Toushi Lab / Column
セール中の日本株セクター — ETFは高値、中身は沈んでいる
日本のセクターを「買える単位(セクターETF18本)」と「中身(日経225の会社を業種で束ねた中央値)」の両方で測りました。 2つは同じ動きをしていません。
2026-09-03 時点 / ETFの信託報酬・純資産は nextfunds.jp 公式、価格は Yahoo Finance 実測(10年・月足)
まず答え
セクターETFは18本すべてが2026年に10年高値をつけています。
30%以上沈んでいるセクターETFは0本。いちばん深い日経半導体株指数でも-28.7%です。
ところが中身は違います。 日経225の会社を業種で束ねると、中央値が25%以上沈んでいる業種が8個あります (サービス -35.1% / 空運 -34.8% / 医薬品 -34.2% / 造船 -32.9% / 鉄道・バス -31.8%…)。
いちばん食い違うのが医薬品で25.5ポイント。 ETFは-8.7%なのに、中身の中央値は-34.2%、9社中5社が高値から30%以上落ちています。 セクターETFを買っても、そのセクターで沈んでいる会社はほとんど入っていません。
買える単位 — セクターETF 18本
TOPIX-17(東証33業種を17に束ねた公式の区分)に連動するNEXT FUNDSの17本と、日経半導体株指数の200Aです。下落率の深い順。 比較のためTOPIX連動ETF(1306)と日経平均を最後に置いています。
| コード | セクター | 価格 | 高値から | 利回り | 信託報酬 | 純資産 | 1年 | 5年 | 総10年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 200A | 日経半導体株指数 | ¥4,228 | -28.7% | 0.59% | 0.165% | 1,323.8 億円 | +112.6% | — | — |
| 1633 | 不動産 | ¥49,090 | -25.1% | 1.54% | 0.352% | 31.9 億円 | +2.7% | +58.1% | +124.1% |
| 1619 | 建設・資材 | ¥44,660 | -16.0% | 1.81% | 0.352% | 141.3 億円 | +19.4% | +97.4% | +203.0% |
| 1624 | 機械 | ¥82,680 | -14.7% | 0.92% | 0.352% | 35.1 億円 | +18.7% | +100.7% | +265.9% |
| 1623 | 鉄鋼・非鉄 | ¥63,050 | -12.5% | 0.88% | 0.352% | 75.5 億円 | +71.1% | +287.0% | +464.5% |
| 1622 | 自動車・輸送機 | ¥35,550 | -11.5% | 1.61% | 0.352% | 47.5 億円 | +9.7% | +48.4% | +145.8% |
| 1625 | 電機・精密 | ¥62,670 | -11.2% | 0.47% | 0.352% | 171.8 億円 | +45.7% | +101.8% | +385.3% |
| 1618 | エネルギー資源 | ¥36,150 | -10.6% | 2.05% | 0.352% | 36.0 億円 | +42.9% | +242.7% | +403.2% |
| 1621 | 医薬品 | ¥31,130 | -8.7% | 2.24% | 0.352% | 53.9 億円 | +19.3% | +27.5% | +100.8% |
| 1620 | 素材・化学 | ¥36,810 | -6.3% | 1.52% | 0.352% | 19.3 億円 | +21.3% | +30.8% | +135.0% |
| 1630 | 小売 | ¥37,190 | -6.2% | 1.47% | 0.352% | 35.9 億円 | +9.1% | +55.5% | +140.2% |
| 1629 | 商社・卸売 | ¥281 | -4.2% | 0.85% | 0.352% | 509.5 億円 | +39.8% | +250.6% | +620.7% |
| 1626 | 情報通信・サービスその他 | ¥47,350 | -3.9% | 1.09% | 0.352% | 65.0 億円 | +9.6% | +54.0% | +221.0% |
| 1627 | 電力・ガス | ¥12,915 | -2.3% | 1.30% | 0.352% | 32.6 億円 | +29.1% | +116.7% | +131.6% |
