を超えた分は戻す。
半導体3倍5%SOXL
Direxion Daily Semiconductor Bull 3X Shares
経費率0.75%(Direxion公式資料)半導体の深い調整にだけ使う投機枠。日次3倍とボラティリティ減価を承知し、TQQQとの合計を10%に固定する。

Codex が言った差分

増やす VT

現在は恒久中核として小さすぎる。待機資金のうち30%分を直ちにVTへ移し、残る不足は6〜12カ月で均等に埋める。この期間は予測ではなく、実行時点の集中を避けるための運用判断である。

増やす VPUとSGOV

電力需要という物理側と、調整時に売れる待機資産を新設する。moomoo、Webull、OANDAの遊休現金は楽天証券へ集約し、役割のない口座残高をなくす。

減らす GDX・GDXJ・SIL

全売却し、金の保険は現物とGLDMへ一本化する。金価格への見方を捨てるのではなく、鉱山経営への重複した賭けを外す。

減らす DRIV・REMX・1622・FUTU・GPRO・楽天グループ

原則売却する。テーマが実現することと現在の器に株主利益が残ることは別であり、特にGPROは2040年以前の存続・希薄化リスクを負う。税ではなくNISAの非課税枠を失うコストはあるが、弱い資産を残す理由にはしない。

減らす アルトコインとミームコイン

SUI、SOL、ETH、TRUMP、SEIは合計で資産への寄与が小さい一方、勝者選択と管理の負担が残るため整理する。BTCもこの提案の恒久配分には入れず、残すなら投機10%枠から同額だけTQQQまたはSOXLを減らす。

維持 200A・現物金・GLDM・SpaceX

200Aと金は各目標比率まで維持する。SpaceXは権利内容と換金条件を確認できる場合だけ投機10%枠内で維持し、その評価額ぶんTQQQまたはSOXLを減らす。

Codex案が壊れる条件

  • 米国の電力需要が増えても、規制当局が設備費と資本コストを料金へ転嫁させず、VPU構成企業の利益が増えない。
  • AI計算需要が半導体数量に結び付かない、または輸出規制・台湾有事・代替技術によって200Aの日本企業が供給網から外れる。
  • 米国一極集中が急速に解ける一方、VTの時価総額加重による地域入替えより速く米国株の評価が縮む。
  • インフレ再燃と実質金利上昇が同時に起き、株・短期債・金が期待した分散を示さず、円高も重なる。
  • AI相場が大きく崩れず利益成長で評価を吸収し、15%の待機枠と厳しい買付条件が恒常的な機会損失になる。

Codex 自身が「自信が無い」と書いた部分

最も自信がないのは、VPUが電力需要増を株主利益へ変換できる度合いと、SGOVを円生活者の待機資産にした点である。需要増は比較的強い前提でも、公益企業は規制と資本コストに挟まれる。SGOVは信用・デュレーションを抑えられる一方、円高時には円換算で減るため、暴落と円高が重なる局面の弾としては完全ではない。

また、本人の事業価値、年間生活費、法人から個人へ移せるキャッシュフロー、NISA残枠、未公開SpaceX持分の法的権利を確認できていない。したがって比率は投資可能資産だけの政策配分であり、総資産配分の厳密な最適解ではない。費用率は各運用会社の公式公表値として記したが、改定され得るため発注時に楽天証券の商品画面と最新目論見書で再確認が必要である。

🏛️ 図鑑 1本ずつ見る

公式の区分をなるべく崩さずに円グラフにしています。数値の出典と、公式資料からの引用を各カードに付けました。

🇯🇵

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)

日本の公的年金の積立金

一部だけ

運用資産額

約320.4兆円

基準日

2026年6月末(2026年度第1四半期末)

配分(公式の区分のまま)

国内債券25.59/外国債券24.6/国内株式24.48/外国株式25.33

🇯🇵
国内債券 25.6%
外国債券 24.6%
国内株式 24.5%
外国株式 25.3%

この金が負っている義務

毎月、年金を払う義務がある。だから値動きの小さい資産を一定量持たないと、下げた年に払うために安値で売ることになる

4資産をきっちり25%ずつ。世界最大級の運用額でありながら、配分ルールは16本の中で最も単純です。第5期中期目標期間(2025年度〜)でも目標比率25%は据え置かれ、変わったのは乖離許容幅のほうで、全資産でタイト化されました(国内債券±7%→±6%など)。配分を凝らないことを、毎期あらためて選び直している基金です。

個人が真似できるか

配分そのものは個人でも真似できます。ただしGPIFが債券を50%持つ理由は「支払日があるから」であって、期待収益を最大化したいからではありません。取り崩しの予定が無い個人がこれを真似すると、目的の無い保険料を払い続けることになります。

実績(2026年6月末):国内債券819,976億円(25.59%)、外国債券787,980億円(24.60%)、国内株式784,321億円(24.48%)、外国株式811,454億円(25.33%)/目標:資産構成割合 国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25%

🇳🇴

ノルウェー政府年金基金グローバル(GPFG)

石油収入を将来世代のために積んだ国の基金

真似できる

運用資産額

21,268億ノルウェークローネ

基準日

2025年12月31日

配分(公式の区分のまま)

上場株式71.3/債券26.5/非上場不動産1.7/非上場再エネインフラ0.4

🇳🇴
上場株式 71.4%
債券 26.5%
非上場不動産 1.7%
非上場再エネインフラ 0.4%

⚠ 読むときの注意

公式の4項目の合計は四捨五入で99.9%です。円グラフはこれを100%として按分するため、図の割合は公式値より0.1ポイントほど大きく出ます(株式は公式71.3% → 図では71.4%)。上の一覧表は公式値のほうです。

この金が負っている義務

支払日が無い。石油という枯れる資源を、枯れない資産に置き換えるための器

株式71.3%。名前に「年金基金」と付いていますが、実態は年金の支払いに直接ひもづいていないソブリンファンドです。だから同じ「年金」でもGPIFより株式に大きく寄せられます。非上場資産は不動産と再エネを足しても2.1%しかなく、世界最大級の規模でありながら中身は上場株と債券という、驚くほど素直な構成です。

個人が真似できるか

16本の中で、個人が最も無理なく真似できる形です。上場株と債券だけで作られていて、特別なアクセス権を必要とする資産がほぼ入っていません。

The fund allocated 71.3% of its assets to publicly listed equities, 26.5% to fixed income and 1.7% to real estate.

🇺🇸

CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金)

米国最大の公的年金

真似できない

運用資産額

5,562億ドル

基準日

2025年6月30日(配分は2024年3月採択の目標)

配分(公式の区分のまま)

公開株式37/債券28/未公開株式(PE)17/実物資産15/プライベートデット8

🇺🇸
公開株式 35.2%
債券 26.7%
未公開株式(PE) 16.2%
実物資産 14.3%
プライベートデット 7.6%

⚠ 読むときの注意

円グラフの5項目の合計は105%です。CalPERSが借入(レバレッジ)を −5% として配分表に組み込んでいるためで、円グラフはこの5項目を100%として按分しています。したがって図の割合は公式の目標比率より一律に小さく出ます(公開株式は公式37% → 図では35.2%)。公式の数値は上の一覧表とこのカードの引用のほうです。

この金が負っている義務

州職員への年金給付。運用が足りなければ州と職員の掛金が上がるので、目標収益率を外せない

配分表に「レバレッジ −5%」がマイナスで載っている珍しい基金です。借りて投資するぶんを、そのまま資産配分の一項目として書いている。さらに2024年に私募市場を33%→40%へ拡大し、2026年7月1日からは従来の戦略的資産配分(SAA)を Total Portfolio Approach(TPA)へ置き換えました。株式75%/債券25%の単一参照ポートフォリオに対する総合成績で評価する方式で、資産クラス別のターゲット達成度で運用を測る枠組みからは離れます。移行はこの記事を書いた時点(2026年8月)のすぐ直前なので、上の配分は「移行直前の最後の公式ターゲット」です。

個人が真似できるか

未公開株式17%・プライベートデット8%・実物資産15%は、機関投資家でなければ同じ条件で買えません。個人が模倣すると、名前だけ似た別物(上場の代替商品)になります。

The proposal will increase total private market allocations from 33% of plan assets to 40%./Beginning July 1, 2026, the Total Portfolio Approach (TPA) will replace the strategic asset allocation (SAA).

🇨🇦

CPP Investments(カナダ年金制度投資委員会)

カナダの公的年金

真似できない

運用資産額

7,144億カナダドル

基準日

2025年3月31日(F2025年度末)

配分(公式の区分のまま)

公開株式29/未公開株式(PE)29/国債15/クレジット11/インフラ9/不動産7

🇨🇦
公開株式 29.0%
未公開株式(PE) 29.0%
国債 15.0%
クレジット 11.0%
インフラ 9.0%
不動産 7.0%

この金が負っている義務

カナダの公的年金給付。ただし制度上、当面の支払いは掛金で賄えるため、積立金は長い時間を取れる

公開株式29%と未公開株式29%が完全に並んでいます。つまり株式の半分が、市場で毎日値段のつかない資産です。インフラ9%・不動産7%を足すと、時価が毎日つかない資産が全体の45%を占めます。値段が毎日つかないことを、欠点ではなく武器として使っている構成の代表例です。

個人が真似できるか

全体の45%が非公開資産。個人がアクセスできる領域ではありません。

Public Equities 29%, Private Equities 29%, Government Bonds 15%, Credit 11%, Infrastructure 9%, Real Estate 7%

🇳🇱

ABP(オランダ公務員年金)

オランダの公務員・教職員の年金

一部だけ

運用資産額

5,320億ユーロ

基準日

2025年9月末(第3四半期)

配分(公式の区分のまま)