| 1628 | 運輸・物流 | ¥22,090 | -1.8% | 2.96% | 0.352% | 19.4 億円 | +7.0% | +37.6% | +89.3% |
| 1617 | 食品 | ¥48,780 | -0.9% | 2.12% | 0.352% | 41.5 億円 | +21.5% | +65.2% | +101.6% |
| 1631 | 銀行 | ¥42,720 | +0.0% | 1.80% | 0.352% | 259.9 億円 | +69.6% | +420.3% | +613.6% |
| 1632 | 金融(除く銀行) | ¥43,630 | +0.0% | 2.55% | 0.352% | 178.0 億円 | +36.3% | +209.4% | +438.2% |
| 1306 | TOPIX連動ETF(比較) | ¥427 | -1.5% | 1.85% | — | — | +30.1% | +102.0% | +266.2% |
| ^N225 | 日経平均株価(比較) | ¥64,214 | -8.3% | 0.00% | — | — | +42.9% | +118.0% | +268.5% |
200A(日経半導体株指数)は高値からの下落率が-28.7%で最大ですが、 1年では+112.6%です。上げた後に戻された形で、沈んでいるわけではありません。 純資産が20〜50億円台のETFが多く、規模の小さいものは売買が細くなります。
この記事でいちばん言いたいこと
セクターETFの値動きは、そのセクターの会社たちのまん中と一致しない
左がETFの下落率、右がその業種の会社たちの下落率の中央値です。「差」がプラスなら、ETFのほうが浅い=沈んでいる会社が薄まっているという意味です。
| ETF | 対応する業種 | ETF | 中身の中央値 | 差 | 30%超落ち | 最大の会社の比重 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1621 | 医薬品(9社) | -8.7% | -34.2% | 25.5pt | 5/9社 | 中外薬 26.5% |
| 1630 | 小売業(11社) | -6.2% | -22.0% | 15.8pt | 2/11社 | ファストリ 52.6% |
| 1625 | 電気機器+精密機器(37社) | -11.2% | -25.2% | 14.0pt | 16/37社 | 東エレク 10.3% |
| 1622 | 自動車(9社) | -11.5% | -23.5% | 12.0pt | 4/9社 | トヨタ 66.8% |
| 1617 | 食品(10社) | -0.9% | -10.2% | 9.3pt | 0/10社 | JT 45.1% |
| 1623 | 鉄鋼+非鉄・金属(11社) | -12.5% | -20.6% | 8.1pt | 4/11社 | フジクラ 27.7% |
| 1627 | 電力+ガス(5社) | -2.3% | -9.7% | 7.4pt | 1/5社 | 関西電 31.1% |
| 1624 | 機械(16社) | -14.7% | -21.1% | 6.4pt | 3/16社 | 三菱重 29.8% |
| 1633 | 不動産(5社) | -25.1% | -28.1% | 3.0pt | 1/5社 | 菱地所 33.7% |
| 1619 | 建設+窯業(15社) | -16.0% | -18.3% | 2.3pt | 7/15社 | ハウス 14.8% |
| 1629 | 商社(7社) | -4.2% | -4.9% | 0.7pt | 0/7社 | 三菱商 24.9% |
| 1631 | 銀行(10社) | +0.0% | +0.0% | 0.0pt | 0/10社 | 三菱UFJ 38.7% |
私の考察 — なぜずれるのか
これらのETFは時価総額で重みをつけて持ちます。1社1票ではありません。 だから大きい会社が上がっていれば、小さい会社が何社沈んでいてもETFは高値をつけます。 いちばん分かりやすいのが小売で、ファーストリテイリング1社が業種の時価総額の52.6%を占めます (1年+51.0%)。 一方でイオンは-50.8%、ZOZOは-34.8%沈んでいますが、ETFの値動きにはほとんど出ません。 自動車はトヨタ1社で66.8%、食品はJTで45.1%です。