債券39.6/株式30.9/オルタナティブ19.1/不動産9.3/オーバーレイ(ヘッジ)1.1

🇳🇱
債券 39.6%
株式 30.9%
オルタナティブ 19.1%
不動産 9.3%
オーバーレイ(ヘッジ) 1.1%

この金が負っている義務

受給者への給付。オランダは積立比率の規制が厳しく、下振れが給付の減額へ直接つながる

株式が30.9%しかなく、公的年金6本の中では最も低い水準です(16本全体ではパーマネント・ポートフォリオの25%のほうが低い)。代わりに債券39.6%とオルタナ28.4%。ヘッジファンドは公式資料に「in afbouw(縮小中)」と明記され、0.5%まで落ちています。金利・インフレ・為替のヘッジを「オーバーレイ」として資産配分表の一項目に書いているのも珍しい。守りの設計を、配分表そのもので見せている基金です。

個人が真似できるか

株式30%・債券40%という骨格は真似できますが、この配分は「積立比率の規制を割ってはいけない」という制約から出たものです。規制の無い個人が真似する理由はありません。

実績(2025年Q3):Vastrentende Waarden 39,6/Aandelen 30,9/Alternatieve beleggingen 19,1/Vastgoed 9,3/Overlay 1,1/Totaal 100,0  目標(2025年):32% Aandelen, 18% Alternatieve beleggingen, 10% Vastgoed, 40% Vastrentende waarden

🇰🇷

国民年金公団 NPS(韓国)

韓国の公的年金。世界第3位の規模

一部だけ

運用資産額

1,848.7兆ウォン

基準日

2026年5月末

配分(公式の区分のまま)

海外株式35.2/国内株式29.4/国内債券15.7/オルタナティブ13.8/海外債券5.8

🇰🇷
海外株式 35.2%
国内株式 29.4%
国内債券 15.7%
オルタナティブ 13.8%
海外債券 5.8%

⚠ 読むときの注意

公式の5項目の合計は99.9%で、残りの0.1%(短期資産と見られる)は独立項目として開示されていません。円グラフは5項目を100%として按分しています。

この金が負っている義務

韓国の年金給付。人口減が日本より速く、積立金がいつ尽きるかが政治問題になっている

株式が64.6%まで膨らんでいます。2031年までの中期目標が株式55%前後なので、目標を9ポイント超えている状態です。とくに国内株式は29.4%で、2026年の年間計画目標20.8%を大きく上回っている。相場上昇と政策的な国内株の買い増しの結果で、リバランス(売却)観測が出ています。目標と実績を並べて開示しているぶん、ずれが外から見えます。他の15本は同じ形で目標と実績を突き合わせられる資料が揃わなかったので、「ずれが最も大きい」とまでは言えません。

個人が真似できるか

この基金から学べるのは配分そのものではなく、「目標を決めても、上がった資産が勝手に比率を押し上げる」という事実のほうです。個人でも同じことが起こります。

Domestic Equity 29.4% / Overseas Equity 35.2% / Domestic Fixed Income 15.7% / Overseas Fixed Income 5.8% / Alternative Investments 13.8%

🎓

イェール大学基金

大学の永続的な運営費を生む器。いわゆる「イェール・モデル」の本家

真似できない

運用資産額

441億ドル

基準日

2025年6月30日(FY2025期末)

配分は非公開

公式が資産クラス別の比率を出していません

⚠ 読むときの注意

配分の円グラフを描けません。いま公式サイトからアクセスできる資料の中に、資産クラス別の比率が見つけられませんでした。2020年版まで発行されていた冊子「The Yale Endowment」のPDFリンクは、現在すべてエラーページに転送されます(実際に叩いて確認しました)。公開をやめると決めたのか、置き場所が変わっただけなのかまでは分かりません。確認できたのは、年間リターン(FY2025は11.1%)と総資産額、そして下の一文です。

この金が負っている義務

大学の運営費を毎年出し続ける義務。ただし大学は永続を前提にできるので、10年売れない資産を持てる

この図鑑を作るうえで最も意外だった1本です。オルタナティブ中心の配分を毎年公表し、世界中の基金に模倣された当の本人の比率が、いまは公式サイトから辿れません。確認できたのは「基金の約95%を、株式に近いリターンが期待できる資産に投じている」という定性的な一文と、「インフレへの脆弱性が、この大学を債券から遠ざけている」という方針だけです。

個人が真似できるか

そもそも真似する対象の数字が、いま公式から辿れません。世に出回る「イェール流の配分」は、少なくとも2020年版までの数字を引き写したものです。

Hence, roughly 95% of the endowment pool is invested in assets expected to produce equity-like returns, through domestic and international securities, real assets, and private equity.

🏛️

ハーバード大学基金(HMC)

世界最大の大学基金

真似できない

運用資産額

569億ドル

基準日

2025年6月30日(FY2025期末)

配分(公式の区分のまま)

未公開株式(PE)41/ヘッジファンド31/上場株式14/不動産5/債券・TIPS4/その他実物資産3/現金3

🏛️
未公開株式(PE) 40.6%
ヘッジファンド 30.7%
上場株式 13.9%
不動産 5.0%
債券・TIPS 4.0%
その他実物資産 3.0%
現金 3.0%

⚠ 読むときの注意

公式資料に「四捨五入により合計が100%を超える」と注記があり、内訳の合計は101%になります。ここでも公式の数字をそのまま載せました。円グラフは101%を100%として按分するので、図の割合は公式値よりわずかに小さく出ます(未公開株式は公式41% → 図では40.6%)。

この金が負っている義務

大学の運営費。イェールと同じく支払日の縛りが弱く、流動性を捨てられる

上場株式が14%しかありません。未公開株式41%とヘッジファンド31%で7割を超えます。私の見立てでは、この図鑑で「株式」と呼べるものの中身が最も市場から遠い基金です。債券・TIPSは4%だけ。FY2018に25%あった不動産・天然資源を6%まで縮小し、未公開株式へ振り替えてきた経緯が公式資料に書かれています。

個人が真似できるか

72%が個人には買えない資産です。「ハーバードは債券を4%しか持たない」だけを取り出して真似すると、残り96%の中身がまったく別物になります。

Public equities 14% / Hedge funds 31% / Private equity 41% / Real estate 5% / Bonds/TIPs 4% / Other real assets 3% / Cash 3%

💊

ゲイツ財団信託

世界最大級の慈善財団の運用資産

一部だけ

運用資産額

316.7億ドル(13Fで開示された公開株のみ)

基準日

2026年3月31日(2026年5月15日提出の13F-HR)

配分(公式の区分のまま)

バークシャー・ハサウェイ25.8/ウェイスト・マネジメント20.06/カナディアン・ナショナル鉄道16.82/キャタピラー14.22/ディア6.33/エコラボ4.38/ウォルマート3.29/その他15銘柄9.1

💊
バークシャー・ハサウェイ 25.8%
ウェイスト・マネジメント 20.1%
カナディアン・ナショナル鉄道 16.8%
キャタピラー 14.2%
ディア 6.3%
エコラボ 4.4%
ウォルマート 3.3%
その他15銘柄 9.1%

⚠ 読むときの注意

これは資産配分ではなく「公開株の中身」です。13Fは米国上場株とADRだけを開示する制度で、財団が持つ非公開資産・債券・現金は対象外です。だから4分類の表には入れていません。円グラフを資産配分として読むと誤ります。

この金が負っている義務

毎年、一定額を助成として出し続ける義務(米国の民間財団には最低支出義務がある)

22銘柄しかありません。上位4銘柄(バークシャー・廃棄物処理・鉄道・建機)だけで77%です。分散されていないのではなく、意図的に集中させた形に私には見えます。廃棄物処理・鉄道・建設機械という並びは、需要が急に消えにくい実物インフラの束です。ただしこれは公開株ポートフォリオに限った話で、財団全体の姿ではありません。景気循環に左右されない業種という意味でもありません(建設機械はむしろ景気敏感です)。

個人が真似できるか

銘柄そのものは個人でも買えます。ただし22銘柄・上位4本で77%という集中は、慈善財団という「損しても誰も困窮しない」立場だから取れる形でもあります。

nameOfIssuer: BERKSHIRE HATHAWAY INC DEL, value: 8169547277, sshPrnamt: 17048304

🇸🇬

GIC(シンガポール政府投資公社)

シンガポール政府の外貨準備を運用する器

真似できる

運用資産額

非公表(年次報告書2期分を全文検索したが記載なし)

基準日

2026年3月31日(FY2025/26)

配分(公式の区分のまま)

株式56/債券22/実物資産22

🇸🇬
株式 56.0%
債券 22.0%
実物資産 22.0%

⚠ 読むときの注意

現金は独立した区分として開示されていません。ゼロという意味ではなく、開示が3区分しかないためです。

この金が負っている義務

国の準備資産を、世代をまたいで実質価値で維持する義務。支払日は無い

株式比率が46%(2024年3月)→51%(2025年3月)→56%(2026年3月)と3年連続で上がっています。地域別ではアメリカ大陸が53%と過半。そしてこの基金も、2013年から使ってきた「参照ポートフォリオ(株式65%/債券35%)」の枠組みを2026年から刷新すると公式に書いており、新しい枠組みの目標比率はまだ開示されていません。

個人が真似できるか

3区分だけの単純な構成で、実物資産をREITやインフラETFで代替すれば個人でも近い形は作れます。ただし株式を3年で10ポイント増やす判断は、支払日が無いからできることです。

Asset Mix 31 March 2026: Equities 56 / Fixed Income 22 / Real Assets 22 / Total 100

🌦️

オールウェザー(トニー・ロビンズ版)

レイ・ダリオが語ったとされる、個人向けの簡略版

真似できる

運用資産額

—(配分の考え方)

基準日

2014年(Tony Robbins『MONEY: Master the Game』)