つまり「業種をまるごと買う」と思ってセクターETFを買うと、実際に買っているのはその業種の上位数社です。 沈んでいる会社が戻ることに賭けたいなら、セクターETFはその賭けになりません。逆に、沈んだ会社に巻き込まれたくないなら、この薄まりは守りになります。 どちらが良いかは目的しだいなので、ここでは決めません。
この比較を疑うべき点
- 2つは別の分類体系です。TOPIX-17は東証33業種を束ねたもの、右側は日経の業種区分。どの組を対応させるかは私の判断です。
- 母集団も違います。ETFはTOPIX(東証プライム全体)が対象、右側は日経225の中の会社だけ。だから「最大の会社の比重」はETFの実際の構成比ではありません(日経225の中だけで計算した参考値)。
- TOPIXは浮動株調整をするので、親会社が大株主の会社は時価総額ほど重くなりません。各ETFの実際の構成比は確認していません。
中身 — 業種ごとのまん中はどこにいるか
日経225の223社を日経の業種区分で束ね、10年高値からの下落率の中央値で並べました。 中央値なので、その業種のちょうどまん中の会社がどこにいるかを表します。
| 業種 | 社数 | 中央値 | 30%超落ち | いちばん深い会社 | 利回り中央値 | PBR中央値 | 1年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| サービス | 19 | -35.1% | 10/19社 | エムスリー -82.0% | 1.50% | 3.1 | -8.9% |
| 空運 | 2 | -34.8% | 2/2社 | ANAHD -36.7% | 2.70% | 0.9 | +1.6% |
| 医薬品 | 9 | -34.2% | 5/9社 | エーザイ -56.5% | 2.90% | 1.8 | +6.7% |
| 造船 | 1 | -32.9% | 1/1社 | 川重 -32.9% | 1.40% | 2.3 | +25.4% |
| 鉄道・バス | 8 | -31.8% | 4/8社 | 京王 -51.1% | 2.20% | 1.1 | -1.5% |
| 不動産 | 5 | -28.1% | 1/5社 | 住友不 -38.4% | 2.30% | 1.2 | +7.9% |
| 精密機器 | 6 | -26.4% | 3/6社 | コニカミノル -45.1% | 1.30% | 2.6 | +13.3% |
| 電気機器 | 31 | -25.2% | 13/31社 | シャープ -86.4% | 1.20% | 2.4 | +39.6% |
| 窯業 | 6 | -24.9% | 3/6社 | 日電硝 -43.0% | 2.20% | 1 | +34.8% |
| 陸運 | 2 | -23.9% | 1/2社 | ヤマトHD -44.5% | 2.10% | 1.3 | +23.8% |
| 自動車 | 9 | -23.5% | 4/9社 | 日産自 -73.0% | 3.60% | 0.7 | +9.4% |
| 小売業 | 11 | -22.0% | 2/11社 | イオン -50.8% | 1.60% | 2.2 | +10.7% |
社数が1〜3の業種(造船・空運・陸運・鉄鋼など)は、中央値が1社の値そのものになります。業種の代表値としては弱いので、社数と一緒に見てください。
この記事の限界
ETFの構成銘柄を確認していない
「大きい会社の比重が高い」は指数の作り方から言えることですが、各ETFが実際に何をどれだけ持っているかは見ていません。 (1629商社・卸売の構成銘柄が未確認であることは、商社のコラムにも書いています)
中身の母集団は日経225だけ
東証には約4,000社あります。業種の中央値は日経225に入っている会社だけで計算したもので、 その業種の中小型株は入っていません。入れれば中央値はもっと深くなる可能性が高いです。
セクターETFは規模が小さいものがある
純資産が20〜50億円台のETFが複数あります。この記事は売買代金(1日にどれだけ売買されているか)を測っていません。 規模の小さいETFは、買うときも売るときも値段が動きやすくなります。
なぜ沈んだかは調べていない
業種ごとの理由には踏み込んでいません。鉄道について1つだけ一次データで確かめた話は セール中の日本株の考察に書きました。
出典
ETFの信託報酬・純資産・最低投資額は nextfunds.jp(野村アセットマネジメント)公式。価格・分配金は Yahoo Finance 実測(10年・月足)。
業種と構成銘柄は日経公式「構成銘柄:日経平均株価」。2026-09-03 時点。
再生成は node scripts/gen-sale-jpsector.mjs。