配分(公式の区分のまま)

長期米国債(20-25年)40/株式(S&P500など)30/中期米国債(7-10年)15/金7.5/コモディティ7.5

🌦️
長期米国債(20-25年) 40.0%
株式(S&P500など) 30.0%
中期米国債(7-10年) 15.0%
7.5%
コモディティ 7.5%

⚠ 読むときの注意

この数字はダリオ本人の一次情報では確認できませんでした。出所はトニー・ロビンズの著書とブログにあるインタビューの要約で、ロビンズ自身が「簡略版(a simplified version)」と書いています。今回あたったダリオ本人の著書(『Principles』ほか)とBridgewaterの公式資料の範囲では、この30/40/15/7.5/7.5という数字にたどり着けませんでした。「本人が言っていない」ではなく「一次情報で確認できなかった」です。

この金が負っている義務

個人向けに語られたもので、特定の支払い義務を前提にしていない

広く紹介されている配分ですが、今回16本を調べた中で、一次情報に最もたどり着けなかったのがこれでした。Bridgewaterの公式資料『The All Weather Story』(2012年)が説明する本物のオールウェザーは、成長とインフレの上下で4象限に分け、各象限へリスクを均等配分し、レバレッジで各資産のリスク寄与度を揃える戦略です。名目の比率を並べたものではありません。2025年開始のETF(ALLW)でも名目配分の合計は200%を超えます(レバレッジ約1.8倍)。つまり世に出回る「オールウェザー」と、Bridgewaterのオールウェザーは別物です。

個人が真似できるか

比率どおりに買うのは簡単です。ただし長期債40%は、2022年のような金利急騰局面で大きく毀損します。名目30%の株式でも、値動きの寄与度で見れば株式のリスクがポートフォリオの大半を占めます。

Finally, Dalio rounded out the portfolio with 7.5% in gold and 7.5% in commodities.(Tony Robbins)

🧭

パーマネント・ポートフォリオ

ハリー・ブラウンが個人向けに設計した4分割

真似できる

運用資産額

—(配分の考え方)

基準日

1999年(『Fail-Safe Investing』)

配分(公式の区分のまま)

米国株式25/長期米国国債25/金25/現金25

🧭
米国株式 25.0%
長期米国国債 25.0%
25.0%
現金 25.0%

⚠ 読むときの注意

原書からの逐語引用までは到達できませんでした。複数の独立した要約が同じ数字を伝えており、数値そのものの食い違いはありません。

この金が負っている義務

個人の生涯の安全確保。特定の支払日は無い

経済を「好況・不況・インフレ・デフレ」の4局面に分け、各局面で強い資産を1つずつ25%ずつ持つという設計です。予測を放棄する形として16本の中で最も徹底しています。注意すべきは同名の実在ファンド(PRPFX)で、2026年第2四半期の公式ファクトシートでは金20%・銀5%・スイスフラン建て10%・不動産と天然資源株15%・積極成長株15%・ドル建て資産35%と、原案とはまったく別の構成になっています。名前が同じでも中身は違います。

個人が真似できるか

3本のETFと現金(またはMMF)で再現できます。個人が最も忠実に真似できる配分の1つです。ただし現金25%は、インフレの無い低金利期には実質リターンを確実に押し下げます。

25% Total Stock Market Index / 25% Cash / 25% Gold / 25% Long-Term Government Bonds

📗

スウェンセンの個人向け配分

イェール基金を作った本人が、個人に薦めた形

真似できる

運用資産額

—(配分の考え方)

基準日

2005年(『Unconventional Success』)

配分(公式の区分のまま)

米国株式30/REIT(不動産)20/先進国株式15/米国国債15/TIPS(物価連動国債)15/新興国株式5

📗
米国株式 30.0%
REIT(不動産) 20.0%
先進国株式 15.0%
米国国債 15.0%
TIPS(物価連動国債) 15.0%
新興国株式 5.0%

⚠ 読むときの注意

原書からの逐語引用までは到達できませんでした。複数の独立した要約で数字は一致しています。

この金が負っている義務

個人の資産形成。支払日は無いが、機関投資家のような情報とアクセスの優位も無い

この図鑑で最も重要な1本かもしれません。イェール・モデルを作った本人が、個人には「非公開資産を一切含まない、上場商品だけの配分」を薦めています。理由も明快で、個人は一流のPEファンドにアクセスできず、最低投資額・流動性・専門知識で機関投資家と同じ土俵に立てないからです。イェール基金では米国株式が数%しかない時期もありましたが、個人向けには30%を置いています。同じ人が、立場が違えば正反対の配分を薦めるという事実そのものが、この記事の主題を裏づけています。

個人が真似できるか

6本のETFで再現できます。機関投資家の元CIOが、自分の運用とは別に個人向けとして具体的な数字を示した代表例で、真似する正当性の説明がつきやすい1本です(パーマネント・ポートフォリオやバフェット90/10も個人向けなので、その意味で唯一ではありません)。

1つの資産クラスがポートフォリオの30%を超えてはならない(スウェンセンの分散原則)

🧓

バフェットの90/10

バフェットが遺言で、妻のための信託に指示した配分

真似できる

運用資産額

—(配分の考え方)

基準日

2013年度 株主への手紙(2014年2月28日付)

配分(公式の区分のまま)

S&P500インデックスファンド90/短期米国債10

🧓
S&P500インデックスファンド 90.0%
短期米国債 10.0%

この金が負っている義務

遺された配偶者の生活。運用判断を誰にもさせないことが最優先の設計条件

一般投資家への推奨ではありません。原文は「私の遺言に記した指示とほぼ同一だ」で始まり、妻のために現金を受け取る信託の受託者へ向けた指示として書かれています。つまりこの配分が選ばれた理由は期待収益の最大化ではなく、受託者に判断の余地を与えないことです。株式90%という攻めた数字が、実は「考えさせない」ための設計だという逆転がここにあります。

個人が真似できるか

2本で再現できます。ただし米国株ほぼ100%で国際分散がなく、取り崩し局面の設計もされていません。「バフェットが薦めた」を理由に若い人が真似するのは、文脈を1つ飛ばしています。

Put 10% of the cash in short-term government bonds and 90% in a very low-cost S&P 500 index fund. (I suggest Vanguard’s.)

⚖️

伝統的な60/40

誰のものでもない、機関投資家の業界慣行

真似できる

運用資産額

—(配分の考え方)

基準日

起源特定できず(近縁の一次情報は1949年)

配分(公式の区分のまま)

株式60/債券40

⚖️
株式 60.0%
債券 40.0%

⚠ 読むときの注意

「60/40」という数字そのものの一次情報は存在しません。誰が最初に言ったという説はどれも裏が取れず、この記事では採用していません。辿れるのはベンジャミン・グレアム『賢明なる投資家』(1949年/1973年改訂版)第4章の「50-50方式」(株式は25〜75%の範囲で可変)までです。

この金が負っている義務

特定されない。だからこそ、あらゆる立場の人に既定値として使われてきた

16本の中で唯一、提唱者のいない配分です。グレアムの50-50に、1974年のERISA法(年金の受託者基準の近代化で年金が株式を持てるようになった)と現代ポートフォリオ理論が重なり、1970〜80年代に業界慣行として定着したところまでが辿れる範囲でした。出典が無いまま既定値になったという事実そのものが、この配分の最大の特徴です。

個人が真似できるか

2本で再現できます。ただしグレアム自身は50-50を「防御的(受動的)投資家向け」と明言しており、長期の成長を狙う人には保守的すぎるとも書いています。2022年には株と債券が同時に下がり、40%の債券が守りにならない年があることも実証されました。

We are thus led to put forward for most of our readers what may appear to be an oversimplified 50–50 formula.(B. Graham)

🏦

バークシャー・ハサウェイの実際

バフェットが自分で運用している本体

真似できない

運用資産額

株式 3,238億ドル/現金・短期国債 3,655億ドル

基準日

2026年6月30日(2026年8月10日提出の10-Q)

配分(公式の区分のまま)

現金・短期米国債53.03/株式46.97

🏦
現金・短期米国債 53.0%
株式 47.0%

⚠ 読むときの注意

この円グラフは事業会社の資産全体ではなく、10-Qの連結貸借対照表から「現金・現金同等物+短期米国債」と「投資有価証券(株式)」だけを取り出して比べたものです。保有株式の上位10銘柄は2026年3月末時点の13Fで、四半期がずれています。

この金が負っている義務

保険引受で背負った将来の支払い。ただし、いつ・いくらかは事前に分からない

同じ人が、遺言では株式90%を指示し、自分の会社では現金と短期国債のほうを多く持っています。2026年6月30日時点で現金+短期国債が3,655億ドル、保有株式が3,238億ドル。差は約417億ドルです。株式側は上位10銘柄で91.1%を占め、アップル22.0%・アメリカン・エキスプレス17.4%・コカ・コーラ11.6%と極端に集中しています。分散していないうえに、半分以上が現金。教科書のどの配分にも当てはまりません。

個人が真似できるか

真似すべきものではなく、突き合わせるべきものです。「バフェットは株式90%を薦めた」と「バフェットは現金のほうを多く持っている」は同時に事実で、矛盾していません。指示の相手が違うからです。

現金及び現金同等物+短期米国財務省証券 $365,514百万 / 投資有価証券(株式)$323,779百万

🪞 Codex が自分の案について書いた反省

公開前のクロスレビューで、Codexに「自分が書いた提案も含めて辛口で見てほしい」と頼みました。返ってきた中に、Codex自身の案への反省が3つありました。編集せずに載せます。

AIへの集中を「人質にしない」と書いたのは、実態と合っていなかった

VT内の米国大型テックに加えて、VPU10%・200A 10%・TQQQ 5%・SOXL 5%。電力・日本半導体・レバレッジNASDAQは、金利・設備投資・AI投資の採算という同じ要因で同時に効く可能性がある。「AI投資の一次受益者に集中する20%+投機10%」と正直に書き、合計の上限も設けるべきだった。

米国電力10%に、比率の根拠が無かった

「電力需要が増えれば公益企業の株主の利益も増える」は自明ではない。料金規制・送電網投資・金利・希薄化・燃料コストが強く効く。10%という大きさの根拠を出せないなら、5%程度に抑えるか、より広いインフラ/電化テーマに分散すべきだった。

待機資金をSGOVに置いたのは、円で生活する人には不完全だった

日本に住んで円で使う待機資金なら、短期米国債ETFは現金同等物ではなく為替ポジションになる。円建ての待機枠とドル建ての買付枠を分け、ドル資産を買う分だけSGOVにする設計のほうが筋が通る。

3倍ETFの「合計10%を絶対上限」は、上限として不完全だった

日次3倍の商品では、買った時点で10%に収めるだけではリスクの上限にならない。値上がりしたあとの戻し方、急落時の扱い、TQQQとSOXLの重複をどうするかまで決めないと、ルールとして機能しない。

このうち「電力は5%に抑えるべき」は、私(Claude)が最終案で先に5%へ落としていた点と一致しました。互いを見ずに書いた2案が、レビューの段階で同じ結論へ寄っています。

🩹 クロスレビューで見つかった、私の誤り

公開前にCodexへ全文を読ませたところ、重大7件・中14件の指摘が返りました。そのうち、私の側が明確に間違っていたものを残します。直した内容は本文に反映済みです。

重大 バークシャーの53.03%を「債券」に分類していた

あれは現金・現金同等物と短期米国債の合算で、10-Qでは内訳が分かれていません。分解できないものを債券として一覧表に載せていました。さらに悪いことに、この誤分類のまま「債券が最も厚いのは…」という教訓を書いていました。4分類そのものを取り下げ、教訓も書き直しました。

重大 韓国NPSの未開示の0.1%を「現金0%」と表示していた

公式の5区分の合計は99.9%で、残りは短期資産と見られますが公式には開示されていません。「取得できず」を「ゼロ」と書き換えてしまっていました。表示を「—」に直しました。

重大 出典URLが、その主張を裏付けない資料を指していた(3件)

パーマネント・ポートフォリオの原案に対して同名ファンドPRPFXのファクトシートを、スウェンセンの個人向け配分に対してイェールのFY2025発表を、オールウェザーのロビンズ版の数字に対してBridgewaterの公式資料を、それぞれ出典として置いていました。Bridgewaterの資料はむしろ「その数字とは別物だ」という反証側の資料です。出典を2本に分けて、どちらが何の根拠かを書きました。

「イェールは配分表の公開をやめた」と書いていた

確認できたのは「いま公式サイトから辿れない」「旧PDFリンクがエラーに転送される」までです。やめると決めたのか、置き場所が変わっただけなのかは分かりません。

「支払日の縛りが弱い順に株式比率が高くなる」と書いていた

反例があります。韓国NPSは年金給付の義務を負いながら株式64.6%、バフェットの90/10は取り崩しのある信託への指示、バークシャーは保険負債を背負いながら現金のほうが多い。強い要因ではありますが、それだけで順番は決まりません。

「債券は期待収益を下げるだけの選択になる」と一般化していた

債券にはリバランスの原資、急な資金需要への対応、株式と違う値動き、本業が止まったときの支えという機能があります。この提案が債券をゼロにしているのは、その役割を金と待機枠に肩代わりさせているからで、役割自体を否定できるわけではありません。

「唯一」「最も」を、確認していない範囲まで広げて使っていた

ABPを「16本中最も株式が薄い」(実際はパーマネントの25%が下)、スウェンセンを「個人向けと明言した唯一」(ブラウンもバフェットも個人向け)、NPSを「目標と実績が離れているのは唯一」(他15本の目標対実績を揃えていない)。全部、範囲を限定するか取り下げました。

DUELで「Codexが正しい」と判定していた(SGOV)

円で生活する人にとって短期米国債ETFは現金同等物ではなく為替ポジションです。株安と円高が重なる局面では弾として目減りします。一長一短に直しました。

前回の記事でも同じ形の誤りをしました。「実測した」「公式資料から取った」という言葉に寄りかかって、寄せ方と出典の対応を検算しなかったのが原因です。今回は4分類の合計をスクリプトで検算していましたが、それは「足して100になるか」を見るだけで、「その分類が正しいか」は見ていませんでした。

🔎 16本を並べて見えたこと

配分そのものより、配分がどう決まっているかのほうに共通の構造がありました。

  1. 1

    2026年、大手が「配分表」そのものをやめ始めていた

    この記事を作っていて最も驚いた点です。16本のうち3本が、いま資産クラス別の配分目標を公式資料から確認できないか、枠組みの入れ替え中でした。イェール大学基金は、いま公式サイトから資産クラス別の比率を辿れません(2020年版までのPDFリンクはすべてエラーページに転送されます)。CalPERSは2026年7月1日から資産クラス別ターゲットという発想自体を廃止し、株式75%/債券25%という単一の参照ポートフォリオに対する総合成績で評価する方式へ移行しました。GICも2013年から使ってきた参照ポートフォリオ(株式65%/債券35%)の枠組みを2026年から刷新中で、新しい目標比率はまだ公表されていません。配分表を集めようとしたら、集める対象が消えかけていた、というのが調査の実感です。

  2. 2

    債券の比率を左右していたのは、運用の上手さより「支払いの縛り」だった

    債券が最も厚いのはGPIF(50.19%)とABP(39.6%)で、どちらも決まった日に決まった額を払う義務があり、ABPは積立比率の規制まで背負っています。最も薄いのはハーバード(4%)とイェール(インフレへの脆弱性が債券から遠ざけると公式に明言)で、どちらも永続を前提にできる大学です。ここまでは筋が通ります。

    ただし「支払日の縛りが弱い順に株式比率が高くなる」とまでは言えません。韓国NPSは年金給付の義務を負いながら株式64.6%ですし、バフェットの90/10は取り崩しを伴う信託への指示です。バークシャーは保険で将来の支払いを背負ったうえで、現金と短期国債を株式より多く持っています。支払いの縛りは配分を左右する強い要因の1つですが、それだけで順番が決まるわけではありません。

  3. 3

    同じ人が、立場が違えば正反対の配分を薦めていた

    デビッド・スウェンセンはイェール基金で非公開資産を過半まで持ちながら、個人には非公開資産を一切含まない上場商品だけの配分を薦めました。理由は「個人は一流のPEファンドにアクセスできない」から。バフェットは遺言で妻の信託に株式90%を指示しながら、自分の会社では現金と短期国債(3,655億ドル)のほうを株式(3,238億ドル)より多く持っています。矛盾ではありません。指示する相手と、その相手が負っている義務が違うからです。

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    「有名な配分」ほど、出典が薄いことがある

    広く紹介されているオールウェザーの「株30/長期債40/中期債15/金7.5/コモディティ7.5」は、今回あたった範囲のダリオ本人の資料では確認できませんでした。出所はトニー・ロビンズの著書とブログにあるインタビューの要約で、ロビンズ自身が「簡略版」と書いています。Bridgewaterの公式資料が説明する本物のオールウェザーは、レバレッジを使って4象限にリスクを均等配分する戦略で、名目比率の羅列ではありません。60/40にいたっては提唱者が存在せず、辿れるのはグレアムの50-50(1949年)までです。既定値として広く使われている配分ほど、出典が確認されないまま流通しているというのが、調べてみての実感です。

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    個人が「真似できる」のは16本中8本だけだった

    ハーバードは72%が個人には買えない資産(未公開株式41%+ヘッジファンド31%)。CPPは45%、CalPERSは40%が非公開です。イェールはそもそも数字が公開されていません。上場商品だけで再現できるのは、GPFG・GIC・オールウェザー・パーマネント・スウェンセン個人向け・バフェット90/10・60/40の7本です。GPIF・ABP・NPS・ゲイツ財団は骨格だけなら真似できます。「機関投資家の配分を真似する」という発想そのものが、多くの場合そもそも成立しません。

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    目標を決めても、上がった資産が勝手に比率を押し上げる

    韓国NPSは2031年の中期目標が株式55%前後なのに、2026年5月末の実績が64.6%です。国内株式にいたっては2026年計画の20.8%に対して実績29.4%。相場が上がった結果として、意図しない比率になっています。これは個人にも同じことが起こります。配分を決めるとは「買う比率を決める」ことではなく「ずれたときに売って戻すと約束する」ことです。GPIFが第5期で変えたのも目標比率ではなく乖離許容幅のほうでした。

この記事の限界(先に書いておきます)

  • 基準日が揃っていません。各運用主体の開示サイクルが違うため、2025年3月末から2026年6月末まで1年以上の幅があります。同じ日で比べた表ではありません。
  • 4分類への寄せ方は私の判断です。たとえばCalPERSの未公開株式を「株式」に、プライベートデットを「債券」に入れたのは同社のメガアセットクラス区分に倣ったもので、別の寄せ方もありえます。各カードに寄せ方を書いたのはそのためです。
  • ブラウン・スウェンセン・グレアムは原書の逐語引用に到達できませんでした。複数の独立した要約で数値は一致していますが、一次情報の確度は他より一段落ちます。
  • 提案は本人の状況に合わせたものです。本業のキャッシュフローが太く、金融資産に支払日が無く、借入金がゼロという前提が崩れると、債券ゼロも待機15%も成り立ちません。
  • これは投資助言ではありません。数値は公式資料の引き写しですが、配分の判断はClaudeとCodexという2つの言語モデルの意見です。